天下繚乱RPGシナリオ「吸血妖魅考」
著:氏家靖博 監修:小太刀右京


シナリオ・データ

プレイヤー:3〜4人
PCレベル:3〜4レベル
プレイ時間:3〜5時間


シナリオ背景

 江戸で続発する猟奇吸血事件。その犯人はエカチェリーナ二世の仔たる妖異・吸血鬼ヴゴドラクだった。ヴゴドラクは裏柳生の反乱分子・柳生宗弦と結び、裏柳生を吸血鬼化する代わりに江戸を狩り場とするという密約を結んでいたのだ。
 PCたちはヴゴドラクを追うアイヌの少女・クナウと知り合い、ヴゴドラク、および裏柳生と対立することになる。
 ヴゴドラクと宗弦の狙いは、裏柳生のみならず江戸全土を吸血鬼化し、自らの手勢とすることにある。吸血鬼ヴゴドラクと宗弦を倒すことでシナリオは終了する。


今回予告

 江戸は恐怖に包まれていた。
 人が血を吸い尽くされ、干物のような躯となる事件が続発していたのだ。犠牲者は留まるところを知らず、人々は下手人を“悪鬼”と呼んで恐れる。
 “悪鬼”の名は吸血鬼ヴゴドラク。はるかロシアの血より、吹雪と鮮血とともに現われたヴァンパイア!
 ヴゴドラクは裏柳生と手を結び、江戸を我が物にせんと蠢く。
 立ち向かうはアイヌの巫女・クナウ、そして英傑たち。
 大江戸を舞台に今、東西の英傑妖怪が激突する。
 天下繚乱RPG『吸血妖魅考』
 百花繚乱綾錦、いざ開幕!

キャラクター作成

 今回予告を読み上げた後、ハンドアウトをコピーして切り離し、各プレイヤーに配布せよ。どのプレイヤーにハンドアウトを渡すかは、GMの任意にしてもよいし、プレイヤー間で選択させてもよい。プレイヤーの人数が少ない場合は、若い番号を優先すること。

●ハンドアウト
 ハンドアウトには、各PCによって異なる事前情報と、シナリオによってPCに与えられる因縁が記載されている。
 今回予告を読み上げた後、GMは下のシナリオハンドアウトの内容を読み上げて、各プレイヤーに配ること。その後、ハンドアウトに沿ってPCを作成してもらうとよい。

●クイックスタート
 プレイヤーが『天下繚乱』を初めて遊ぶ場合や、ルールブックを持っていないのならクイックスタートでキャラクター作成を行なうとよい。
 本シナリオでは、『天下繚乱』P52〜P75に掲載されている、以下の5つのサンプルキャラクターをクイックスタートで使用することを推奨する。

PC1: 流浪の剣客(『天下繚乱』P52)
PC2: 天下のご老公(『天下繚乱』P54)
PC3: 闇を払う者(『天下繚乱』P56)
PC4: 夜の疾走者(『天下繚乱』P58)
PC5: 異国の使徒(『天下繚乱』P68)

●コンストラクション
 プレイヤーがルールを知っていて、ルールブックも所持している場合、コンストラクションでキャラクターを作成してもよい。
 このとき、各PCにはハンドアウトで推奨されるクラスを取らせ、またハンドアウトに付随する設定についてはGMから説明を行うこと。

●推奨カバー
 PCのカバーは以下を推奨する。
PC1:旅人
PC2:将軍
PC3:指定なし
PC4:忍者
PC5:指定なし

●PC間コネクション
 キャラクター作成後に、プレイヤーにPCの自己紹介をしてもらおう。その後『天下繚乱』P185にあるように、PC間コネクションを決定すること。PC間コネクションの結び方は以下の通り。
PC1→PC2→PC3→PC4→PC5→PC1

●シナリオハンドアウト
 各PCには以下の設定がつくので、キャラクター作成の時によくプレイヤーと相談すること。
 なお、PC2はサンプルキャラクターを採用した場合、外見的なイメージが水戸黄門をイメージしたものとなるが、設定的には黄門とは特に関係がない。プレイヤーが違和感を抱くようなら、事前に「今回はあくまで身分を隠した将軍という立ち位置が重要なので、サンプルキャラクターの外見にこだわる必要はない」と告げること。


PC1:旅人である
PC2:素性を隠した将軍である
PC3:妖異と戦う霊能者である
PC4:影の軍団である
PC5:異邦人である

PC1用ハンドアウト
コネクション:クナウ 関係:幼子
クイックスタート:流浪の剣客 クラス:指定なし カバー:旅人
 キミは六十余州を股にかける旅人だ。旅の途上、キミは一人の少女が忍に追われているところに出くわした。見過ごせるはずもなく忍を蹴散らすキミ。クナウと名乗った少女はキミに礼を言うと、ある頼み事をしてきた。江戸での人探しを手伝ってほしいという。キミはクナウに協力することにした。

PC2用ハンドアウト
コネクション:“悪鬼” 関係:仇敵
クイックスタート:天下のご老公 クラス:天下人 カバー:指定なし
 “悪鬼”。近頃江戸を騒がす凶悪無比の賊だ。長屋も大店も武家屋敷すらも問わず、ただ殺し尽くすだけ。さらに、殺された者は血を吸い尽くされていたという。天下の将軍として見過ごすわけにはいかない。懇意にしている新門の辰五郎からその話を聞いたキミは市井に紛れ、“悪鬼”の調査に乗り出した。

PC3用ハンドアウト
コネクション:ヴゴドラク 関係:好敵手
クイックスタート:闇を払うもの クラス:陰陽師 カバー:指定なし
 ヴゴドラク。キミの仇敵たる妖異の名だ。北方より来たあの男はかつてキミと戦い、傷つき、退くことを余儀なくされた。キミもまた、奴を仕留めることは出来なかった。そのヴゴドラクが江戸に舞い戻ったという。逃すわけにはいかない。

PC4用ハンドアウト
コネクション:裏柳生 関係:仇敵
クイックスタート:夜の疾走者 クラス:忍者 カバー:指定なし
 キミは闇に生き闇に死す忍び、ご公儀の影の軍団の一員だ。今日も服部半蔵から任が下る。最近、裏柳生が不穏な動きを見せているらしい。江戸を騒がす“悪鬼”と関係しているとの噂まであるという。調査を命じられたキミは、江戸の闇へと繰り出した。

PC5用ハンドアウト

コネクション:玉梓 関係:友情
クイックスタート:異国の使徒 クラス:異邦人 カバー:指定なし
 キミは異邦人だ。江戸という都市は面白い。火事や喧嘩は日常茶飯事、王族が身分を隠して街をうろつき、妖怪が闇を徘徊する。キミの友人たる玉梓もそんな妖怪の一人だ。彼女が言うには、ロシアからの妖異が江戸を狙っているらしい。同じ異邦人として見過ごすわけにはいかないだろう。


オープニングフェイズ

 オープニングフェイズでは、基本的にシーンプレイヤー以外は登場できないものとする。
 PCのコネクションや設定によって、細かく演出を変えることを忘れないこと。

●シーン1:少女クナウ
シーンプレイヤー:PC1
◆解説
 PC1が裏柳生からクナウを助けるシーン。裏柳生はエキストラであり、判定無しで撃退することができる。
▼描写
 旅の途上、キミは人気のない峠にさしかかった、山の端には夕日がかかっている。そろそろ宿を探さねば、と空を見上げたキミの前に突如として人が降ってきた。紫紺のマントに民族衣装という奇妙な出で立ちの少女だ。追われてでもいるのか、妙に焦っている。
▼セリフ:少女(クナウ)
「ここまで来れば……!」
「っ、人っ!?」(構える)
「奴らではないのですね……失礼しました。では私はこれで」
▼描写
 だがその刹那、闇の中から旅姿の忍びたちが現われた。
 手に手に抜き身の刀を抜き、殺気だったまなざしで少女を取り囲む。間違いない。こいつらは彼女を、そしてキミをも殺すつもりだ!
▼セリフ:少女(クナウ)
(裏柳生が現れる)「もう追いついてきましたか!」
(PCが戦うのを見た)「あの力は……英傑の宿星!」
▼セリフ:裏柳生
「無駄だ。我らから逃れることは出来ぬ」
(PC1を見て)「貴様、何者……?」
「かまわん、そやつも消せ。むろん、女もな」
(PC1に)「我々に出会ったことを不幸と思うのだな」
(倒された)「く、退くぞ!」
◆結末
 裏柳生を撃退すると、クナウはPCに礼を言う。
「ありがとうございます。私はクナウ。あなたを英傑と見込んでお願いがあります。私と一緒に、江戸へ向かってください! 詳しいことは、道すがらお話しいたします」
 【宿星:クナウを助ける】を渡し、PC1が江戸へと向かったらシーンを終了すること。

●シーン2:お江戸の悪鬼
シーンプレイヤー:PC2
◆解説
 PC2が新門の辰五郎(『天下繚乱』P41)から江戸を騒がす“悪鬼”についての話を聞くシーン。
▼描写
 「を組」はキミが居候を決め込んでいる火消し組だ。荒くれた火消したちとの触れあいは、将軍たるキミにとっても大切な時間である。今日も今日とて穏やかな時間を過ごすキミ。しかし、辰五郎の叫びがその静寂を破った。
▼セリフ:辰五郎
「てえへんだてえへんだ! また“悪鬼”が出やがったぜ!」
「“悪鬼”を知らないって。かあー、これだからPC2さんはいけねえや」
「お江戸を騒がす賊だよ。金も何もとらない、ただ皆殺しにするだけ。血を吸うとかいう噂まであるぜ。まったく、物騒だねえ」
「どうしたい、PC2さん。怖い顔して」
◆結末
 見上げる空はやけに暗く、不吉な風を吹かせていた。
 PC2に【宿星:悪鬼に裁きを下す】を渡してシーンを終了すること。

●シーン3:Vampire
シーンプレイヤー:PC3
◆解説
 PC3がヴゴドラクと対峙するも取り逃がすシーン。
▼描写
 かつてキミは、雷鳴飛び交う荒野でひとりの男と刃を交えた。黒いコート、黒い帽子、白い包帯。外つ国より来た妖異たる男だ。キミも彼も傷つき、疲れはてている。
▼セリフ:ヴゴドラク
「これほどの術者がいたとは。少々、不覚をとったか」
「我が名はヴゴドラク。ロシア帝国の誇り高き吸血鬼」
「君の血と魂、吸い尽くし、食らい尽くしてくれよう」
(PCの攻撃を受けた)「見事。この傷では力が足りぬか」
「だが忘れるな。私は必ず戻る。戻って、すべてを血の海に沈めてみせよう。それまで泰平の夢を貪るがいい」(霧となって消える)
◆結末
 そして現在、江戸の地において。キミは馴染み深く、強大な妖気を感知した。ヴゴドラクが戻ったに違いない。
 PC3に【宿星:ヴゴドラクとの決着をつける】を渡してシーンを終了すること。

●シーン4:柳生一族の陰謀
シーンプレイヤー:PC4
◆解説
 PC4が服部半蔵(『天下繚乱』P35)から裏柳生の陰謀を阻止せよとの指令を受けるシーン。
▼描写
 浅草「千葉湯」。庶民に人気の風呂屋、しかしてその実態はキミたち影の軍団が集う拠点だ。
 ある日、キミは頭領の服部半蔵からの呼び出しを受けた。早速馳せ参じるキミ。一人詰め将棋を打つ半蔵は、顔も向けずにキミへと声をかけた。
▼セリフ:半蔵
「来たか、PC4」
「柳生が動いておる。それも、裏柳生がな」
「そうだ。裏柳生、我らと同じ忍びにして、惣目付柳生宗矩の手足。本来なら、手の及ぶ相手ではない」
「だが、こたびは動きが妙でな。どうにも引っかかる」
「“悪鬼”の騒ぎは聞いているな。あれと関わりがあるともいう。噂に過ぎんが、捨ておくわけにもいかん」
「PC4、この一件、お主に預ける。ご公儀に、上様に仇なす者あれば、闇から闇へと葬るべし。良いな」
◆結末
 PC4に【宿星:裏柳生の陰謀を砕く】を渡してシーンを終了すること。

●シーン5:ロシアからの脅威
シーンプレイヤー:PC5
◆解説
 PC5が玉梓(『天下繚乱』P38)からの依頼を受けるシーン。玉梓は魯西亜(ロシア)からやってきた妖異を倒して欲しいと頼んでくる。
▼描写
 キミは夜の両国を散策していた。名物の花火がもうすぐということもあってか、人で賑わっている。と、不意にキミの袖を引く姿があった。犬耳に巫覡装束の小さな女の子。キミの友人たる妖怪・玉梓だ。
▼セリフ:玉梓
「お久しぶりです、PC5さん」
「妖異が動き出しました。それも外つ国からの」
「魯西亜はご存知ですね。この国の北方にある巨大な国です。その地から、おそるべき妖異がやって来ました。江戸を、この国を魔境と化すために」
「あなたの他にも魔を打ち倒す英傑たちがいるはずです。お願いです。そして、約束してください。彼らと共に妖異を打ち倒し、この国を守ると」
◆結末
 PC5に【宿星:魯西亜からの脅威を退ける】を渡してシーンを終了すること。

ミドルフェイズ

●シーン6:北方より来る者
シーンプレイヤー:PC1
◆解説
 PC1がクナウから事情を聞くシーン。登場難易度は8とする。
 なお、文中の“アイヌモシリ”とは“人間の住む土地”である。厳密には全世界を指す言葉だが、ここでは北海道を指す言葉として使っている。
▼描写
 キミとクナウは浅草の居酒屋「九平」の酒屋に来ていた。吉原の近くということもあり、客の素性を詮索しないことで有名な店だ。ここならクナウのことを気にする者もいないだろう。
▼セリフ:クナウ
「私はクナウ。アイヌモシリ……あなた方のいう蝦夷地から来ました」
「私はある男を追っています。名はヴゴドラク。松前藩、いえ、蝦夷の地よりさらに北、魯西亜の妖異。五臓六腑を引き裂き、血を啜り肉を喰らうおそるべき悪鬼です」
「ヴゴドラクが江戸に入ったのは確かです。しかし、私はこの地では異人に過ぎない。追うにしてもどうしたものか……」
「お願いです、力を貸してください」
(忍について問われた)「心当たりがありません。何者なのかも、まったく」
◆結末
 会話に区切りがついたらシーンを終了させること。

●シーン7:悪鬼推参
シーンプレイヤー:PC2
◆解説
 PC2が“悪鬼”の犠牲者と立ち会うシーン。登場難易度は8。
 なお、文中でPC2は武士であるものとして演出されている。他の立場の場合は、演出を適宜変更すること。
▼描写
 キミは夜の浅草を歩いていた。曇り空の、暗い夜。こんな夜にこそ“悪鬼”が出るのかもしれない。そう思ったキミの耳に、絹を裂くような悲鳴が飛び込んでくる。駆けつけたキミが見たものは……。
「お、お侍様! 見てくださいませ!」
 先ほどの悲鳴の主であろう若い娘が指差す先に、ふたつの死体が転がっている。近くの店の店主と手代だろう。辻切りかと思ったが、様子がおかしい。いずれも、まるで干物のように縮んでいるのだ。辰五郎の言っていた、血を吸うという噂は真だったのだろうか?
◆結末
 PC2が干からびた死体を目撃し、“悪鬼”との関わりを感じたらシーンを終了する。

●シーン8:奴らは帰ってくる
シーンプレイヤー:PC3
◆解説
 PC3がヴゴドラクに再会するシーン。登場難易度は8。
▼描写
 ヴゴドラクを探し、江戸をさまようキミ。人も通わぬ小さな橋にさしかかったとき、立ちはだかる姿があった。黒装束、赤い瞳、白い包帯、そして口元の牙。奴だ。
▼セリフ:ヴゴドラク
「久しいな、PC3よ。約定に従い、また参った」
「君は強い。見事なものだ。だがそれゆえに、我が贄となるにふさわしい」
「君ともども、この国を魔境に落としてみせよう」
◆解説
 PC3がヴゴドラクを追おうとすると、登場した柳生宗弦が道をふさぐ。
▼描写
 キミとヴゴドラクに割って入る影があった。黒装束に覆面の男だ。忍だろうか。一見して剣呑な殺気を放っており、ただものでないとわかる。
▼セリフ:覆面の男(柳生宗弦)
「ヴゴドラク殿、勝手な真似は困る。貴公に万が一のことがあれば、我らも立ちゆかぬことをお忘れなきよう」
▼セリフ:ヴゴドラク
「……まあ良い、PC3、ここはあずけよう。遠からずまた会おうぞ」
◆結末
 会話に区切りがついた時点でウゴドラクと頭領は《神出鬼没》を使用して退場する。シーンを終了すること。

●シーン9:情報収集シーン
シーンプレイヤー:PC4
◆解説
 情報収集シーン。以下の情報を収集する。判定値は基本的に【理知】で判定する。カッコ内が情報を得るための難易度である。情報収集判定はPCひとりにつき2回程度を目安にしている。
▼クナウ(難易度:10)
 蝦夷地から来た少女。肩口までの黒髪と鮮やかな民族衣装が印象的。代々妖異と戦ってきたアイヌの巫女であり、北方の妖異が日本に入り込んだことを知って江戸まで追ってきた。
▼ヴゴドラク(難易度:12)
 吸血鬼と呼ばれる妖異。ロシア出身。エカチェリーナ二世の仔(ゲット)である。人の血を主食とし、望めば血を吸った相手を自らと同じ吸血鬼にすることが出来る。現在、裏柳生と結び、江戸を恐怖に陥れている。元々は美男だったが、吸血鬼化の副作用で皮膚が崩れ、今の姿となった。そのためエカチェリーナからは疎まれている。
▼裏柳生(難易度:12)
 柳生宗矩が率いる戦闘集団。表舞台に出ることはないが、その戦闘能力はおそるべきものがある。宗矩の方針に従わぬ、その庶子である宗弦率いる一部の者たちが、公儀転覆を狙ってヴゴドラクなる妖異と結んで闇に消えた。現在クナウなる少女を追っている。
◆解説
「裏柳生」を調べると、次の情報収集を行える。
▼柳生宗弦(難易度:12)
 裏柳生の剣士。庶子ながら柳生の一門であり、将軍に目通りしたことがもあるが、政争に巻き込まれ失脚した。現在は裏柳生として凶刃をふるう。その腕前は十兵衛や友矩にも劣らぬとされる。なお、宗矩との関係は冷え切っている。

●シーン10:吸血裏柳生
シーンプレイヤー:PC5(いない場合はPC1)
発生条件:「ヴゴドラク」「裏柳生」「柳生宗弦」を調べる
◆解説
 PCたちが吸血鬼化した裏柳生に襲撃されるシーン。登場難易度は8。このシーンにはなるべく、他のPCも登場することが望ましい。登場判定をうながすとよいだろう。
 戦闘となる。PCたちはひとつのエンゲージ。そこから5メートル離れた地点に吸血裏柳生×2のエンゲージがふたつ配置される。
▼描写
 下弦の月が照らす夜、キミは黒装束の男たちに囲まれた。裏柳生だ。奇妙なことに、彼らは妖異にも似た奇妙な気配を放っていた。夜道に赤い眼が、光る。
 人に取り憑いた妖異。すなわち羅刹だ。
▼セリフ:吸血裏柳生
「PC5(もしくはPC1)、だな」
「我らの妨げとなる者には……死んでもらう」
「その身を切り刻み、血をすすらせていただく!」
◆結末
 PCたちが戦闘に勝利すればシーン終了となる。

●シーン11:密約
シーンプレイヤー:PC2
◆解説
 裏柳生とヴゴドラクの目的が判明するシーン。シーン10に続いて発生するものとする。全員登場。情報収集判定を行うことが出来る。判定には基本的に【理知】を使用する。
▼ヴゴドラクと裏柳生の関係(難易度:12)
 ヴゴドラクと宗弦率いる裏柳生は密約を結んでいる。ヴゴドラクが裏柳生を吸血鬼化する代わりに、彼を欲望のままに振る舞わせているのだ。日本には吸血鬼型の妖異が存在しないため、裏柳生が完全に吸血鬼化すれば強力無比な戦力となるだろう。なお、ヴゴドラクと宗弦は冷や飯食い同士、相通じるものがあるらしい。
▼描写
 キミたちは戦いの疲れを癒すべく、を組に集っていた。ヴゴドラクと裏柳生に一体どのような関係があると言うのか。キミたちは調査を開始した。
◆結末
 情報を得たらシーン終了となる。

●シーン12:少女、クナウ
シーンプレイヤー:PC1
◆解説
 クナウと話をするシーン。他PCは登場不可。
▼描写
 “を組”に宿を借りたキミたち。夜半、厠に立ったキミは一つの姿を見た。クナウだ。中庭で一人、空を見上げている。彼女はキミに気がつくと、どこか淋しげに微笑んだ。
▼セリフ:クナウ
「PC1さん。どうなさったんですか、こんな時刻に」
「……私にはわかりません」
「私たちは吸血鬼――ヴゴドラクのような妖異のことですが――と戦い続けてきました。彼らは例外なく敵であり、討ち滅ぼす相手でしかありません」
「ヴゴドラクは邪悪です。おそらく、あの宗弦という人も。けれど、彼らの結びつきは強い。友情に似たものすら感じます」
「人と妖異がわかりあうなど、あり得るのでしょうか」
(くしゃみをする)「……少し、冷えますね」
▼描写2
 不意に一陣の風が吹く。ヴゴドラクだ。気付けば、クナウは首筋を抑え蒼白な顔をしている。その首筋には、ヴゴドラクの牙の跡が刻まれているではないか。
▼セリフ:ヴゴドラク
「カムイの娘も弱ったものよ。こうも容易く心を許すとは、な」
「見るがいい、その娘、すでに我が手にあるわ。この娘に秘められた破魔の力、我が力としてくれよう」(《操り人形》使用。クナウを無力化する)
「娘だけではない。江戸、いや、この国全土を我が血族で覆い尽くしてくれようぞ」(クナウを連れて《神出鬼没》で撤退する)
▼セリフ:クナウ
「PC1さん……申し訳……ありません……」
◆結末
 ヴゴドラクが撤退したらシーン終了となる。

●シーン13:悪鬼の望み
シーンプレイヤー:PC4
◆解説
 クナウの後を追うPCたちのところに、クナウが飛ばした鷹(彼女が巫女としての力で作り出した幻獣である)が登場し、メッセージを伝えるシーン。全員登場。
▼描写
 クナウはヴゴドラクの牙にかかっていた。闇に消えたヴゴドラクとクナウを追うキミたちの前に、一羽の鷹が舞い降りてくる。むろん、夜に舞う鷹が尋常の鷹であるはずがない。
 鷹はキミたちを認めると、クナウの声で話し始めた。
▼セリフ:クナウ
「……みなさん、わたくしです。クナウです。最後の力で、この鷹を飛ばしました」
「今の私は奴に縛られています。ゆえにわかります。ヴゴドラクは両国へと、屋形船で向かっております。そして今夜、両国橋では花火があったはず……」
「橋に集った人々を残さず妖異とするつもりでしょう。そんなことになれば……!」
◆結末
「この体では何も出来ません。後は、お願いします」
 そう言って、クナウは意識を失った。
 PCたちが両国に向かうとシーン終了となる。

●シーン14:悪党たちは皆笑う
マスターシーン
◆解説
 ヴゴドラクと裏柳生が談笑するシーン。PCは登場できないものとする。
▼描写
 両国、隅田川を登っていく幽鬼の棺のごとき屋形船。
 ヴゴドラクと宗弦は差し向かいで杯を交わしていた。両国橋には花火目当ての人々が集いつつある。そして傍らには、ヴゴドラクに血を抜き取られて死人のような肌の色で倒れているクナウの姿。
▼セリフ:宗弦とウゴドラクの会話
「ヴゴドラク殿、そろそろですな」
「然り。あれなる者をすべて我が仔としてみせよう。仔が仔を、またその仔が仔を作り、やがては江戸の町すべてが我が係累、我が手足となる。しかし、よろしかったのかな?」
「何がですかな」
「貴公の手勢よ。羅刹と化すとはすなわち、人の生を捨てること。それを望まぬ者もいようとは思うが」
「些細なこと。所詮は宗矩の犬。奴らが生きようと死のうと知ったことではござらぬ」
「ほう、貴公、親御が嫌いか」
「……大嫌いにござる」
「……私もだ」
「「ハッハッハッ」」
◆結末
 両名が大いに笑った次の瞬間、宗弦が「なにやつ!」と一声叫んで屋形船の障子を開いたところでシーン終了となり、クライマックスフェイズへ移行する。
◆補足
 「なにやつ!」と叫んだ対象は、もちろん屋形船に侵入してきたPCたちのことである。

クライマックスフェイズ

●シーン15:暴れん坊将軍

シーンプレイヤー:PC2
◆解説
 全員登場。宗弦、裏柳生との決戦のシーン。戦闘となる。PCたちはひとつのエンゲージ、そこから5メートル離れて吸血裏柳生×2のエンゲージがふたつ、さらに5メートル離れて宗弦が配置される。
 なお、シーン14の会話については聞いていたものとして構わない。ヴゴドラクは両国橋へと向かうため、このシーンでの戦闘には参加しない。
▼描写
 キミたちを認めた宗弦は悠然と刀を手に取り、構えた。一分の隙もない、見事な構えだ。宗弦が呼び笛を鳴らすと、その音に応じて吸血裏柳生が集まってくる。
▼セリフ:宗弦
「来たか。ここを突きとめるとは流石というべきか。だが邪魔はさせぬ。江戸は我らの手に落ちるのだ」
「柳生の冷や飯ぐらいと言われた我らが、吸血鬼の力を借りて天下を取るのだ。親父殿のやり方では何もつかめはせん」
「ヴゴドラク殿、ここは我らにお任せあれ。貴公は両国橋へと」
(PC2が《世を忍ぶ仮の姿》を解除した)「う、上様!?(平伏する)」
(PC2へ)「いずれは冥土に行っていただくつもりだったのだ。上様、お手向かいいたしますぞ」
(倒された)「む、無念……」
▼セリフ:ヴゴドラク
「宗弦殿、ここはおまかせする。クナウの力さえあれば、ここに居合わせた者ども、ことごとく妖異にすることはたやすい」(霧になってクナウとともに消える)
◆結末
 戦闘が終わると、ヴゴドラクが霧へと姿を変え、橋を覆っているのが分かる。一刻も早く止めねば、阿鼻叫喚の地獄が現出するだろう。PC全員に【宿星:ヴゴドラクを止める】を渡しシーン終了。

●シーン16:獣たちの夜
シーンプレイヤー:PC3
◆解説
 全員登場。ヴゴドラクと戦うシーン。PCたちはひとつのエンゲージ、そこから10メートル離れた地点にヴゴドラクが配置される。
 3ラウンド目のクリンナッププロセスには、人々の吸血鬼化が完了し、ヴゴドラクと同じエンゲージに下級羅刹×5が追加される。この追加された羅刹は、経験点計算に影響しない。また、クナウも完全に力を奪い取られ、絶命する。このことはプレイヤーに説明すること。
▼描写
 霧が両国橋を覆っている。一寸先も見通せぬ濃霧の中、花火見物に集った善男善女が一人、また一人と倒れてゆく。首筋に刻まれるのは牙の跡。吸血の妖異は刻一刻と人々を羅刹に変えてゆく。
 そしてその中心に立つ、漆黒の外套の男。その腕には、血を吸われ、いまにも絶命せんとするクナウの姿。もはや一刻の猶予もならぬ。
▼セリフ:ヴゴドラク
「君たちが来たということは……ふむ、宗弦殿は倒されたか。口惜しいことだが、仕方あるまい」
「江戸の民はすでに我が手にある。君たちも我が仔(ゲット)としてくれよう。私と君たちの力があれば、エカチェリーナめを討つことすら叶うやもしれぬ」
「さあ、来たまえ。吸血鬼の闘争を教育してしんぜよう」
(倒された)「……極東で朽ちるか。無念……」
▼セリフ:クナウ
「みなさん、私にかまわずヴゴドラクを!」
「私はもう……助からないかもしれません……」
◆結末
 戦闘が終わるとシーン終了となる。

エンディングフェイズ

 各PCの想定されるエンディングは以下のようになる。GMは適宜演出を行なうこと。
 ヴゴドラクが倒れることで、クナウも含めて江戸の人々の吸血鬼化は解ける。これには、裏柳生の者たちも含まれる。
 エネミーのレベルの合計は、奥義も含めて42点である。

PC1:クナウが故郷に帰るのを見送る
PC2:《一件落着》を用いて裏柳生と宗弦に裁きをくだす
PC3:新たな妖異との戦いに挑む
PC4:半蔵に報告する
PC5:玉梓と会話する



エネミーデータ

■柳生宗弦

◆データ
種別:人間 レベル:4 サイズ:1
体:18/+6 反:16/+5 知:11/+3
理:10/+3 意:16/+5 幸:9/+3
命:8 回:6 魔:6 抗:5
行:10 HP:50 MP:24
攻:〈斬〉+7/物理
対:単 射:至近
防:斬1/刺0/殴1

《武神の手》《嵐の心》《貫きの構え》
《熟練の武芸》《浮足落とし》
《集団統率》《範囲攻撃》

・【命中値】判定のクリティカル値11

◆攻撃
・《貫きの構え》
タイミング:マイナーアクション
代償:2MP
解説:直後のメジャーアクションに行なう物理攻撃のクリティカル値を10にする。
・《範囲攻撃》
タイミング:マイナーアクション
解説:直後のメジャーアクションの対象を範囲(選択)にする。
・《浮足落とし》
タイミング:メジャーアクション
代償:3MP
解説:物理攻撃。判定値に+2。命中した場合、ダメージロールに+1D6。1点でもダメージを与えた場合、対象に狼狽とマヒを与える。
・《嵐の心》
タイミング:ダメージロール
代償:2MP
解説:ダメージロール直前に使用。そのダメージロールに+1D6。

■戦闘プラン
 最初に《集団統率》で吸血裏柳生を行動させる。宗弦自身は《範囲攻撃》を使用した《浮足落とし》で出来るだけ多くのPCを攻撃する。ひとりしかエンゲージしているキャラクターがいない場合、マイナーアクションで《貫きの構え》を使用して《浮足落とし》で攻撃する。
 宗弦は《外道属性》ではないため、[戦闘不能]となるだけで[死亡状態]になることはない。もちろん、[とどめを刺す]ことはできるが、基本的にはエンディングでPC2が裁きを下すことを前提としている。

■ヴゴドラク
◆データ
種別:妖異 レベル:12 サイズ:1
体:27/+9 反:21/+7 知:16/+5
理:16/+5 意:12/+4 幸:9/+3
命:9 回:5 魔:7 抗:3
行:10 HP:140 MP:60
攻:〈斬〉+15/物理
対:単 射:至近
防:斬5/刺5/殴5/闇20

《外道属性》《BS攻撃:マヒ》《操り人形》
《自動再生》《範囲攻撃》《変身能力》
《弱点属性T:光》《マルチカラー:闇》
《妖異結界》《妖術:炎》《妖しの一撃》
《大いなる妖術》《朧滑り》《時重ね》
・《弱点属性》により、〈光〉と〈神〉属性のダメージは+2D6される。

◆攻撃
・《BS攻撃:マヒ》
タイミング:マイナーアクション
解説:直後の攻撃で1点でも実ダメージを与えた場合、対象にマヒを与える。
・《範囲攻撃》
タイミング:マイナーアクション
解説:直後のメジャーアクションの対象を範囲(選択)にする。
・《朧滑り》
タイミング:マイナーアクション
代償:5MP
解説:エンゲージや封鎖を無視して全力移動を行なう。
・《時重ね》
タイミング:マイナーアクション
代償:5MP
解説:「タイミング:マイナーアクション」の特技をふたつ使用する。
・《妖しの一撃》
タイミング:メジャーアクション
代償:3MP
解説:物理攻撃。ダメージの属性を〈炎〉に変更し、ダメージロールに+3D6する。
・《マルチカラー:闇》
タイミング:ダメージロール
解説:ダメージロールの直前に使用。ダメージの属性を〈闇〉に変更する。
・《自動再生》
タイミング:常時
解説:クリンナッププロセスに【HP】12点回復。

◆奥義
□一刀両断 □広大無辺 □一蓮托生
□至誠如神 □秋霜烈日 □疾風怒涛
□疾風怒涛 □千変万化 ■神出鬼没
■神出鬼没

■戦闘プラン
 最初の行動で《BS攻撃:マヒ》を使用し、《広大無辺》でシーン全体に《妖しの一撃》で攻撃する。その後は《時重ね》から《朧滑り》+《範囲攻撃》か《BS攻撃:マヒ》+《範囲攻撃》を使用し、できるだけ多くの相手に《妖しの一撃》で攻撃する。なお、攻撃の際は常に《マルチカラー:闇》を使用し属性を変更すること。また、毎ラウンドのクリンナッププロセスに《自動再生》により【HP】が12点回復する。
 PCが3人の場合、《千変万化》を削り、【HP】を−30する。
 PCが5人の場合、《千変万化》を追加し、【HP】を+30する。


■吸血裏柳生
◆データ
種別:妖異 レベル:モブ(4) サイズ:1
体:15/+5 反:13/+4 知:13/+4
理:12/+4 意:14/+4 幸:10/+3
命:7 回:6 魔:4 抗:5
行:9 HP:27 MP:21
攻:〈斬〉+11/物理
対:単 射:至近
防:斬3/刺1/殴3/氷3
特技:《居合い》《大斬り》《自動再生》

■戦闘プラン
 毎ラウンドのクリンナッププロセスに、【HP】が《自動再生》の効果で4点回復する。

 
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