文・絵:すがのたすく



プリプレイ


GM:では、南町黒衣録の第三話、よろしくお願いいたしますー!
一同:わー!(ぱちぱちぱち)
寅三郎:もう三回目か、あっという間だな。
GM:全四話の予定なので、今回からが後半戦だね。
亜弥:兄ちゃんの謎もつかみかけてきてるし、いっぱいパワーアップしてきたのでがんばります!
軋羽:前回は紫様(注1)が亡くなってしまうわ上司の正体が妖異だわで、あたいは衝撃の展開の連続でしたよ。今日は絶望のどん底からはじめますよ!
亜弥:(拳を握りしめて)軋羽さんも逆境プレイ好きですか!
軋羽:逆境はいいね。裏切られ蹴落とされ、絶望に咽びながら穴の奥で慟哭し光に手を伸ばす……あぁあ〜っ、もう最高だね!
亜弥:ねーっ♪
寅三郎:相変わらず元気だな……(笑)。
耀蔵:前回の事件のあと、わしは愛宕山へ旅立ったわけだが、残る江戸の情勢も気になるところだな。
軋羽:涼太郎(注2)はどうなったんだい?
GM:涼太郎と本庄は共に一命は取り留め、秋葉原の屋敷内で治療中、となっているよ。
寅三郎:本庄殿(注3)も無事だったか、よかった。
GM:そこらへんもオープニングで触れる予定じゃよ。まずは今回予告からいきましょう。


■今回予告

 その男が現れたのは、奉行所壊滅と紫の死から数日の後。
 高言不遜な天才蘭学者、高野長英(たかのちょうえい)。
 彼は兄を失った少女に導きの手を差し伸べる。
 兄の死の真実、狭まる鳥居包囲網と超蘭学の兵器。
 少女の白指が、兄の遺した撃鉄を握る。

天下繚乱RPG 南町黒衣録「雷卵招来」
                百花繚乱綾錦―――いざ、開幕!


寅三郎:おお、ついに高野長英が登場か!
GM:うむ、蘭学少女と鳥居様が居るとなれば、出てこぬわけにはいくまい(笑)。
軋羽:ええと、高野長英って有名な人なのかい?
寅三郎:江戸時代を代表する蘭学者のひとりですね。

 高野長英とは、蘭学弾圧“蛮社の獄”で訴追された尚歯会の蘭学者である。
 医学、語学、砲学、哲学など多くの分野で才を放つ当代きっての天才であったが、蛮社の獄の折に鳥居耀蔵によって訴追され、小伝馬町牢屋敷に投獄された。


亜弥:GMGM。この高野さんは化政学園(注4)に出てきた高野さん(注5)と同じ人?
GM:ステージが違うのでパラレルにはなるけど、基本的に同じ人物と思ってくれてかまわないよ。
軋羽:へえぇ、高野長英って別ステージにも登場していたんだ?
亜弥:うん、『化政学園の冒険!! −プリンセス・トクガワ−』(注6)のPCなの。金髪オールバックの留年不良学生で、二丁拳銃なんだよ。
軋羽:二丁拳銃?
亜弥:改造バイクを乗り回すヤンキー蘭学者で、幼馴染の徳川のお姫様が好きなの。
軋羽:……???
GM:まあ、そちらの詳細は学園リプレイを読んでもらうこととして。今回の高野長英は、化政学園ステージからの逆輸入って形になるね。史実とおおむね同じ流れで、蛮社の獄で鳥居によって投獄されたのち、小伝馬町の牢火災の際に脱獄した蘭学者、という設定になります。
耀蔵:なるほどな。とすると、わしとは真っ向から対立することとなるか……。
GM:ではハンドアウトだ。まずは、PC@の亜弥。
亜弥:はーい!


■亜弥ハンドアウト

 コネクション:高野長英 関係:疑念
 宿星:兄の死の真実を知る PC間コネクション:軋羽

 妙との戦いから数日。忙しい日々を送る君の元に懐かしい顔の男が現れた。
 兄、弥八の旧友である天才蘭学者、高野長英。
 彼は鳥居の下で力を振るう君の現状を嘆き、自らのもとへこないかと誘う。
 そこにある、兄の遺志を継いでほしいと。


亜弥:わ、兄ちゃんと高野さんって友達だったんだ!?
寅三郎:そういや弥八は尚歯会の蘭学者って話だったな。
GM:そうそう。蛮社の獄が起きる前までは、ちょくちょく亜弥も高野にかわいがってもらってた、という感じ。そんな彼から誘いがくるので、どうするか考えたりしつつ、兄の死の真実を探してくれるとうれしいな。
亜弥:そっかそっかー、高野さんと仲良くできるの嬉しいなあ。じゃあ、長兄ちゃんって呼ぶことにしよう♪
GM:長兄ちゃん!!!  (ガタッと立ち上がって)す、すンばらしいなその響き!!
亜弥:長兄ちゃーんっ、長兄ちゃん大好きー!
GM:あぁん! も、もっと、もっと呼んでくれていいんだよ、あぁっ!!(机をビタビタ叩く)
寅三郎:忙しいなオイ(笑)。
軋羽:でもさぁ、“天才蘭学者”って書いてあるやつに、ロクなやつはいない気がするのよねえ……(笑)。


■鳥居耀蔵ハンドアウト

 コネクション:高野長英 関係:隔意
 宿星:江戸を守る PC間コネクション:亜弥 

 妻の遺骸と共に愛宕山へ訪れていた君のもとに、凶報が入った。
 黒衣衆や奉行所、闇の仕置人――君の配下の中から次々と離反者が現れ、そして高野長英が江戸に姿を現したという。
 高野長英は、君が蛮者の獄で訴追した蘭学者だ。彼が君に対して何もことを起こさぬはずがない。
 君は江戸への帰路を急いだ。


亜弥:高野長英が江戸に姿を現わす……。
軋羽:ゴゴゴゴゴゴ……デ、デターッ! あれが高野長英だーっ!(一同爆笑)
耀蔵:ゴジラじゃないんだから(笑)。
GM:東京湾から上陸したりしないから!(笑)
寅三郎:しかし離反者か。紫様の件が終わっても一息つく暇もないな……。
GM:うむ。離反者に高野長英の出現、江戸で様々な事態が動いているとの報を受けて、江戸へととんぼ返りするというハンドアウトになります。
耀蔵:うむ、承知した。


■石蕗寅三郎ハンドアウト

 コネクション:阿良々木新造 関係:懐旧
 宿星:花井襲撃の下手人を始末する PC間コネクション:鳥居耀蔵

 阿良々木新造は、君が幕末で出会った秘剣使いの維新志士であった。
 最後に逢いまみえたのは戊辰戦争、白河口の戦い。
 時代の勝者でありながらどこか虚ろであった阿良々木の眼が、君の記憶に焼き付いている。
 彼はこの時代で何を成そうとしているのだろうか。
 疑念を抱えながらも君は、黒衣衆総指令の花井虎一(注7)が襲撃を受けたという知らせにかけだした。


亜弥:ええーっ、花井さんまでやられたー!
軋羽:花井って前回の寅三郎のオープニングで出てきた人ですよね。
寅三郎:そうそう、黒衣衆のトップだ。
耀蔵:本庄に続き、どんどん有力者が倒れていくな……。
寅三郎:阿良々木と会ったのは白河口の戦いか。戊辰戦争中期の大局だな。(考えながら)……そういえば阿良々木ってどこの藩士とかわかる?
GM:裏設定レベルになるけど、仙台藩出身だが官軍に参加している、という男です。
寅三郎:なるほどなるほど。いや、知っておいたほうがしゃべりやすいんで助かる。
GM:阿良々木との因縁を抱えつつも、新たに起きた花井襲撃事件を追ってね、というハンドアウトとなります。
寅三郎:ういうい、了解だ。


■軋羽ハンドアウト

 コネクション:亜弥 関係:幼子
 宿星:亜弥を守る PC間コネクション:石蕗寅三郎

 君に伝令を行い、そして紫を操っていたのは、妖異の人形繰り、妙であった。
 それはすなわち、君の上司である大久保古河守(注8)が妖異とつながっており、亜弥の兄を操っていたのが彼らの手によるものだという残酷な事実である。
 しかし妙はなぜ、亜弥が英傑であることに執着しているのだろうか。
 君の葛藤も意に介せず、妙が新たな命を伝えに姿を現した。


亜弥:くっそぅ、妙め、ぬけぬけと〜!
軋羽:紫様と涼太郎の仇だ、ボッコボコにしてやんよ!(ファイティングポーズ)
GM:ぎゃーっ、刃向ったら駿河の里を壊滅させますえ!
亜弥:ド外道だ〜っ!
寅三郎:人質取られてるのが痛いよなぁ。
耀蔵:それにしても、今までの軋羽のハンドアウトと比べると、だいぶ私的な思い入れの宿星になったな。
GM:前回で軋羽がガッタガタに思い揺れていたので、それを踏まえてみたんだけど……どうかな?
軋羽:うんうん、ありがとうございます。亜弥を守るためなら百人力さ!
GM:あ、そうだ、《頼むぜ相棒》(注9)で連れている鎌鼬ーズの名前って決まってます? オープニングにちょこっと登場させたくて。
軋羽:実はアイテムのところに書いてあるんだ。旋(せん)、凪(なぎ)、嵐(らん)。白い鎌鼬三兄妹だよ。
GM:おお、ありがとう、使わせていただくぜい(キャラシートをのぞきながらシナリオにメモる)。では、皆さんの成長報告に参りましょうか。


■成長報告

成長報告:亜弥

亜弥:亜弥です。えっと、2レベル成長して、蘭学者(注10)と江戸っ子(注11)を1レベルずつあげました。これで青龍(注12)4レベル、蘭学者2レベル、江戸っ子3レベルです。
寅三郎:お、今回は青龍以外を上げたのか。
亜弥:うん、前回の事件で色々あったから、もっと強くなろうと心に決めたの。だから江戸っ子の《負けず嫌い》(注13)をとりました。これで【体力基本値】が18に。
GM:少女というにはおこがましい数値になってきましたな(笑)。
亜弥:ちょっとムキムキしてきたよ!(笑) で、紫さんの死があって、たくさん考えたんです。妙が兄ちゃんのことを知ってたし、兄ちゃんが何を学んでいたかをもっと知りたいって思って、花井さんのとこに行くようになりました。あの人はもともと尚歯会の蘭学者だったっていうし。
寅三郎:だが蛮社の獄で尚歯会から鳥居側に寝返ったやつだぞ。
亜弥:最初は気まずかったけど、悪そうな人じゃないなって思ったから。で、花井さんの仕事を手伝ったり、兄ちゃんの蘭書の解読を手伝ってもらった結果、蘭学者のレベルが上がって、薙刀がエレキテル鋸(注14)になりました!(一同爆笑)
寅三郎:エレキテル鋸っ!?
軋羽:ぶふっ……え、エレキテルってことは刃が動くの? チェーンソーみたいに!?(笑)
亜弥:兄ちゃんの蘭書にあった設計図を元に改造したの。データ的には蘭学者装備のエレキテル鋸をとって、《巨大誂え》(注15)でさらに攻撃力が+13まで伸びてます。これを取りたいがために【体力基本値】をあげたの(笑)。
GM:ああ、ロリっ娘に巨大武器はいいね!
亜弥:演出的には薙刀を改造したってことに。なんかある日気がつくと、あたしの薙刀が二回りデカくなってギュイィィィーンってしてる(一同爆笑)。
寅三郎:どんなPC@だよ!
耀蔵:たくましくなったな、亜弥……(笑)。
亜弥:あとは涼太郎と本庄さんの看病をしたり、秋葉原のお屋敷や奉行所を手伝ったり、花井さんの白髪抜きとかする日々を送ってます。
寅三郎:白髪ってなんだ、その日課は(笑)。
GM:わ、わかった、花井は複雑そうな顔をしつつもおとなしく抜かせてくれるよ。
亜弥:わーい、やらせてくれるんだ♪
GM:蘭学を学びにくるんだしね。尚歯会を裏切った身としては懐いてくるのは複雑だろうけど、困った顔をしつつこたえてくれるよ。
耀蔵:この子の興味も武器なんだな、と思いながら。
GM:あー、そうだね、兄譲りだね。血は争えない。
軋羽:んで、白髪を抜かせてくれるのか。いい人じゃないか(笑)。
寅三郎:つーか、いつから花井に白髪が生えてる設定になったんだよ(笑)。
亜弥:だって、心労がかさんでそうな人なんだもん(笑)。
GM:そうか(笑)。……で、PC間コネクションは?
亜弥:あ、はい(笑)。PC間コネクションは(ハンドアウトを見て)……あれ、今回はPCAの鳥居様じゃなくて、軋羽さんになんだ?
GM:今回はシナリオの流れから、今までの@→A→B→Cから、C→B→A→@にしてあるんだ。
亜弥:いつもと違うと新鮮だね! えっと、軋羽さんには普段からお世話になってるので[恩人]にします。
軋羽:ありがとうよ、この前の戦いじゃずいぶん無様な姿を見せちまったけどね。
亜弥:妙との戦いの後にショックを受けてるみたいだったし、すごく心配なの。様子を見に行ったりしてるよ。


成長報告:鳥居耀蔵

耀蔵:鳥居甲斐守耀蔵だ。どう成長すべきか色々と考えたのだが、新たに幻術使い(注16)というクラスを取得することにした。
一同:幻術使いっっ!?
軋羽:へええ、鳥居様と幻術って、あんまりイメージにありませんでしたよ。
GM:(恐る恐る)え、えっと、どういう幻術の演出なんでしょうか……?
耀蔵:うむ、これには理由があるのだ。……前回、わしは敵の陰謀を見抜けず、江戸天狗の契約として嫁いできていた紫を失ってしまい、報告と今後のために愛宕山へ向かった。
亜弥:うんうん。
耀蔵:大天狗、愛宕山太郎坊の前でわしは詫びを入れる。「わしの失敗で紫を失ってしまい……」そう言ったところで、太郎坊が怪訝な顔をする。
寅三郎:おい、いきなりシーンがはじまったぞ(笑)。

「何を言っておる、そこに紫はまだ居るではないか」
 愛宕山太郎坊は鳥居の背後を見やる。
「お前は死によって紫が失われたと思っているかもしれぬが、そうではない。魂はまだそこにおり、意志も残っている。……お前は眼(まなこ)を開き、それを知らねばならない」
 天狗の妖力が渦巻き上がると、そこには、陽炎のように揺れる紫の姿。
 その霊魂が宿るひとつの簪を取り上げると、大天狗は鳥居へと歩み寄った。
「しばしの時、これを預ける。お前はお前のなすべきところへ、紫と一緒に戻れ」


耀蔵:――――そう言われたわしは、霊体となった紫と共に江戸へ戻ってくるのだ。
亜弥:おお〜(ぱちぱち)。
軋羽:鳥居様、かっこいい……!
GM:なんだか鳥居のオープニングを終えた気分だ(笑)。
耀蔵:幻術使いのクラスは、一時的に天狗から借り受けた、紫の霊魂の宿る簪による力、という演出です。
寅三郎:なるほどな、それは鳥居耀蔵のイメージもゆらがないし、いいと思う。
耀蔵:うむ、今回の事件が終われば、きれいさっぱりなくなる予定だ。
亜弥:あー、びっくりした。てっきり鳥居様が「わしの幻術を見よ! ギュパーッ!」って謎幻術を放ちはじめるのかと(一同爆笑)。
GM:そうそう、「この力を解放せねばならん時が来たか、キシャーッ!」みたいな(笑)。 ……で、幻術使いの特技は何を取ったんですか?
耀蔵:まずは《水天の術》(注17)という特技。ダメージはせいぜい2D6なのだが、特殊効果として強制移動を10メートル行わせます。
亜弥:強制移動!? えっと、敵を動かせるってこと?
軋羽:敵のエンゲージをばらけさせたりできるようになるってことか。いいねえ。
耀蔵:また、《浮刃乱舞》(注18)という、武器に生命を与えて襲いかからせるという特技も取りました。演出的には紫が背後に現れ、そこにある槍を手に、相手へ猛然と突きかかります(一同爆笑)。
亜弥:ゆ、紫さん強いよう……!(爆笑中)
寅三郎:そんな人だったっけか紫様って(笑)。
軋羽:でも、死してもなお紫様が支えてくれるのはいいですね。かっこいい!
耀蔵:うむ、そばにいます。命はついえても、意志はついえん。
GM:紫さんあなた、生きてるときそんなに元気じゃなかったでしょう(笑)。
耀蔵:敵の陰謀によって弱っていたのだ。本当はそれぐらいできるに違いない(笑)。
寅三郎:まあ、いちおう高位の天狗だったからね。
耀蔵:そういうわけだが、純粋な攻撃力は他の者に遠く及ばんので、攻撃に転じるかは状況次第だな。
GM:まあ、紫さんの雄姿が見れることを祈ろう(笑)。
耀蔵:PCコネクションは亜弥に対してか。(少し考えて)そうだな……[感銘]にしておこう。
寅三郎:おお、いいですね。
耀蔵:幼子の歯に衣着せぬ純真な言葉に、時に心動かされる瞬間があるのだ。
亜弥:わーい、感銘されたー♪(満面の笑みでガッツポーズ)
GM:ガッツポーズすんなよ(笑)。いいなーいいなー。
亜弥:へっへー、GMが悔しがってるの見るのなんか嬉しい(一同笑)。
GM:なによ、その勝者の目線! キー、ムカツクーッ!(机を叩く)
亜弥:いえ〜い♪
軋羽:これはPCの特権ですな(笑)。
GM:くそう! しまった、紫さん戻ってきて―っ!
亜弥:大丈夫、(指さして)まだあそこにいるよ。
GM:でもあの紫さん、鳥居様のユニットなんだもん!(一同爆笑)
耀蔵:もうGMの好き勝手にはできない(笑)。ともあれ、よろしくお願いします。


成長報告:石蕗寅三郎

寅三郎:俺は白虎(注20)が6レベルになりまして、《苦痛耐性》(注21)によって【耐久力】がどかっと9点増えました。それから《遠隔防御》(注22)で遠距離の対象を庇えるようになった。
亜弥:わっ、すごい、離れていても大丈夫!?
寅三郎:ああ、10メートル先まではいける。これで前回みたいに、前衛についていったら後ろが殴られる、という局面には対応できるようになった。
GM:日本刀を使いながら10メートルをカバーリングってなかなかトリッキーな動きだね(笑)。
寅三郎:そうだなあ、相手の攻撃の射線に割り込んで庇うって演出にするかな。
軋羽:あとは敵の攻撃を剣先で巻きあげたり。
GM:そういや寅三郎は、一話のオープニングでは含み針とかも使ってたしね。
寅三郎:そそそ。俺は新撰組なんで汚いんですよ。新撰組は不意打ちが基本なんで。
耀蔵:正々堂々やって死ぬわけにはいかんからな。
軋羽:含み針に足狙い、なんでもござれだねえ。
寅三郎:うむ。
GM:ちなみに【HP】はいくつまで上がった?
寅三郎:今の【HP】は51だ。うまくすればボスの一撃は耐えれる。
耀蔵:固いな、わしと20点以上違う(笑)。
寅三郎:それに加えてダメージ軽減も入るんで、そろそろ雑魚の攻撃は驚異にならないはずだ。
GM:それだと、第一話の後藤田の一撃じゃ既に殺りきれないなあ。すごい。
軋羽:毎回2レベルアップだと成長がめざましいね。
GM:で、コネクションの鳥居には何を取る?
寅三郎:ああ、そうか、今回は鳥居様にか。そうだな……どうするか。鳥居様に着いている理由はいろいろあるが、心酔してるってわけじゃないんだよなあ。
耀蔵:どちらかというと利害関係で従っているようだからな。
寅三郎:むろん仕事上の上司としては尊敬してるんだが、鳥居のためなら死んでもいいっていうのとは違うんだよな。だが、俺に死に場所を与えてくれる……。そうだな、そういう意味で[忠誠]を。


成長報告:軋羽

軋羽:軋羽です。今回は渡世人(注23)と白浪(注24)を1ずつ上げました。まずは渡世人の《一点張り》(注25)。ダメージロールに自分の財産ポイントをつぎ込むとその分ダメージが増える、ってやつだね。
亜弥:財産点をダメージにできるんだー!?
寅三郎:軋羽って財産点は何点持ってたっけ?
軋羽:基本は4点しかないんだけど、《盗賊働き》(注26)で、セッション中に増やすことができるんですよ。これでばっちりさ。
GM:おお、ちゃんとコンボになってるんだ。
軋羽:次に白浪の《外道働き》(注27)。これについてはGMに相談なんだけど…、大久保がうかつに自分の元を逃げ出せないように、人を殺した大罪人だという濡れ衣を着せられている、ということにしたいんだ。
GM:おお、それはいいね、じゃあそういう演出を入れるようにするよー(シナリオにメモる)。
亜弥:大久保様が邪悪だ〜。
軋羽:自分としては殺しはせず、盗みだけしてきたつもりだったんですけど……。
GM:殺しもしてるんだぞっていう罪を着せられて退路がなくなったと。
軋羽:そうそう、そういう境遇を表すために《外道働き》というのをとったわけです。
寅三郎:追い詰められるのがほんとに好きな(笑)。
軋羽:その分、敵に対する憎しみも上がったので、ダメージも増えたという演出です。これで今回の成長によるダメージ固定値は7点ほど上昇するね。実質ダイス2個分くらい。
亜弥:どんどん軋羽さんが強くなる(笑)。
軋羽:で、ここからが《外道働き》の重要なところなんですが、この特技を取ると十手持ち(注28)から受けるダメージが1D6点増えてしまいます。(拳をにぎりしめて)……つまり、これで鳥居様から折檻されると、あたいはすごいダメージを受けてしまうわけなのよ! 鳥居様にメッタくそにされるというわけですよ!(一同爆笑)
GM:なんでそんなマゾヒスティックな理由で特技をとるの!(笑)
亜弥:あっはは、あはははは!(爆笑中)
軋羽:いやいや、あたいが今、鳥居様を敵として見ることができずに、とても弱くなっているという表現にもなるわけですよ。
耀蔵:ああ、なるほどな。
GM:すごいな、そういうキャラ性の表し方は面白いなあ。
軋羽:そう、けっしてやましい理由じゃない!
亜弥:ほんとかなあ……(笑)。
軋羽:で、あたいはハンドアウトのコネクションとPC間コネクションの相手が、両方PCなんだよねぇ。まず、亜弥に関しては[幼子]ということに。
GM:お、前回と同じですか。
軋羽:はい、昔の自分や里に残してきた子供たちと重ねています。ただ、前回は亜弥にはすごい負担をかけたと思ってるし、周りの仲間よりも……あ、いや、そもそも仲間だとあたいが勝手に思いはじめてるところもあるんですけど……あ、でもそれは信頼してるからで……あ、ま、待って、い、今の話はなしだ! クソッ!(一同爆笑)
寅三郎:なんなんだよ(笑)。
亜弥:……軋羽さんさ、みんなの中で一、二を争うデレっぽさだよね(笑)。
軋羽:(赤面しながら)あーうー、そうですね(笑)。いや、あたいは今まで仲間というものがなかったんですが、ここに入ってきてそれを得てしまって、実はもう昔みたいにドライになれないんですよ。現に仕事でもヘマばっかりでね。
亜弥:いいじゃない、いいんじゃない?(笑)
軋羽:しかも、寅三郎には前回かなりボッコボコにされて、「お前じゃ俺を満足させることはできない」だなんて、こ、コイツ……! って!
GM:あれはショックだよねえ。
軋羽:最初は寅三郎とは対等というか、要は鳥居というターゲットの子分ぐらいにしか考えてなかったんですよ。それがいつの間にか仲間のような親近感を持ってきていた時に、そう言われてしまった訳ですよ。
寅三郎:うんうん。
軋羽:「あたいはコイツを越えることはできないのかな」ってすごくショックを受けてしまって、いつかあいつを見返してやりたい……ということでPC間コネクションの寅三郎には[競争]にしようかと。
耀蔵:ほう、競争か。
軋羽:任意で設定した感情ですね。ライトな敵愾心みたいなものというか、いつか見返してやる、振り向かせてやるんだー、っていう!
亜弥:いいですね、そんな軋羽さんにキュンキュンしちゃう(笑)。
軋羽:うっ……(笑)。い、いいんだ、あいつにだけはまけないさ!
GM:あはは(笑)。じゃあ、そろそろ本編へ参りましょうか。改めて、今回もよろしくお願いしまーす。
一同:よろしくお願いしまーす!(ぱちぱちぱち)







オープニングフェイズ


■オープニング01 江戸からの凶報  ――――シーンプレイヤー:鳥居耀蔵

 紫の遺骸を連れ、愛宕山へと訪れていた鳥居耀蔵。
 大天狗たちと今後の取り交わしを済ませた彼は、霊魂となった妻と共に、下山の支度をしていた。
 しかし凶報は、江戸へ戻るを待たずにもたらされる。


GM:最初は鳥居耀蔵のオープニング。愛宕山へと訪れていた君は、大天狗たちとのやりとりを終え、江戸へ戻る支度をしていた。
耀蔵:では、わしは下山の準備を進めていよう。わしの背後には、白装束の紫がしずしずと従っている。
亜弥:ふたりとも、なにもかも元通りになっちゃって(笑)。
耀蔵:いや、それは違う。死んでしまったらそれ以上の変化はなくなってしまう。肉体を持ち、生きていることに価値はあるのだ。
GM:ではそのような君のもとに、江戸の方角から一羽の鴉が弾丸のように飛んでくるのが見える。
耀蔵:ほう。
GM:鴉は君の前に降り立ったかと思うと、黒羽が散らすように舞い、瞬く間に額に古傷を刻んだ青年の姿になる。
亜弥:わあぁ、東雲さん(注29)だ!
軋羽:知ってるのかい、亜弥?
亜弥:『妖異暗躍譚』に登場した黒衣衆のお兄さんなんですよ。あたし大好きなんです♪
耀蔵:「東雲か。そなたは例の件(注30)で四国へ飛んでいたと思うておったが、いかがした。なにかあちらで問題か」
GM:「いえ、江戸に報告に参った折に事が起きたため、急遽こちらへと参った次第です」東雲は吐く息も荒いままに言葉を継ぐ。「……江戸にて、大事でございます」
耀蔵:「何があった」
GM:「黒衣衆や奉行所の同心、闇の仕置人の中から続々と離反者が出ております」
耀蔵:表情を変えぬまま、「離反者、とな」
GM:「それが……どの者も、我らの内情を告発する体をとっていると。告発を受け、大目付の柳生様をはじめとする幕僚たちも動きを強めています」
寅三郎:うーん、このタイミングでの離反者か。
耀蔵:おそらくは、紫の件を機に畳み掛けるよう準備しておったのだろう。敵も思いのほか周到だな。
GM:「花井様や鵜殿様(注31)が対処に当たっておりますが、先日の事件による人員不足で防ぎきれていないのが実情です」
寅三郎:本庄殿がやられた件も含めたら、ゆうに百人は殺られてるからなあ。
GM:「これもまた、例の赤墨の妖異……とやらの仕業でありましょうか?」
耀蔵:「そう考えるほうが無理はない。無論、他の者の関与も疑うべきではあるが……いずれにせよ急ぎ戻ろう」
GM:「お待ち下さい、密偵方よりもうひとつ」

「――――江戸にて、高野長英の姿が目撃されたとのことです」
 部下の口から放たれたその名に、鳥居はかすかに動きを止め、目を細めた。


耀蔵:「……あやつ、生きておったか」
GM:「は。先の小伝馬町牢火災の折に姿を眩まして以来、行方知れずになっておりましたが、ここにきて秋葉原近隣をうろつく様が目撃された次第にございます」
耀蔵:「蛮社の獄の折、わしの部下になれとの誘いを断ったはず。なぜ今になって現れる……」
軋羽:高野を勧誘したことがあったんですか(笑)。
耀蔵:うむ。優秀な人材であれば犯罪者だろうとなんだろうとわしはかまわん。
亜弥:相変わらずだ〜(笑)。
GM:そうだったのか、じゃあ勧誘されてたことにしよう(笑)。「離反者と期を同じくしての高野の出現。御身お疲れとは存じますが、どうか急ぎお戻りを」
耀蔵:「うむ。そなたは一足先に戻れ」
GM:「はっ」そう答えて顔を上げた東雲の目が、少し驚いたように見開かれる。「紫、様……?」
軋羽:おお。
耀蔵:(薄く笑って)「ああ……。共に戻る」
亜弥:わあぁ、いいなあ。夫婦いいなあ……!
GM:「……江戸にて、お待ち申しております!」東雲は今一度、力強く頭を垂れると、瞬時にその姿を鴉へと変じ、再び江戸の方角へと飛び去っていく。
耀蔵:いつも思うのだが、鴉に引っ張られて空を飛んでいけたら早いだろうな……(一同爆笑)。
寅三郎:そんなメルヘンな方法で帰ってこんでください(笑)。
亜弥:東雲さんが疲れて死んじゃう(笑)。

 背後に薄く陽炎のような揺らぎがひとつ。
 ほのかに、紫の焚く香の香りが漂う。


耀蔵:「……行くぞ、紫」
GM:静かに、微笑む気配だけが答える。君は、江戸への帰路についた――というところで、【宿星:江戸を守る】を渡してシーンエンドにいたしましょう。



■オープニング02 神田橋での再会  ――――シーンプレイヤー:亜弥

 妙の遺した爪痕は甚大であった。
 鳥居の配下はおよそ百名を超える人員を失い、寅三郎と本庄、涼太郎は秋葉原の屋敷で治療を続けている。
 破壊痕の残る奉行所の家屋は多くの部屋が閉鎖され、業務の一部は奉行役宅と鵜殿が手配した近隣の屋敷で機能させていた。
 亜弥は毎日、秋葉原の屋敷で涼太郎たちの看病をし、奉行所の雑務を手伝う傍ら、花井虎一の務める学問所へ足を延ばしては兄の蘭書を読みふける日々を送っていた。


GM:次のオープニングは亜弥です。亜弥ちゃんカモーン。
亜弥:はーいっ! ちょっと考えてることがあるんだけど、今っていつぐらいの季節になるのかな? 
GM:そうだなあ、亜弥が南町に来たのが五月だから、ひと月と少し経ったんで六、七月ごろかな。梅雨が明けて一気に夏の暑さが増しつつあるよ。
亜弥:よかった、それならできる!
軋羽:何を考えてたんだい?
亜弥:えっと、調べたら、芝の鬼灯市が梅雨の終わり頃にあるんだって。鬼灯ってお盆の送り火迎え火の代わりになるらしいの。
GM:へええ〜、鬼灯ってそういう意味があるんだ。
軋羽:鬼灯の実を死者の霊を導く提灯に見立ててるわけか。風習ってのは面白いねえ。
亜弥:こないだの事件でたくさんの人が死んじゃって、でも篝火焚いてる暇もないだろうから、代わりに鬼灯をお供えしたいなって。
寅三郎:ああ、素敵じゃないか。
亜弥:芝は愛宕山の分社だっていうから、そこで買ってくれば紫さんも迎え火で見つけやすいだろうって思うの。
軋羽:そこまで調べたのかい。ええ子だ〜、亜弥はええ子じゃのう(ほろり)。
亜弥:だったんですけど……(鳥居を指さして)紫さんそこにいるじゃんっていう!!(一同爆笑)
耀蔵:うむ……(笑)。しかし、紫もきっと喜ぶであろう。

 鳥居が江戸を経ってからの日々は矢のように過ぎた。
 梅雨空はすっかりなりを潜め、夏の暑さを伴った空が顔を見せる。
 その日、亜弥は芝まで足を延ばし、鬼灯市で一鉢の鬼灯を買うと、秋葉原屋敷への道についていた。
 改造を施した造りたての薙刀が小さな背中に揺れる。


亜弥:紫さん喜んでくれるかな、涼太郎は良くなってるかな……って思いながら、風呂敷で包んだ鬼灯の鉢を抱えて帰ってきます。
GM:君が鬼灯を抱えて神田川にかかる橋を渡っていると、「亜弥」と、声をかけられる。
亜弥:わーい、長兄ちゃんきたー! 「えっ?」て、声のしたほうに振り返ります。
GM:「なんだ、思いのほか元気そうじゃねぇか」橋の欄干に寄りかかる、着流し姿のひとりの男が――――え、亜弥、どうしたの?
亜弥:(くすくす笑いながら)……ゴ、ゴメン、長兄ちゃんがブレザーでバイク乗りながらかっこつけてるかって思うと……(笑)。
軋羽:(バイクをふかす仕草で)ブルルンブルルン!「すげぇ元気そうじゃねえか」(一同爆笑)
GM:ちがう、バイクは乗ってねえよ! 学園ステージとは年恰好も違うんだってば!
耀蔵:えー。すまんそのイメージだった(笑)。
亜弥:ちゃんと着物着せて考えるようにするね(笑)。年齢も上がってるの?
GM:うん、着流しで色の薄い髪を乱雑に後ろに流した、二十代中頃の男だ。
亜弥:おー、渋くなってる(笑)。じゃあ、「長兄ちゃんっ!」ってパタパタと走っていきます。
GM:「弥八が死んだってんで意気消沈してるんじゃねぇかと思ったがよかったぜ」高野はニッ、と無精ひげの生えた顔で笑うと、ガシガシと君の頭を撫でてくる。その手は固く、鋼鉄に代わっている。
寅三郎:ん、義腕か?
亜弥:「わっ、いいなすごいなー、機械の腕かっこいいなー」
GM:「ん? ああ、かっけえだろ」ニヤリと笑って。君の記憶にある高野からは多少年を取っていて、両腕が鉄製になり、うっすらと火傷跡が顔に走っている。
亜弥:おおおう。
軋羽:きっと、蛮社の獄から苦節があったんだろうねえ……。




 昔馴染みとの再会に、小さな胸が喜びでいっぱいになる。
 亜弥はせきを切ったように話し続けた。


亜弥:「長兄ちゃん、ずっとどこに行ったかわかんないから心配してたんだよ!?」
GM:「ああ、弥八はお前に言ってなかったのか」高野は言いながら、君が抱えている鬼灯を見やる。「それ、弥八に供えるために買ってきたのか?」
亜弥:「うん、兄ちゃんだけじゃないけどね……」だから実ぶりのいいやつを買ってきたの。
軋羽:ああ、いっぱい帰ってこれるようにね。
亜弥:「紫さんとか、奉行所の人たちとか……最近、お世話になってた人が亡くなったりしたから」
GM:その言葉に、高野の表情が一気に険しくなる。「亜弥……、鳥居のもとにいるってのは本当だったのか」
亜弥:「う、うん……」コクっとうなずきます。
GM:「おい、お前何を考えてんだ? やつらは弥八を殺した張本人だぜ?」
亜弥:「ん……。確かに兄ちゃんを斬ったのはあそこの鳥居様だけど……でも兄ちゃんがそうなるようにし向けたのは――――」赤墨の妖異がって言いそうになるんだけど、あれ、これ長兄ちゃんに言ってもいいのかな……?
GM:「そうなるようにだって? ……お前もしかして、南町の連中にロクでもねえ嘘を吹き込まれてんじゃねぇだろうな?」
亜弥:「え、嘘……?」
GM:「そうさ。――――いいか?」

 高野は身をかがめ、低い声で亜弥に囁く。
「弥八の死に理由があるってのは、お前を囲い込もうとする奴らの罠なんじゃねえのか? ……ただの、都合のいい嘘なんじゃあねぇか?」


亜弥:うっ……確かに証拠はないけど、でも、みんなはそんな嘘つくような人たちじゃないし……。
GM:「だいたいなあ、お前は弥八が化け物になったのを見たのかよ、ぇえ!? 違うだろ?」
亜弥:(ピクンとして)「えっ……!?」化け物だったから殺されたとか、あたし一言も言ってないのに……。
GM:「奴らは自分たちの思い通りにするためなら、どんな嘘だってつくんだ。……おい、あの蝮の鳥居耀蔵と、弥八のダチで天才蘭学者たるこの高野長英様のどっちを信じるってんだよ!?」
亜弥:う、ううっ……。
GM:「いいか、俺様は化政学園じゃあ英傑だった男だぜ? 所詮パーソナリティー上がりのジジイの言うことなんざ信じるこたあねえよ!」(一同爆笑)
寅三郎:パーソナリティーとか言うんじゃねえええっ!(笑)
亜弥:(苦しそうに笑いながら)ぜっ、全然予想してない方向からパンチが来た……(笑)。「た、たしかに、長兄ちゃんは学園リプレイだとPCAだったけど……」(一同爆笑)
軋羽:あんたも揺らぐんじゃないよ!(笑)
寅三郎:やめろ、ふたりともメタ視点モードから戻ってこい(笑)。
耀蔵:そうだぞ。そなたの兄が妖異になっていたことを高野が知ってるのは明らかに不審だ。
GM:「そもそも弥八が鳥居を襲うわきゃねえだろう? あいつはな、俺様といっしょに蘭学で世界を変えようとしていたんだ」
耀蔵:ほう……。
亜弥:「えっ、に、兄ちゃんと一緒にお仕事してたの?」
GM:「ああ、そうさ。それを邪魔に思った鳥居が弥八を殺って、襲われたっていう都合のいい嘘をついた……そういうこった」
亜弥:あの夜のことを思い返してみる。えっと、あの夜は兄ちゃんが違う角を曲がってったから追いかけて――――。
GM:亜弥が見たのは、弥八が斬られた瞬間からだね。
亜弥:oh! じゃあそこは確かに、長兄ちゃんの言うことを否定できない。
GM:君が迷っていると、高野は君の背にある改造薙刀に目を留める。「……へぇ」
亜弥:いちおう外だから、布に包んでいます。「あ、長兄ちゃん、それは……」
GM:「ただの薙刀じゃねえな。お前が造ったのか?」
亜弥:「あ、うん。兄ちゃんの蘭書にあった設計図をもとに作ってみたの。はじめてだから、あまりちゃんとしたものじゃないけど……」
GM:「いや、はじめてだとは思えねえな。立派なもんだ」高野は目を細めて、布ごしに改造薙刀を弄る。「……さすが弥八の妹だ。立派な蘭学の才だな」
亜弥:「長兄ちゃん……、あの……」
GM:高野は薙刀から手を放すと、真面目な顔で君に視線を合わせる。「なあ、お前は弥八の忘れ形見だ。……俺様と、一緒に来ねえか?」
亜弥:「え……」

 亜弥の前に鋼鉄の手が差し出される。
「この俺様と一緒に、未来を築く蘭学の研究をするんだ。……お前ならできる。弥八の遺志を継ぐことが」


軋羽:鳥居様のもとから離れろってことかい。
寅三郎:どうする、亜弥。
亜弥:うー……ん、すっごい揺れるんだけど、やっぱりさっきのことが引っかかって、うんって言えない。「もう少し考えさせてくれないかなぁ。今、お使いの途中だし……」って、鬼灯見せて。
GM:一瞬、高野は不愉快そうな顔になるが、差し出していた鉄の腕を引っ込める。「そうかよ。……ま、使いの途中じゃしかたねえよな」
亜弥:「うん……ごめんね。ちゃんといっぱい考えてみる」
GM:「まあ、元気な面を見れただけでも収穫だ。次に会う時は、いい返事を期待してるぜ?」そう言うと、高野は君に背を向けて去っていく。
亜弥:うっ……くく……(なぜか笑いはじめる)。
GM:え、なに?
亜弥:(ぷるぷるしながら)さ、去って……? 普通に、歩いて……?(笑)
GM:……わかったよ、やりゃあいいんだろ!(笑) 橋の袂に止めてあった蘭学で言うバイクに跨って、ブルルルンと去っていくよ!(一同笑)
亜弥:わーいっ!

 派手な爆音と土煙を上げ、高野が鉄の馬を模したからくりに乗り走り去っていく。
 記憶の中にある優しい長兄ちゃんと、何ら変わらぬ懐かしい姿。
 亜弥はその背が見えなくなるまで、橋の上から見送った。


亜弥:……ん、じゃあ秋葉原のお屋敷に帰ろう。長兄ちゃんに会えた嬉しさと一緒にもやもやした気持ちを抱えつつ。
GM:ではそこでシーンを終了しましょう。宿星は【兄の死の真実を知る】です。



■オープニング03 白河口の邂逅  ――――シーンプレイヤー:石蕗寅三郎

 時は慶応四年、七月。
 新撰組局長近藤勇処刑の後、越藩同盟――旧幕府軍に参入した新撰組は、南東北の要地、白河城を占拠した。
 しかし新政府軍によって城は奪還され、旧幕府軍は政府軍への攻撃を続けるも戦局を覆すにはついに至らず。結局、政府軍の支配下となった白河で小競り合いを繰り返しながら、新撰組は北へと追いやられていくこととなる。
 それが戊辰戦争における大局のひとつ、白河口の戦いであり、時代が江戸から明治へと変わる間際に起きた、歴史の敗者たちの一幕であった。


GM:次は寅三郎のオープニングだ。それは今より数十年のちの過去。君が化政時代へと飛ばされる四ヵ月ほど前の記憶からはじまる。
寅三郎:回想か。了解、登場しよう。

 戦いの火蓋が切られてから八十日が過ぎようとしていた。
 既に戦いの勝敗は明白。旧幕府軍はちりじりに敗走をはじめていた。
 時折、今だ抗う者の刃鳴りと、それを撃ち砕く大砲の轟音が響いている。
 そのような喧騒にまみれた小汚い路地のひとつで、寅三郎は政府軍の制服を身にまとった青年――――阿良々木新造と対峙していた。


亜弥:おおー、幕末だあ。
軋羽:さすがに寅三郎の回想シーンは一味違うね。
寅三郎:俺は負傷していて、着ている軍服も泥だらけになっている。「……よう」
GM:阿良々木は静かに、君を諭すように言う。「すでに列藩同盟軍に勝ち目はない。……勝負はついた」
寅三郎:「さあ、それはどうだか」
GM:「まだ……戦いを続ける気か?」彼は戦の勝者でありながら、しかし、どこか空虚な表情で君を見ている。
寅三郎:「いいか、ほんの少し前の長州征伐の時まで、長州は賊軍だった。それが今、長州が官軍を名乗って俺たちを攻めている。いずれまた、それが覆るときもあるさ。西郷隆盛だって大久保利通だってどこまで続くか知れたもんじゃないぞ」
GM:「覆る……か。本当に、貴公はそう思っているのか?」背後で再び大砲の爆音が響く。「……いかに黄泉返しと言えど、鉄砲や大砲の前には無様な屍をさらすだろう。……拙者も、同じだ」
寅三郎:「まあ、そうだろうな」
GM:「新撰組も、維新志士も、人斬りも武士も。これより築かれる新たな時代には不要のものだ。……拙者たちの時代は終わった」
寅三郎:「まあ、俺も他の列藩同盟軍のやつらも、最後に人を斬ったのはいつのことか覚えちゃあいないよ」
GM:「斬って斬って斬り続け、新たな時代を作ろうとして、それで何が残った? ……結局貴公も拙者も、鉄の轟音の中で焼かれ、斬ることすら叶わなくなって、ただ手を血に染めるだけだ」阿良々木はもう一度、問う。「それなのに。……貴公はなぜ、まだ戦う」
寅三郎:では、すごく失望したような顔をして阿良々木に背を向ける。「つまらんな……」
GM:「……?」
寅三郎:「貴様が勝手に失望しただけだ。貴様が勝手になくしただけだ。俺は違う」
亜弥:あれっ、石蕗さんがなんだか熱い。
軋羽:どうしちゃったんだい(笑)。
寅三郎:いや、まだ続きがある。

「貴様にとっては何もかもなくなったのかもしれん」
 にたあり、と笑う寅三郎の目は、淀み、暗い。
「――――だが、俺にはまだ、人殺しが残っている」


GM:「人殺し……?」
寅三郎:(暗い笑みで)「ああ、人殺しはいいぞ。もう左幕も勤皇もない。攘夷も開国もない。俺はなぁ、俺が殺したいから殺すのだ」
軋羽:おお、ぉ……。
亜弥:全っ然前向きじゃなかった……。
GM:その言葉に、阿良々木は汚れたものを見るような目で君を見つめる。しかし、ふいにその口の端がかすかな笑みを作って。「貴公は……面白い男だな」
寅三郎:「いまさら、何か他にやることでもあるのか?」抜き身の刀を平晴眼に構える。
GM:「ならば……その人生の幕引きまで殺し合いをさせるが情け」阿良々木も刀の柄に手を伸ばす。

 粉じんが剣気に巻かれ四散する。
 今にも切り結ぼうとした、刹那。
 轟音とともに爆風が巻き起こり、ふたりの頭上に倒壊した家屋が降り注いだ。


寅三郎:ぬ……! 大砲の着弾に気づき後ろへ後退する。「……興がそげたな」
GM:「……人殺し、か……」呟く声がして、瓦礫の向こうの気配が遠ざかっていく。

 寅三郎の背後では、北へと敗走をはじめる同志たちの叫声が響いていた。
 その喧騒が、じょじょに、臨場感を増し。


GM:――――そして、君はハッと目を覚ます。そこは秋葉原屋敷の自室だ。
寅三郎:「…………」髪を掻きながらのっそりと起き上がろう。
GM:妙に屋敷内が騒々しい。遠からず鳥居が帰還するはずだが、その出迎えというわけではなさそうだ。
寅三郎:ふむ……、何かあったか。
GM:廊下をドタドタと走る音がし、全身を包帯に包んだ本庄が部屋の襖を叩き開ける。「寅! 何を悠長に寝てやがる!」
寅三郎:「……ああ、本庄殿。どうしました」
GM:襖を開けた反動で態勢を崩し、ズルズルと壁にもたれかかりながら、「花井虎一のもとに襲撃がかかった! 奴の居た学問所は灰塵だ!」
寅三郎:「ちぃ!」一気に頭が覚醒して飛び起きる。「鳥居様が不在の隙を突かれたか。だが花井様とて黒衣衆の頭領。むざむざやられはしますまい」
GM:「だが無傷とも思えん。行くぞ!」と本庄は立ち上がりかけるが、傷の痛みに呻きよろめく。
寅三郎:じゃあ刀をひっつかみざま、本庄の腹を刀の柄でぶん殴る。
亜弥:わっ!
GM:「ふ……ぐ、ッ……!?」
寅三郎:で、倒れる本庄殿の体を抱きとめながら、「つまらん……これで死なれては弱すぎる。……あとは俺がやりますから、生きていろよ」呟いて、本庄を床に転がすと走り出そう。
GM:では、そこでシーンエンドだ。宿星は【花井襲撃の下手人を始末する】です。



■オープニング04 乾いた硯  ――――シーンプレイヤー:軋羽

 妙との戦いから幾日が経ったのだろうか。
 赤墨を操る妖異が自らと同じ大久保古河守の配下であったこと、すなわち自らが妖異の尖兵であったという事実は、軋羽の心を打ちのめした。
 治療という言い訳で自らの長屋にこもった彼女は、疲れた目で染みの浮いた天井を見上げていた。


GM:では、最後は軋羽さんのオープニングだ。妙との戦いから数日たっているけど、軋羽はどうしてる?
軋羽:あたいは長屋にこもりきっています。大久保様の正体を知ってしまった今、正直、涼太郎にも亜弥にも合わす顔がないのさ。
亜弥:わーん、軋羽さん元気出して……。手紙とか書こうよ……。
軋羽:幾度か書こうとしてはみるんだが、けっきょく何も書けないまま、半紙はくしゃくしゃになって部屋の隅に放られている。
亜弥:うわああん……。

 鳥居から受け取った立派な硯が、安い文机を不釣り合いに飾っている。
 軽く擦りかけた墨は既に乾ききってひび割れ、ちらちらとほこりが積もっていた。


GM:不意にダンッ! と長屋の障子戸を叩かれて、「花井様が襲撃をうけた。大事でござる!」黒衣衆の伝令が君に声をかけ、走り去っていく。
軋羽:身を起こして戸の方に一度だけ目を向けますけども、またじっと乾いた硯を見ています。
亜弥:うう……。
GM:「行かなくていいんですかい? 軋羽姉さん」部屋の隅では鎌鼬が三匹、君の様子を心配そうに見守っている。「動かないと体に根っこが生えちまいますよ」「黒衣衆も今、手が足りてねえんでしょう?」
軋羽:「……ああ、わかっているよ。今どういう状況にあるかってことくらいはさ。きっともう、寅三郎も出たんだろう……」
GM:「そりゃあ、総指令官が襲われたとあっちゃあ黒衣衆総出でしょうぜ」「造反者も続々出てるらしいし、軋羽姉さんも早く行かないと怪しまれちまいますぜ?」
軋羽:(遠い目で)「……造反者、ねぇ……」
GM:「そうですよ。……なあ?」鎌鼬はもう一匹に声をかけるのだが、返事は返ってこない。
耀蔵:どうした?
GM:「そうですよ、早く行っていただけませんと」しゅるしゅると赤墨の這いずる音と、血の匂い。
軋羽:(眉をひそめて)妙かい。

 白い鎌鼬の一匹――――凪の体に、赤墨の帯がゆらゆらと巻きついていた。
 虚ろな目をした鎌鼬は、にやあぁと笑う。


軋羽:ゆっくりと凪を乗っ取った妙に視線を向けるよ。「相変わらず趣味が悪いね。早く凪から出て行きな」
GM:「報告用の手駒がはじけてしまいましてね、固いことは言わないで下さいよ」鎌鼬は妖異の気を漂わせながら笑う。「さて、あなたが疑われることになっても困りますし、手短に話をすませましょうか」
軋羽:「もう充分、大久保様の思い通りになってるんだろう。これ以上あたいに何をやれっていうんだい」
GM:「先の目付隊の件では鳥居甲斐守にしてやられましたが、あの男がいよいよ柳生に目を付けられていることに代わりはありませぬ。我が傀儡である密告者たちも良き仕事をしておりますでしょう?」
軋羽:「やっぱりあんたが手を回してたのか。そのご自慢の術でさ」
GM:「もちろんですとも。なにせ、わっちが一番大久保様のお役に立てますゆえ。ねえェ」
軋羽:「それにまんまとあたいも乗せられちまったというわけだ。……なあ、大久保様が妖異だと知って、あたいがこれ以上手を貸すとでも思ってるのかい?」
GM:「貸しますとも。……だって、お前は駿河の里のためには外道働きにも手を染めましょう?」
軋羽:「外道働きだって!? あたいは真っ当な人間は誰ひとりも殺しちゃあいないよ」
GM:「いえ、ね。駿河の者だけだと甘いかと思いまして、念のために罪状をいくつかつけておきました。お前はすでに、立派な外道働きの大罪人ですよ」
軋羽:(こらえるようにククッと笑って)「そうかい……、そこまで大久保様はあたいのことをうまく使い回したいということかい……」
GM:「それはもう。お前にはまだ、お役目がありますから」

「忌々しいですが、確かにお前はよい働きをしてくれました。あの甲斐守から直々に褒美まで賜るほどだ」
 その言葉に軋羽ははっ、と文机に置かれた硯を振り返る。


GM:「お前は秘密組織の一員として勘定奉行の殺害に加わり、鳥居の側室乱心事件の行く末をつぶさに見ておりまする。お前が告発に回れば、後ろに控える天狗の実態とともにもはや言い逃れはできまい」
軋羽:「あたいの存在自体が、大久保様の切り札になっているってことかい……」
GM:「えェえぇ。まあ、安心めされよ。もちろん告発を終えた後は、大久保様がきちんとお前を守り抜いてくださいますえ。アひぁ、あひはははァアあ!」
亜弥:うわああ、だめだよ、約束守る気なんて絶対ないよこいつ!
GM:「あははァ、まあ、それにお前には告発よりも重大な任があるからね」
軋羽:「重大な任だって?」

妖異の眼が暗い光を放つ。
「亜弥……あの娘を黒衣衆から離反させ、大久保様のもとへ引き入れるのですよ」


亜弥:え、あ、あたし!?
寅三郎:なんだろう?
軋羽:無意識に拳に力がこもっちまう。「……それって、どういうことだい?」
GM:「それはもう……あのようないたいけな娘が蝮の毒牙にかかるのは忍びないでしょう?」
軋羽:「ふざけた言い訳だね。あんたたち、亜弥をどうする気だい」
GM:妙はみるみるうちに不愉快そうな顔になっていく。「あぁアぁ、めんどくさいねえぇ! 甲斐守の元に英傑が居ると厄介だろう、それでいいじゃないのさ!」
耀蔵:確実に裏があるな。何を企んでいる……?
GM:「いいか、あんたはよけいなことは考えなくていいんだよ! あの娘に鳥居への猜疑心を抱かせ、南町から離れるように仕向ける。それが大事なんだよ! わっちだってねえェぇ、だれが好き好んで乳臭い小娘を大久保様に近づけたいもんかえ!」
軋羽:じゃあ無表情のまま、背中の羽だけザワザワ鳴らして。「……承った。そうだね、里のためにはお役目は絶対だよ。あの子のことはあたいに任せておきな」
GM:「あはァあぁ」鎌鼬は満足そうに笑う。「そうそう、最後までお役目存分に励んでおくんなまし。駿河の里の童子たちが帰りを待っていること、ゆめゆめお忘れなきよう」
軋羽:「……いっこだけいいかい。二度とあたいの周りの者を勝手に乗っ取るんじゃないよ。次にそんなことがあったら、あんたの首を飛ばす」
GM:「あれェ、ずいぶんと強気なもんだねえ?」
軋羽:(低い声で)「――そんな軟弱な帯じゃ、あたいの風は防げない」
GM:おお……! 魔縁の眼光に貫かれ、鎌鼬の毛がゾワリと逆立つ。「うっ、うるさいよ! いいから早くお役目に出ておいき!」

 シュルシュルと布ずれのような音を立て、赤墨が鎌鼬からほどけて消えていく。
 それを見送る軋羽の眼の奥には、いつのまにか強い光が蘇っていた。


GM:では、軋羽に【宿星:亜弥を守る】をさしあげましょう。
軋羽:ああ、確かに受け取った。正気に戻った鎌鼬の凪に「出かけるよ」と言って立ち上がります。
GM:「あ、あれ、行くんですかい? いや、俺たちゃ嬉しいですけど」
軋羽:「のうのうとしていたあたいがバカだったよ。……そうさ、あたいにはまだ、守らなきゃあならないもんがあるんだ」

 脳裏に、里の子供たちの、そして亜弥の笑顔が浮かぶ。
 バサリと乱れ羽を広げた軋羽は、息をひとつ吐くと空へと飛び立った。



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南町黒衣録 第三話「雷卵招来」第二幕へ続く