文・絵:すがのたすく

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■ミドル07 勘定奉行屋敷へ!  ――――シーンプレイヤー:鳥居耀蔵


 立ち込めていた妖気が晴れていく。戦場となった座敷は惨憺たる有様であった。
 賊が強盗殺人の下手人であることは既に明白、その背後に潜む黒幕を捕らえるため、鳥居は呻く餓鬼に刀を向けた。


GM:では、戦闘が終了だ。次のシーンプレイヤーは鳥居様で、全員登場。周囲には餓鬼が死屍累々、最後に倒れた一匹が、力なくうめき声を上げている。
軋羽:スタッ、と降りたって亜弥に駆け寄りましょう。「大丈夫かい?」
亜弥:「は、はい……」まだ、手が震えてる……。
寅三郎:室内を見回して、「しかしまあ、派手に散らかりましたな」
耀蔵:「これほどの人数が一度に来たのは久方ぶりだ」
GM:「ヒ……ヒィッ、お許しくだせぇ!」瀕死の餓鬼が、縁側へと逃げていく。
耀蔵:「待て」餓鬼の腱に刀を突き刺して、足止めを。
亜弥:ひい!
GM:「ギャアアアアァァッ!」
寅三郎:(意に介せず)「鳥居様、ご無事ですか?」
耀蔵:「大事無い。他の者はどうか?」
寅三郎:「何もありません。紫殿もご無事です」
GM:「ギイイィィッ、グアアアアアァァアッ!」畳に縫いとめられた餓鬼は、絶叫を上げてのた打ち回っている。 
亜弥:ううっ、エグくて見てられない……。薙刀を取り落として、後ろに後ずさっちゃいます……。
耀蔵:「目を逸らすな」
亜弥:ビクッ!
軋羽:「亜弥、これがあたいたちの追っている化け物、妖異だよ」
寅三郎:「人を人でないものに変える力だ。(ひとりごとのように)……いずれこの力は海を越え、日本を風雲へ追いやっていく」
亜弥:「これが、妖異……」

 亜弥は恐る恐る、足元で喚く男を見た。
 それはまさしく、地獄の亡者、餓鬼の姿。
 お伽噺の中にしか見たことのない化け物が、確かに今、妖異という名を持って、少女の目の前に存在していた。

 
耀蔵:「石蕗。一連の強盗殺人、こやつらの仕業と見て相違ないか」
寅三郎:この膂力ならできそうな気もしますが……、どうですかGM。
GM:部屋の壁には巨大な破壊跡と、いたるところに爪や牙の裂痕が残っている。君が見てきた一連の強盗殺人の現場と同じだ。
寅三郎:なるほどな。「この餓鬼らを量産できれば、なんでもできましょうなぁ」
耀蔵:では、餓鬼に聞こう。「そなた、名は?」
GM:「ヒィッ! 柴又の重吉と申します! しがない魚売りでございます、どうかお慈悲を!」
耀蔵:「重吉、そなたに問う。近頃、市井の要人を手にかけていたのはそなたたちか?」
GM:「あ、あっしァただ命じられただけで……、すっ、すべては勘定奉行、後藤田兵右衛門様の企みでございやす!」
一同:吐くの早ええぇ!(笑)
軋羽:流れるように(笑)。
亜弥:トュルッって吐いた(笑)。
GM:「後籐田様の邪魔になる奴を殺しゃあ、たんまりと礼金がもらえるんでさァ。け、決してお奉行様に怨恨があったなどというわけじゃあございやせん!」
軋羽:言い訳にもなってないよ(笑)。
耀蔵:しかし妖異の自白では証拠にできんな……。「重吉よ。この件に関して妖異以外に知っている者は?」
GM:「知らねぇよう。俺も金が欲しかっただけだし……あ、か、金だ! そうだ、金ならいくらでもお渡しいたしやすから、ほら!」と、自身の傷口からあふれ出した小判をかき集めて、鳥居へと差し出す。
亜弥:小判なんていい、あたしは強盗事件よりも聞きたいことがあるの。「あんた、弥八って名前に聞き覚えはない?」
GM:「弥八? 従兄弟に矢八郎ってのはいるけどよぅ。な、なんだ、そいつを紹介すりゃあ見逃してもらえんのか?」
亜弥:「違う! あたしは兄ちゃんのことが知りたいだけなの!」
軋羽:だめだね。こいつらただの下っ端だ。
寅三郎:わかるのは、後籐田がこいつらを金で釣って派遣してきたということだけか。
耀蔵:これは、勘定奉行殿の元に赴くほかなさそうだな。
寅三郎:「鳥居様、後籐田の所へこいつを連れていきますか。妖異とはいえ目の前で証言をさせれば言い逃れはできますまい」
耀蔵:「そのほうが話が早そうだな」
GM:「あっしァただ、金が欲しかったんだよぅ……」重吉は涙目で、刀の突き刺さった太腿を痛そうに撫でる。
軋羽:うーん、あんまり自分が妖異になっているっていう自覚すらなさそうだね。
亜弥:ちょっとかわいそう……。
寅三郎:騙されるな、亜弥。金のためなら、喜々として殺しをすることを選んだ奴らだ。さしずめ金の餓鬼といったところか。
軋羽:これが、欲に呑まれて妖異化するってことなんだよ。
亜弥:「でも……」(諦めきれない顔)
耀蔵:ちなみにGM、いちおう聞くが、助けられるか?
GM:いえ、重吉は完全に妖異です。心も身体も妖異に染まって餓鬼化しており、助けることはできません。
耀蔵:そうか……(少し考えて)ではこうしよう。「重吉よ。わしの言うことを聞けば報酬をくれてやろう。そなたのことも、救ってやらんでもない」
GM:重吉はぱあっと顔を明るくして、「ほっ、ほんとですかい!?」
耀蔵:「わしに二言はない。そなたの働き次第では、魂の尊厳を回復してやろう」
軋羽:ひいい(笑)。
寅三郎:ああ、命を助けてやるとは一言も言ってない。政治家は汚い……。
GM:「そっ、そりゃあもう、助かるならなんでもやりまさァ。ささ、お奉行様、なんでもおっしゃってくだせえ!」
耀蔵:「ならば、勘定奉行のところへ、わしらを連れて行け」
GM:「ご、後籐田様のところへですかい?」重吉はオロオロしながら、「でも、あっしがお奉行様の暗殺に失敗したと知られちゃあ、ひどい目にあいまさァ」
耀蔵:「何を言っている」ずい、と一歩近づく。(優しい声で)「そなたに悪事を指示したのは誰だ、他ならぬ後藤田であろう。奴を裁いてしまえば、そなたが罰せられることはあるまい?」
GM:ハッ!「そ、そうだ、その通りでさァ! すべては後籐田様が悪いんだ!」
耀蔵:「そう、そなたは犠牲者だ。これ以上苦しむことはないのだ。最後に一働きをしてくれ。……ただし逃げるでないぞ?」
GM:「も、もちろんでさァ! 蝮のお奉行様から逃げるなんてそっただ恐ろしいことできませんや!」
軋羽:鳥居の背中を見て「恐ろしい人だ――」と、心の中で呟きます。こいつは危険な男だよ、やっぱり。
亜弥:あたしは「あれ、鳥居にもちょっといいところがあるんだ……」って思っちゃう(一同爆笑)。
寅三郎:ねえよ! 目ぇ覚ませ!(笑)
軋羽:重吉はお先真っ暗だよ!
耀蔵:「石蕗、本庄を呼べ。黒衣衆を出撃させる」
石蕗:「はっ」
耀蔵:「向かうは勘定奉行――後藤田兵右衛門の屋敷ぞ」
GM:そこで君たちに【宿星:後藤田兵右衛門を討つ】を差し上げます。
一同:わーい!
軋羽:目指すは悪の勘定奉行ね。
亜弥:今度こそ、兄ちゃんの事も教えてもらうんだ!
GM:君たちは事件の主格、勘定奉行後藤田兵右衛門の屋敷へと向かう。次はマスターシーンだ!


※    ※     ※
                     

GM:(シナリオをめくりながら)おお、餓鬼の拷問はNPCに任せるつもりだったのに、全部鳥居様がやってくれた……。
軋羽:あっはっはっはっは(笑)。
GM:シーンが変わったら、返り血のついた本庄が、「こういう情報を吐いたぞ」って皆に渡そうと思ってたの(笑)。
亜弥:そっちもヒドいルートじゃん!(笑)
耀蔵:わし、拷問スキルあんまり発動してないんだけども……(微妙に物足りなさそうな顔)。
寅三郎:描写するつもりだったのかよ!?
軋羽:いやー、早く大久保様に報告したい。やはり鳥居耀蔵は危険です(笑)。
亜弥:うう、兄ちゃん、南町はとても怖いところです……(涙)。



■ミドル08 貪婪の酒宴  ――――マスターシーン

 神田駿河台。立ち並ぶ屋敷の門は一様に固く閉ざされ、警備の兵が寝ずの番で夜を明かす。
 相次ぐ強盗殺人に、次に白羽の矢が立てられるは我が身ではないかと、屋敷の主たちは怯え、眠れぬ夜を過ごしている。
 しかしその一角、勘定奉行、後藤田兵右衛門の屋敷の奥からは、周囲の恐怖を意にも介さず、楽しげな宴の音が響いていた。


GM:さて、クライマックス前のマスターシーンだ。神田駿河台にある勘定奉行、後藤田兵右衛門の屋敷では、どんちゃん騒ぎが繰り広げられている。

 三味線の音色に合わせ舞い踊る芸妓、むせかえるような酒の匂い、下卑た哄笑を上げる男たち。
 財を尽くした調度品が並ぶ屋敷の中では、連夜の宴が繰り広げられていた。
 屋敷の者は一様に銀糸が豪奢に織り込まれた着物を纏い、御禁制の生臭物を食い散らしている。
 上座には、でっぷりと下腹を肥やした巨漢の男――後藤田兵右衛門が、女たちをはべらせていた。


軋羽:♪チャンカチャンカ♪ チャンカチャンカ♪
寅三郎:いいねいいねー、実に悪役っぽい(笑)。
GM:後藤田は酒に焼けた声で笑う。「がーっはっはっは! 今ごろは南町の蝮殿も餓鬼どもの腹の中か。今宵の酒はひときわ美味い! これで――」
耀蔵:アッハッハッハッハッハ(笑)。
亜弥:だめな人だー(笑)。
寅三郎:いや、あんまり見ねぇな、天下繚乱リプレイでこういう悪役。むしろこれまでいなかったのが不思議なくらいだ(笑)。
 
「何、蝮殿も町奉行職でお疲れだろう、休ませてやるのは温情というもの。まあ、ちいと長い眠りになるかもしれんがなあ」
「嫌ですわ、お殿様」
 肩も露わにはだけた女が、後藤田の肥え太った腹に指を滑らせて笑う。
「そのような恐ろしいこと、南町のお奉行様に知れたら、どんなお叱りを受けるか……」
「何、鳥居といえども所詮は人、たかが一介の町奉行よ。この天下無双の妖異の力を手に入れたわしならば、蝮なぞ酒の肴に過ぎんわい。がーっはっはっは!」


軋羽:キャーッ、後藤田様ステキー!(拍手)
寅三郎:いやあ、こいつを殺すのが惜しくなってきた。このまま見逃してやりたい(ほっこり)。
耀蔵:とりあえず、宴に浮かれる者たちに、煙管で阿片を吸わせよう。
寅三郎:時代考証とか無視して、ポーカー賭博とかやろうぜ(笑)。
軋羽:部屋は全部金箔張りで!(笑)
亜弥:天井にはシャンデリアとか下がってる!(笑)
GM:あんたら、勘定奉行の屋敷をなんだと思ってるんだ!?(笑)

「あの毒蝮め、なにが萎縮政策だ。金は市井から巻き上げてなんぼ、豪勢に使ってなんぼよ。渡る世間は金ばかり。わしに着いてくる者には、いい思いをさせてやるぜ!」
 後藤田は傍らに積まれた千両箱から大判小判を取り出すと、バラバラと座敷中にばら撒いた。
 やんややんやの喝采を上げ、人々が金銀へ群がっていく。
 その姿、正に金の亡者、醜悪な金の餓鬼。
 宴の場に渦巻く人の欲。周囲に妖異の気が満ちはじめる。
 ――――でろり。
 手に手に掴まれた小判がとろけた。
 それは蠱惑的な香りを振りまきながら、宴に浮かれる者どもの体へと染み込んでいった―――。




クライマックス

■クライマックス 金欲の妖鬼討伐  ――――シーンプレイヤー:亜弥

 夜闇に細い三日月が浮かぶ。
 勘定奉行、後藤田兵右衛門の屋敷に、影のように忍び寄る者たちの姿があった。
 闇にまぎれて悪を討つ、南町の黒衣衆だ。


GM:それでは、いよいよクライマックス。勘定奉行の屋敷に皆で殴り込みだ!
一同:おーっ!
寅三郎:しかし、町奉行が勘定奉行の屋敷に突っ込むわけにもいかんな。ばれたらえらいことになる(笑)。
軋羽:変装していきますか?
耀蔵:そうだな、屋敷の中に侵入するまでは顔を隠していよう。頭を口元を覆う黒い頭巾だ。
亜弥:わーい、時代劇っぽい! あたしも巻き巻きしていきます(笑)。
GM:あぁん……!(左右に揺れはじめる)
寅三郎:どうした?
GM:鳥居様に頭巾、そして少女に頭巾という奇跡の出会いに、世界に満ちる無限の可能性を一心にかみしめているのです……(笑)。
亜弥:頭巾は最強だよね!(拳を握りしめて)
軋羽:さっきの餓鬼は連れてきましょう。後藤田の屋敷の案内がさせられる。
耀蔵:本庄には、他の黒衣衆を率いて周辺の警戒に当たらせる。「……いくぞ」

 屋敷の影を黒衣衆が駆ける。
 闇夜に光る、英傑の瞳が四対。


軋羽:あくびをしている外の護衛が「ん? なんだ、羽……? (首を折られる仕草で)アグァァッ!」
GM:警護の兵は一瞬でこと切れる。屋敷への侵入経路は確保だ。
軋羽:(ぱんぱんと手を払って)「まあ、ざっとこんなもんさ」
亜弥:うわあ、軋羽さん、すごい。刀を持ってる護衛があっという間だ……。 
寅三郎:「へえぇ……(目を細めて)新入りにしては、やるもんですな」

 重吉の案内で屋敷の廊下を進んでいくと、奥からどんちゃん騒ぎの音が聞こえてくる。
 贅の限りを尽くした内装、撒き散らかされた賭博の札に、大判小判。
 金箔張りの室内には御禁制の豪華な調度品と膳が並び、周囲には阿片の煙が漂っている。


寅三郎:「これはまあ、やりたい放題ですな」
亜弥:「すごい、部屋中が金でギラギラしてる。それに、見たこともないものばっかり……」
軋羽:「大判小判に舶来の品々か。庶民には永遠に拝めやしないお宝の山だね」梁から釣り下がってる、蝋燭のついたギヤマンの塊はなんだろう?
亜弥:あれ、蘭学の本に書いてありました。たしか“しゃんでりあ”っていう明かりです! 
寅三郎:結局あるのかよ、シャンデリア(笑)。
GM:君たちが宴の場に近づいていくと、じょじょに宴の空気が淀んでいく。
一同:おお!?

 ビィン――――!
 三味線の弦がはじける音。
 次いで、女の叫び声。逃げ惑う音と、それを嘲笑う下卑た声、声、声。
 甲高い悲鳴はすぐに絶叫へと変わり、ばり、ぼり……と聞くに堪えぬ鈍い音が響きはじめた。
 骨を噛み砕く音、生肉を食む音。
 酒と阿片の匂いよりも強く、周囲に血の匂いが漂いはじめた。


亜弥:(震えながら)「おっ、女のひとが食われてる……」
軋羽:ぅうーん……(苦い顔)。
寅三郎:どうした、軋羽?
軋羽:子供にこんな光景を見せるのは、少々酷ってもんじゃないのかい?「亜弥、外で本庄様たちと待っていてもいいんだよ?」
亜弥:「だ、大丈夫です……!」ほんとは逃げたり泣き出したりしちゃいたいんだけど、薙刀をぎゅっと握りしめます。「だって、この奥に、兄ちゃんを操ったかもしれない奴がいるんだもの……!」
軋羽:「そうかもしれないけど……」
亜弥:(おまじないのように)「兄ちゃん、兄ちゃんのためだから……」
軋羽:鳥居様に目配せをします。「ほんとに良いのですか?」と。
耀蔵:亜弥は連れて行く。この娘が英傑か確認しなければならん。「今は急がねば犠牲者が出る。ゆくぞ」
軋羽:「…………はっ」

 館の中庭に面した座敷では、文字通りの酒池肉林が繰り広げられていた。
 それは忌まわしき妖異たちの狂乱の宴。
 金銀と鮮血に彩られた場に、四つの黒い影が立つ。
 頭巾を被った侵入者の姿に、宴に興じていた者たちの間にざわめきが走った。


軋羽:(屋敷の者になって)「むむ、怪しいやつ!」
寅三郎:(屋敷の者になって)「ここを、勘定奉行、後藤田兵右衛門様の屋敷と知っての狼藉か!」
耀蔵:「…………」
GM:「まあ、待ちな」後藤田は食いかけの女をどさりと落とし、口元の血を拭いながら君たちを見やる。「宴の場に頭巾で現れるとは無礼千万。一体どこのどなたですかな?」
耀蔵:その言葉には答えず、連れてきた重吉に問う。「この者が勘定奉行、後籐田兵右衛門。そしてそなたに命を下した者に相違ないか?」
GM:「そ、そうでやすよ、間違いありやせん! すべてはこの、後藤田が指示したことでさァ!」喚く重吉に後藤田の配下が不快な声を上げる。「不意に現れたと思えば後藤田様を愚弄する無礼者め! 貴様ら、名を名乗れ!」
耀蔵:「後籐田兵右衛門殿。わしの声に、聞き覚えはござらんか?」
GM:その言葉に、怪訝そうだった後藤田の顔が、みるみるうちに驚愕へと変わっていく。「ま、まさか……いや、そんなはずは……!?」
耀蔵:「二の丸では、お世話になりましたな」バッ……と頭巾をはずす!

 黒衣の下から現れるは、南町奉行、鳥居甲斐守耀蔵!
 周囲がざわめきに揺れ、後藤田兵右衛門は短い悲鳴を上げてのけぞった。


耀蔵:「……後藤田殿。問いただしたきことがございます」
GM:後藤田は引きつった笑みで立ち上がる。「これは、これは鳥居甲斐守殿。このような時分随分と礼を失した訪問、一体何用ですかな?」
耀蔵:「こやつに見覚えはありますな?」と、重吉を指す。
GM:「なんのことやら分かりませぬな。そのような馬の骨、わしが知るとでもお思いですか」
耀蔵:「この者のことは知らぬと、そう仰られるか」
GM:「そのような者――」う、うおおお! どっ、どうやってごまかそう!(笑)「とっ、鳥居殿。町奉行といえどこのような無礼、許されると思うてか!」
亜弥:全然ごまかせてないじゃん!(笑)
軋羽:まさに、蛇ににらまれた蛙だ(笑)。
耀蔵:「この者はもう、戻せませんな?」
GM:「なんのことだかわかりませんな!」
耀蔵:「そうですか……」と、重吉の足に刺さったままの刀を抜いてやる。
GM:そうすると、重吉は嬉しそうに鳥居の方を――――。
耀蔵:振り向こうとする前に、その首を刈る。
亜弥:「〜〜〜〜ッ!」
耀蔵:(静かに)「魂の尊厳しか守れずに、すまんな」

 邸内に緊張が走った。
 張りつめた殺気と共に、汚泥のごとき妖異の気が漂いはじめる。豪奢な着物を纏った屋敷の者どもは、バキ、バキ……と餓鬼へと変貌をはじめた。


耀蔵:(強い瞳で)「後藤田殿。……何ゆえ、妖異に堕ちられましたか?」
GM:「何ゆえ、ですと……?」しばし後藤田は俯くと、低い声で笑い出す。「さすがは鳥居甲斐守殿、お見通しのようでしたらいたし方ありません。たしかにこの身、妖異へと成り申した」
寅三郎:おお、来るか?(妙に嬉しそうな顔)
GM:後藤田は熱く拳を握り締める。「金と妖異の力で邪魔な旗本どもを消し、幕閣内を地位躍進! 末は老中となろう我が崇高なる野望を、貴様らなどに邪魔はさせぬぞ!」
一同:わーっ!(沸き起こる拍手)
GM:えっ!? な、なんで!?
軋羽:キャーッ、後藤田様ーッ!(笑)
亜弥:(柔らかな笑顔で)とってもほっこりほっこり(笑)。
寅三郎:いやー、君のような人が時代劇には必要なんだよ。もっとがんばってもらいたい(笑)。
耀蔵:「……後籐田殿。あなたがいかなる地位に上り詰めようと、それ自体に興味はござりませぬ。位人臣を極めようとなさるなど、好きになさるがいい」

「――――だがそのために、あたら人の命を失わせること。それについては看過できませぬ。国には、それを担う優秀な若者や、支える人材が数多く必要。
 今切り捨てた者もあなたからすれば、素性も知れぬただの塵芥に過ぎぬのやもしれぬが、この国を築くためになくてはならなかったはずの者」


亜弥:鳥居がこんなこと言うなんて……、ってびっくりしています。悪の奉行が言う言葉じゃない……。
軋羽:あたいも、思いもしないまっとうな志に、一瞬打たれて彼を見ます。動けない。
耀蔵:「あなたが命を湯水のように使いつぶすというのであれば、わしはそれを看過できませぬ」
GM:「人の命? 国の未来? そっ、それがどうした! そのようなもの、この妖異の力と金さえあればいくらでも補填ができようぞ!」
寅三郎:だめだな、こいつはもう妖異だ。完全に私利私欲に走っている。
GM:「どのような手品で餓鬼どもを退けたかは知らんが、わざわざ我が屋敷までご足労いただけるとは愚かの極み!」
亜弥軋羽:(両手を握りしめる)
GM:「町奉行の職務に殉じに来られたのだろうが、ここで斬り捨ててしまえばどうとでもなるわ! 皆のもの、であえであえーっ!」
一同:わーっ!(再び沸き起こる拍手)
亜弥:きたーっ!(笑)
寅三郎:いやー、これがないといけない、やっぱり(笑)。
GM:「斬れ! この後籐田様に楯突く不埒な賊を、一匹残らず斬り捨てい!」君たちの周囲を、屋敷中の餓鬼が包囲していく。
耀蔵:「ご安心を。ここに来たのは奉行の職務の範疇ではございませぬ」
GM:「ぬ、何をぅ?」
耀蔵:「妖異を始末に参りました。黒衣衆の総帥として」
GM:「黒衣衆……?」と後藤田は鼻で笑う。「そちらの傷だらけの武士はともかく、あとはかよわい女子供ではないか。そのような布陣で我ら妖異を退けられると思うてか!」
耀蔵:「……石蕗、軋羽。存分に力を振るうが良い」
軋羽:「はっ」
寅三郎:「かしこまり候」
耀蔵:「……亜弥、よく見ておけ。これがこの国の裏に潜む、悪の姿だ」
亜弥:「悪の、姿……」

 亜弥の心は乱れていた。
 鳥居は兄を殺した憎い仇だ。それに、重吉に嘘をついて首を斬った。
 しかし、勘定奉行に立ち向かう様は、国の行く末を案じる指導者の姿。
 果たしてこの男が悪なのか、それとも善か。
 目の前の南町奉行という人物を計りきれず、小さな頭ははちきれそうだった。


亜弥:(ぶるぶるっと首を振って)わかんない……わかんないけど、でも! この場は鳥居の方が正しいって、それだけはわかるから、だから、頷いて薙刀を構える!
寅三郎:うん、それでいいと思うよ。鳥居様が本当に善人なら、鉄火場に女の子を連れてきたりなどせん(笑)。
亜弥:(全力で)ですよねっ!!(笑)
GM:では、クライマックス戦闘に突入だ!


■第一ラウンド

 
GM:「斬れ、この後藤田様に楯突く、不埒な者どもを斬り捨てい!」勘定奉行が拳を振り上げると同時に、餓鬼が君たちを取り囲むぞ!(駒を順番に置いていく)
寅三郎:うわー、けっこう餓鬼が多いな。
GM:まずはセットアッププロセス。【行動値】順に宣言だ。後藤田の行動値は20。
軋羽:あたいも20だ、先に行動するよ!「あんたの命運もここまでさ!」
GM:「ひっ……」一瞬、後藤田は身をすくめるが、「だが、手ぶらで何ができようぞ、小娘!」
軋羽:「やっぱりあんたは器じゃないよ。うちの鳥居様に比べたらさ」《朱雀の眼光》で後籐田を睨みつける。このラウンド中、後藤田のリアクションに-2だよ!
GM:げーっ!屋敷内には吹くはずのない突風が渦巻く。「な、なんだこれはー!」
軋羽:「今夜はずいぶんと、こいつらも張り切っているようだね」あたいの周りには、鎌鼬が暴れまわっています。
GM:「く、妖術か! しかし、この後籐田様の得た妖異の力の前では――――」って、なんでみんな笑うの?
亜弥:(ほっこりした顔で)後籐田様が何か言うたびに、幸せな気分になる(笑)。
GM:ええい、すぐにそんな顔ができないようにしてやるわ! 後藤田が《指揮能力》のちに《集団統率》! 
寅三郎:げえっ、餓鬼たちがパワーアップした上に行動か!
軋羽:打ち消す方法って、ないですよね?
耀蔵:ないな。皆のもの、備えよ。
GM:餓鬼A、B、C、Dがマイナーアクションで君たちに接近、鋭い牙と爪を振り上げる!

 金音をまき散らしながら、餓鬼たちが襲い掛かる!
 振り直しやダメージ軽減特技と、石蕗の身を挺した防御により、一同は辛くも猛攻をしのぎ切った。


軋羽:ふうぅ、なんとか覚悟状態をひとりも出さずに耐えきったね。
寅三郎:だが、俺の【HP】はあと8点だ。連続で庇ったから、【MP】もやばい。
亜弥:石蕗さん、守ってくれてありがとうございます。
寅三郎:(無言で頷く)
GM:残りは餓鬼EとFだ。さて、どうしようかな。
耀蔵:後藤田のカバーリング要員を残すか否かだな。
軋羽:(ヒョコヒョコ動きながら)こっちに来ていいのよ? さぁ、さぁ♪
亜弥:さぁさぁさぁさぁ♪(ヒョコヒョコ)
GM:そこ、惑わすなっ!(笑) 餓鬼Eがマイナーアクションで君たちに接近、対象はランダムで……(ダイスを振って)亜弥!
亜弥:ほんとに来たー!
GM:その口永遠に黙らせてやるわ! 攻撃は……っ!(ダイスを振る)…………。
亜弥:わーい、ファンブル!(笑)
GM:い、いや、後籐田が《名将の指揮》!「ええい、小娘ひとりに何を手こずっておるか! 褒美は弾んでやる、束でかかれ!」振り直して今度は16で攻撃!
亜弥:やーっ、10以上出さないと回避できない!
寅三郎:ならば《弾き落とし》だ。攻撃の達成値を-2するぞ。
耀蔵:もう一声あると確実だな。では、攻撃してくる餓鬼に刀を突きつけて《出端挫き》。これで6以上で回避できるだろう。
亜弥:ありがとうございます! えいっ!(ダイスを振って)……避けた!
GM:くそーっ! 亜弥の鼻先を餓鬼の爪が掠める。「こン餓鬼がアァァァッ!」
亜弥:咄嗟に身を屈ませてそれを避ける!「餓鬼はあんたたちじゃない!」
GM:餓鬼は憎憎しげな顔で咆哮する。餓鬼Fは行動せずで、餓鬼たちの行動は終了だ。では、セットアッププロセスの続きに戻ろうか。
軋羽:長いセットアップ攻撃だった(笑)。
GM:くそー、ここでひとりは倒したかった!(笑) では、次のセットアップの行動は寅三郎だ。
寅三郎:《直衛守護》を亜弥に。「……亜弥、俺と一緒に後籐田を狙うぞ」
亜弥:「はっ、はい……!」
寅三郎:(後藤田に視線を向けたまま)「安心しろ。俺が守る」
軋羽:あたいも亜弥を振り返って、「黄泉返しの寅。この人についていけば間違いはないよ」
亜弥:じゃあ、コクッとうなずきます。ちょっとだけ、石蕗さんに対しても緊張が解けた気分。
GM:亜弥が寅三郎にまともに声をかけてもらったのって、これが初めてだっけ。
亜弥:うん、鳥居や軋羽さんと話してるの見てて「よくわかんなくて怖い人だな」って思ってたの。でも、ちょっと怖くなくなった(笑)。
GM:では、イニシアチブプロセスだ! 最初は軋羽からだね。
軋羽:《天狗変》! トンボを切って、背中から乱れ羽がバサバサッと生えたかと思うと、宙に舞い上がるよ!
GM:後藤田が呻く。「この女、やはり物の怪であったか!」
軋羽:「ばれちまっちゃあ仕方がないね。でも、人外の技を使うからって、あんたらみたいな汚らわしい連中といっしょにしないでおくれよ? この金の亡者どもが!」
耀蔵:「物の怪は物が化す、神と同じものだ。だが、あれらが神か?」
軋羽:「いいや、欲に飲まれてしまった、ただの残り滓ですよ!」あたいたちのエンゲージに居る餓鬼全員に、マイナーアクションで《地を薙ぐ者》、メジャーアクションで《頼むぜ相棒》!
寅三郎:よし、まとめて餓鬼をやってくれ。
軋羽:(ダイスを振って)……うーん、ダイス目が3だ。《天を砕く者》で振り直しを――――。
耀蔵:いや、それは敵にも使える振り直し特技だから取っておけ。わしから《名将の指揮》を飛ばそう。
軋羽:ありがとうございます、今度は命中値20! これはさすがにかわせまい!
GM:ぎゃーっ、それはクリティカルのみだ! (ダイスを振って)……だめだ、全員当たった。
軋羽:「行くよ、鎌鼬ども! 荒ぶりな!」ダメージの出目もいい! 〈斬〉36点!

 屋敷の壁面を彩る金箔を次々に引きはがし、軋羽の暴風が舞う。
 鎌鼬に切り裂かれた餓鬼の傷口から大判小判があふれ出し、中庭が見る間に山吹色に染まっていく。


GM:ぐおお、だいぶダメージを食らうけど、ギリギリ生きてる。危なかった!
軋羽:やりきれないか。「だめだ……あたいの風じゃあ奴らを倒しきれない」
寅三郎:数が多いな。
亜弥:それなら……ここで、《驚天動地》をします!

 餓鬼は地にばらまかれた金銀を吸いながら、じわりじわりと包囲を狭めていく。
 いかに手練れの黒衣衆といえども、雪崩のように押し寄せる餓鬼を散らすことは容易ではない。
 焦りの色が見える軋羽たちの影で、亜弥は、はたと頭上を見上げた。

 
亜弥:散らせないなら、全部押しつぶしてしまえばいいんだ! 狙うのは一点、天井の……シャンデリア!
GM:シャンデリア、伏線んだ!?(笑)
亜弥:「軋羽さん、背中借ります!」
軋羽:「亜弥ッ!?」
亜弥:崩れた瓦礫から軋羽さんの背中をつたって、梁の上へと駆け上がって、シャンデリアを叩き落す!
GM:《驚天動地》はまずい!「小娘、小癪な真似をォォッ!」後籐田の右腕が膨れ上がったかと思うと、落ちてくるシャンデリアをなぎ払おうとする。《破邪顕正》!
寅三郎:これは通したくないな。
軋羽:「させないよ!」その腕を風の刃が切り落とす。《破邪顕正》で、後藤田の《破邪顕正》を打ち消すよ!
GM:ぐ、お……ッ、それは通しだ。亜弥、ダメージをどうぞ!
亜弥:《嵐の心》でダメージアップ。えーい、高い目出ろ! ……(ダイスを振って)〈神〉の17点!
GM:17っ!?
亜弥:ど、どう……?(ドキドキ)
GM:いやあああーっ、それでぴったりHPが0なのよー!(餓鬼の駒を倒していく)
一同:よっしゃーっ!

 轟音が響き渡り、地が揺れる。
 梁に吊るされていた巨大なギヤマンのシャンデリアが落下し、周囲の餓鬼を押しつぶす!
 餓鬼たちの断末魔、溢れ出る山吹色の雨。
 ギヤマンが粉々に砕け散り、金の輝きと混ざりあって、辺りに光の雪を散らした。


耀蔵:「やはり、聡い娘だ……」
軋羽:「なんて子だい、一気に戦況をひっくり返しちまった。瞬時に勝機を見抜くなんて……」
亜弥:ざ、座学はてんでダメだけど、行動に移すのは得意だもん……!
GM:「おおお、餓鬼たちがなんということだ……」後藤田の肉体がボコ、ボコボコボコッと体が膨れ上がっていく。
寅三郎:親玉が来るか。
GM:「よもや、わしが刀を抜くことになろうとはな!」と、金銀珊瑚でデコデコされた三日月宗近を抜き放つ!(笑)
亜弥:うわーん、とっても成金趣味!(笑)
GM:もちろん服もピカピカラメラメなので、防具は歌舞伎装束です(一同爆笑)。
耀蔵:「嘆かわしい。真っ先に倹約に努めなければならない勘定奉行が……」
GM:「我が禁断の太刀、味わい知るがよいわ!」と、続いて刀を一本抜き、二本抜き、三本抜き、四本抜き……。
一同:うおおおおっ?

 膨れ上がった後藤田の身体から、次々と異形の腕が生えていく。
 周囲に散らばる日本刀や瓦礫を無数の腕が握りしめたかと思うと、雪崩のような打撃の雨!


GM:マイナーアクションで君たちに接近。メジャーアクションで《大斬り》!達成値は24、《広大無辺》で、対象はPC全員だ!
亜弥:そんな達成値、避けられないよ!
軋羽:食らうと一気に全員覚悟状態か。《不惜身命》であたいがダメージを引き受けましょうか?
寅三郎:すまん、それでいけるか。
耀蔵:頼む。
軋羽:「そんな汚らしい金の剣を、あたいたちに近づけないでくれないかい」《不惜身命》。後藤田の無数の腕を、風が次々と切り落とす!
GM:「ぐおおおぉ、小癪な! しかし、そのような風ごとき!」《破邪顕正》!
耀蔵:それには《天佑神助》で《破邪顕正》を復活させよう。「軋羽、背後から忍び寄り、腎を狙う腕だ」
軋羽:「承知!」背後に迫っていた腕を切る。後藤田に《破邪顕正》!
GM:それはもう止められない! 背後に迫った腕が斬り飛ばされる。でも、最後に残った腕が軋羽を掴み、38点の〈斬〉!
軋羽:すべての腕を落とすことはできないか! 風圧で和らげようとするが抗しきれず、畳に叩きつけられる。
亜弥:「軋羽さんっ!」
GM:「はーっはっはっは! 大口を叩いていても、所詮は鳥よ!」
軋羽:「……まだ、やられちゃいないよ!」と、覚悟状態になって身を起こします。「あんたみたいな外道に、負けるわけにはいかないんだよ。あたいには、里に待ってる子たちがいるんだ!」
GM:「ぬうぅぅう……っ、小癪な!」後藤田の全身が怒りで赤く染まり、再び数多の腕が再生していく。《疾風怒濤》に《広大無辺》で全員に攻撃!「この上は、我が秘剣を披露せねばならんな」
寅三郎:うお、秘剣使いか! 気をつけろ、秘剣と名の付くものにろくなものはない(笑)。
GM:「我が秘剣、金魂強羅ノ太刀、受けてみよ!」攻撃判定はクリティカル!
亜弥:いやあああっ!
一同:――――回避失敗!
寅三郎:仕方ない、《援護防御》。覚悟状態になっている軋羽をカバーだ。
軋羽:……っ、すまないね。
GM:竜巻のような金剣の連撃が君たちをなぎ倒す! 亜弥、鳥居、寅三郎の3人に<斬>49点だ!
亜弥:こんなもの……っ! ごろごろごろって吹っ飛ばされるけど、薙刀を畳に刺して踏みとどまる。覚悟状態!
耀蔵:わしも覚悟状態だ。……あれ、後藤田は秘剣の特技は使わないのか?
GM:「ほ、ほほう、我が秘剣を受けてまだ立ち上がれる者がいるとはなあ!」
寅三郎:……で、秘剣は?
GM:ん? 後藤田兵右衛門は《大斬り》を力いっぱい振るったよ? ちなみに彼のクラスは剣客/渡世人/玄武です。
一同:秘剣使いじゃないのかよ!(笑)
軋羽:じ、自称:秘剣って……(脱力)。
亜弥:見かけ倒しだー!(笑)
GM:うるさーい、フレーバーは自由だーっ!(笑)
寅三郎:「これが秘剣か。つまらん……」俺の【HP】が0になった瞬間に《秘剣:黄泉返し》が発動!
耀蔵:真の秘剣、見せてやるがよい。
寅三郎:代償として奥義の《一気呵成》を消費。即座に攻撃を行います。マイナーで《平晴眼》。メジャーで《片手平突き》。そして、そちらのリアクションは自動的にファンブルだ!
GM:ええええええーっ!?

 後藤田の刀を袈裟懸けに浴び、寅三郎はよろめき倒れる。
 よろめきなびく羽織の袖が妖異の視界を乱した刹那、寅三郎の眼光が走る。
 刀を逆手にしたその動きで、己が腹に片手平突きを繰り出した!


寅三郎:「〜〜〜〜ッ!」(苦しそうに顔をゆがめる)
亜弥:「石蕗さんっ!?」
GM:「馬鹿め、恐怖に血迷うたか!」

 あざ笑う後藤田の顔が、驚愕にゆがんだ。
 刃は寅三郎の臓腑を、背を貫き、その先の敵の腹を穿つ!
「…………秘剣、黄泉返し」



軋羽:自分に刀を差すなんざ、なんて真似を……!
寅三郎:ダメージは……52点!
亜弥:それに《一刀両断》も乗せます! ダメージはちょっきり30点。石蕗さんの刀と交差するように、後藤田の背中を薙刀で貫く!
寅三郎:合わせて計82点か。属性は〈神〉!
GM:痛ったああああぁぁぁっ! 「貴様……ッ! その技、まさか……黄泉返しの――!?」
寅三郎:「……ただの、戯言だ」
GM:うう……止める手立てがない。ダメージは素食らいだ(涙)。
耀蔵:死んだ?
亜弥軋羽:ねえ、死んだ? 死んだ?(笑)
GM:まだ死なないよ、後藤田は一撃食らっただけだもん!
亜弥軋羽:ちぇーっ。
耀蔵:さすがに妖異の首領、一太刀では倒れぬか。
寅三郎:「いや、すみません。俺の未熟です」
軋羽:「これが黄泉返し……。なんて恐ろしい技だ」
GM:うー、一気にHPが削られてしまった。でも、これでPC全員が覚悟状態だ!
寅三郎:ここは一気に押してしまおう、イニスアチブプロセスに《粉骨砕身》!
GM:ぎゃーっ!
軋羽:寅三郎、やってしまいな!
寅三郎:先ほどと同じく《平晴眼》に《片手平突き》。達成値が……14か。
GM:後藤田は回避値8スタートで……あれ? 実は石蕗の命中値ってあんまり高くない?
寅三郎:秘剣使いに秘剣以外の数値を期待すんな(笑)。ほんとに基本値が低いんだ。
GM:(ダイスを振って)よし、出目8で回避!
軋羽:それは《天を砕く者》で振りなおしだよ。さっきの攻撃で放っていた風が、実は足を切り落としていたのさ。
GM:なん、だと……!? (ダイスを振って)でも、11が出たのでクリティカル回避だ! いえーっ!
亜弥:あー!
耀蔵:さすがにここで《妙計奇策》まで使うのは微妙だな。
寅三郎:俺は打ち止めだ。後藤田と俺自身の血だまりの中で膝をつく。
GM:「がーっはっはっは、己を刺す秘剣とは虚を突かれたが、おかげで貴様はふらふらではないか。愚かな剣よ!」後籐田は刀を振り上げる!
寅三郎:「……今だ、亜弥。やれ」
亜弥:「はい……っ!」マイナーで《胸倉づかみ》。石蕗さんにとどめを刺そうとしてる後藤田の胸倉を掴んで振り向かせる!
耀蔵:くっくっくっく……(亜弥の雄々しさに笑いはじめる)。
軋羽:やっぱり根性あるよ、この子(笑)。
GM:「ぬ、お……? 小娘、邪魔をするなあぁぁっ!!」
亜弥:もう覚悟いっぱいいっぱいの覚悟状態だもん、ひるまずメジャーで《剛落撃》っ! (ダイスを振って)……命中は20!
GM:20!? それは回避できない!
寅三郎:《挟み撃ち》でダメージに+8点だ。膝をつきながら刀を返し、後藤田の下腹を突く。
亜弥:「ええええいっ!!」《嵐の心》に《反骨精神》!

 胸倉をつかまれ唖然とした勘定奉行の顔に、少女の薙刀が打ち込まれた!
 後籐田の巨体がグラリと揺らぐ。


亜弥:――31点の〈斬〉! それに狼狽が入ります!
GM:狼狽は《外道属性》で解除。これで食らったダメージは累計100を超えて……ヤバイヤバイヤバイヤバイ!
亜弥:やった、狼狽の5点も入った! これ使ってみたかったの♪(笑)
GM:うあああ、もう後がない! 「この、この、人を超えた勘定奉行、後藤田様に……っ、この、塵芥どもがああぁぁっ!!」後藤田が《千変万化》で《粉骨砕身》をコピーし使用。さらに《天佑神助》で《広大無辺》を復活。全員に渾身の一撃を放つ!
軋羽:往生際の悪い奴だね、厄介な男は嫌われるよ?
亜弥:でも、通したら誰かが死んじゃう!
耀蔵:……案ずるな。
GM:後藤田は濁った血潮と大判小判を撒き散らしながら、五月雨に刀を振り回す。達成値も高い、21! どうだ!
耀蔵:(静かに)「……あまり動くと、剣山を踏みますぞ?」《妙計奇策》。

 ギョリッッッ―――!
 鈍く不快な音に続き、醜い悲鳴が響き渡った。
 後籐田の足の甲に光る、ギヤマンの刃。
 闇雲に突っ込んだ後籐田が、落ちたシャンデリアを踏み抜いたのだ。


亜弥:シャンデリアが最強だ。マップ兵器みたい(笑)。
GM:最初にシャンデリアの演出したの亜弥だかんな!(笑)
軋羽:「いいじゃないか、金ピカのシャンデリアが、あんたの足にはよく似合うよ」
GM:「くそっ、誰かいないか! やれ、奴らを殺せ!」というわけで、未行動だった餓鬼Fが攻撃だ。マイナーで接敵。鳥居に攻撃! ていっ(ダイスを振って)……達成値は17!
耀蔵:……回避は失敗だ。(寅三郎に)まだ守れるか?
寅三郎:できますよ。まあ、俺は死にますが、死んだら死んだで秘剣が撃てますし。
亜弥:え、秘剣の回数制限ってないの!?
寅三郎:代償が奥義なだけで、《秘剣:百舌刺し》に回数制限はないんだ。いくらでも撃てる。
耀蔵:《天佑神助》で奥義代償用に石蕗の《一気呵成》を回復。「――――石蕗」
寅三郎:「はっ」鳥居様を《援護防御》。
GM:「鳥居を庇って散るか、それもよかろう。黄泉返しの寅、討ち取ったりいぃぃ!」後藤田は刀を振りかぶる。《水の心》などなど加えて、6D6+22の〈斬〉ダメージを……え、いやだああぁ、秘剣が来るのに斬りたくない!(一同爆笑)
軋羽:もうどうしようもないよ、あきらめな(笑)。
亜弥:思いっきり斬っちゃいなよ、てやーって(笑)。
GM:うわーん!(ダイスを振って)……<斬>41点!(涙)
寅三郎:余裕で俺の【HP】は0になる。《一気呵成》を代償に《秘剣:黄泉返し》!
耀蔵:《軍神の気》を石蕗に。これで、周囲の餓鬼もろとも討て。
寅三郎:「……これが三段突きだ」《平晴眼》から《片手平突き》で横に派生する三段突き!
GM:後藤田が《剣禅一如》で、自身のファンブルを相殺! 簡単に命中なんかさせてたまるか、これで判定はダイス目勝負だ!
寅三郎:(ダイスを振って)……う、命中が低すぎる、13だ。誰か振り直しある?
耀蔵:わしはこのラウンド、全部使い切った。
軋羽:あたいもないね。
寅三郎:しょうがない、このままでいくしかないか。
GM:後藤田は出目が5以上で回避だ、いけるぞ!(ダイスを振って)…………あっ。
亜弥:1と、1!
耀蔵:ファンブルか!!
軋羽:やったやった♪ いやーさすが、すがの先生はここぞというところですごいなぁ♪
GM:いや、待って待って! まだ《イカサマ》で振り直しできるから! 
亜弥:え〜、振り直し使われるのか〜……。
耀蔵:使っちゃうのか……。
GM:やめてよ、なんか私が空気読めてないみたいじゃない!(笑)……よし、7で回避!
軋羽:あー!
寅三郎:仕方ない、二度目は見抜かれたか。俺は《起死回生》で復活だ。
GM:「はっはーっ、秘剣見抜いたりー!」
寅三郎:(ニヤリと笑って)「これが真の黄泉返しではないがな」
GM:ぬ、なんだと……!?
耀蔵:まだなにかコンボがあるのかな。
寅三郎:いずれ見せる日もあろう。餓鬼Fには命中だな、52点だ。
GM:ぐ、最後の餓鬼が、金音を立てて崩れ去る。
亜弥:(餓鬼になって)お、俺が攻撃したと思っ、たの、に……サパーッ(笑)。
軋羽:よし、残りは後藤田一匹だね。
GM:くそー、やられてたまるか! 次の行動は――。
寅三郎:行動値8の俺っス。
GM:え、寅三郎まだ攻撃してくんの? いやだーっ!
軋羽:さっきまでは、秘剣の効果で行動していただけだものね(笑)。
耀蔵:合計で4回目の行動か。やばいな(笑)。
亜弥:石蕗さんの周囲に残像が見える(笑)。
寅三郎:後藤田へ四度目の《片手平突き》!
 
 四度放たれる平突き。
 しかし、繰り出される寅三郎の刃を、後籐田の腕が叩き落す。


GM:……よし、回避だ。「がーっはっは! もう見切ったと言っておろうが!」
耀蔵:だめか……。
寅三郎:く、すまん。ビルドは完璧なんだが、秘剣使いはまじで通常攻撃が命中しづらいんだ。
耀蔵:「よい、そなたは十分に働いた」わしの行動順だ。メジャーで《緊急指令》を亜弥に。「娘、あやつは石蕗に気を取られている」
GM:「黄泉返しめ、覚悟せい。この後籐田様に逆らったことを後悔して死んでいくがよいわー!」
亜弥:じゃあごくっ、と唾を飲み込んで、後藤田に向かって駆け出します。マイナーで《胸倉づかみ》! 後ろからヒザカックン。たぁ!
軋羽:あん、かわいい(笑)。
亜弥:うう、さっきからダイス目が低いよう。達成値は19!
寅三郎:十分じゃねえか、贅沢言うな!(笑)
耀蔵:亜弥は命中基本値が高いからな。当たりやすい(笑)。
GM:だめだ、それは回避できない! ぐらり、態勢を崩した後藤田がたたらを踏む。
亜弥:兄ちゃんのため、目の前の軋羽さんや石蕗さんのため、一撃は迷わない! ――――<斬>28点!
GM:防御修正を引いても25点通って……、うおお! だめだ、持たない!
一同:わーい!(拍手)

 どう、と金を蹴散らしながら、後藤田の巨体が地を揺らす。
 少女の薙刀の一振りが、巨大な妖異を倒しめたのだ。
 「小娘、貴様……!」
 金銀と血を吐きながら、後藤田が怯えた目で亜弥を見た。


GM:後藤田の【HP】はこれで0、戦闘は終了だ。「小娘、貴様、何者だ……?」
亜弥:「小娘じゃない、あたしは、亜弥。あたしのほうこそ、あんたに聞きたいことがあるの」薙刀を構えなおして。
GM:「やっ、やめろ、小娘の分際で、そのようなものを勘定奉行に向けるなど無礼であるぞ!」
軋羽:その姿で勘定奉行たぁ笑わせるね。すでに身も心も腐った妖異じゃないか。
亜弥:「無礼でもいい、教えて。あんたは、弥八兄ちゃんを知ってる?」
GM:「しっ、知らん、そんな名前など聞いたこともない! 助けてくれ!」
亜弥:「知らないフリをしてもだめなんだから!」ずいっ、て薙刀を突き出します。
GM:「やめろ、本当に知らんのだ!」と、後藤田は繰り返すばかり。その言葉に嘘があるようには見えない。
寅三郎:弥八の件は、後藤田とは別件ということか……。
亜弥:「本当に、知らないのね?」じゃあ……、薙刀を下げます。「鳥居様。あとはあんたのお裁きに任せます」

 意気消沈した様子の少女に、鳥居はにべもなく言い放った。
「――――振り下ろせ」


一同:えええええっ!?
亜弥:そんな、あたしに斬れっていうの!?
軋羽:ちょっ、それは……!「鳥居様!?」
耀蔵:亜弥は英傑だ。だが、ここで刃を振り下ろす覚悟がなくては、今後も妖異と戦い続けることはできん。
亜弥:「そんなこと……っ!」
GM:後藤田も慌てふためき、亜弥にすがりつく。「お、おいやめろ! わしにもお前の年頃の娘がいてな。お前にも人の情というものがあるだろう。もう戦えぬわしを斬るというのか!」
寅三郎:「……亜弥、屋敷を見ろ」
亜弥:じゃあ、びくっ、と後藤田様から顔を上げて、周りを見渡します。

  周囲には、地に倒れふす無数の餓鬼。食い散らかされた女たちの遺体。
 おびただしい血だまりの中に、強奪した金銀が鈍い光を放っている。


寅三郎:「こいつの欲望のために殺されたものたちがいる。助かるためならこいつらはなんでも言う。そして、同じことを繰り返す」
亜弥:「でも、でも……あたしは……」
軋羽:あたいは、鳥居様に意見を重ねて目をつけられるわけにはいかない。何も言えずに目を逸らしちまう……。
耀蔵:「振り下ろせんか? ならば、お前の兄への道行きは、これで閉ざされるということだ」
亜弥:「そんな……っ!」

 踏み出した足元で、ジャリッ、と金音が響く。
 亜弥は眼前に広がる山吹色の輝きを見ながら、兄を思い返した。
 握りしめた十二文銭を渡すと、いつも優しく微笑んでくれる兄の顔。
 それは、どんな大判小判よりも価値のある、かけがえのない幸せ。
 周囲に転がる金が、急に汚らしく、憎らしく見えた。
 これが沢山の人を狂わせて、餓鬼を産んで、沢山の人が殺された。


亜弥:握りしめた薙刀を見ます。これを振り下ろさなかったら、もしかすると、あたしみたいな人がまた生まれてしまうかもしれない……?
GM:「お、お前は仇討ちでもするつもりなのか? しょせん小娘の身では、途中でのたれ死ぬが落ちだろう」後藤田は、足元に散らばった大判小判の山を、たった一本残った腕でかき集め、亜弥へと差し出す。「そ、そんなことよりも、わしにつけ。いい思いを仰山させてやるぞ!」
亜弥:(俯いたまま)「後藤田様……。あんたの言うとおり、あたしは、ただの小娘だもん……」
軋羽:……亜弥?
亜弥:「……蘭書がちょっと読めて、傘張りするくらいしかできないの。一日十二文しか稼げないの」
GM:「な、ならばこれを全部やろう!お前のような者が一生遊んで暮らせる金だ。ほ、ほら、いくらでもやるぞ!だから、仇討りなんぞとくだらんことは考えずに、わしを助――――」
亜弥:「…………でも!」

 キッ、と涙に塗れた目で、少女は後藤田を睨み据える。
 「大好きな兄ちゃんだったんだ! たったふたりっきりの家族だったんだ!
 こんな汚いお金なんているもんか!  欲しいのは兄ちゃんの本当だけだもの!
 兄ちゃんを殺した奴は許さない! そのためならなんだってする、たとえのたれ死んだって、兄ちゃんの仇を探し出して――――討つ!」

 斬!

 薙刀が、振り下ろされる。
 醜い叫び声を少女の脳裏に遺し、勘定奉行、後籐田兵右衛門は絶命した。


亜弥:はあっ、はあっ……。薙刀をぼろっ、と取り落とします。もう、涙が止まらない……。
軋羽:「亜弥……」
耀蔵:「わかったか? 今のように、誰か振り下ろす者が必要なのだ」
亜弥:動かなくなった後藤田から目を放せないまま、その言葉をただ聞いています。
軋羽:鳥居は亜弥に何を教えようとしているのか。残酷にすぎるんじゃあないですか……、と思いながら、鳥居様を見ています。
耀蔵:「まだ仕事はある。この者によって、不幸な目にあった者を救済せねばならん。まずは息のある者の手当てだ」と、亜弥に背を向け、去っていく。
寅三郎:俺は何も喋ることもなく、鳥居に着いていこう。

「……行くよ、亜弥」
「………………はい」

 ぽつりと答えて、亜弥は軋羽の着物の裾を掴んだ。
 カタカタと震える身体は、誰かに縋り付いていないと崩れてしまいそうだった。
 涙が、止まらなかった。




エンディング

■エンディング01 過ぎ去りし血風  ――――シーンプレイヤー:石蕗寅三郎

 三日月の晩、勘定奉行の屋敷に謎の出火があり、後藤田兵右衛門は不慮の死をとげた。
 連続強盗殺人事件は下手人を偽造し、一件落着。勘定奉行の後任は追って沙汰があるだろう。
 後藤田が妖異であったことは表に出ることはなく、全ては闇へ葬り去られた。


GM:では、エンディング行きましょう。最初は石蕗からどうかしら。
寅三郎:了解だ。そうだ、最初に亜弥と軋羽には口止めをさせてくれ。俺の秘剣がいかなるものか、外に漏れるといらん面倒をしょい込むことになる。
軋羽:あたいはあんたには幾度も庇ってもらったからね。別に構わないよ。
亜弥:秘剣を見たって言っても、信じてもらえないだろうし。
寅三郎:そういうものでもなくてな。まあ、面倒ごとなのだ、あれは。

 寅三郎の怪我は惨憺たるものであった。
 客人として迎えられている秋葉原の屋敷で、しばしの療養へと入る事となった。

 
寅三郎:俺は後藤田から受けた傷に加えて、腹に自分の刀をぶっ刺したんで、体中に包帯を巻いている。屋敷の縁側でぼーっと空を眺めていよう。
GM:では、縁側が鳴り、本庄が現れる。「ずいぶんと手ひどくやられたじゃねえか」
軋羽:あ、寅三郎の傷が、自分で刺したって知らないんだ。
GM:本庄は寅三郎の秘剣がどんなものか知らないからね(笑)。
寅三郎:「本庄さん、あんたと竹刀で打ち合えば、十本のうち十本をあんたが取ります。……俺ぁ下手糞なんですよ、剣術はね」
GM:「下手糞、ねぇ……」本庄は口の端を歪める。「此度の勘定奉行始末、お前が秘剣を抜いたと噂が立っているぜ?」
寅三郎:それには面白そうに、子供のように笑って、刀を持って背中を向けて庭に立とう。「俺はね、剣術が下手糞なんです。だから、秘剣なんてものに頼ってる」

「俺が見てきた、本当に強い男たちはそうではなかった。あいつらはそんなものに頼らなくても、本当に強かった」
 いささか、口が軽くなる。妙に気分がよかった。
 戦いがもたらした高揚の余韻か、それとも、亜弥という娘の瞳に見た、底知れぬ光への滾りか。
「……俺はね、そうなれなかったんですよ」


寅三郎:「俺は、近藤局長にも、土方さんにも、新井志ノ助にもなれなかった。誰にも追いつけなかった。俺はね、ああなりたかったんですよ。だから、あんたが好きなんだ。わかりますかねぇ……」
GM:いつになく饒舌な君に、本庄は怪訝な顔を向ける。
寅三郎:「みんな死んでしまった……。みんな死んでしまったのに、俺だけが生き残っちまいましてね。……ックク……ハハ……ッ、だからね……探してるんです。俺の…………ックク……」
GM:「秘剣という強さを欲しいままにしているお前が、それでも成れなかったもの、ねぇ?」鳥居に心酔し忠義を貫く道を選んでいる本庄には、解らぬ感情だ。
寅三郎:(笑い続けながら)「あぁ……いいんですよ、あんたはそのままで」
GM:その言葉に、本庄は少々気にいらなそうな面持ちになる。「寅、お前が先の世とやらで何を見てきたかなんざ知らん。……だが、お前の秘剣には興味がある。いつか必ず、手合わせ願おう」

 かすかな殺気が寅三郎を見据える。
 それは、先の世に遺してきた血風の匂い。
 …………やはり、気分がよい。
 裏庭に再び、掠れた忍び笑いが響いた。


寅三郎:「……ックク…………いつか、ね……」



■エンディング02 初陣の後で  ――――シーンプレイヤー:亜弥

 秋葉原の屋敷へ帰還した一行を、紫は優しく出迎えた。
 血にまみれた薙刀を手放して、温かい風呂で体を清めても、まだ、亜弥の心は晴れない。
 薙刀を振り下ろした時の感触、妖異の断末魔は、少女の心には少々重すぎた。


GM:お次は亜弥。勘定奉行との戦いから帰ってきた亜弥の傷を、紫が手当てしているところにしましょうか。
亜弥:覚悟状態にまでなってたもんね。でも、自分の血より後藤田の返り血のほうがいっぱい……(笑)。
GM:「とてもがんばりなさったのですね」紫は乾いた包帯を、丁寧に君の身体へ巻いていく。
亜弥:あたし……。本当にあれでよかったのかっていう思いがあるんです。
軋羽:妖異を斬ったことかい?
亜弥:うん、だから紫様の言葉には明るく返せない。
GM:その気配を察した紫が、君の顔を伺う。「……迷って、おいでですか?」
亜弥:こくって頷きます。「あたしがしたことは、江戸の人たちを苦しめていた、悪い人たちを倒したってことで、それは悪いことではないんだろうけど。……それでも、後藤田にも家族がいて、それで、あたしがあたしみたいな子を作っちゃったんじゃないかって、考えて、ぐるぐるしちゃって……ごめんなさい」
軋羽:亜弥は優しいね。
GM:「謝ることではありませぬ。妖異と戦っておられる方は、みな、一度はその問いを心に持つといいます」紫は少し、包帯を巻く手を止める。「殿様も、迷っておられるのですよ」
寅三郎:おお。
亜弥:……躊躇なく、餓鬼の太ももに刀をざくざく刺してたのが頭をよぎる(一同爆笑)。
軋羽:あれは羅刹のなせる業だった(笑)。
GM:違う、言いたいのはそこじゃない!(笑)
亜弥:「確かに、あいつがやってることは正義を守る、ってことなのかもしれないけど……」紫様に言ってもいいのかな……う、ううう……(地団太を踏みはじめる)。
寅三郎:鳥居が嫌いって言いたいのか?(笑)
耀蔵:言ってしまっていいんだぞ(笑)。
亜弥:でも、紫様はいい人だから鳥居の悪口言いたくなくて……ううううわーん、軋羽さん助けてーっ!(一同笑)
軋羽:じゃあ出てこようか(笑)。実はあたいもひとつ亜弥に頼みたいことがあったんだ。いいですか、GM?
GM:ほいさ、もちろんです。
軋羽:じゃあ、あたいは襖を開けて「ここにいたのかい、亜弥」
亜弥:(ぱあっと顔が明るくなって)「軋羽さん!」
寅三郎:すっかりなついたなあ(笑)。
軋羽:「随分とがんばったね、あんたはよくやったよ」と、頭を撫でてやろう。
亜弥:「すみません、迷惑をかけっぱなしで……」
軋羽:「何をいうんだい、子供は学んでなんぼだよ。いや、あたいだっていつもそうさ」
亜弥:「軋羽さんも、ですか?」
軋羽:「そうとも。……そうだ、あんたに教えて欲しい事がひとつあるんだよ」
亜弥:軋羽さんの役に立てるなら嬉しいな。「……あたしに、ですか?」
軋羽:「あんた、読み書きができるんだろう? (少し恥ずかしそうに頭を掻いて)あたいは仮名を読むのがやっとこ、書く方はさっぱりでさ。里の……故郷の連中に、手紙のひとつも満足に返してやれなくてね」

 だから、と、軋羽は身をかがめ、亜弥の眼を見つめて笑う。
「あたいはあんたに戦い方を教える。代わりに亜弥は読み書きを教えてくれる。これで対等、貸し借りなしだ。どうだい?」


亜弥:(嬉しそうな顔になって)「はいっ!」
軋羽:じゃあ、亜弥の頭をぐりぐり撫でてやりましょう。

 少女はこの屋敷に来てから初めての笑みを浮かべた。
 髪の毛を撫でる軋羽の手が温かい。
 兄の死と仇への憎悪、そして妖異を斬った責――――。
 凍てついた血錆に固まりそうだった心が、少し、温もりに溶けた気がした。




■エンディング03 黒羽烏と隠し事  ――――シーンプレイヤー:軋羽

 魔縁の身には、他の天狗衆との付き合いは居心地が悪い。軋羽は奉行所内の同心長屋ではなく、近場の長屋に身をおいていた。
 間者の任にはこちらの方が都合がよい。それに、独りで過ごすのは慣れていた。
 軋羽は長屋の窓枠に座り、片腕に腕に止まらせた烏を見つめていた。


GM:では、軋羽のエンディング。君は長屋で、大久保古河守からの使者――一羽の烏に報告を行っている。
亜弥:使者も妖怪なんだ!?
寅三郎:いや、術者かもしれん。大久保の人脈は謎が深いな……。
GM:「大久保様はあなたの報告をお待ちでございます。勘定奉行の一件、鳥居の黒衣衆が抑えたと見てよろしいですか」
軋羽:「ええ、表向きは火事場の事故となっていますがね。鳥居の隠蔽工作は一流ですよ」黒衣衆の動きや、秋葉原屋敷の内情など、間者として調べた報告を述べていきましょう。
GM:寅三郎の秘剣については?
軋羽:言わないよ。寅三郎と約束をしたからね。
耀蔵:そなた間者だろう。それでいいのか(笑)。
軋羽:あたいは渡世人だもの、約束は守るんだ!(笑)

 「――という顛末でございます」
 淡々と報告を行う軋羽は、どこか上の空だ。


GM:「どうしました? なにか気がかりな事でもあるのですか?」
軋羽:「いえ、すみません。鳥居の件についてはそれ以上わかりませんでした」と答えつつ……実は、亜弥のことをどう話そうか、迷っているのです。
GM:「ところで、最近鳥居甲斐守殿が娘をひとり、捕らえたご様子ですが」
軋羽:ぎくっ。
GM:「勘定奉行への討ち入りの際も、共に連れて行ったご様子。……あの娘、もしや英傑などという事は?」

 烏の眼が暗い光を放つ。
 軋羽はしばし逡巡した。
 妖異を倒して震えていた、そして文字を教えると言って笑った少女。
 駿河に残してきた童子たちと、さして年の変わらぬその顔を思い返す。


軋羽:「…………いや、鳥居様が戯れに戦場に連れ出してはいるけどね。所詮はただの町娘さ」
亜弥:軋羽さん、内緒にしてくれた……!
耀蔵:あくまで、兄を殺されてわしに弄ばれている子供、ということにするのか。
寅三郎:鳥居様に従う英傑だと解ったら、危険人物としてマークされるだろうしな。
軋羽:はい。あんなにせいいっぱいな亜弥を、これ以上危険な目に合わせたくない。だからつい、そう報告してしまいます。
GM:「では、英傑ではない、と?」
軋羽:「ああ、ただの寵童ですよ。妖異に惑うさまを眺めて、楽しんでいるんですよ。鳥居も悪趣味なことをするもんさ」
GM:「左様でございますか」烏が不機嫌そうに答える。
軋羽:う、隠しているのがばれたかな(汗)。
GM:いや、どちらかというと軋羽に対して不快感を持っているようだね。なんというか、嫉妬と怒りが入り混じっている感じ。
寅三郎:んー? 不思議な感じだ。なんだろう。
GM:(不機嫌な声で)「報告ご苦労様です。大久保様は、あなたにとても期待しておられます。くれぐれも、失望させることのないように」
軋羽:「なんだか、随分と険がありますね。どうかなされましたか?」
GM:「何も、何もありませぬ!」
軋羽:(鼻で笑って)「そうかい?」
GM:「わっちのことなど気にせずに、職務を遂行なさるがよろしいでしょう!」
軋羽:「そうさせてもらいましょう。大久保様にはよろしくお伝えくださいよ? あたいがよい働きをしてるってね」

 憤懣の声をにじませた烏は乱暴に羽を広げ、黒羽を畳の上に撒き散らすと、空へ飛び去っていく。
 消えていく黒影を眺め、ぽつりと軋羽は呟いた。


軋羽:「やっちまったねえ……。借りだからね、亜弥」



■エンディング04 鬼と少女  ――――シーンプレイヤー:鳥居耀蔵

 勘定奉行の一件は巷を騒がせたが、すぐに新たな事件へと人々の興味は移っていった。江戸っ子の流行り廃りは吹く風のように早い。
 しかし、亜弥の中には兄の姿が色あせることはない。
 少女が妖異を斬って幾日が経ったころ、久しぶりに南町奉行がその姿を見せた。


GM:ラストは鳥居様のエンディングだ。
耀蔵:亜弥に出てきてもらっていいか。連れていかねばならんところがある。
亜弥:じゃあ、あたしは今日も、秋葉原のお屋敷の庭を掃いてます。シャッシャッシャッシャッ!(箒を掃く音)
耀蔵:ではそこにやってきて「また、掃除をしておるのか」
亜弥:びくっ! じゃあ箒を止めて、両手で握りしめる。「なにか、御用ですか?」
耀蔵:亜弥にひとつの風呂敷包みを渡して、「着替えろ。紫に手伝ってもらうといい。準備が終わったら、門の前で待っている」
亜弥:なに……? こいつの考えてることはわからない。紫さんに手伝ってもらって着替えて、恐る恐る着いていきます。

 鳥居が亜弥を連れていった先は、神田川を遠目に望む小さな墓地であった。

耀蔵:墓地には寺の坊主が待っており、読経の支度が整えられている。
亜弥:思いもかけない場所に連れて来られた……。きょろきょろしながら後を着いていきます。ここ、は……?

 鳥居の足が、ひとつの小さな墓石の前で止まった。
 そこに掘られた、ひとつの名。


耀蔵:「そなたの兄の墓だ」
一同:おお……!
亜弥:兄ちゃんの……! 墓石に恐る恐る触れて、彫られている名前を指でなぞって。「兄ちゃ……っ」って言いかるんだけど、堪えきれずに涙がぼろぼろと零れ落ちます。

 改めて目前に記された兄の死。
 しゃくりあげる少女の背後で読経が響きはじめる。
 泣き声が引きつったしゃくり声に変わる頃、それは静かに終わった。

 
亜弥:泣きじゃくりながら、お墓に手を合わせます。
耀蔵:「遺体に会わせることができずに、すまなかったな。わしはそのような感情についてはよくわからんが、市井の者はそうなのであろう?」
亜弥:「……お墓、作ってくれてありがとう、ございます」
耀蔵:「墓を作ったのは、そなたの兄が妖異になったからだ」
亜弥:「えっ……」
耀蔵:「この者がいかなる妖異であったか、未だ謎が多い。死体を放置しておけば、周りの者も妖異になるかもしれん。故に火葬した。その灰から妖異になる者が出ぬよう、墓の結界に押し込める必要があった。それだけだ」
寅三郎:ああああ、わざわざ言わんでもいいことを(笑)。
軋羽:お前の為に作ったとか言えば、少しはなついてくれるでしょうに。不器用な人だ(笑)。
亜弥:カッ! って頭の中が熱くなっちゃう。立ち上がって叫びます。「あっ、あんたは……っ! 兄ちゃんを斬ったくせにそんな涼しい顔をして……!」
耀蔵:「わしはな、先の詰問の際、そなたにひとつ、嘘をついた」
亜弥:「嘘……?」殴りかかろうとしてたんだけど、手が止まって。
耀蔵:「そなたの兄が死んだのは、そなたの兄がわしを殺そうとしたからではない。そなたの兄が妖異であったからだ」

 鳥居は歩を進め、墓石にかかる木漏れ日の梢を見上げた。
「そなたの兄がなぜ妖異になったかはわからぬ。その真実をわしも知らぬ。……だが、そなたは知りたいのであろう?」


耀蔵:「……この国は今、妖異に食い潰されかかっている。誰もが欲に走って、あの勘定奉行や餓鬼のようにならんとしている。わしはそれを止める。そなたの兄のような者を、出すわけにはいかぬのだ」
亜弥:(睨み付けたまま)「後藤田様は、兄ちゃんのことを知らないって言ってた。兄ちゃんは本当に妖異だったの? あんたが、嘘をついてるってことはないの?」
耀蔵:「そうかもしれん」
亜弥:「……っ!」
耀蔵:「そうでないかもしれん。その真偽を証明する術を、わしは持ち合わせておらん。重要なのは、そなたがどうしたいか。……そうではないか?」

 それは、亜弥がここ数日の間、ずっと考え続けていた問いでもあった。
 このままひとり、野に出ても身よりも行先もない。迷い迷って苦界に落ちるのが関の山だ。
 鳥居の元を離れれば、鳥居を討つことは難しくなる。
 もし、兄が妖異であったのが真実ならば、黒衣衆として兄と繋がる妖異を探すのが一番早い。
 少女は唇をかみしめた。
 ……どうしたいかなんて白々しい。結局、鳥居の元に居るしか道はないのだ。


亜弥:「……あたしは、あんまり頭がよくないから、難しいことはよくわかんない。でも、ここから出たってもう、行くとこなんてないってことぐらいはわかる」
耀蔵:「わしは、そなたに鬼になれ、と言っている。決して褒められたことではあるまい。しかし、誰かが鬼にならねば、妖異は覆せぬ」
亜弥:「………………なるもん」
軋羽:亜弥……。
亜弥:「兄ちゃんに何があったかを知るためだったら、あたしは鬼にでも何でもなる。あんたの下でも働く。妖異を沢山やっつける」

「――――そして、絶対に、兄ちゃんの仇を討つんだ!」
 涙にぬれた顔で、声の限りに亜弥は叫んだ。
 憎悪に染まった瞳が、鳥居を貫く。
 しかし少女を見つめ返す南町奉行の瞳に、感情を伺い知ることはできない。


耀蔵:「……そうだ、わしはそなたを鬼にするのだ。全てが明らかになった後に、好きにするがいい。それで構わん」
亜弥:(無言で睨み続ける)

「しばし、別れを惜しむがいい」
 踵を返し、鳥居は墓地を歩み去っていく。
 奉行の姿が消えるまで睨み据えてから、亜弥は再び兄の墓を振り返った。
 懐から布袋を取り出して、そっと供える。
 ……あの夜、渡せなかった十二文。
 暖かな長屋の日々の記憶は、兄に託して置いていく。


亜弥:「兄ちゃん……、あたし、絶対に仇を討つから……」

 線香の細い煙が空へと溶けていく。
 そっと手を合わせる少女の頬に、再び静かに涙が伝った。




南町黒衣録 赤墨の予兆 完

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南町黒衣録 第二話「赤墨乱舞」第一幕へ続く