天下繚乱RPGシナリオ「新説小話、寿限無 〜狙われた誠の旗〜」
著:伊佐馬 朧 監修:梶岡貴典


シナリオデータ

プレイヤー:4〜5人
PCレベル:3〜4レベル
プレイ時間:3〜5時間


シナリオ背景

 江戸の町に、非常に縁起がよい名として長く珍妙な名を与えられたひとりの少年がいた。だがその名は言霊とよばれる呪法を用いて存在を歪めるためのものであった。言霊の“呪(しゅ)”によって歪められ、妖異へ墜ちてしまう少年、長助。英傑たちは名付けを行なった旅の僧の正体が、時空破断によって飛ばされてきた元新撰組御陵衛士「高西登(たかにし・のぼる)」であると突き止める。
 彼は名付けの“呪”を使って妖異を増やし、幕府と新撰組へ復讐を果たさんと暗躍している。
 本シナリオは新撰組副長土方歳三を殺害せんとする高西を倒し、長助を元に戻すことで終了となる。


今回予告

 名は体を表す。そんな格言もあるが、この子はどうなるのだろう。こんな長ったらしく珍妙な名前を付けられた少年は。
 徐々に歪められ妖異と変じていく少年。時を同じくして江戸市中で起こる、新撰組襲撃事件。
 この一見関係のない二つの事象が、英傑たちの手によって結びつけられた時、妖異の正体が暴かれる!
 天下繚乱RPG『新説小話、寿限無 〜狙われた誠の旗〜』
 百花繚乱綾錦、いざ開幕!

キャラクター作成

 今回予告を読み上げた後、ハンドアウトをコピーして切り離し、各プレイヤーに配布せよ。どのプレイヤーにハンドアウトを渡すかは、GMの任意にしてもよいし、プレイヤー間で選択させてもよい。プレイヤーの人数が少ない場合は、若い番号を優先すること。

●ハンドアウト
 ハンドアウトには、各PCによって異なる事前情報と、シナリオによってPCに与えられる因縁が記載されている。
 今回予告を読み上げた後、GMは下のシナリオハンドアウトの内容を読み上げて、各プレイヤーに配ること。その後、ハンドアウトに沿ってPCを作成してもらうとよい。

●クイックスタート
 プレイヤーが『天下繚乱』を初めて遊ぶ場合や、ルールブックを持っていないのならクイックスタートでキャラクター作成を行なうとよい。
 本シナリオでは、『天下繚乱』P52〜P75に掲載されている、以下の5つのサンプルキャラクターをクイックスタートで使用することを推奨する。

 プレイヤーが『天下繚乱』を初めて遊ぶ場合や、ルールブックを持っていないならクィックスタートでキャラクター作成を行うとよい。
 本シナリオでは以下の5つのサンプルキャラクターをクィックスタートで使用することを推奨する。
PC1: 流浪の剣客(『天下繚乱』p052)
PC2: 壬生の狼(『天下繚乱』p066)
PC3: 闇を払う者(『天下繚乱』p056)
PC4: おぼろの君(『天下繚乱』p074)
PC5: 庶民の救世主(『江戸絢爛』p032)

●コンストラクション
 プレイヤーがルールを知っていて、ルールブックも所持している場合、コンストラクションでキャラクターを作成してもよい。
 このとき、各PCにはハンドアウトで推奨されるクラスを取らせ、またハンドアウトに付随する設定についてはGMから説明を行うこと。

●推奨カバー
 PCのカバーは以下を推奨する。
PC1:浪人
PC2:指定なし
PC3:陰陽師
PC4:指定なし
PC5:指定なし

●PC間コネクション
 キャラクター作成後に、プレイヤーにPCの自己紹介をしてもらおう。その後『天下繚乱』P185にあるように、PC間コネクションを決定すること。PC間コネクションの結び方は以下の通り。
PC1→PC2→PC3→PC4→PC5→PC1

●PC2を作成する際の注意
 PC2は池田屋事件で化政時代に飛ばされた一般的な新撰組隊士を想定しているが、土方歳三に真っ向から敵対する関係という立場のキャラクターでなければ、これに拘る必要はない。ただ、思想の違いから新撰組を脱退した経験がある、などの特殊な設定を持たせる場合は、GMとよく相談した上で決定するといいだろう。

●PC3を作成する際の注意
 PC3は京都在住の土御門泰宏の弟子を想定しているが、キャラクターは今回の舞台である江戸に在住していてもよい。その場合は土御門泰宏の式神が話をしにくるなど適宜、オープニングフェイズでの会話内容を変更するとよいだろう。

●シナリオ運営上の注意
 本シナリオのボスである高西登は言霊を用いた「呪(しゅ)」を使い、名前に違う意味を持たせることで様々な異変を引き起こす。
 GMはシナリオ上にある高西の「呪」の内容を紙などに記載し、プレイヤーに提示するようにすると理解がスムーズに進むだろう。

●シナリオハンドアウト
 各PCには以下の設定がつくので、キャラクター作成の時によくプレイヤーと相談すること。
PC1:旅の浪人である。
PC2:新撰組である。
PC3:土御門泰宏に仕える霊能者である。
PC4:江戸の町に潜む妖怪である。
PC5:南部の親分の友人である。

新説小話、寿限無 〜狙われた誠の旗〜:PC1用ハンドアウト
コネクション:長助  関係:幼子
コンストラクション:指定なし
クイックスタート:流浪の剣客 カバー:浪人
 キミは旅の浪人だ。訪れた江戸の町中で、キミは悪ガキに苛められる少年と出会った。年の頃は七つぐらいだろうか。悪ガキ共を追い払い、苛められていた原因を聞いたキミは驚愕した。生後半年だというのだ。彼の謎は二つ。見た目にそぐわぬ年齢と、旅の僧に付けられたという、長い長い珍妙な名。懐いた彼に連れられ一夜の宿を借りたキミは、そこで、妖異に変じつつある少年を見た。

新説小話、寿限無 〜狙われた誠の旗〜:PC2用ハンドアウト
コネクション:土方歳三  関係:忠誠
コンストラクション:新撰組
クイックスタート:壬生の狼 カバー:指定なし
 ここはキミの生きていた時代からは少し過去の江戸。同じく時空破断でこの時代に飛ばされた土方から、剣呑な話を聞く。思想の違いから新撰組から分裂、後に壊滅させられた御陵衛士という者たちがいた。その残党が、この時代に漂着しているそうだ。そして江戸の転覆と新撰組への復讐を狙っているらしい。すでに幾人かが犠牲になっている。新撰組に仇なすものを放ってはおけぬ。土方の指令と誠の旗の下、キミは敵の正体を暴くべく動き出した。

新説小話、寿限無 〜狙われた誠の旗〜:PC3用ハンドアウト
コネクション:外法の陰陽師  関係:仇敵
コンストラクション:陰陽師
クイックスタート:闇を払う者 カバー:陰陽師
 キミは陰陽頭、土御門泰宏の弟子の一人だ。師匠はキミを呼びだし、こう語った。しばらく前に、京の都のいたる所で人々を羅刹化させていた外法の陰陽師が、このたび江戸で目撃されたという。陰陽の術を邪道に使う輩を許すことはできない。キミは旅装をまとめ、江戸へと旅だった。

新説小話、寿限無 〜狙われた誠の旗〜:PC4用ハンドアウト
コネクション:仲間の妖怪たち  関係:友人
コンストラクション:妖怪
クイックスタート:おぼろの君 カバー:指定なし
 キミは江戸に住む妖怪だ。ある夜キミは、仲間の妖怪たちがキミの前で、怪しげな術で妖異と化し連れ去られた。その術をかけたのは、妖異の気を放つ僧形の男。手にした紙にはひらがなで「よう×い」と書かれていた。不気味な笑いを残し男は立ち去る。仲間たちはどこに行ってしまったのか。いや、どこにいようとも必ず元に戻してみせる。キミは心に誓った。

新説小話、寿限無 〜狙われた誠の旗〜:PC5用ハンドアウト
コネクション:南部の親分  関係:友人
コンストラクション:指定なし
クイックスタート:庶民の救世主 カバー:指定なし
 ある日、友人の南部の親分のところに遊びに行ったキミは、彼から奇妙な子供の話をされた。生後十月なのにすでに七つ八つの大きさで、妙ちきりんな長い名があり、周りからは神童だ、生き神だと崇められているそうだ。だが、その子の様子がおかしいらしい。お節介だが気をかけてやってくれと、わざわざ頭を下げてきた。キミは親分肌で頭の回る友人の頼みを聞くことにした。

オープニングフェイズ

 オープニングフェイズではシーンプレイヤー以外は登場不可とする。

●シーン1:始まりの一筆
マスターシーン
◆解説
 半年前、旅の僧が赤子(長助)に名前をつけるシーン。PCは登場できない。
▼描写1
 江戸の長屋の一角、そのの端にある部屋でひとりの女性が産褥に横たわっていた。その傍らで、年老いた産婆が生まれたばかりの赤子に産湯を使っている。
 産婆は赤子を粗末な産着にくるみながら、言いにくそうに口を開いた。
「赤子の産声がちっさかったから、早いうちにお医者さまに見せた方がいいかもしれんの」
 先ほど父母となった夫婦は、青い顔をして顔を見合わせた。産婆は赤子を母に抱かせ、乳を含ませようとする。が、赤子は吸おうとしない。
 産婆はため息をつき、周りを片づけると、無言で帰っていった。
 弱々しい赤子を抱き、途方に暮れ、夜が更けた頃。
 戸をたたく音がした。夫がフラリと立ち上がり、戸を開ける。
 そこには旅装束に身を固めた、一人の僧が立っていた。
▼セリフ:旅の僧と夫の会話
「もし、お困り事がありませぬか」
「お坊さま、どうか仏様のお情けをくださいやし。生まれたばかりの子の具合がよくありません」
「それは不憫な。……しからば、拙僧によき考えがありますぞ。仏より、名を賜りましょう」
▼描写2
 僧が懐から筆をとりだし、なにやら唱えながら紙にさらさらと文字を書いていく。
 最後の一文字を書き終えると、夫婦に紙を見せた。
「……このような名では、いかがか」
 その途端、傍らの赤子が火をつけたように泣き出した。
▼セリフ:夫婦
「おお、赤子が元気に!」
「ありがとうございます、ありがとうございます!」
◆結果
 事を終え、僧が去り際にニヤリと笑みを浮かべる。シーンを終了すること。

●シーン2:出会い
シーンプレイヤー:PC1
◆解説
 PC1が長助と出会うシーン。PC1に懐いた長助はPC1を家へ寄るように誘う。このシーンではハンドアウトにあった長助が妖異に変ずる兆しはみせず、後ほどもう一度オープニングがあることをプレイヤーへ伝えること。
▼描写
 江戸の町は活気溢れている。商人の客引き、力仕事の男たちのかけ声。飛脚がキミの横を走り抜けていく。
 キミはそれらを眺めながら、足を止めた。子供の声が聞こえたからだ。それだけでは珍しいことではなかったが、キミが足を止めたのは、聞き捨てならない言葉があったからだ。
▼セリフ:子供たちと長助
「やーい、化け物!」
「生まれて半年の赤子のくせに、なんでそんなにでっけえんだよ!」
「鬼の子、化け物の子!」
(PC1の姿を見て)「やべっ!」「逃げろー」
「ありがとう、兄ちゃん(お姉ちゃん)助けてくれて。いっつもああやって、おいらのこといじめるんだ。でも、しょうがないんだ。おいらがおかしいから……」
「おいら、まだ生まれて半年しか経ってないんだ。どう見ても七つぐらいだろ? だから、あいつらに怖がられてさ。大人も最初は神童とか言ってたけど、最近は気味悪そうにおいらを見てる」
「ね、兄ちゃん(姉ちゃん)、旅の人だろ? よければうちに泊まっていきなよ。父ちゃんは傘張り職人だから、うちにいるよ。へへ、父ちゃん母ちゃん以外で優しくしてくれた人、久しぶりなんだ」
「あ、おいらの名前は、じゅげむじゅげむ、五劫のすりきれず、海砂利水魚の水行末、雲来末、風来末、食う寝る所に住む所、あーぶら小路ぶら小路、パイポパイポパイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーのちょうきゅうめいの長助、ってんだ。長いから長助って呼んでくれな」
◆結末
 PC1が長助と会話し、共に長屋の中へ入っていったところでシーンを終了する。


●シーン3:『呪(しゅ)』
シーンプレイヤー:PC3
◆解説
 PC3が土御門泰宏から依頼を受けるシーン。
▼描写
 京都梅小路。
 西本願寺を間近に控える土御門邸は、日本全国に広がる陰陽師や声聞師のネットワークを束ねる、いわば拠点だ。
 その奥座敷へとキミは通された。 
 畏まって正座するキミの目前の人物こそが、陰陽頭、土御門泰宏だ。
▼セリフ:土御門泰宏
「挨拶はよい。……今回そなたに、重要な使いを頼みたい」
「一年ほど前、京の町を騒がせた邪僧がおった。奴は陰陽術の“呪”を使い、人々を人ならざる者へと変じていったのだ。思うに、奴自身も恐らく妖異なのだろう」
「奴の術は“名付けの呪”。そなたも知っていようが、名とはそのもの“呪”であり、名付ければその物の有りようを文字の意味するところへ定めることができる。奴の場合、妖異の力によって“呪”をより強力なものとしているようだ」
「このところ京では姿を見せなかったが、昨今江戸にて目撃されたとの報が入って参った」
「陰陽の力なくしては、こたびの事件、たやすく収まるまい。そなたには奴を追い、江戸へ向かってもらいたい。そなたは我が門弟の中でも特に術の力に長けているからな。どうだ、行けるか?」
◆結末
 PC3が依頼を受け江戸へ向かうと、【宿星:邪僧の行方を追う】を渡し、シーンを終了する。


●シーン4:壬生狼、牙を磨く
シーンプレイヤー:PC2
◆解説
 PC2が土方歳三(『天下繚乱』P038)から新撰組隊士殺し事件の捜査依頼を受けるシーン。文中に登場する御陵衛士(ごりょうえじ)は池田屋事件後の時代に結成された、新撰組の別隊(少なくとも名目上は)である。化政時代における土方歳三は池田屋事件で時空破断に巻き込まれているという設定なので、彼の持つ御陵衛士に対する情報はほぼ伝聞によるものとなる。
▼描写
 ある昼下がり、君の元へ薬屋が訪ねてきた。
 彼は目深にかぶった菅傘の奥から、鋭い眼光を覗かせる。
 薬売り、いや、新撰組副長こと土方歳三は、ことさらに声を潜めて用件を口にした。
▼セリフ:土方歳三
「息災のようだな。最近、妙なことになっていてな、実を言うと安否を確かめにきた」
「ここのところ、似たような事件で隊士が立て続けにやられている」
「状況は数人がかりで念入りにめった討ち。泰平の世じゃあ余程の恨みでもなければ、誰もこんなやり方をせん」
「すると先日上様から、新撰組、引いては幕府を恨む連中に心当たりがある、と意見を賜った。そいつらは元新撰組、御陵衛士とやらの残党。以前、数人が時空破断に巻き込まれたらしい」
「考えてみれば集団戦法は俺たちの常套手段。しかも御陵衛士を解散に追い込んだのは俺たち新撰組という話だ。確かにこれは恨まれてるとしても不思議じゃない」
「俺は心当たりを端から調べる。お前は御陵衛士の行方を追ってくれ。その先に敵がいれば、斬れ」
(御陵衛士について聞くと)「元新撰組にして、倒幕派に鞍替えした裏切り者どもとの話だが、詳しくは知らん。俺も池田屋から先、何が起きたのかは人づてにしか聞いたことがなくてな」
◆結末
 会話の後、PC2に【宿星:事件の真相を探る】を渡し、シーンを終了する。
●シーン5:妖怪変異
シーンプレイヤー:PC4
◆解説
 宴会の最中に高西による“呪”をかけられ、仲間の妖怪たちが“妖怪”としての名を歪められ、“妖異”となるのをPC4が目撃するシーン。なお、PC4に対し“呪”が効果を及ぼさない理由については後の情報収集の際に判明する。プレイヤーが疑問に思った場合はそのことを伝えるとよいだろう。
▼描写1
 人の入らぬ茂った森に、今宵も仲間達が集まり酒宴を開く。飲むモノ、歌うモノ、踊るモノ。
 輪の中に、なぜか見知らぬ僧形の男がいた。人間の分際で臆さぬ様子で、楽しげに手拍子なぞ叩いている。
 その生意気な人間が、キミに話しかけてきた。
▼セリフ:僧形の男と妖怪たち
「お邪魔しております。このように楽しい宴に混ざらせていただきまして」
(狐の妖怪)「コンコン。こやつめ、手土産もなく宴に混ざるとは無粋な奴でおじゃる。ほれ、何ぞ芸でも見せねば食ろうてしまうぞ?」
「芸、ですか。では、こんなのはいかがかな?」
▼描写2
 男は懐から紙と筆を取りだし、そこになにやら文字を書き込んだ。
 すると、仲間の妖怪たちの様子がたちまちおかしくなった。目を赤く爛々と輝かせ、禍々しい姿へと変じていく。英傑の宿星を持つキミにはわかる。色濃い妖異の気配だ。
 睨みつけるキミに、半紙を見せつけるようにする男。そこには「ようかい」と書かれている。
 だが「か」の文字は、バツ印で消されていた。
▼セリフ
「おや、お前は妖怪ではないのか。いや、妖怪であるとと共に英傑か。“呪”が利かぬ訳よ」
「まあいい。手駒は手に入った。今は見逃してやろう」
「機は熟した。新撰組め、我が恨み晴らしてくれよう。モノども、ついてこい!」(《神出鬼没》を使用して退場)
◆結末
 PC4に【宿星:仲間を元に戻す】を渡し、シーン終了。


●シーン6:ナポレオンの胸騒ぎ
シーンプレイヤー:PC5
◆解説
 PC5が南部の親分から頼みを聞くシーン。
▼描写
 馴染みの飯屋の暖簾をくぐると、そこは仕事あがりの職人や子連れの客でにぎわっていた。いつもの光景である。
「おう、こっちだPC5」
 振り返ると、座敷で南部の親分がキミを手招きしていた。
▼セリフ:南部の親分
「悪いな、つきあわせて。俺はここの”天ぷら”ってやつが気に入っててよ」
「食いながら聞いてくれ。実は最近ちょいと気になる事があってな」
「この裏手の長屋に、傘張りの夫婦がいるんだが、十月ほど前に子が生まれてな。驚れぇたことにその子は生まれて一月もしねぇうちに立って歩けるようになったらしいんだよ」
「それから一月で言葉もしゃべり始めたかと思うと、体もあれよあれよといううちに成長して、今じゃもう七つ八つの見た目だ」
「近所じゃ神童だ生き仏だと拝まれてるみてぇだが、俺はどうにも気になってな……正直尋常とは思えねえ」
「それからもう一つ。その子がまたとんでもなく長ぇ名前でな。確か……なんとかの長助っつったか。体のことに関係があるかはわからねぇが、これも曰く付きらしい」
「PC5、すまねぇんだがしばらくその子の様子を見てやってくれねぇか? おせっかいかもしれねえが、どうにも胸騒ぎがしてな」
◆結末
 PC5が依頼を受けたら【宿星:長助の謎を探る】を渡し、シーンを終了する。


●シーン7:その夜の事
シーンプレイヤー:PC1
◆解説
 長助一家が住む長屋にPC1が宿泊した日の夜、長助が妖異に変じる兆しを見るシーン。
▼描写
 四畳一間の長屋に、家族三人は慎ましく暮らしていた。長助はキミに懐き、いろいろ話を聞きたがる。母親に質素ながらも暖かい食事を出され、くつろいだ時間が過ぎていった。
 その夜。うめき声が聞こえた。キミの布団で一緒に眠っていた長助が苦しみ始める。
 胸をかきむしる長助の、その指が鋭く変じる。眼は赤く、腕は剛毛に覆われた。溢れる妖異の気!
▼セリフ:長助
「う、うう……苦しい、苦しいよう。痛いよう」
「父ちゃん、母ちゃん、PC1の兄ちゃん(姉ちゃん)……」
◆結末
 すぐに長助は意識を失い、それと同時に妖異化は収まり、人間の姿に戻る。PC1に【宿星:長助を救う】を渡し、シーンを終了する。


ミドルフェイズ

 登場判定は特に表記がない限り、各シーンで難易度を8とする。

●シーン8:江戸、本所にて
シーンプレイヤー:PC3
◆解説
 PC3が外法の陰陽師の情報をおみっちゃん(『天下繚乱』P039)から聞くシーン。PC1は登場不可。
▼描写
 江戸へ入ったキミは、陰陽師に連なる茶店の娘おみつから、外法の陰陽師の情報を聞くことにした。
 彼女はキミにお茶を届けてくれたが、目の前で小石につまづいた。
▼セリフ:おみっちゃん
「す、すいません! お怪我はありませんでしたか?」
「えと、泰宏様から、あなたのお話は伺っています」
「その後の調べで、外法の陰陽師は江戸では僧に姿を変えているらしいとのことです」
「それとこの前聞いたんですけど、本所の長屋の傘張り職人さんとこにいるお子さんが、なんでもすごく変な名前を旅のお坊さんからいただいたんだそうです」
「これって例の話に関係があるとおもいませんか?」
◆結末
 会話を終え、PC3が長助の家に向かったらシーンを終了すること。


●シーン9:不審な影
シーンプレイヤー:PC1
◆解説
 シーン7の翌朝、PC1が滞在する長助の家にPC3が訪れるシーンとなる。描写を読み上げたところでPC3を児童登場させること。会話をある程度終えたところで、家の裏手から何者かに監視されている演出を行う。PCが気づけるかどうかは【知覚】か【理知】で判定を行う。難易度は8。成功したPCには、路地の奥へ去っていく怪しげな男の姿があることを示す。今からならば追跡できるかもしれない、と告げること。追跡を宣言したPCは次のシーンに自動的に登場する。
▼描写
 目の前で、長助は咳き込みながらうなされている。
 昨夜のあの異変から後、再び長助の身に異常が起きることはなかった。
 だが、彼の父母が憔悴した様子を見せことすれ、驚いた姿を見せないことから、これが初めてのこととは思えない。
 そんなことを考えていると、長屋の戸の前に人の立つ気配がした。
▼セリフ:長助の母親
「どちらさまですか? 手前共はしがない傘張りの一家にございますが……」
(長助の話を問われると黙り込んでしまう母。しばらくすると奥で長助のせき込む音がする)「これ、じゅげむじゅげむ、五劫のすりきれず、海砂利水魚の水行末、雲来末、風来末、食う寝る所に住む所、あーぶら小路ぶら小路、パイポパイポパイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ、グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーのちょうきゅうめいの長助や。具合はどうかい?」
「夕べから具合が悪くて……お坊さまにいただけた名も、あの子が息災であるよう祈っていただいたんですが、今はちょっと心配で……」
「普段、長助と呼んでおります。信じられぬと申されますかもしれませんが、十月ほど前に、あの子は産まれました」
「あの子は産声をほとんど上げず、お産婆にはすぐお医者へと言われたのですが、家には先立つ物もなく、私たち夫婦はこのまま見殺しにするしかないのかと絶望しておりました」
「そこへ一人のお坊さまが訪ねてくださり、事情を聞いてあの子に名を与えてくださったのです」
「たちまち元気になった長助を見て、心からほっとしたものですが……」
「成長していく様を見て親としては喜ばしい限りなのですが、産まれて一年もたたずに七つほどまで育ちますと、いささか……(不審な顔色で言葉をつぐむ)」
「私にはあの子の無事が、ただ一つの願いです……」
「あら? 何か裏手で物音が……?」
◆結末
 事情を共有し、一同が会話を終えたところで判定を終えたらシーンを終了する。

●シーン10:動き出す悪意
シーンプレイヤー:PC2
◆解説
 捜査中のPC2の存在を察知した高西が、追っ手の羅刹を差し向けてくるシーン。と同時に、長助を監視していた男が追っ手と合流し、剣客×2(『天下繚乱』P224)となって襲いかかってくる。なおこの剣客は種別を妖異とする。
 戦闘になる。PCはひとつのエンゲージに配置し、10m離れた場所に剣客2体を同一エンゲージで配置する。前シーンで怪しげな男を追跡すると宣言したPCは、シーンプレイヤーと剣客の会話の後に自動登場する。
▼描写
 倒れた仲間、狙われた新撰組。
 数少ない情報を頼りに捜査を進めていたキミだったが、ふと殺気を感じた。
 振り返ると狭い路地の奥から、黒い人影が現れた。
 正面へ向き直ると、長屋街の方からもう一人、黒い気配を放つ男が歩いてくる。
▼セリフ:黒い人影
「貴様、俺たちを探っていたな? クックック、これが罠だとも知らずにノコノコと!」
(後から現れた男。黒い人影に対して)「ガキの方も順調だった。コイツを始末したら、高西さんに報告だ」
(PC2が御陵衛士解散後の新撰組入隊でなければ)「む、貴様は新撰組隊士、PC2! 油小路の恨み、思い知れ!」
(倒された)「そ、尊皇攘夷……万歳……!」
◆結末
 戦闘が終了したらシーンを終了する。


●シーン11:情報収集シーン
◆解説1
 情報収集シーン。以下の情報を収集する。判定には基本的に【理知】を用いる。カッコ内が情報を得るための難易度である。情報収集判定はPCひとりにつき2回以内を目安にしている。
 高西登、土方の動向を二点の調査が終了すると、高西の隠れ家である荒れ果てた神社に向かうことができる。
▼旅の僧侶(難易度:8)
 一年ほど前、『呪』と称する呪法によって人々をたぶらかし、多数の妖異を生み出して京の都を騒がせた男。その正体は時空破断によって化政時代へ流れてきた御陵衛士なる集団のひとり、高西登(たかにしのぼる)である。京を離れた後、手駒を増やす傍ら、時空破断に巻き込まれていた同志を数名仲間に迎え入れた。彼らのことごとくは羅刹化されただろう。
▼“呪(しゅ)”、もしくは名付けの呪(難易度:12)
 物に名を付けることで様々な効果をもたらす、陰陽術の一つ。対象となる物の名を知っていることが前提になるため、『諱(いみな)』など複数の名を持つ人物などには“呪”をかけにくい。この呪法は対象には簡単な命令を与えられる他、名を変えさせることで、まったく別の物に変ずることもできる。例えば、PC4のOPで妖異に変じた妖怪たちは、「ようかい」から「か」の一文字を奪われ「ようい(=妖異)」となった。術の効果が浅いうちならば、名付けに使われた命名の札を処分することで“呪”はとけるだろう。だが時間とともに“呪”は深まり、次第に札の処分だけでは“呪”が解けなくなる可能性がある。その場合は術者を倒す以外に、“呪”を解く手段はないだろう。
▼御陵衛士(難易度:10)
 新撰組参謀、伊東甲子太郎(いとう・かしたろう)を筆頭にした、新撰組の別動隊。別名は高台寺党。名目として別動隊であったが、実の所は新撰組の内部分裂に等しく、対立が続いていた。最後は京都の油小路にて囮を使った奇襲にあい、隊士の多くを失って解散。事件以降も新撰組への遺恨は強く、幹部連に対しては幾度となく暗殺をはかった。化政時代においても彼らは恨みを晴らすべく、土方歳三を探している。
◆解説2
 上記四項目を調べると、次の情報収集が行える。
▼高西登(難易度:12)
 北辰一刀流の同門数名と共に新撰組へ参加し、御陵衛士になった男。実家は江戸に拠点をおいた陰陽師の家系である。新撰組への恨みと時空破断の影響で妖異へとなり果てている。化政時代においては『呪(しゅ)』によって妖異を生みだし手勢とし、新撰組への復讐を狙い、最終的には幕府転覆までもくろんでいるようだ。江戸へは土方歳三を追って現れた。江戸に潜む新撰組隊士を順に殺すことで、最終的に土方を引きずり出そうとしているようだ。
▼長助の状態(難易度:10)
 縁起のよい言葉の組み合わせといわれた長助の名だが、実は強い呪詛の込められた字を用いたために邪名となってしまっている。枕名も“寿限無”ではなく“呪限無”とあり、限りの無い呪いに身を蝕まれ、妖異になりかけている。また本来は長い時間をかけなければ羅刹化に止まり、妖異まで転ずることはないが、名の最後を“長久命”ではなく“超急命”とされてしまったため、体は実時間よりも何倍も早い速度で時を重ねている。このままでは近いうちに完全な妖異と化してしまうだろう。
▼土方の動向(難易度:8)
 江戸の隅々まで情報網を巡らせた土方は、怪しげな僧が夜な夜な忍び込む、荒れ果てた神社があることを突き止めた。早速数人の隊士と押し込みをかけた土方だったが、間一髪の所で行方をくらまされてしまったようだ。だが神社から何かを持ち出す暇はなかっただろう。手がかりが残されているかもしれない。
◆結末
 情報収集を終えたらシーンを終了する。

●シーン12:手がかりを求めて
シーンプレイヤー:PC4
◆解説1
 情報収集で「高西登」「土方の動向」を調査成功した後に発生するシーン。荒れ果てた神社で高西の痕跡を探ることになる。文中に登場する神主は、高西の術によって作られた門番で、「かんぬき」から「き」の字を「し」に変えて作られた「かんぬし」である。このため彼は門の前をピクリとも動かない。神主との会話の後、登場PCには【理知】か【幸運】による難易度10の判定を行わせること。成功した場合、「き」をバツ印で消され「かんぬし」と書き直された紙が尻に張られているのに気づく。紙を剥がすと、元の閂に戻る。
▼描写1
 その神社は竹藪の中、なかば埋もれるようにして建っていた。
 苔むした鳥居に狛犬。草のはびこる参拝道。
 正面の社はがらんとしており、神社に元々あったのであろうもの以外、なにも残されているようには見えなかった。
 だが裏手にひっそりと、土作りの倉が建っていた。
 扉の前には一人の神主。
 中を見せるよう話すも、なぜか彼は微動だに動こうとしなかった。
▼セリフ:神主
「ここは神のおわすところにございます。どうぞ、お引き取りを願いとうございます」
「いかなる理由を伺いましても、この先は人の関わる地にございません。皆様のお捜し物はないと存じます」
「どうぞ、お引き取りを。どうぞ、お引き取りを」
◆解説2
 倉の中には妖異化した妖怪が一体いる。だがすでに彼の名付けの札は剥がれかけており、判定の必要なく宣言だけで剥がすことができる。名付けの札を剥がすと妖怪は正気を取り戻し、PCと会話の後、長助の名の書いてある名付けの札を渡してくる。想定としてはシーン4に登場した狐の妖怪を想定した台詞となっている。PC4の設定との兼ね合いで登場する妖怪を変えていた場合、適宜台詞、演出を変更すること。
 なお、この場で長助の名付けの札を燃やすなどして破壊したとしても、術者である高西が生きている限り、すくなくともこのシナリオ中に長助が元に戻ることはない。
▼描写2
 神主を閂に戻し、倉の戸を開ける。
 漏れ入る光の中に、仲間の妖怪の姿があった。苦しげなうめき声を上げている。見れば、額に張られた名付けの札が破れかけており、妖異化が解けつつある。苦しんでいるのはそのためのようだ。
 今ならたやすく剥がすことができるだろう。
▼セリフ:妖怪
「はっ……PC4! 助かった。感謝するでおじゃる」
「わしはここで守りを命ぜられたが、他の者はみなあの坊主についていってしもうた」
「コンコン。どうか、他の者も助けてやってくれまいか。悔しいが、これはまろでは手に負えぬ。そちのような力でなければ」
(引き受けたら)「どうか頼む。おお、そうであった。きゃつはこれを守れ、とわしに申しつけていったのじゃ」
「それは、新たにして最強の妖異を生み出す名付けの札であるとか。もっとも、これを処分しただけでは“呪”は解けまい。その上で、あの男を倒さねばならぬのじゃろうが」
「しかし、長い名付けの札じゃの」
「ゆめ、気をつけて参れよ。また共に酒宴を開くのを楽しみにしているでおじゃる」
◆結末
 妖怪から長助の名付けの札を受け取る。これを回収したところでシーンが終了する。


●シーン13:長助疾走
シーンプレイヤー:PC3
◆解説
 全員登場。羅刹化し、走り去る長助をPCが追跡するシーン。追跡は【体力】か【反射】による判定を用い、一人でも成功すれば見失わずに後を追うことが出来たものとして扱う。難易度は10。判定の結果によって次のシーン展開が変わることをプレイヤーに前もって伝えておくこと。もしシーン12に登場せず、長助のそばにいることを望んだPCがいた場合、シーンの舞台を長屋の内部から始め、異形に変じた長助が屋根を突き破って飛び去っていくという形に演出を変更し、判定を行なわせること。この場合、他のPCは長助が屋根を突き破ったところで自動登場となる。
▼描写
 手がかりを見つけ、長屋へと戻る道のりのこと。突如、獣のような雄叫びが響きわたった。
 駆けつけてみれば、筋骨隆々にして鬼のごとき形相をした男が、妖気を放ちながら家から飛び出てきたところだった。いや、身につけた丈の合わない着物も、その顔も、長助のものだ。成長著しく、そして妖異化が進んでいる。
 長助は髪を振り乱しつつ、人と思えぬ跳躍力で屋根へ上ると、すさまじい速さで屋根から屋根へ駆けだした!
 その姿を見た者は皆叫び声をあげようとしたが、ふらふらとその場へ倒れ込んでいった。
 全身から発する妖気が、人々を無力化させる結界を作り上げたのだ。
 長助はどこへ向かおうというのだろうか。
 だがひとまず追わねば、町中が危険にさらされるだろう。
◆結末
 判定を終えたらシーンを終了する。

●シーン14:土方、襲撃
マスターシーン
◆解説
 PCは登場不可。長助が高西の命令を受けて土方を襲撃するシーン。前のシーンにおける判定で追跡に成功していた場合、襲撃直後に駆けつけることが出来る。失敗していた場合は土方が致命傷を受け、生存には《起死回生》を使用することが必要になる。どちらの場合でも、PCが登場してからの演出は次のシーンに持ち込まれる。土方は神社を襲撃した際に高西に姿を見られており、高西はひっそりと土方襲撃の機をうかがっていた。そこへ羅刹化の進んだ長助が高西の元へ駆けつけたため、好機とばかりに土方を襲わせる。
▼描写
 甲高い音を立てて、羅刹の爪が土方の刀に弾かれる。
 神社襲撃の後、徒労感と疲労を抱えて調査に戻った彼は、今謎の羅刹による襲撃を受けていた。
 鬼の如き巨躯を持つ異形の羅刹。
 だが、敵はひとりではなかった。
 不意に暗がりから突き出された刃が、土方の太股へ深々と突き刺さる。
 激痛を堪えながら、刀を振るう土方。だが直前で襲撃者は飛びすさり、刀は空を薙ぐ。
 その切っ先の向こうで襲撃者は一息もらし、邪悪な笑みを浮かべた。
「土方ァ! この高西の顔を覚えているか? 今こそ恨みを晴らす時よ、我が呪詛で生み出された妖異の手で果てるがいい!」
▼セリフ:高西登
「油小路、ぶら小路! あの時、貴様等から受けた借りは、一文のこらずたたき返してくれる! やれ、長助!」
(PCたちが登場した)「ちっ、もう仲間が来たか。だが土方、貴様の命運はすでに尽きた。もはや助かるまい!」
◆結末
 追ってきたPCの姿を確かめると、高西と長助は《神出鬼没》で撤退する。土方が刀を取り落としたところでシーンを終了する。
 土方が致命傷を受けており、クライマックスフェイズ終了時までに《起死回生》を宣言しなかった場合、エンディングフェイズにて土方は死亡する。

●シーン15:逆襲の策
シーンプレイヤー:PC2
◆解説
 PCは全員登場。負傷した土方の手当をすませると、土方は自分を囮に高西をおびき出す作戦を提案する。PCが怪我人である土方を危険にさらすのを避けたがった場合、高西をおびき出す対案を土方は要求する(PC2が土方に変装し囮になるなど)。
▼描写
 土方は深手を負っていた。
 手近な宿で傷の手当をすませたものの、顔色は死人のように白い。
 だがその眼力の鋭さはいささかも衰えていなかった。
 まさに手負いの獣のごとき様相を見せながら、土方は口を開いた。
▼セリフ:土方歳三
「すまん、不覚をとった……ッ!」
「……なあPC2、あの羅刹は何者だ?」
(長助の事情を聞くと)「遠からず妖異化、か。時間が無いなら、やることは一つだ。俺を囮に使え」
「高西は俺を狙っている。ここで引けば、士道不覚悟。法度に則り俺は腹を切らなきゃなるまい」
「(対案を提示した)確かに、それならやつをおびき寄せられよう。それに、この脚では確かにお前らの足手まといにしかならんか……」
「(対案を出せなかった)俺を止めても無駄だ。だが奴を倒すにはお前達の力が必要だ。お前達は、どうする?」
◆結末
 会話を終え、高西を討つべく動き出すところで、PC全員に【宿星:高西登を倒す】を渡し、シーンを終了する。


クライマックスフェイズ

●シーン16:油小路、再び

シーンプレイヤー:PC1
◆解説1
 土方が高西を誘い出すシーン。PCは途中から登場する。土方を囮にしなかった場合、プレイヤーの案に合わせる形で演出を変更すること。
▼描写1
 そこは江戸の町を無数に走る、小路の一つだった。
 家の壁と塀に囲まれ、その名の通り、幅も広くはない。ただ、その壁には大きく「油」と書かれている。
 普段なら付近の庶民がせわしなく行き来するこの場所も、たちこめる妖異の気配の仕業か、今は人の姿がなかった。
 そんな中、一人の男が立っている。
 頭には鉢金、腰には刀。独特のだんだら模様を刻んだ羽織は、曇りなき浅葱色。
 その男、土方は天を仰ぎ、叫んだ。
 それは未だ姿の見せぬ敵への、宣戦布告であった。
▼セリフ:土方歳三
「高西、見ているのだろう! 貴様の理屈に従うならばここは“油小路”よ! 伊東の仇を取りに来るがいい!」
◆解説2
 高西との決戦になる。全員登場。
 戦闘となる。高西の周りには羅刹と化した妖怪たちが現れる。PCたちはひとつのエンゲージ、5m離れて高西と長助のエンゲージ、更に5m離れて下級羅刹・射(『快刀乱麻』P113)×5のエンゲージがひとつ配置される。土方が囮として登場している場合、彼はPC2と同じエンゲージに存在するエキストラとして扱われ、戦闘データを持たない。身を伏せているため、場面、範囲を対象とした攻撃の対象に含まれることはない。
 高西が危機的な状態(【HP】が20以下になった状態)で行動順を迎えた場合、メジャーアクションを使用して土方へトドメを刺す。その行動に対し、PCは庇うことが可能。その場合、攻撃が自動的にクリティカルで命中したものとして処理すること。
▼描写2
 屋根の上から一対の影が降り立った。
 一人は獣、一人は僧。
 共に目は赤く光り、全身から妖異の気を放っている。
 僧形の男は、懐から紙を取り出した。そこには「寺」と書きつけられており、男は筆を走らせそこに人偏をつける。書きあがった文字は「侍」。男の袈裟が、武士のそれに変わってゆき、坊主頭の後頭部には髪が伸び、月代(さかやき)あおあおと、髷が結い上げられる。腰には日本差し。
 それを抜き放ち、獣……長助とともに、土方ににじりよる。
▼セリフ:高西登
「望み通り殺しにきたぞ。こそこそと隠れて生きていれば、もう捨ておこうと思ってやった所だがな。貴様はどうやら、布団の上では死ねぬと見える」
「……? この期に及んで、なぜ笑う?」
(PC達の姿を見て)「またしても囮か……ぬかったわ。土方の隠し玉は貴様らか。貴様らがいる限り、我が野望は果たせぬ訳か。だが、ここを第二の油小路にはせぬ!」
「ゆけ、長助! お前の名に刻んだ油小路の恨み、存分に解き放て!」
「長助は我が呪詛の最高傑作! 貴様らにはその偉大さもわかるまい。おれを倒しただけでは、長助にかかった呪いは解けん! 貴様らはなすすべなく、罪なき長助を手に掛けるしかないのだ!」
(命名に使った紙を手に入れたことを知らされると)「ぬおっ! な、なぜ貴様らがそれを……。かくなる上は、貴様らを倒し、長助の呪いを永劫とするまでよ。文字通り、長久にな!」
(倒された)「ぐ、ぐぬ……おのれ貴様ら……無念……っ!」
▼セリフ:長助
「シャアアアアア!」
(倒された)「グァァァ……あ、あぅ……PC1の兄ちゃん(姉ちゃん)、ありがとう……」
◆結末
 高西と長助を倒すと名付けの紙が燃え上がり、下級羅刹がPC4の妖怪仲間へ戻り、長助が生後十ヶ月の幼児に戻る。シーンを終了する。


エンディングフェイズ

 以下のエンディングを想定している。
PC1:幼児に戻った長助を両親に返し、お礼を言われる。両親は今後、これまで長助と言って育てていたのは親戚の子で、訳あって事情を隠していた、ということにすると言う。新しい名を付けるので、PC1の字を一ついただきたい、と申し出る。
PC2:土方歳三に礼を言われる。ミドルフェイズの展開によって、死亡するシーンに変更すること。
PC3:土御門泰宏に報告する。
PC4:元に戻った仲間の妖怪たちに絶賛される。
PC5:南部の親分に報告する。

 エネミーレベルの合計は(奥義も含めて)55。経験点に反映させること。


エネミーデータ

■高西登

◆データ
種別:妖異 レベル:12 サイズ:2
体:18/+6 反:21/+7 知:15/+5
理:15/+5 意:12/+4 幸:3/+1
命:11 回:6 魔:7 抗:6
行:21 HP:140 MP:55
攻:〈斬〉+18/物理
対:単  射:至近
防:斬10/刺5/殴5/闇3
《武神の手》《片手平突き》《乱れ打ち》
《死稽古》《三段突き》《式神使い》
《命名呪》《再行動》《外道属性》
・【命中値】判定のクリティカル値11
・クリティカルで命中時、ダメージに+1D6

・《片手平突き》
タイミング:メジャーアクション
代償:2MP
解説:物理攻撃。ダメージに+1D6。
・《乱れ打ち》
タイミング:メジャーアクション
代償:2MP
解説:範囲(選択)の対象に種別:刀で攻撃。
・《三段突き》
タイミング:メジャーアクション
代償:10MP
解説:即座にメジャーアクションを二度行う。1シナリオに1回使用可能。
・《式神使い》
タイミング:オートアクション
対象:単体 射程:15m
代償:4MP
解説:判定の直後に宣言。達成値に+2。ラウンド1回使用可能。
・《再行動》
タイミング:オートアクション
解説:自身が行動済みになった直後に宣言。未行動状態になり、このラウンドの間【行動値】が-20される。この効果により【行動値】が0以下になった場合は行動済みに戻る。シナリオ中、1回のみ使用可能。
・《命名呪》
タイミング:ダメージロール
対象:自身
代償:4MP
解説:素早く相手の体に字を書き込み、呪をかける。「履き物」を「刃物」に書き換え、足に裂傷を与える。ダメージロールの直前に宣言でダメージに+1D6。この攻撃でダメージを1点でも受けた相手にマヒを与える。

◆奥義
□一刀両断 □破邪顕正 □剣禅一如
□広大無辺 □粉骨砕身 □千変万化
■神出鬼没 ■神出鬼没

■設定
 陰陽師の家系に生まれた元新撰組の男。剣と術の双方を操って戦う。新撰組とは別離したが、裏切り者として仲間を粛清され、新撰組を憎むことになる。憎悪と妖異の力に飲み込まれており、すでに正気ではない。

■戦闘プラン
 最初の行動で《三段突き》でPC全員を連続攻撃。初撃には《広大無辺》を使用する。ダメージには常に《命名呪》を上乗せすること。
 以降は《片手平突き》と《乱れ打ち》を繰り返す。奥義は基本的に攻撃のために使用せよ。
 PCが4人の場合、《千変万化》を減らし、【HP】を110とせよ。


■超急命の長助
◆データ
種別:妖異 レベル:8 サイズ:2
体:18/+6 反:15/+5 知:12/+4
理:9/+3 意:12/+4 幸:12/+4
命:10 回:5 魔:3 抗:5
行:14 HP:80 MP:30
攻:〈殴〉+15/物理
対:単  射:至近
防:斬5/刺3/殴10/氷3/光3
《範囲防御》《ノックバック》《攻撃増幅》
《妖異結界》

・《範囲防御》
タイミング:ダメージロール
代償:4MP
解説:実ダメージ算出の際に使用。ダメージを1D6+8点軽減。ラウンド1回使用可能。
・《ノックバック》
タイミング:メジャーアクション
解説:物理攻撃。命中した場合、対象をエンゲージから5m離脱させる。
・《攻撃増幅》
タイミング:マイナーアクション
解説:そのメインプロセスの攻撃ダメージに3D6。

◆奥義
□一刀両断 □不惜身命 □光芒一閃

■戦闘プラン
 青龍と共に近づいてきた白虎のPCへ《ノックバック》による攻撃を行う。
 高西の命中が低かった場合、《助太刀》を使い達成値を底上げする。
 PCの範囲攻撃に《範囲防御》をあわせる。軽減が間に合わない場合、下級羅刹によって庇わせること。最初のイニシアチブプロセスに《光芒一閃》を使用しPC1を攻撃し、《一刀両断》を使用すること。《不惜身命》は高西に対する致命的なダメージを避ける為に使用する。

 
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