文・絵:すがのたすく

前回のリプレイはこちら 


■ミドル09 行方を追って  ――――シーンプレイヤー:鳥居耀蔵

 神田橋の袂で亜弥の草履が発見されたのは、日がとっぷりと暮れた頃であった。
 周辺に残った妖異の気に、亜弥がさらわれた事を察した鳥居たちは、亜弥奪還のために動き出した。


GM:シーンプレイヤーは鳥居。秋葉原の邸宅内で亜弥がさらわれたという報告を受けたところからはじめようか。亜弥以外のふたりも登場してね。
亜弥:あ、あたしは……?
GM:高野にさらわれなうなので、このシーンは待ってておくれ(笑)。
亜弥:わーん、長兄ちゃんの馬鹿ーっ!
軋羽:すぐに助けに行くから待ってな。
GM:また、“亜弥の行方について”という情報項目がポップアップします。目標値は【知覚】か【幸運】で15以上だ。
寅三郎:では、俺は鳥居様の前で床に這いつくばって「面目次第もございません」と言って腹を切る準備をする。
軋羽:うわわわ、ちょっと待ちな! なにやってんだい!
GM:元新撰組は大変だなあ(笑)。
耀蔵:「……責任も果たさずに死ぬのか?」
寅三郎:そう言われて顔を上げ、ニヤリと笑う。「まぁ、そう仰ると思っておりましたが、いちおうこれも浮き世の義理といういうやつでございまして。別に俺も切りたくはありません」
軋羽:「寅三郎、あんたがついていながら、これはなんのザマだい!」あたいは額に青筋立ててますよ。ビキビキ!
寅三郎:登場できなかったんだからしょうがないじゃないか、とプレイヤーは言いたい。(一同笑)「……しかし、現場の跡を見るだに、おそらく高野が出てきたことは間違いないでしょうな」
耀蔵:「むしろ好機と見るべきだろう」
寅三郎:「それに、ひとつ気づいたことがあります。連中にとって、亜弥は特別な価値がある」
耀蔵:「特別な価値、とな」
寅三郎:「俺はこれまで、高野長英が個人的な感情――友人の妹だということで亜弥を勧誘してるのだと思っていました。しかし、どうやらそうではなさそうです。あの娘にはまだなにか秘密がある」
軋羽:「それにはあたいも少々心当たりが。妙はあたいに亜弥を南町から放逐するよう指示しておりました」
寅三郎:なんでなんだろうなあ。超蘭学なんたら印怒羅に関係ありそうな気がするんだが、なにぶんどのような兵器か見当がつかん。
耀蔵:GM、印怒羅の情報は調べられんか。でき得るなら、いかなる兵器か把握してから乗り込みたい。
GM:うーん、そうだなあ……。(少し考えて)達成値が高めでもいいならOKだよ。目標値は15にしよう。
軋羽:あのふざけた名前の兵器がどのようなものか……。鳥居様、お願いします!
耀蔵:では。(ダイスを振って)……うむ、同値で成功だ。

 鳥居は、放っていた黒衣衆の調査要員からの報告を受ける。
 超究極摩訶最強蘭学兵器・印怒羅――――。
 詳細は定かではないが、それは全方位型の巨大な攻撃兵器であり、そして兵器の動力源となるのは、英傑の魂であるという。


一同:英傑エンジン!!?
軋羽:なっ、なんちゅうもんを……。
GM:データ的に言うと、核になるには、蘭学者のクラスを持つ英傑であることが条件だ。印怒羅は蘭学英傑の奥義を消費しながら強大な力を振るう。その力の不可に耐えきれず、核となる者はまず死ぬか、妖異化するであろう!
軋羽:蘭学英傑エネルギー120%充填完了、ドーン! ……じゃなくて、つまり英傑の魂が燃料ってわけかい。
耀蔵:「なるほど……。あやつが亜弥を勧誘していたのはこのためか」
寅三郎:あ、火盗改の楊の件もこれで繋がるな。あいつも核にされるために狙われたというのが真相か。
耀蔵:コアとなる英傑の力で動くとか、それ蘭学じゃないなもう(笑)。
GM:蘭学だよ! 妙の依代術の理論を俺様の天才頭脳で組み合わせた、まったく新しい超蘭学だよ!
亜弥:そんな蘭学、あたしは認めなーいっ!
耀蔵:(ぽつりと)「高野長英……。そなたもまた、言葉なき力に没却するか」
寅三郎:「ま、こうなったらもう、殺すしかないですな」
軋羽:(あきれた顔で)「寅三郎。殺す殺すって、あんたはそれしか頭の中にないのかい」
耀蔵:その言葉には顔を上げて石蕗を見よう。「だいたい、石蕗よ。お前は高野を斬って楽しいのか?」
寅三郎:「いや……」と、少し考えて。「なんというか、最近、真面目に仕事をしておりませんのでな。旧知の人間と会ったせいか、職業意識というやつに目覚めたわけです。どうも自分が私利私欲のためだけに動いている気がして、そろそろ何か仕事をせねばならん気がします」
耀蔵:「なるほど」
寅三郎:「道楽だけで、ただ飯を食っていくわけにもいきませんからな」
軋羽:「道楽だけ? 人を斬るのが道楽かい」
耀蔵:「……少し、変わったな」
寅三郎:「そう、ですかね?」
耀蔵:「ともあれ、だ。事は一刻を争う。手がかりを辿って彼女を救出する必要があるだろう。問題はどのようにしてその糸を手繰るかだが……」わしはもう判定してしまったしな。
寅三郎:じゃあ、俺が“亜弥の行方”を開けましょう。達成値15ってことは出目9以上か……(ダイスを振って)出た、一発!
軋羽亜弥:おー!(ぱちぱち)
寅三郎:ま、てめえの失態はてめえの手で取り戻さねえとですよ。

 高野たちの行き先はほどなく掴めた。
 南青山の百人町――――大名屋敷から長屋までが混在する一角である。
 子供ひとりほどの大きさの麻袋を担いだ高野と共に、気持ちの悪い笑い声を上げる女の姿もあったという。


軋羽:「間違いない……妙だ。あの女にしては随分雑多なところにいるね」
寅三郎:あ、じゃあこういう演出にしたい。「――火盗改の楊から情報を手に入れた。今回の件で踏み込まれたら困るのはそちらだろう、と言ったら快く情報を提供してくれましたよ」
耀蔵:「火盗改か……。貸し借りにならぬなら良しとしよう」
寅三郎:「ま、俺の私的なコネですんで。元々鳥居様はあずかり知らぬ所というやつですよ」
軋羽:「知らなかったよ。あんたって意外と顔が広いんだね」
寅三郎:「時間を超えてこの時代へ来ているのは俺だけではない。単に俺が連中とつるんでいないだけで、そいつらの話を聞けばそれなりにわかることもある」
軋羽:「あんた……、未来からきたって話は本当だったのかい」
寅三郎:ん? この前言った気がするが、まあ、にわかには信じられんかったか。
軋羽:それもあるけど、なんだろう。寅三郎が急に遠い人のように感じちゃってね。(寂しそうな声で)「未来から、そうか……」
寅三郎:「ああ……まあ、そういう冗談が好きなんですよ」と言いかけてから軋羽の顔を見て、少し真面目な顔になる。「……いや、すまん。そのうちちゃんと話そう」
耀蔵:「では、向かうは青山だ。……行くぞ」
寅三郎軋羽:「はっ!」
GM:では、三人に【宿星:高野長英を倒す】を差し上げてシーンを切りましょう。



■ミドル10 夜闇の刺客  ――――シーンプレイヤー:石蕗寅三郎

 青山百人町に赴いてみれば、そのいずれに高野が向かったかは明白であった。
 蒸し暑さで緩んだ土に鉄の馬の轍がくっきりと、一軒の大名屋敷へと続いている。


GM:では、ミドルフェイズ最後のシーン。シーンプレイヤーは寅三郎で、軋羽と鳥居も自動登場。三人は高野の足取りを追って、青山百人町へと赴いた。
寅三郎:ではあたりを見回しながら、「青山か。ここや六本木というのは、どうもへんぴでいかん。こういうところが栄えることは十万年たってもあるまいな」
軋羽:あっはっはっは(笑)。
亜弥:今は都心の一等地なのにー(笑)。
寅三郎:いや、青山とか六本木とか渋谷にきたら一度は言いたいと思っていた(笑)。
軋羽:「ああ、先の時代を生きているあんたが言うんだから間違いないだろうね」(一同爆笑)
GM:遠大な負けプレイだなあ(笑)。
耀蔵:「大名屋敷が彼らの隠れ家とは……。いや、大久保殿が裏で糸を引いているとあれば造作もないことか」
軋羽:花井様の襲撃では、高野は蘭学者軍団を従えていたって話じゃあないか。できれば気づかれずに中に忍び込みたいね。
GM:そう言いながら大名屋敷の敷地内に降り立った君たちの目に、数十を超える屈強な蘭学装備の男たちが飛び込んでくる。
軋羽:言ったそばからこれかい!
寅三郎:ちいっ、面倒だな。戦闘か!?
GM:いや、屋敷の庭先に縁側に、男たちは血だまりを広げながら折り重なるように倒れ伏している。
亜弥:ええええっ?
軋羽:倒れてるだって!? いったい何が――。
GM:そこで【知覚】で判定だ。目標値は8。
寅三郎:8以上なら楽勝だな、ファンブル以外だ。(ダイスを振って)――よし、クリティカル。

 ――――チンッ。
 刀を鞘に納める微かな音。
 それを耳ざとく捕えた寅三郎は、庭奥の闇に眼を凝らした。
 闇間にゆらりと佇むひとつの影は、阿良々木新造。


寅三郎:(眉をひそめて)「あいつ……、どういうことだ?」
軋羽:(ダイスを振って)あたいも見えたよ。「あっ! あいつ、大久保様のところにいた阿良々木じゃないかい!」
GM:阿良々木も君たちに気づき、淀んだ眼の奥に光を湛えながら君たちを見つめ……、そしてふぅと闇に消えていく。
寅三郎:阿良々木が亜弥を抱えてる、なんてことはないんだよな?
GM:ない。単身、ひとりきりだ。
寅三郎:「……鳥居様。あれが件の阿良々木です。どうやら一足に先にここを襲撃したようですな」
軋羽:「なぜあいつが高野の部下を襲撃しているんだ。仲間だろう?」
寅三郎:「……わからん。大久保が高野を持て余したという線もあるが……」
耀蔵:「今はそれを問うている暇はない。護衛が無力化されているのは幸い、一刻も早く踏み込むが肝要。高野長英がすべてを答えてくれよう」

 三人は血だまりの間を縫って屋敷内へと向かう。
 障子に手をかけながら、寅三郎は今一度、阿良々木のいた闇を振り返ったが、そこにはただ滔々と夜闇が漂うばかりであった。




クライマックスフェイズ

■クライマックス 雷卵招来  ――――シーンプレイヤー:亜弥

GM:ではクライマックスだ! 最初は亜弥だけ登場。
亜弥:はいっっ!
軋羽:(キラキラしながら)さってさてさて、亜弥はどういう風に吊されているのっ、かな〜♪
GM:え?
軋羽:いやほら、可憐な少女が悪の組織に捕まった時の形式美と言うか。(張りつけのポーズで)こう、セクシーな感じにぶらーんとか(一同笑)。
亜弥:あ、じゃあ、核に埋め込まれちゃってたり!
寅三郎:それじゃ手遅れじゃねえか(笑)。
GM:残念だが、まだ吊るされる前からスタートだ(笑)。亜弥がふと意識を取り戻すと、君は高野の背に担がれながら見慣れぬ場所にいる。
亜弥:「ん……っ」って目を開いて、あたりを見回します。「ここは……?」

 その大名屋敷はハリボテであった。
 巨大な屋敷の内側はがらんどうの吹き抜けで、地下深くから天井までが竹と鉄骨で組み上げられた作業場となっていた。
 あちこちからからくりの駆動音が響き、油と鉄の匂いがうっすらと嗅ぎ取れる。


寅三郎:うおお、秘密基地か! すげぇな!
耀蔵:これほどのことが成せるのであれば、もっと良き使い方もあるだろうに……。
軋羽:しかも騒音も漏らさず、いままで隠蔽してたなんてね。たまげたねえ。
GM:はっは、蘭学の防音技術をなめるんじゃねえぜ!
亜弥:目覚めた瞬間、ポカーンとしてる。「な、なに……ここ?」

 広い区画の中央には、ひどく巨大な卵のようなものが鎮座していた。
 鉄製の表面は室内の明かりを反射し、ぼうやりと鈍色に光っている。
 その高さは十丈(約30メートル)をゆうに超えているように見えた。


寅三郎:ま、またなんかでっけえのがきたぞオイ。
亜弥:「すごい……」
GM:「ん、起きちまったか」君を担いでその卵へと向かう高野が言う。
亜弥:「こんなすごいもの、長兄ちゃんたちが作ったの?」暴れて逃げたほうがいいってわかってはいるんだけど、それに目を奪われちゃう。
軋羽:亜弥も蘭学者だもんねえ。
亜弥:うん、だって見たこともない蘭学の結晶だよ? まじまじと見入っちゃう。
GM:「そんな反応されると蘭学者冥利につきるねぇ。……そう、これが俺様とお前の兄貴で作っていた、究極魔摩訶最強蘭学兵器だ」
亜弥:「これが、印怒羅……」
GM:「お前の兄貴と一緒に作り上げたんだぜ名前考えるだけでもマジ三日かかったんだからな!」(一同笑)
耀蔵:ぶふっ(笑)。
寅三郎:なんで田舎のヤンキーノリなんだ。亜弥の兄貴もそのネーミング止めてやれよ(笑)。
亜弥:にっ、兄ちゃんはきっとその名前には反対していた、ね、そうだよね!?
GM:そこ、こだわるな(笑)。「ま、あいつはダメ出しばっかりだったがな」
亜弥:ホーッ……(胸をなでおろす)。
軋羽:よしよし(笑)。
GM:高野は苦々しい顔になって続ける。「そう……弥八は、こんなものは間違っているなんて言いはじめやがった。鳥居と同じことをやる必要はない、力を持って何かを治めようとするのは間違っている、ってよ」
亜弥:「だからって兄ちゃんを殺したの!?」
GM:「大元の設計図面を書いたのはあいつのくせに、いまさら怖気づきやがって。計画から逃げ出して他の奴らとつるもうとしやがったんだ」
亜弥:「え、他の蘭学者?」
GM:「……そういやお前と同じ名だったか。ったく、その名はやっかいな女ばかりかよ」
軋羽:亜弥と同じ名前の蘭学者……? 初めて聞きますよね、誰だろう?
耀蔵:(眉を寄せて)わからん。が……。
GM:「弥八は力を持っているくせに心が弱すぎた大馬鹿野郎だ。結局この世は弱肉強食、正義がそこにいくらあろうが力がなけりゃあ押しつぶされる。世を変えるには力しかねぇんだよ」
亜弥:兄ちゃんは馬鹿なんかじゃない! って言いたい気持ちをこらえて、長兄ちゃんに聞きます。「……これがもし起動したら江戸はどうなっちゃうの?」
GM:高野は立ち止まり、その銀色の巨大な卵を見上げる。「今から数十年の後、東京湾に現れる一隻の黒船によって、日ノ本すべてが震撼する……らしい」
寅三郎:こいつも阿良々木から未来を聞いたひとりか。
GM:「だからな、こいつを江戸の上空に浮かべて、奴らを来させないようにするのさ」高野はニッと笑う。「これは空に浮かぶ神の目だ。外ツ国への牽制し、そして鳥居や他の面倒な奴らもこの矢で射ぬけばいい。平和な治世のいっちょ上がりってわけだ」
亜弥:「矢……?」これがどんなことをする兵器か、あたしの目から見てわからないかな?
GM:おお、亜弥は蘭学者だもんね。じゃあ理知で判定をしようか。
亜弥:はいっ!

 饒舌な高野の向こうで光る巨大な蘭学兵器を亜弥は見つめた。
 表面の駆動部や刻まれた回路のライン、周辺に広がる設備から、この兵器がいかなるものか、自身の蘭学知識を総動員させる。


GM:判定は成功か。――この兵器は、蘭学で言う超高性能ピンポイントレーザーです。飛行機能を持ち、インドラという名の通り、全包囲に光の矢を放つことができる。射程はシーンで、広域拡大も可能だ。
軋羽:げえええ! 全方位マップ兵器!?
亜弥:ピンポイントレーザーって……、なんでも蘭学ってつければいいと思わないでよっっっ!(笑)
GM:うっせー、蘭学の汎用性をなめるなよ! ……って、小太刀さんどうしたの?
寅三郎:(ぷるぷる笑いながら)あ、青山の大名屋敷の地下で作られるデススターって……(一同爆笑)。
GM:いいじゃんか、俺様はちょっと懐かしいセンスのが好きなんだよ!(笑)

「ま、そういうわけだ。鳥居の野郎に言われるまでもねえ、女子供に刀を持たせなんざしねぇ。すべてはこいつがやってくれる」
 高野と亜弥を乗せた稼働台座が、印怒羅の中腹部へと登っていく。


GM:「亜弥、お前は刀を持って妖異を斬る覚悟をしたんだろう。それならすまねえが、この先の者たちのために死んでくれや」
亜弥:「絶ッ!対ッ! やだッッ!」なんとかしなきゃ、あたしのエレキテル薙刀は!?
GM:はるか下、作業場の隅に薙刀が放られているのが見える。
亜弥:ううう〜っ、バッタンバッタンもがくよ!「そんなの全然平和な世の中じゃないよ、馬鹿っっ!」
GM:「聞き分けがねぇな。弥八みたいなことを言うんじゃねぇ」
亜弥:「長兄ちゃんはただ、気に食わない人を片っ端から殴っていきたいだけじゃん!」
GM:「うっ……うるせぇ!」
耀蔵:図星か(笑)。
亜弥:「蘭学って、学問ってそうじゃないでしょう!? 外の国の知識を得て、それをこの国と人を守るために活かすって。そう兄ちゃんと話してた長兄ちゃんは、今の長兄ちゃんとぜんぜん違う!」ジタバタ!
GM:君の言葉に高野は開き直ったように激昂する。「復讐に使って何が悪りぃってんだ! そうさ、蘭学はただの学問さ、俺様がこう使うだけだ!」
亜弥:「気に入らない人を片っ端からやっつけて誰も文句言わなくなったとしても、それってみんなが長兄ちゃんのこと怖がってるだけだよ! 蘭学まで怖いって思われちゃうんだよ!? そんなんで新しい世の中なんて絶対に訪れない!」
GM:「〜〜ッ! う、うるせええぇッッ!!」

 罵声が響き、亜弥は印怒羅の中腹に開かれた穴へと叩き込まれた。
 パチパチとはぜる雷光に妖異の瘴気を纏った幾重ものケーブルが、意志を持つ蛇のように少女に絡み付いていく。


亜弥:「新しいものを入れて、古いものと合わせて。そうやって世の中って変わっていくんでしょ? 長兄ちゃんは、長兄ちゃんの信じた蘭学の道まで壊そうとしてるんだ!」コードでぎゅうぎゅうになりながら睨みつける!
GM:ガキが知ったような口を聞きやがって。てめえはもう、黙ってくべられていろや! 高野の背後から一気に妖異の気が噴出する。
亜弥:「長兄ちゃんのこと見損なったよ! 妖異だとかそんなこと関係ない!」ケーブルから無理やり体を引き抜いて、バンッって頭突きを食らわせる!
GM:「ぐわっ!」高野の体がよろめく。しかし、同時に君の頭にも激痛が。まるで鉄に頭をぶつけたかのようだ。

 視界が揺らぐ。朦朧となってふらつく亜弥を逃すまいと、再びケーブルが絡み付く。
 あたりを取り巻く瘴気に、意識が犯されていく。


寅三郎:そろそろ俺たちも登場せんと亜弥がやばいな。
耀蔵:うむ、そうだな。
GM:うっす、カモン!
耀蔵:では、いつのまにか作業場の戸があけ放たれ、そこに立っている。「……高野長英、やめよ!」
亜弥:朦朧としながら声の方を見ます。「鳥居……様、みんな……!」
軋羽:あたいも寅三郎と一緒に登場するよ。「間一髪ってとこだね。亜弥、すぐに助けに行くよ!」
GM:三人の姿を目に留め、高野が顔を歪める。「てめぇら……! どうやってここへ入った!?」
耀蔵:「そなたは証拠を残しすぎだ」
GM:「銃声のひとつもなしに、俺様の蘭学兵団を突破するとはなかなかじゃねえか。見くびっていたつもりはないんだがな」
軋羽:「あたいらはなにもしてやしないよ。やったのはあんたのお仲間、阿良々木だ」
GM:「なんだと……!?」
耀蔵:「そなた、見捨てられたようだな」
GM:「バカ言うんじゃねえ!」高野の顔に混乱の色が浮かぶ。「新しい時代を求めていたのは、誰よりもあいつのはずだ。妙ならともかく阿良々木が裏切る訳ぁねえ! くだらねえ嘘で惑わすんじゃねえぞ!」
耀蔵:「そなたの考える新しい時代と、阿良々木の時代は同じなのか?」
GM:「…………もし、違うってんなら」高野の目が殺気を帯び、妖異の光を放つ。「奴も印怒羅で貫けばいいだけの話だ」
耀蔵:「そなたは道を誤った。正しき道を歩めたはずだというのに」
GM:「道を分けたのはてめぇだろうが」
耀蔵:「わしもそなたも変わらん。物事は陰陽両極があって和となる。わしもそなたも両方とも陽だ。陰はない。誰かなだめるものが、平和を志すものがいる。でなければ自らを焼き滅ぼすだけだ」
GM:高野は大きく息を吐き、鳥居を睨み据える。「……そうだな、俺様もお前も似た者同士かもしれねえ。大層な理想を掲げ、意に沿わぬ者は力で叩き潰す者だ」
耀蔵:(眼を細める)
GM:「――いいじゃないか、戦争。これは突き詰めりゃあ戦争だ。俺様とお前の。どうせお互い曲げることなんかできやしねえんだ。どちらがそれを貫き通せるか、そろそろ決着をつけようじゃねえか、なあッ!」バリバリと雷光が高野の体を駆け巡る。
耀蔵:「……たしかに、そなたもわしも前へ進むことしかできぬ。だが亜弥を見よ。わしらに欠けたものがないか?」
GM:高野は、その言葉に亜弥を見やる。
軋羽:ああ、じゃああたいは隙を見て印怒羅のケーブルをかまいたちで切り裂いて、亜弥を鳥居様のもとへ連れてくるよ。
亜弥:わ、じゃあふらつきながら降りてきます。「ありがとう、軋羽さん」
軋羽:拾っておいたエレキテル薙刀を渡すよ。「立てるかい」
亜弥:それをしっかり握りしめて。「うん、もう大丈夫」
GM:「……亜弥、てめぇも俺様と戦うってか。妖異を倒すためか、弥八の仇をとるためか。蘭学の輩が隠れて長屋で蘭書を読まなくてもいい日々が欲しくはねえのか?」

 妖異に染まった瞳が亜弥を見据える。
 妙の傀儡であった紫や涼太郎とは違う、鳥居への復讐を成すために自らの意志で妖異化した男の目だ。


亜弥:「……あのね、そんな世の中はあったらなって思うよ。鳥居様がこんなに蘭学に厳しくなければいいなってあたしも思ってる」
GM:「なら、なんでてめえは鳥居に――――」
亜弥:「でも、そんな世の中を作る方法はこんなものじゃない。だから……あたしは、長兄ちゃんをぶん殴んなきゃいけないの」
耀蔵:(亜弥を見て)「そうだ、心だけではなく力が必要なこともある。そなたは両方持っている。持てる者の責任を果たせ」
亜弥:それには首を振ります。
寅三郎:お?
亜弥:「鳥居様、持っていたらしなければいけないっていうなら、それは長兄ちゃんの言っていることと一緒です。あたしは、あたしの意思で長兄ちゃんを止めるの」
耀蔵:「……それは、ただ責任を果たすことよりも辛い道ぞ」
亜弥:「でも、それが私の魂が大切だって思うことだから」

「あたしは、人を守るって信じられる蘭学のため……そしてなにより、それを笑って教えてくれたあの頃の長兄ちゃんを守るために」
 少女の凛とした目で妖異に堕ちた男を見据える。
「――――長兄ちゃん、あんたを倒す!」


GM:では、ここで亜弥にも【宿星:高野長英を倒す】を差し上げよう。
亜弥:はいっ! キッと長兄ちゃんを見て、エレキテル薙刀を構え直します。
GM:「まったく……ムカつくガキに育っちまったもんだ」高野の全身から雷光がバチバチとはなたれ、空気がチリチリとはぜる。
耀蔵:「そなたを妖異に向かわせたは、わしの咎だな」呟いて一歩を踏み出す。「――――石蕗、軋羽。始末しろ」
寅三郎軋羽:「はっっ!」

 英傑たちの闘気に応えるように、雷鳴が轟いた。



■第一ラウンド

GM:では戦闘に入りましょう。敵は高野長英一体です。
耀蔵:何だとォーッ!?
寅三郎:まあ、そんなこともありますよ(笑)。しょうがない。
GM:え、えっ? どしたの?
耀蔵:(しょんぼりした顔で)いや、なんでもない。なんの問題もない……。
亜弥:あ、鳥居様今回、範囲攻撃とか強制移動とか取ってたから――。
寅三郎:敵が複数体居ることを想定した成長だったからな。
GM:長兄ちゃんをピンボールのように操ってもいいのよ(笑)。
軋羽:高野を無駄に弄んでどないすんねん(笑)。
耀蔵:仕方がない。次は敵が複数体出てくることを祈ろう(笑)。
亜弥:あれ、そういえば妙はいない? あたしがさらわれた時に一緒にいたはずなんだけど……。
GM:今は妙の姿は見えないね。高野ひとりだ。――――では、セットアップ!




GM:高野長英が【行動値】35で先発だ。《畏怖をもたらす者》(注1)を宣言。対象のファンブル値が+1です。
亜弥:長兄ちゃん早っ!
GM:対象は……そうだなあ、三輪さんの出目のこともあるし、鳥居に。
寅三郎:プレイヤーの出目の悪さを計算に入れるな(笑)。
耀蔵:ほう。では、高野の纏う妖気の強大さに目を細める。
GM:背後で印怒羅と名付けられた巨大な鉄卵が、高野の放つ禍々しい雷光に照らされ、不気味な光を放つ。
耀蔵:「雷とは本来の神話では帝釈天、つまりインドラは神々の飲み物であるソーマなしではその力を発揮できなかったという。亜弥はさしずめソーマということか」
GM:「意外にロマンチストだねぇ、オイ。動かすには燃料が必要ってだけさ」
軋羽:次はあたいだね、《朱雀の眼光》(注2)を高野に。ラウンド中、防御判定の達成値がマイナス2だよ!
GM:う、来たか。それ地味に辛いんだよなあ。
軋羽:あたいの眼光がギラリと光ると、印怒羅の周りを突風が吹き荒れて、動きを阻害するよ。
GM:オオォン、と室内に渦巻く風に印怒羅が軋み、風にあおられて高野がよろめく。
軋羽:「その鉄の塊、図体がデカい割にはどうも頼りないねえ」
GM:「軽量化ってやつさ。空を飛ばすにも色々と苦労があるんだよ」
軋羽:「はっ、そこに亜弥をはめようとしていたわけかい。あんたは親友の妹の命をなんだと思ってるんだい!」
GM:「親友よりも小さな娘たったひとりよりも、大切なもんがあるのさ。研究者ってのはそういうもんなんだよ!」
軋羽:「何が大切なもんだって……あんたはただの人でなしだよ!」
寅三郎:俺は《直衛守護》(注3)を宣言。ここはやはり前衛だな、亜弥に着いていこう。
亜弥:ありがとうございます、一緒に行きましょう!
GM:ではイニシアチブプロセスだ。
軋羽:《天狗変》(注4)! 空中に蜻蛉を切って、乱れ翼を広げるよ。
亜弥:(軋羽の鎌鼬になって)「やっちまいましょうぜ、姉さんー!」
GM:「どんだけデカかろうが、食えない卵なんざ箸にも棒にもかからねえぜ!」
軋羽:「ああ。みんな、ここが正念場だよ。気を張りな!」
GM:「里の奴らも待ってるんだ、こんなところで姉さんがくたばっちゃいけねえですぜ!」
軋羽:「そのことを考えるのはもう少し後だ。いいか、今は……!」と目の前の妖異を睨みつける。
GM:では、まずは高野長英のメインプロセスだ。マイナーで《戦闘強化薬》(注5)を使用。高野が口の中でガリッと何かを噛み砕くと同時に、周囲にはぜる電光がどす黒い色を帯びはじめる。《戦闘増幅薬》(注6)と《感覚加速薬》(注7)でダメージに+10。命中と防御にもプラスだ!
亜弥:うわああ、ドーピングしてる!?
GM:「俺の得意分野はからくりだけじゃあねえんだぜ?」
耀蔵:薬学か。さすがは高野長英、数多の蘭学を極めた男よ。「……惜しい、な」
GM:「さすがに拳銃じゃ御しきれねえな」ガシャン、ガシャンッ! 高野の腕部から異音を立てて自動回転式機関銃――ガトリングガンが出現!
寅三郎軋羽:ガトリングガンだとうっ!?
GM:《撃滅者:弐式》(注9)を乗せて範囲内の全員に攻撃だ。達成値は27!
耀蔵:27か……。2D6で19をださなきゃいかん。
亜弥:無理だ〜。
寅三郎:(ダイスを振って)……ダメだ、避けようがない。亜弥も鳥居様も届かんですか。
軋羽:あっ! あたいはクリティカル!
GM:クリティカル? それは振り直してもらおうかな?
軋羽:げっ、振り直し? いいよっ♪(朗らかに)
GM:えっ……、なんで自信満々なの? な、なんかそっちに対抗手段あったっけ?
軋羽:早く早く! 何を迷ってるんだ! ほら早く振り直し使って!(バンバン)
GM:え、えっと……ううっ……??
亜弥:GMが惑わされている(一同笑)。
GM:(ハッとして)あ、ちくしょう、騙されないぞ! 《天を砕く者》で振り直し!
軋羽:(ダイスを振り直して)……うー、当たりました(しょぼん)。
GM:よっし、全員命中か。ダメージに《業火の心》(注10)と《炎獄の化身:弐式》(注11)を叩き込んで〈刺〉42点!
軋羽:させないよ、《不惜身命》(注12)の構え! すべての銃弾を旋風で巻き込んで、あたいひとりに引き寄せる!
亜弥:おおーっ!
寅三郎:で、軋羽のダメージに《範囲防御》(注13)を飛ばそう。実ダメージを9点軽減してくれ。
耀蔵:わしからも《軍神の盾》(注14)だ。6点軽減だな。

 豪雨のように放たれた弾丸は暴風に散らされ、壁に無数の銃痕を穿つ。

軋羽:鳥居様、寅三郎ありがとう! HPが2点残ったよ、まだ立ってる!
亜弥:やったああ!
軋羽:「高野長英、あんたの銃弾はあたいひとりも殺すことが出来ない。それでいったい何を変えられるんだい?」
GM:「減らず口を叩きやがって!」《疾風怒濤》(注15)で高野が再行動、マイナーで《飛翔装置》(注16)を使用、高野の背からジェット噴射が発生したかと思うと、暴風を避けるように距離を取る。飛行状態で10メートル後退!
亜弥:長兄ちゃん飛んだ―っ!?(一同笑)
GM:移動したことによって、《要の陣取り》(注17)でダメージがさらに増える。で、先ほどと同じくガトリングガンの乱射だ。命中判定は自動クリティカル!
一同:ぎゃああああっ!
寅三郎:こちらもクリティカルで回避できりゃいいが……(ダイスを振って)無理か。
耀蔵:《天佑神助》(注18)で軋羽の《不惜身命》を復活させよう。「軋羽、頼むぞ」
GM:「二度はやらせねえぞ!」高野が《破邪顕正》(注19)! 
軋羽:あたいだって《破邪顕正》だよ!
GM:「この……ッ、鳥ふぜいがちょろちょろうるせえぞ!」もう一枚高野が《破邪顕正》!
耀蔵:さて、どうするか。こちらの《天佑神助》は二枚しかないからあまり減らすと後が怖い。
寅三郎:うーん、通した方がいいかもしれんですね。俺がいちおうカバーリングできるが《秋霜烈日》(注20)がありそうだなぁ。
GM:いい読みだ。暴風を貫いて銃弾の雨が君たちを襲う。《秋霜烈日》を上乗せして、〈神〉の58点!

 荒れ狂っていた風が銃声に撃ち散らされ、止んだ。
 地に倒れ伏した四人を見つめながら、しかし、高野は怒気を含んだ笑みを浮かべる。
「……どうせ起きあがってくるんだろう、てめえらは」


亜弥:「あっ……たりまえじゃないの!」覚悟状態で復活!
耀蔵:わしらも皆、覚悟状態か。(薄い笑みを浮かべ)「よく、わかっているではないか」
GM:高野もニヤッと笑い返す。「俺様は大天才高野長英、世が世なら、英傑になるかもしれなかった男だぜ?」
軋羽:いい気になるのはまだ早いよ! 距離を離されちまったが、あたいにはかまいたち達がいる。《破滅の禍言》(注21)に《一点張り》から《頼むぜ相棒》で攻撃!

 再び荒れ狂いはじめた風の中、軋羽は背後で薙刀を構える亜弥を振り返り、微笑む。
「……亜弥、がんばったね」


亜弥:それにはウンって頷く。
軋羽:「高野の言うことに惑わされちゃいけないよ。あいつは多くを救うためなら、亜弥を犠牲にしてもいいと本気で思ってる奴だ。命に多い少ないがあるものか。あたいはあいつみたいなヤツが嫌いだね」脳裏に大久保や妙の顔がよぎる。「……ああ、人の想いを平気で利用し、傷つけるような奴は大っ嫌いだ!」
GM:「大久保の犬から鞍替えして、今度は鳥居の犬ってわけかよ」
軋羽:「犬じゃない。言ったところで、あんたにはわからないだろうさ!」命中の達成値は18!
GM:ぐっ、こっちの回避は-2されてるから……ダメージカモン!
亜弥:あたしの《一刀両断》も使いますか?
寅三郎:相手はひとりだ、ケチらない方がいい。畳み掛けろ!
亜弥:じゃあ《一刀両断》乗せちゃいます! 35点追加で属性を〈神〉に!
軋羽:やるね、亜弥! 合計で〈神〉77点!

 暴風が高野の体を打つ。
 怒りに吼える高野に向かい軋羽はにっ、と笑った。


軋羽:「あたいの風にかまけていいのかい? 本命はこっちじゃないよ」
GM:「ァあ……ッ!?」

 風音に紛れて唸りを上げる駆動音。
 エレキテルの振動で床を削りながら流れるように滑り込んできた一撃が、高野の体を切り裂いた!


GM:亜弥のエレキテル薙刀が高野の体を捕えると、ガキィン、ガ、ガガガガ! と不快な音が響く。「痛ぇじゃねぇか!」
亜弥:びっくりして一足飛びでみんなの元に後退します。「今の手ごたえ……。人じゃ、なかった?」
軋羽:「随分と頑丈な体をしているんだね。そんな鉄の頭に入ってるんだ。あんたのオツムもさぞ固いんだろうさ」
GM:「……これで初めてだって? はっ、ふざけた冗談だな」亜弥のエレキテル薙刀を見ながら呟く高野から余裕が消えていく。
軋羽:あ、ダメージを与えたので放心もプレゼントするよ。《外道属性》(注22)で解除します?
GM:ぐっ……します。うう、これで合計82点になった。
寅三郎:一気に押し切れるか?
GM:「させるかよ!」高野が《最後の仕掛け》(注23)を使用。即座にメインプロセスを行う!
亜弥:ぎゃー、なんだそれ!
GM:低い駆動音を立てながら、ガトリングガンの周囲に銃口がいくつも増えていく。
寅三郎:やべえな、範囲攻撃だ。まだ全員同じエンゲージだぞ……。
GM:マイナーアクションで《カラクリ活劇》(注24)からのガトリング連射! (ダイスを振る)……あ。
耀蔵寅三郎:あ。
軋羽:ファンボゥ!(英語風)
亜弥:わっほうううぅ! ね、ね、長兄ちゃん、振り直しは?
GM:(呆然と)な、ない、さっき使っちゃった……。
耀蔵:ならば、ファンブルの演出してもいいか?(うずうず)
GM:なんで俺様のファンブルを鳥居の勝ちプレイにされなきゃいけねえんだよ! いいよわかったよ、言ってみろよ!(一同笑)
耀蔵:では、高野長英がこちらに銃口を向けた瞬間、ガトリングガンがミシリと音を立てる。その駆動部に、いつのまにか現れた紫が槍を突き立てている。
亜弥:わーい、紫さん強ーい!(笑)
耀蔵:「もはや、それ以上殺せはせぬぞ。お前たちは命を奪ったつもりで、その実、永遠に消えない咎を負っただけだ。わしと同じでな」
GM:「てめえが愛宕山へ消えてたのはそういうことか。死してなお女を縛り付けるとはな」
耀蔵:「形あるものは壊れる。命あるものは死ぬ。歴史を重ねた国も、いつかは倒れる。だがそれでも受け継がれる意志はあるのだ。お前はそのために蘭学を学んだのだろう?」
GM:「ぐ……ッ!」(二の句が告げない)。
軋羽:(ニヤニヤしながら)いやぁー、それにしてもGMはすごいなぁ。わざわざ見せ場をくれるために、ファンブルを出してくれるとは。はっは、あたいにはとてもできないですなぁ〜(一同爆笑)。
GM:うるせぇええ! バババババッ!(ガトリングガンを撃つ音)。
亜弥:長兄ちゃんの行動は終わったんだよ(笑)。
GM:しまった、今の攻撃で奥義を二枚は使わせるはずだったのに……《天佑神助》も《起死回生》(注25)も残っちゃったぞ。
亜弥:次はあたし! マイナーで長兄ちゃんのところへ近づきます。ガトリングガンが乱射されている中を駆け抜ける!
寅三郎:俺も《直衛守護》で着いていきます。

 銃弾の雨の中、再び亜弥が走った。
 エレキテルの刃を車輪のように滑らせ、目にも留まらぬ速さで地面を縫って距離を詰める。


亜弥:「あたし知ってるんだからね。その銃、懐に入られたら撃てないんでしょう!」メジャーで《剛落撃》(注26)。オートで《眩惑の巧み》(注27)を使ってクリティカル値を9に下げます。(ダイスを振って)……あ、9出た!
GM:では《死神の嘲笑》(注28)だ。ダイス目を1減らしてファンブルを解除だ。
亜弥:じゃあ《てやんでぇ!》(注29)で振り直しで……ううっ、だめだぁ。
耀蔵:では《名将の指揮》(注30)だ。
亜弥:(ダイスを振り直して)うーん、やっぱり8。しょうがないな。クリティカルはしなかったけど、15+8だから命中は23!
GM:相変わらず命中値が高いな。高野の達成値は20。命中だ。
亜弥:当たった! じゃあ《嵐の心》(注31)に《武曲星の光輝》(注32)、《反骨精神》(注33)も乗るから……(計算中)。
寅三郎:加えて《挟み撃ち》(注34)だ。
亜弥:ういさっ。今日はちょっと出目がいい! 〈斬〉の54点!

 高速で唸りを上げる薙刀の刃が、容赦なく高野長英の体を削っていく。
「亜弥、気にいらねぇな……気に入らねえよ。てめえはよおォッ!」
 千切れた着物――いや、切り裂かれた自身の皮膚をむんずと掴むと、高野は一気に引き剥がした!
 肉のはがれる不快な音がする。その下から現れるは、鋼の筋肉。


GM:高野が最後の《疾風怒濤》を使用! 直前のイニシアチブプロセスでフォビドゥンレーザー(注35)を装備!
一同:フォビドゥンレーザーッッ!?
GM:「印怒羅の試作品のひとつだ。少々サイズは小さいが、てめえらを貫き殺すには十分だぜ!」ガトリングガンの外装がボロボロと崩れ落ち、腕部から光の収縮とともにキュイィーンと機械音が鳴りはじめる。マイナーアクションで《クロックアップ》(注36)からの《フルメタルアジャスト》(注37)、《カラクリ大活劇》(注38)
亜弥:そっ、そんなの蘭学者になーいっ!
耀蔵:これは、サイボーグ(注39)の特技か。
寅三郎:サイボーグまで蘭学のくくりにするんじゃねえーっ!!
GM:「既存の蘭学だけでこの俺様を計れると思ったら大間違いだぜ!」高野の腕内部から放たれたレーザーが亜弥と寅三郎に襲い掛かる。自動クリティカルだ!
寅三郎:うおお、ふざけんなっ! とりあえず回避は……失敗だ。
亜弥:あたしもダメ〜。
GM:ダメージは〈光〉の47点!
寅三郎:仕方ない、亜弥を《援護防御》でかばおう。
亜弥:ありがとうございます!
寅三郎:では、レーザーに穿たれながらニタリと笑って。「おい、高野。こんな戦争はつまらんぞ」
GM:「ァあ!?」
寅三郎:「超蘭学兵器だなんだ、誰を殺したのか誰に殺されたのか、それすらわからん戦争は本当につまらん、やめておけ。……やるならば“殺し合い”だ」コストとして《一気呵成》を消費し、《秘剣:黄泉返し》(注40)。ダメージは80点〈斬〉!
GM:君の刃に貫かれ、口から血と油を流しながら高野が吐き捨てる。「くだらねえな……くだらねえ。殺し合いなんざ何も考えずに食い散らかすだけの野の獣じゃねえか!」
寅三郎:「お前が言うように拙者も……世界は進歩するものだと思っていた。新しい時代の戦争だ。今度こそ新しい戦場がやってくるものだと信じていた。……だが、気のせいだった」

「それは初めて酒を飲む憧れ。初めて女を抱く憧れに似ている。やってみる前の方が楽しそうに思えるものだ。やってみると、こんなものだと思うものだ」

寅三郎:「――そしてな、酒や女はそんなものでも世界は回っていくが、戦争はそうもいかん」
GM:「ざまあねえな、てめえはそれで人斬りに逃げ込んだってクチか。いいか、人が成すべきは自らで切り開く歩みだ! いくらてめえが失望しようが、外には世界が広がってんだよ!」
寅三郎:それにはただ眉をしかめて……イニシアチブ・プロセスに行っていいですか?
GM:はい。(ハッとして)……げ、次も寅三郎か!
寅三郎:おうとも! まず《起死回生》で復活して《粉骨砕身》(注41)を……あ、しまった。HPが全快するから《粉骨砕身》のダメージが激減しちまう。
亜弥:あ、ほんとだ。それだとあんまりダメージが出ないね。
耀蔵:単なる追加行動として使うしかないか。HPをうまいこと減らせる手段があればいいが、無理は言うまい。
亜弥:……あ! じゃああたしが《驚天動地》(注42)を使います。石蕗さんも巻き込んで!
寅三郎:あ、そ、それだ! 俺ごと《驚天動地》を撃ってくれ。俺が高野に《援護防御》する!(一同爆笑)
GM:ボスをカバーリングする気かよ!
耀蔵:いや、それだ! 《援護防御》には同意した相手しかかばえないとは書いていない!(笑)
寅三郎:(予想ダメージを計算しつつ)よし、うまくすると俺死ねる! もう一回秘剣が使えるぞ!
軋羽:あっははは! こ、こんな《驚天動地》の使い方……っははははは!(爆笑中)
寅三郎:最悪死ねなくてもいい、その場合は《粉骨砕身》の追加ダメージが得られるし……よし!
亜弥:じゃあ《嵐の心》もいれますか。
寅三郎:入れよう入れよう、バンバン入れよう。俺を殺してくれ(笑)。
耀蔵:《秘剣:黄泉返し》もだいぶ狂った領域になってきたな……(笑)。
軋羽:まさに、死ぬことと見つけたりって感じ(笑)。
亜弥:じゃあ、ダメージ上昇をフルで入れて《驚天動地》! (ダイスをふって)ダメージは〈神〉25!
寅三郎:《援護防御》で高野をかばいます。倍づけで50か。お、よし、死ねるか?
GM:死ねるかいうな!(笑)
耀蔵:致死ダメージにはギリギリ足りないな。
寅三郎:だが充分だ。HP残り1点。《粉骨砕身》が最大効率だ!

 亜弥の放った一撃と、それを迎え撃った高野の雷撃が、狭間にいる寅三郎の全身を襲った。
 全身を貫く痺れの中で、身体がはじけ飛ぶような力を寅三郎は感じた。
 凝縮された蘭学エネルギーに弾かれた片手平突きは、光よりも早い一撃となって高野の鋼鉄の体を貫く!


寅三郎:「……俺は俺が納得したいだけだ。お前のように名も失う戦争がしたい訳じゃあない。俺は野良犬だが、自分の罪を背負うつもりぐらいはある」《平晴眼》から《片手平突き》!
軋羽:「寅三郎っ!」そこに《親分肌》!「あんたも……っ、あんたもたいがいな大バカだっっ!」
GM:それは避けられない。君の一撃が高野の体を貫く。
寅三郎:よし、79点の〈斬〉!
GM:ぐっ……、その一撃で高野の【HP】は消し飛ぶ、が、ここで《起死回生》!
一同:なにいいいっ!?
GM:データ的な処理としては、サイボーグ形態バージョンのHP分までだけどね。高野のサイボーグ回路が自己修復をはじめていく。「終われ……るかよオオォッ!」
亜弥:待って待って、次に攻撃きたら誰か死んじゃう!
耀蔵:その様を静かに見ながら。「……わかれ、お前の言っている戦争こそ、人を獣にするのだ。それは歴史の中で幾度も幾度も繰り返されてきたものなのだ」
GM:「てめえがッ、それを……ッ!」
耀蔵:軋羽に《天佑神助》だ。「……軋羽、引導を渡してやってくれ」
軋羽:「御意!」高野の《起死回生》に《破邪顕正》!

 無数の風の刃が、修復をはじめた高野の腱を、剥き出しになった回路を切り刻んでいく。
「俺は、俺様は……ッ こんな、ところで……!」
 兵器の組み込まれた腕を掲げようとする高野の肉体は、しかし、もう動くことは叶わなかった。




エンディング

■エンディング 雷卵天華

 バチッ、バチバチッ……、と、火花が時折走る。
 しかしじょじょに収束し行くそれは、高野が自ら強化改造を施した肉体が限界を超えた事を示していた。


GM:では、合同エンディングだ。身体のあちこちに火花を散らしながら、高野の体が活動を止めていく。
亜弥:薙刀を構えながら近づきます。「……長兄ちゃん、もう終わりにしようよ」
GM:「このまま、で……」
軋羽:(ハッとして)「亜弥、待ちな!」
GM:「この、ままで、終わ、れ、る、か、よ!」喉から絞り出すような叫びと共に、高野が《一気呵成》を使用。飛行装置を噴射させ、完全に稼働を停止した下半身を強引に剥ぎ離すと浮かび上がる。
耀蔵:「まだ動くというのか!」
亜弥:来るの!? 身構えるよ!
GM:いや、高野の向かう先は印怒羅だ。「俺様が……ッ、この腐った世を変えてやるんだ。死んでいった奴らのために、鳥居をぶっ殺して、そして新しい世のために!」
亜弥:あっ……!「長兄ちゃん、だめ!」
GM:印怒羅から無数のコードが伸びると高野に突き刺さり、その内部へと引きずり込んでいく。
寅三郎:やべえ! そうだ、高野のクラスも蘭学者だ!
耀蔵:自らが印怒羅の核になるつもりか!
GM:「忘れたか、俺様は天才蘭学者、高野長英! 世が世なら英傑になったであろう男だぜ!」

 地響きのような稼働音が響く。強風と雷鳴が辺りに渦巻く。伽藍仕立ての大名屋敷が暴風と雷に砕かれていく。
 薄雲の引かれた空が風に巻かれてぽっかりと穴を開け、光を放ちながら雷卵が上昇をはじめた。


亜弥:「やだ、止まって! 長兄ちゃん、そんなことだめだってば!」
寅三郎:「やめろ、今からじゃあ間に合わん!」
亜弥:「長兄ちゃんのばかああぁっ!!」




「あヒアぁ……あひはハハァあァ!」
 天に昇る印怒羅の上から粘ついた哄笑が上がった。
 びったりと肌に黒髪を張りつかせた女が、銀球の上で笑っている。
「とうとうやりましたえ。多少の予定変更はありましたれど、これで我が殿様もお喜びでありましょう」


亜弥:「妙!? そこに居たの!?」
軋羽:「妙……、あんた最初からそこで高みの見物をしてたって訳かい。いい度胸じゃないか!」
GM:「いえいェねぇ、わっちは怖がりなんですよ。印怒羅がひとたび飛び立ちゃ、ここが一番安全ですので」
軋羽:「待てぇ! この、卑怯者が……ッ!!」

 銀卵の周囲を取り巻く雷光が雲を這い、空が染まる。
 暗い穴を開けた黄金色の空の下、妖異の人形繰りは艶やかに両の手を広げた。
 「あれ見ませい、天に輝く銀の月を。すべてを射抜く天の瞳を。ああァア、愛しい大久保古河守様の治世がここに幕を開きましょうぞ!」

 上昇に合わせ、巨大な卵が押しつぶされるように形を変えると、最底部に巨大なレンズが現れた。
 それは江戸の町を、まるで空に開いた瞳のように見渡し、次の瞬間。


寅三郎:これはやべえぞ……!
亜弥:「だめえええっ!」

 亜弥の絶叫を甲高い音でかき消しながら、一本の光の矢が放たれ、南町奉行所の方角から爆炎が上がった。
 次に寛永寺、小伝馬町牢屋敷、日本橋、山の手――――。
 雨のように光の矢を振りまきながら、雷卵はゆっくりと空を昇っていった。




南町黒衣録 雷卵招来 完



▲上へ戻る

南町黒衣録 最終話「満天の此先」第一幕へ続く