文・絵:すがのたすく

前回のリプレイはこちら 

 亜弥は江戸の片隅で、兄の弥八と倹しくも幸せな生活を送っていた。
 しかし新月の夜、南町奉行鳥居甲斐守耀蔵に兄を斬り殺された彼女は、自身も捕らえられてしまう。
 小さな長屋で蘭書を学んでいた少女の運命は、兄の死をきっかけに大きく動きはじめた。



ミドルフェイズ

■ミドル01 涙の目覚め  ――――シーンプレイヤー:亜弥


 夢を見ていた。
 兄ちゃんが笑顔で帰ってくる夢。
 もう二度とやってくることのない、昨日までの思い出。


GM:よし、ミドルフェイズだ。最初は亜弥のシーン。えっと、鳥居様に確認ですが、亜弥を連れていくのは自分のお屋敷だったっけ?
耀蔵:うむ。奉行所だと夜勤の同心が詰めているだろうし、勝手のききやすい下野――今でいう秋葉原の屋敷に連れて行こう。
寅三郎:ちなみに奉行所にも、役宅という奉行が住む屋敷が併設されています。いわば奉行職用の社宅ですね。
軋羽:へええ、じゃあふたつのお屋敷を行ったり来たりしながら仕事をしているんですね。
亜弥:あたしの長屋生活とは大違いだー(笑)。
GM:なにせ天下の町奉行だからね! では、秋葉原の屋敷に運び込まれた亜弥、君が夢を見ているところからはじめましょう。
 
「ただいま、亜弥」
 四畳半の長屋に声が響く。
 兄の弥八がいつもと同じ笑顔で、いつもと同じように戸をカラリと開ける。


亜弥:じゃあ、「兄ちゃん! 恐い夢を見たんだよう」って、半泣きで、十二文を握りしめて駆け寄っていく。
GM:戸口から覗く空は月のない闇。「ただいま、亜弥」ともう一度弥八は微笑む。
亜弥:「あんね、兄ちゃんが斬られちゃう夢で、それで――」
GM:「ただいま、亜弥」笑顔のままで言葉を繰り返す兄の胸から、バシャ……と血が噴き出す。
亜弥:うわあああっ!
軋羽:亜弥の頬に血が飛んだり。
GM:笑みを浮かべたまま崩れ落ちる兄の背後に、血刃の煌めき。そこには、残虐な憫笑を浮かべる南町奉行の姿。
亜弥:「兄ちゃんっっっ!」叫びながら飛び起きます!

 見たこともないほど立派な、どこかの屋敷と思しき室内。
 外からは柔らかな陽の光と、鳥の声が響いている。
 悲鳴と共に飛び起きた亜弥は、自分が知らない場所に寝かされていることに気づいた。


軋羽:チュンチュン、ピチチチチチチ……(鳥の声)
亜弥:え、えっ? なんだかすごい部屋にいる……。
GM:二十畳を超える青畳の間があって、開け放たれてた襖の向こう側には、同じような部屋がはるか向こうまでいくつも続いている。
亜弥:「ここ、どこ……?」ぽかーんとしながら、とりあえず身なりを整えます。
寅三郎:兄ちゃんの事が頭から吹っ飛んでるぞ(笑)。
亜弥:だ、だって、見たこともない場所だから、まだ夢の続きみたいな気分で……(笑)。
GM:かすかな音と共に、亜弥の背後の襖が開く。
亜弥:びくっ! 後ずさりながら振り返ります。
GM:「気がつかれましたか」襖の前で、ひとりの女性が膝をついている。

 年は二十と少しだろうか、濡羽色の髪をひとつに結った、清楚な佇まいの女性であった。
 脇には一組の膳が置かれ、漂う米と焼き魚の匂いが亜弥の腹をくすぐる。


亜弥:じゃあお膳を見て、おなかがぐーっと鳴ります(一同笑)。
寅三郎:まず飯かよ(笑)。
軋羽:可愛い(笑)。
亜弥:き、昨日の夜から何も食べてないんだもん! えっと、女の人に声をかけます。「あ、あの……ここは、どこ、ですか……?」
GM:彼女は部屋へ入ると膳の用意をしながら、「甲斐守様の、秋葉原の屋敷にございまする」
寅三郎:亜弥の居た本所から秋葉原ってーと、それなりに歩く距離だな。
亜弥:いつのまにか遠くまで来ちゃってる……。「甲斐、守……?」
GM:女性はにこりと笑う。「鳥居甲斐守忠耀(※01)様にございまする」
亜弥:(息を呑んで)「…………ッ!!」
GM:「お腹がおすきでしょう」君の様子に気づいているのかいないのか、女性はてきぱきと亜弥の前に膳を置いていく。豪華ではないけどきちんとした食事です。
耀蔵:玄米に、青菜とシジミ汁と小魚が二尾ほどかな。
亜弥:じゃあ呆然としていたんだけど、お茶碗にふらふらと手を――――(一同爆笑)。
寅三郎:おい、鳥居のことを聞けよ!
軋羽:食いしんぼキャラですか(笑)。
GM:「まずは、召し上がってくださいませ」湯気を立てたお茶碗が目の前に。
亜弥:言いたいことも聞きたいことも山ほどあるんだけど、ご飯の匂いを嗅いだらなにも考えられなくなっちゃって、箸を取ってガツガツ食べはじめます。「いただきます!」

 亜弥は目の前の膳に飛びついた。空っぽの臓腑が温かく満たされていく。
 茶碗を掻き込みながら、少女は小さな頭を懸命にめぐらせた。
 ――――兄ちゃんが南町奉行に殺された。
 兄ちゃんが罪を犯したんだろうか。ううん、兄ちゃんが悪しきことをするはずなんてない。
 南町奉行は悪い奴だ。きっと兄ちゃんに因縁をつけたんだ。
 でも、あたしは南町奉行に捕まって、それで、これからどうなるんだろう――――。
 黒髪の女性は微笑みながら、少女が箸を置くまでの間、その様子を静かに見つめていた。


亜弥:いっぱい考えながらご飯を食べ終わって、それで、ちょっと震えながら女の人に聞きます。「あ、あの、あたしは、これから小伝馬町の牢屋とかに連れてかれるんですか……?」
GM:「貴方は、罪を犯されたのですか?」
亜弥:(ふるふると首を振って)「でも、兄ちゃんが斬られて……」
GM:「それは、お辛かったでしょう」と、君の頭を撫でようと手を伸ば――――。
亜弥:バシッ! って手を払いのけて立ち上がります。「斬ったのはここの殿様だよ!」
軋羽:おお。
GM:「どうか、落ち着いてくださいまし」
亜弥:落ち着けない! ぼろぼろ涙を流しながら、「なんで、なんで兄ちゃんを斬ったの!?」って、女の人を掴んで揺さぶります。
GM:彼女は君にされるがまま、少しだけ悲しそうな、困った顔になる。
亜弥:「兄ちゃんを返せ! 兄ちゃんを返してようぅぅぅっ!」ポカポカ叩きまくるんだけど、涙が止まらなくって、そのまましがみついてわんわん泣いてしまう。
GM:彼女は君を優しく抱きしめると、静かに頭を撫でる。
亜弥:「うぅ……えぐ……っ、死んじゃったの……。悪いこと、するわけないのに、斬られちゃったの……兄ちゃん、弥八兄ちゃん……」
GM:彼女は静かに、指で君の髪を梳く。「大切な、お兄様でしたのね」
亜弥:鼻水とか涙でびちゃびちゃになりながら、こくっと頷きます。
GM:「お兄様は弥八、とおっしゃるのですね。あなたのことは、なんとお呼びすればよろしいでしょうか」
亜弥:(しゃくりあげながら)「…………亜弥」
GM:(微笑んで)「お兄様とお揃いの、素敵なお名前ですね」
寅三郎:あ、弥八と亜弥で“弥”繋がりなのか。うまいな。
亜弥:そうそう、そうなんです。気付いてもらえて嬉しいなあ。このお姉さん、いい人だ(ほわん)。
GM:彼女はそのまま静かに君を抱きしめる。「亜弥さん。此度の件、とてもお辛いことと思います。殿様を憎まれるお気持ちもありましょう。しかしお兄様のこと、そのような事態に至る訳があるはず。沙汰があるまで、しばしこの屋敷でお待ちくださいませ」
亜弥:「……わかり、ました」今すぐ鳥居の所に行ってめっちゃめちゃにしてやりたいけど、どこに行けばいいのかもわかんないし、このお姉さんは悪い人じゃなさそうなので、今はこらえることにする。
GM:「わたくしは紫(ゆかり)と申します。亜弥さんのお世話をいいつかっておりますので、何かありましたらお声をかけて下さいませ」
寅三郎:紫!? ……あ、プリプレイで言ってた鳥居様の側室か。
亜弥:この人が! じゃあ、抱きしめられてたところからバッと顔を上げて、「そ、それなら! それまで、この屋敷のこと手伝わせてください!」
一同:おおっ!?
GM:それは、紫はびっくりした顔になるよ。
亜弥:「あたし、こんなところでじっと待ってなんかいられない! なにより、ここの殿様からタダ飯食わせてもらうだなんて、ぜったい嫌!」キッ、と紫さんを見る。
耀蔵:借りは作らんということか。
亜弥:うん、弱みなんか見せたくない。兄ちゃんの仇に借りなんてぜったい作らない!
GM:紫はしばし困惑した顔になった後、静かに微笑んで立ち上がる。「……では、亜弥さん。まずは朝餉の片づけを一緒にお願いできますか?」
亜弥:「はい!」ぐちゃぐちゃの顔を拭って、お膳を持って、紫さんについていきます。
GM:では、亜弥が紫と共に部屋を出て行ったところで一度シーンを切りましょう。
軋羽:気丈や、ええ子やなあ……(ほろり)。
寅三郎:しかし紫は20代前半か。思ったより若いな。
亜弥:鳥居さんって40代半ばですよね? こいつぁたまらんね!(満面の笑みで)
GM:たまんねェだろう!!(力強く拳を握る)
寅三郎:お、おまえら…………。
耀蔵:この時代だとそう珍しいことではないぞ(笑)。


■ミドル02 昨晩の沙汰  ――――シーンプレイヤー:石蕗寅三郎

 奉行襲撃から一夜が明けた。
 寅三郎は本庄と共に、主を襲った賊の身元を割るため、夜を挺して調査を続けていた。


GM:さて、次は南町奉行の元に、昨晩の襲撃の調査結果が集まることとなるのですが……最初に聞いておきたいんだけど、鳥居様は昨日の襲撃の後、何をしましたでしょうか?
耀蔵:そうだな……、まずは襲撃者の検死、次にその似顔絵の作成。
亜弥:ふむふむ。
耀蔵:(淡々と)夜が明け次第、周辺の長屋などへ、襲撃者の聞き込みを行わせる。身元が判明次第、家捜しを。石蕗と本庄を呼び、連続襲撃事件との類似性を確認させ――――(以下、滔々と続く)。
亜弥:す、すごい…………(絶句)。
軋羽:さすが、一分の隙もない動きだ。
GM:では、それらの報告を持ってくる寅三郎のシーンにしよう。日が昇ったら鳥居様は奉行職もこなさないといけないだろうし、場所は奉行所の役宅にしましょう。
寅三郎:は、了解です。本庄殿と一緒に鳥居様の元へ向かうこととしよう。
GM:まず一夜の間に判明することは、襲撃者の身元について。

 賊の身元はすぐに割れた。
 本所の達磨横丁に住む兄妹。死んだのは兄、弥八。噂では、蘭学者だという。
 現場へ居合わせ、鳥居に害を成そうとした妹、亜弥は捕縛され、奉行の秋葉原屋敷に軟禁されている。

寅三郎:なるほど……。(考えながら)太刀筋についてはわからないか? 俺は剣客なんで、非常に気になるところなんだ。
GM:そうだなあ、じゃあダイスを振ってくださいな。情報収集シーンの項目の予定だったんだけど、先に出しちゃおう。
寅三郎:情報の難易度は?
GM:“弥八について”、能力値の【理知】か【知覚】で達成値は8以上です。
寅三郎:では【知覚】で判定しよう。――13で成功。
GM:ほいほい、では情報だ。……実は、鳥居や寅三郎の活躍により、今回の鳥居襲撃事件では斬られた人がいないのです。
寅三郎:あ、そういえばそうだった。
GM:なので、太刀筋については分からない。ただし、賊が放った赤い墨に巻かれて死んだ数名の護衛には、身体に帯状の跡がうっすらと残っている。
軋羽:ということは、連続襲撃事件の下手人とは違う?
耀蔵:いや、刀も出していたし、完全にそうでないともいえん。
寅三郎:そこは斬られてみんとわからなかったか。
GM:情報判定に成功してるので、一緒に弥八の遺体の検視結果も出しちゃうね。弥八の死体には、妖異であった痕跡が残っていません。身体から生みだしていた赤い刃も、きれいさっぱり消えうせております。裂けていた口もまったくの元通り。
寅三郎:妖異だった証拠もなしか。面倒だなあ。
亜弥:兄ちゃん……。
寅三郎:では本庄殿と一緒に、鳥居様の部屋へ向かうとするか。「――不覚でした。俺が腕の一本も落とされていればわかったんですが……残念です」
GM:本庄も眉をしかめる。「上空を張っていた天狗勢でも、確かな足取りが掴めねえ」
寅三郎:「はかばかしくないですな」
GM:「一連の強盗殺人と同じと思うか?」
寅三郎:(しばしの沈黙の後)「……恨みを持っている、と見ました。何かしら鳥居様に恨みがあって斬りかかった。それを妖異にした奴がいる、と」
GM:「昨夜の件、ひとくくりにするは尚早か。が、今のままでは推測の域を出んな」
寅三郎:それには、無言でついていきます。

 ふたりの足が襖の前で止まる。奉行詰所――鳥居の執務室だ。

寅三郎:「鳥居甲斐守様」
耀蔵:では登場しよう。登場判定は成功。わしは文机で書き物をしている。「入るがよい」
寅三郎:「はっ」と中に入り、慣れた様子で報告をする。「――賊の在所は知れましたが、身元につきましては不明な点も多く、しかるべくして調べを進めます」
耀蔵:「達磨横丁の調べをまず進めるがよかろう」筆を進めながら、「妖異の件は表には出せぬ。他の罪状が必要だ」
寅三郎:「乱心して鳥居様を狙った――とでもいうところでしょうか」
耀蔵:「乱心にも理由が必要でな」
寅三郎:「たかの知れた蘭学者ふぜいがひとり、とは思いますが、公儀に届出が必要ですからな」
耀蔵:「ならば話は早い。文書を偽造させよ」
GM:ぎ、偽造っ!?
軋羽:さらっとそんな!
亜弥:やっぱり悪者だーっ!
寅三郎:「は、かしこまりました。しかし、討たれた二名の黒衣衆の傷。そして腕の刃。伊崎屋の件と下手人は違いますな」
耀蔵:「無縁か?」
寅三郎:「完全に無縁かは図りかねます。ただ、あの弥八という男がやったとは考えがたい。妖異を放って要人や大店を襲っている奴がいる。これは間違いありますまい。ただ、単独犯ではなかろう、と、申し上げております」
耀蔵:(かすかに息をついて)「……話は、楽には済まんな」
GM:寅三郎の隣に座していた本庄が、「して、甲斐守さま。捕らえた娘はいかがいたしましょう?」
軋羽:いかがいたすんだろうねえ……(亜弥を見る)。
亜弥:うううっ、土蔵で折檻はいやだ……。
耀蔵:「今までの判例をもとに、罪が娘に及ぶかどうかを確認せよ」
GM:「はっ」
耀蔵:「娘の様子は?」
GM:「紫殿からの報告によれば」と、本庄はいささか妙な顔になる。「――甲斐守様の屋敷の掃除をしていると」(一同笑)
亜弥:(ガッツポーズで)がんばってるよっ!
耀蔵:書き物をしていた手をそこではじめて止めて、眉根を寄せて本庄を見る。
GM:「……とだけ、言付かっております」
耀蔵:「不可思議な」と言って、また筆を走らせはじめる。「……では、万事そのように進めるように」
寅三郎GM:「はっ」
耀蔵:(ぽつりと)「一度、真偽を図りに行かねばならんな……」
GM:では、そこでシーンを切りましょう。


■ミドル03 秋葉原屋敷詰問  ――――シーンプレイヤー:鳥居耀蔵

 罪状を記した文書はすぐに上がってきた。
 怨恨による刃傷沙汰――それが弥八が犯した罪となった。
 無感情な目で一連の書類に目を通した鳥居は、亜弥の詰問のため、秋葉原へと向かった。


GM:お次は鳥居様がシーンプレイヤーで、秋葉原の屋敷で亜弥と会うシーンにしましょうか。
耀蔵:最初に弥八の罪状偽造について決めておきたい所だ。亜弥に妖異の存在を隠したまま、兄の件を伝えることができるし。
GM:ああ、そうですね。表向きの罪状かあ……乱心とか?
耀蔵:いや、弥八が蘭学者であるならば、かつて蛮社の獄で潰した、尚歯会の蘭学者ということにしてしまおう。
寅三郎:あのときの恨み晴らさでおくべきか、で襲撃してきたって訳ですね。
耀蔵:うむ。黒衣衆にはかつて尚歯会に在籍した花井虎一がいる。彼に証言をでっち上げさせればすぐに済む。
亜弥:ひっ、ひどい! 南町ひどすぎる!
軋羽:(しんみりと)亜弥、これが大人の世界というものよ……。
亜弥:大人って汚い!(ぷるぷる震える)
耀蔵:なぜ屋敷の手伝いをしているのか真意を図りかねるので、直接対面するのが一番手っ取り早いだろう、と判断し、亜弥に会いに行くとしよう。
GM:了解です。では秋葉原の屋敷。君が屋敷の門をくぐると――――亜弥は紫の手伝いをしてるんだよね。廊下拭きとか、風呂炊きとかしてる?
亜弥:じゃあ庭を掃き掃除してたい。シャッシャッシャッ!(箒の音)
耀蔵:「………………」(眉根を寄せて亜弥を見る)
亜弥:あたしはまだ気づかないで、力の限り箒を履いています。「こんなっ! 広い庭! おっきい屋敷! きっと年貢とかめっちゃめちゃしぼり取ってるんだ! ばか! ばかばかばかああぁっっっ!」(一同爆笑)
軋羽:ああ、掃く音に怒りが籠もって(笑)。
寅三郎:ていうか、江戸の町奉行は年貢取らねえよ(笑)。
GM:縁側に出てきた紫が鳥居に気づいて、三つ指をつく。「これは殿様。おかえりなさいませ」
耀蔵:亜弥を見ながら、紫の方へ歩み寄る。「…………何を、させている」
GM:「朝餉の借りを作るのは望まぬ、とのことでしたので」
耀蔵:「作らせておけ」
GM:「あの子の心の平静には、これがよろしいかと」
耀蔵:「あれは下人ではない」無言で紫を見つめ、明らかに意に沿わないことをしたんだぞ、と伝える。
GM:「出過ぎたことを、申し訳ありませぬ」紫は深々と頭を下げる。
耀蔵:「……あの娘を呼べ」とだけ言って踵を返すと、自分の書斎へ入っていきます。
GM:紫は頭を下げたまま鳥居を見送って。「――亜弥さん」
亜弥:「は、はいっ!」じゃあ紫さんのとこに駆けてきて。「次はなんのお手伝いですか?」
GM:(微笑んで)「殿様が書斎でお待ちです」
亜弥:箒を握りしめたままビクッとなる。「鳥……居!?」
GM:「はい、鳥居甲斐守様にございます」紫は優しく君の手から箒を離すと、その手を取る。「どうぞ、こちらへ」

 日は中天を指していたにもかかわらず、屋敷の廊下は妙に暗く感じられた。
 ギシ、ギシと、冷えた床板が鳴る。その音が亜弥には、やけに大きく恐ろしく響いていた。
「殿様、お連れいたしました」
 紫の声と共に目の前の襖が開かれる。文机の前に、剣呑な目つきの男がひとり。
 ――――兄の仇、鳥居甲斐守耀蔵。
 無意識のうちに固く握りしめた手は、じっとりと汗ばんでいた。


亜弥:心臓がバクバクしながら、おそるおそる部屋の中に入ります。「失礼、します」
耀蔵:「…………」内心で首をかしげる。昨夜のように飛びかかってくるかと思ったが、一体どういうわけだこの娘は。
亜弥:昨日は勢いのまま殴りかかったけど、今、改めて目の前で見ると、迫力に押されちゃう……。
寅三郎:がんばれ、亜弥(笑)。
軋羽:やっちまえー、負けんなー(笑)。
耀蔵:「娘、達磨横丁の弥八の妹か」
亜弥:手はぎゅっと握りしめて、立ち尽くしたままで、「亜弥、です……!」
耀蔵:「座れ」
亜弥:(ぷるぷるしながら)「あっ、あんた、が、よくも、兄ちゃんっ、をっ……!」
耀蔵:「座れ、と言っている」
亜弥:「…………はい」鳥居を睨み付けながら、畳の上に座ります。
軋羽:あーん、押し負けた(笑)。


耀蔵:では、書き物をしながら、「正式な吟味ではない。だが、聞かねばならんことがある。嘘偽りなく答えよ。そなたの家、兄と共に暮らしていた。相違ないか?」
亜弥:(睨んだままで)「……はい」
耀蔵:「兄が何をしていたかは、知っているか?」
亜弥:「兄ちゃんは……ずっと、どっかで働いてきて……その日のお駄賃稼いできてましたけど」
耀蔵:「親は?」
亜弥:「父ちゃんと母ちゃんは、あたしがちっちゃい時に死んじゃった……」
耀蔵:「兄が帰ってきた時に、妙な気配や匂いを漂わせていたことはあるか?」
亜弥:「あたしはそんなこと……知らない。兄ちゃんはいっつも、あたしがその日稼いだお駄賃を見て、偉いねって頭撫でてくれて。それから一緒に夕飯食べて。いつも、いつも優しいお兄ちゃんだった」
耀蔵:「暮らしぶりはどうだった。兄はどれくらい稼いできた?」
亜弥:「〜〜〜〜ッ!」バンッ!って立ち上がって、「なんで、なんでこんなことばっかり聞くん? それが兄ちゃんを斬ったのと関係あるの!?」
耀蔵:「お前の兄は、罪人だ。わしを殺そうとした」
亜弥:「ころ……ッ!?」その言葉には固まっちゃう。
耀蔵:(淡々と)「それも私怨だ。私的な恨みによって、わしを殺そうとした。ゆえに、わしはそなたの兄を斬った」
亜弥:「に、兄ちゃんがそんなこと、するもんか! それに、あんたに恨み持ってる人なんて、もっと沢山いるんだから!」
耀蔵:「そうだ、わしを恨みを持つ者はごまんといる。その中でそなたの兄が、行動した」(眉根を寄せて)「娘、喚くでない。人を殺すつもりであれば、己が殺されることも――――」
亜弥:うあああぁぁぁぁぁっっっ!(頭を抱えてのたうちはじめる)
寅三郎:どっ、ど、どうした平沢さん!?
軋羽:大丈夫!?
亜弥:(素に戻って)ごっ、ごめん! プレイヤーとしては「やばい。この状況めっっっちゃ面白い!」って思ってるんだけど、亜弥はもう死んじゃいそうなくらい辛いの! (一同爆笑)
耀蔵:はっはっは(笑)。
GM:わたくしも非常に美味しくいただいております(満ち足りた顔で)。……で、目の前の鳥居様をどうする、亜弥?
軋羽:この男を張っ倒しちゃっても良いんだよ?(笑)
亜弥:うううう〜っ、「あんたなんか、あんたなんか、江戸中の人からめっためたに斬られっちゃえばいいんだっっ!!」って叫ぶ!
耀蔵:それには答えず、亜弥の目をじっと見返す。
軋羽:うおお、動じねえ!
耀蔵:「して、これからどうする」
亜弥:これから……?(ハッとして)あ、あれ、兄ちゃんが罪人にされたら、あたしどうなっちゃうんだろう。
寅三郎:罪の内容にもよりますねえ。連座刑は廃止されてるはずだが……なにせ鳥居様を襲撃した当人が死んじゃったからなあ。
軋羽:武家だったらお家取り潰しの可能性もあるわけですが。
寅三郎:武家じゃないから取り上げるものもないからなあ。弥八が死んじゃったんで、それ以上の罪を追求できない状態のはず。法律上は。
GM::強いて言えば、捜査費用を亜弥から取り立てられるくらいかな。
亜弥:やめてぇ、一日十二文しか稼いでないのに!(笑)
寅三郎:しかし、実際厳しいな。家捜しの入った長屋には戻りづらい、身よりもない、罪人の家族という汚名もついて回る。この先もたったひとり生きていけるかどうか。

 兄を殺された憎しみと南町奉行への恐怖が全身を渦巻く中、天涯孤独となった自身に行き場がないことに気づいた亜弥は、途方もない心細さに襲われた。
 こぼれ落ちそうになる涙をこらえ、目の前の仇敵を睨み付ける。


亜弥:(かすれた声で)「……あたしは、牢に入れられるんじゃないの?」
耀蔵:「そなたを小伝馬送りにする金はない。このまま野に放り出せば十分であろう?」
亜弥:「…………」(泣きそうな顔でにらみつける)
耀蔵:「内職でもすれば生きてはいけよう。それとも、兄からなにか習ったか?」
亜弥:え? ええええっと……!(いきなりオロオロしはじめる)
寅三郎:どうした(笑)。
亜弥:だっだだだって蘭学教えてもらってたことバレたら大変なことに……って目を逸らして、アッ、逸らしちゃだめだめだめっ……って(一同爆笑)。
軋羽:挙動不審すぎる(笑)。
耀蔵:「習ったのだな」
亜弥:「………………はい」
耀蔵:「なにを習った」
亜弥:うう……、じゃあ観念して、「蘭学を、ちょっと」
耀蔵:「蘭学はな、手がいる。医であれば医師の手伝いが、軍学であればそれを読み解く人間がいる。兄はいずれ、そなたにそれをさせるつもりだったのであろう」
亜弥:それ、殺した本人が言うなんてひどいーーっ!(泣)
GM:(ガタッと立ち上がって)ひ、ひとでなし! 鳥居様の馬鹿! 冷血!!
寅三郎:まて、鳥居様への愛はどうしたんだ。
GM:(鳥居を指差しながら)そ、それとこれとは別だよ! こんなちまい女の子に無体すぎるでしょ! あんたは鬼か!!
軋羽:あんたがそういうシナリオにしてるんでしょう!(一同爆笑)

 鳥居は筆を止め、大粒の涙を溜めて恨めしげな目を向ける少女を見つめた。
 昨夜の刹那に見た、瞳に棲む英傑の輝き。そして出所の解らぬ蘭学知識を有している。
 ここで野に追いやるのは得策ではない。ならば。


耀蔵:「――娘、復讐の機会は必要か?」
一同:おおっ!?
軋羽:すごい質問が来た(笑)。
耀蔵:「言っておくが、仇討ちの案件には当たらない。そなたがわしを殺そうとすることは、そなたが新しい罪を重ねるということだ。……やってみたいか?」
亜弥:しばらく黙った後に、「今、この瞬間も、あたしはあんたがすっごく憎い……!」と絞り出します。
耀蔵:(不機嫌な顔で)「そなたの憎しみなどわかっておる。ただ憎いだけか。実行に移したいという気持ちはないのかと聞いている。移してもかまわんぞ。やれるものならな」
亜弥:「……っ!?」
耀蔵:「そしてその上で機会が欲しいというならば、わしの下で働け」
亜弥:「え……!?」(ぽかんとなる)
耀蔵:「手が足りておらん。蘭語が読める者はあまりおらんでな」
亜弥:こいつは何を言ってるんだろう、なんで復讐してもいいって言うの? でも、でも復讐はものすごくしたい! って思ってぐるぐる考えて。
寅三郎:一度ここを離れてしまうと、奉行には護衛もいっぱいいるし、近づくこともままならないだろうね。
軋羽:あたいもそのために黒衣衆に入ったわけだし。
亜弥:じゃあ、もいっかいキッと睨み付けて、「……絶対、絶対あんたの寝首を掻いてやるんだから!」
耀蔵:「娘ひとりにいかほどのことができるか、尽力してみせよ」
亜弥:うああぁぁっ!(悶え転がる)
GM:うああああぁぁぁ!(悶え転がる)
軋羽:おふたりがなにかを発散しておられる(笑)。
亜弥GM:鳥居様ああぁぁぁっ!!(ゴロゴロゴロゴロ)
耀蔵:そこで軋羽を呼ぼう。「―――軋羽」
軋羽:では登場しましょう。隣室の襖が音もなく開き、そこに膝をついています。
耀蔵:「この娘の面倒を任せる。仕込んでやれ」
軋羽:こ、この人は自分の殺し方を教えさせるつもりか……!? と心の中で愕然としながら、「わかりました。ではこの娘、あたいが預からせていただきます」
耀蔵:「紫、衣食はお前に任せる」
GM:(頭を垂れて)「かしこまりました。……亜弥さん、お部屋にご案内いたしましょう。こちらへ」
亜弥:「はっ、はい」じゃあ戸惑いながら、紫さんについて退場します。

 戸惑いを見せながら、亜弥が部屋から去っていく。
 鳥居はその姿を無言で見送った。少女の足音が聞こえなくなった後、誰ともなしに呟く。


耀蔵:「……あの娘、英傑かもしれぬ」
軋羽:じゃあ驚いた表情を見せて。「鳥居様、それは確かなことなんですか」
耀蔵:「わからん。だが、幾度も見たことのある目だ。あまり、放出したくない人材だ」
軋羽:「……なるほど。とりあえず彼女のことはあたいが目を光らせておきます」
GM:では、そこでシーンエンドいたしましょう。おおお、ピリピリしたシーンだった……!
亜弥:(両手を開いて)めっちゃ手のひらに汗かいちゃった。超怖かったー(一同笑)。


■ミドル04 子の刻の密談  ――――シーンプレイヤー:石蕗寅三郎

 夜半、鐘が新たな惨事を告げ鳴り響いた。
 今夜血の海に沈んだのは、山の手の旗本屋敷。
 やはり強盗殺人事件の賊は、弥八とは別の者が犯行に及んでいるようだ。
 黒衣衆たちは事件への対処のため、秋葉原の鳥居屋敷へと集った。


GM:次は寅三郎のシーンにいたしましょう。事件の調査に追われる君のもとに、新たな強盗事件の報が届く。
軋羽:ああー、今夜もまた。
寅三郎:やはりそちらの賊は弥八ではないか。そろそろ全員顔合わせしたいし、どこかに集まらないか?
耀蔵:それなら秋葉原の屋敷にしよう。亜弥も出やすいだろうし。
亜弥:こっそり皆が集まってるとこを覗きにいったりするよ!
寅三郎:ああ、いいね。じゃあそれでいこう。
GM:では、寅三郎。君と屋敷の廊下を歩く本庄は、いつになく不機嫌そうだ。「あの娘、屋敷に逗留することになったらしい」
寅三郎:「妙な目をしておりましたね。うまくは言えませんが。(苦笑いをして)坊主のような言い方をすれば、縁がある、とでもいうんですかね」
GM:「導きか」本庄は苦々しげな顔で、「……気に食わねえな。あの娘、甲斐守様に牙を剥くつもりだ」
亜弥:あ、本庄さんに嫌われてる……(ニコニコと揺れはじめる)。
軋羽:あんた節操ないな!(一同笑)
GM:「しかも、よりにもよって蘭学者だ。蘭学者に碌な奴ぁいねえ。その上小娘ってのは恩も情も知らん、災いの元だ」と吐き捨てる。
寅三郎:「まぁ、本庄殿が切れた時は、俺がやりますよ」
軋羽:じゃあそこであたいも登場しましょう。「寅三郎、間違って亜弥を斬らないようにしてくださいね」
寅三郎:それにはニヤリと笑って、「拙者の剣は、間違いようがねえですよ」
軋羽:「そういうことじゃないのさ。鳥居様がいうには、あの子は英傑らしいんだよ」
寅三郎:「へえぇ……なるほど。それはまぁ、面白い目をしているわけですな」
軋羽:「おかげであたいは子供のお守りさ。妖異と戦えると思いきや、まあずいぶんと拍子抜けしちまうね」
寅三郎:「なぁに。宮仕えなんてのはね、言ってみりゃどんな汚いことでもやります、という覚悟で入るもんですが、本当にやらされることはもっとくだらねぇことなんですよ」
軋羽:「へえ、くだらないこと?」
寅三郎:「借金の返済、坊主への言い訳、妾の斡旋……、そういうことをやるのが汚ぇことなんですよ。暗殺でもやれるなら結構結構」
GM:「なら俺たちは、文句の付けようのない主君に仕えているってことだ」と本庄が笑う。
寅三郎:ニタァ、と笑い返す。
亜弥:(拳を握りしめながら)寅三郎さん、ねちっこいかっこよさですね!
GM:なんというか、いい意味でPCっぽくない(笑)。
寅三郎:…………なんか俺、二話目くらいで死ぬ気がしてきた(一同爆笑)。
軋羽:「宮仕えの話は今度ゆっくり聞かせてくださいよ。あたいみたいな新参は、まだまだ鳥居様のことがわからなくてねえ」
寅三郎:「なに、喋るようなことでもないですよ」と言いながら、鳥居様の書斎へ行こう。

 鳥居の書斎に集まった黒衣衆たちは、事件の報告と対策を練り始めた。

耀蔵:わしも登場しよう。「連続強盗事件の件、いかようになっておる」
寅三郎:「旗本屋敷がやられました。現場については人員を差し向けている最中です」
軋羽:あたいは壁にもたれかかって聞いています。亜弥はどうするんだい?
亜弥:屋敷に置いてもらえることにはなったけど、黒衣衆ってわけじゃないんですよね。じゃあ、鳥居の寝首をかこうと向かうんだけど、様子が変なので、こっそり縁側から様子を伺うことにします。

 目をつむるたび、兄の死に様が脳裏に浮かぶ。
 寝ることなどできはしなかった。そう、ここは仇敵鳥居の屋敷。兄の仇を討つのだ。
 あてがわれた部屋から忍び出た亜弥は、納戸の箒を手に取った。
 昼に赴いた鳥居の書斎から、かすかに声が聞こえる。
 少女は足音を忍ばせながら、縁側伝いに声のする部屋へと近づいていった。


亜弥:で、障子にぷすって穴を開けて中を覗きます(一同笑)。
軋羽:おお、時代劇っぽい(笑)。
亜弥:(片目をつむって)んむー、よく見えない。何しゃべってるんだろう?
寅三郎:それは気付いちゃっていいかな。事件の報告をしていた手を止めて、「……鼠が、居ますな」
軋羽:障子に手を伸ばしてガラッと開けてしまおう。「ちょっと行儀が悪いんじゃないかい?」
亜弥:「わあーっ!」ゴロゴロゴロッ!(部屋に転がり入った音)
GM:「小娘、てめえさっそく盗み聞きか!」本庄が立ち上がって刀に手をかける。
耀蔵:「待て」本庄を制して、「何用だ」
亜弥:じゃあ箒を握りしめたまんま、鳥居を睨んで、「にっ、兄ちゃんの仇……っ!」
軋羽:ああん、可愛いなあ(笑)。
寅三郎:箒で仇討ちか(笑)。「どうします、鳥居様。聞かれましたが」
耀蔵:「ふむ…………」
亜弥:うっ、ううっ……!

 張り詰めた空気が薄暗い室内に流れる。
 それを破ったのは、軋羽の笑い声だった。


軋羽:「あははははっ、なかなか肝っ玉の据わった娘じゃあないですか」と笑って、亜弥の頭をぐしゃぐしゃと撫でましょう。「どうです鳥居様。聞かれちまったならいっそ、調べるのを手伝わせちゃあいかがでしょう?」
亜弥:軋羽さん!?
軋羽:実はあたいには、亜弥に参加してほしい理由があるんですよ。亜弥をうまく味方につければ、あたいが情報を得るのが容易になるからね。
寅三郎:ああ、なるほど。間者だもんなあ。
軋羽:「見た通り、この子なかなか度胸もあるようです。市井のほうにもいろいろと知り合いがいそうだし、役に立つかもしれません。それに、弥八の件も完全に無関係とは言えませんでしょう?」
GM:「軋羽、しゃべりすぎだ」眉間に皺を寄せて本庄が制そうとする。
亜弥:ガタッと立ち上がって、「兄ちゃんと関係があることなの!? 兄ちゃんが罪人だったって、やっぱり嘘だったの?」
軋羽:「兄貴のことがありゃあ、この子も軽々しく裏切りませんでしょう。なかなか役に立つかもしれませんよ?」と亜弥の肩を抱いて笑いましょう。
寅三郎:亜弥が英傑かもしれんという話を思い返しつつ、「鳥居様。あの娘には、自分がここに来たのと同じ、“縁”のようなものを感じます。連れまわしておいたほうが、因果が奇妙なほうへ流れずに済みましょう」
耀蔵:「ふむ……」妖異と相対するとなれば死ぬやもしれんが、英傑か見極めるのも容易か。
亜弥:皆、腹の中でいろんなことを考えてる……(笑)。
耀蔵:では本庄に、「此度の件、石蕗の下に軋羽と亜弥をつける。よいか」
GM:「……誠に、よろしい案かと思います」本庄は刀を床に置き、答える。鳥居に心酔している彼は、基本的に鳥居様の意志に異論はない。
軋羽:「決まりだね。こうなったら一緒に頑張ろうじゃないか」と、亜弥の背中をバシッと叩きましょう。
GM:これで全員一緒に事件に向かうことになったね。では、一度シーンを切りましょうか。
亜弥:鳥居の寝首を掻きにきたのに、あっという間になにかの事件を調べることになって、ううう、うわーん、兄ちゃーん、怖いよー(混乱)。
寅三郎:まあ、次のシーンでいろいろ説明してやるとしよう(笑)。


■ミドル05 大江戸捜査網  ――――シーンプレイヤー:軋羽

 夜明けが近い。障子越しの朝焼けが柔らかく清廉な光を放つ中、黒衣衆たちと少女は捜査に乗り出した。強盗殺人の下手人を探るため、そして兄の真実を知るために。

GM:次は軋羽のシーン。登場難易度はなしで、好きに登場してくださいな。
亜弥:あたしは登場します。いろいろと話を聞かないと!
寅三郎軋羽:登場!
耀蔵:わしはとりあえず様子見で。必要とあらば出てこよう。
GM:本庄も鳥居に着いて去っていく。君たち三人が秋葉原の屋敷を拠点に調査をはじめる、というところからはじめよう。
寅三郎:まずは亜弥に自己紹介をするか。「拙者の名は石蕗。石蕗寅三郎」
軋羽:「最近噂の“黄泉返しの寅”っていやあ有名ね。あたいは軋羽。そういやちゃんと挨拶もしてなかったね」
亜弥:「石蕗……さんに、軋羽、さん……。えっと、あたしは、亜弥といいます」
GM:素直だ(笑)。
亜弥:鳥居はめちゃめちゃ憎いんだけど、この人たちまで憎らしいのかどうか、わかんなくって。紫さんは優しかったし。それに、状況がよく呑み込めてないんだよう!(一同笑)
寅三郎:じゃあまずはこちらの状況を話そう。「江戸市中で、最近ご公儀の重要な方々が襲撃されている。お前の兄が鳥居様を襲ったのも、その一環である可能性がある」
軋羽:「一昨日の夜もあたいたちは鳥居様の傍を、着かず離れず監視をしていたのさ」
寅三郎:「そして、お前の兄が死んだ後、また今日も新しい事件が発生した」
亜弥:「それなら、兄ちゃんは犯人じゃないんじゃ……!」
寅三郎:「いや、お前の兄をそそのかして犯行を行わせた者が、複数の賊を用いているとも考えられる。それを突き止めることが、お前の兄の真相を突き止めることにもなろう」
亜弥:「兄ちゃんの真相……、それがわかるの?」
寅三郎:「それは、お前の働き次第だ」
軋羽:「鳥居様のことが憎くて仕方がないだろうが、兄貴がそんな奴じゃなかったっていうんなら、なんで鳥居様を襲ったのか、その理由が知りたくはないかい?」
亜弥:じゃあ軋羽さんの顔を見上げて強くうなずく。「うん……知りたい!」
軋羽:「素直でいい返事だね。でも無茶はしないでおくれよ? あんたのお目付け役は、このあたいなんだからさ」とりあえず夜が明けたら、亜弥を連れて市井を回って調査、ということになりますか。
GM:では、夜明けと共に、情報収集を開始だ!

【情報項目】
・連続強盗殺人事件について 【理知・知覚】 達成値:8・13
・弥八について     【理知】 達成値:8

GM:連続強盗殺人事件の能力値は、どちらでも出る情報は同じです。達成値は二段階で、高いほど沢山の情報が出るよ。
寅三郎:“弥八について”はミドルの最初に調べたのとは別?
GM:はい、別です。前に振ったのは死体の痕跡などについて。今回のは、弥八の社会的な、今までの経歴などの情報になります。
軋羽:そういえば何の仕事をしていたとかわからないですしね。
亜弥:そうだ、あたし《秘蔵の蘭書》(※02)を取得してるので、蘭書を持ってる設定なんですが、たぶん捕まった時に没収されてるんじゃないかなって思うんです。使っていいのかずっと気になってて。
GM:特にルール的なペナルティをつけるつもりはないけど、もしロールプレイ的に取られてたほうがよければ、《秘蔵の蘭書》を使えないことにしようか?
耀蔵:では、没収していたことにして、戦闘までには返せるように……ん、まてよ? 蘭書の効果はなんだっけ。
亜弥:【理知】の基本値に+4。それがないと情報つらいんです(一同笑)。
軋羽:じゃあ、没収される前にあたいが見つけて、こっそり隠し持っていたことにしてもいいかな。
寅三郎:おお、さすが白波。
軋羽:昔から手先は器用でね。で、亜弥にそっと蘭書を手渡します。「これ、あんたのもんだろう?」
亜弥:「こ、これ……っ!」
軋羽:「そんなに大事なものだったのかい?」
亜弥:小さく頷いて、蘭書を抱きしめます。「兄ちゃんにもらった本だから……」
軋羽:「そうかい、ちゃんと手元に戻ってきてよかったね」
亜弥:泣きそうになりながら、「軋羽さん、ありがとうございます……!」
寅三郎:軋羽が着実に亜弥を餌付けしている(笑)。
軋羽:「泣くんじゃないよ!」と言ってお尻をパアンっと叩いてですね。「きばっていきな、兄貴のこと、知りたいんだろう?」
亜弥:「はいっ!」

・弥八について

寅三郎:まずは弥八からいくか。(ダイスを振って)達成値13でちょうど成功だ。
GM:調査の結果、蛮社の獄に関連する書物の中に、弥八の名があることが判明する。弥八はかつて尚歯会に籍を置いていた蘭学者です。
寅三郎耀蔵:所属してたのかよ!!
GM:うむ。記録では、からくりや武器の設計などを得意としていた、とある。
寅三郎:こいつ真っ黒じゃねーか!
耀蔵:ぎ、偽造したつもりの罪状がそのまんまだとは……(呆然)。
亜弥:兄ちゃーんっ!?(笑)
GM:蛮社の獄ではかろうじて小伝馬町の牢行きを逃れまして、以来、江戸の片隅でひっそりと暮らしていました。質素だが食うには困っておらず、何をして日銭を稼いでいたのかは謎に包まれています。
亜弥:ううっ、兄ちゃん何をして食わせてくれてたの……?
GM:また、弥八の長屋を家捜しした際、蘭学関係の品は亜弥が持っていた蘭書以外は見つかっていません。
耀蔵:蘭学者が研究を諦めたりできるわけがない。他に研究所があるのか……?
軋羽:金回りの件を考えると、後ろ盾がいる可能性もあるね。
寅三郎:ほわんほわんほわーんと思い出す。そういえば坂本竜馬や桂小五郎とか、維新のテロリストのあいつらもおんなじだったなー(一同爆笑)。
亜弥:(耳をふさぎながら)こ、これ、あたしは聞いてないことにさせてください。ショックで脳みそパンクしちゃう!(一同笑)
寅三郎:それもいいんじゃないかな(笑)。「うーむ、調べれば調べるほど、どす黒いですなあ」
軋羽:「亜弥を飯屋に置いてきて正解だったね。こんなもんを見せられたらあの子、ずいぶんと落ち込むよ」
亜弥:ううっ、べこーんとへこんじゃう。
軋羽:「でも引っかかるね。亜弥の様子じゃ、兄貴にずいぶんと可愛がられていたみたいじゃないか。可愛い妹をぽいと残して、仇討ちするような真似ができるものかねえ」
寅三郎:「そうだな。それに本当に奴が、危険な兵器を使って謀反を考えていたのなら、手から妙な刃を出して斬りかかってきたりはせんだろう」
軋羽:「そうね。あれは確実に妖異の力だったよ」
寅三郎:蘭学バイオテクノロジーとかいう可能性もあるが、専門がからくりって言ってたからなあ。

・連続強盗殺人事件について

軋羽:項目は少ないし、ひとまず情報収集が得意な亜弥に任せちゃっていいかい?
亜弥:はい、がんばります!
軋羽:あたいは最初に、ひとつやりたい演出があるんですが、いいですか?
GM:ほいほい、どんな演出だろう?
軋羽:亜弥を連れて、江戸の町で事件の情報を調べるんですが、亜弥が横を向いてる隙に、胸元から鳥居邸の情報や帳簿の写し書きを取り出して、通りがかった飛脚に渡すんですよ。そうすると彼が金子をあたいに渡して去っていくのです。
GM:おおー、間者のお仕事だ(笑)。
軋羽:という演出で《盗賊働き》(※03)を使用。クラスレベル+2点の財産ポイントを得ます。
亜弥:すごーい!(パチパチ)
寅三郎:いいね。意外と金に困らないパーティー(笑)。
亜弥:じゃあ、“連続強盗殺人事件について”いきまーす。……う、出目が悪かった。達成値8の情報しか出ませんでした(涙)。
軋羽:初めてにしては上等上等。あたいも鳥居様もまだ判定できるし、大丈夫だよ。
GM:――巷で噂の連続強盗殺人事件。被害者は名のある豪商や旗本など。屋敷や夜道などで襲われている者が多い。現場にいた者はは手当たり次第殺され、金品が根こそぎ奪われている。生き残った者の証言によると、「あれは人ではなかった、餓鬼そのものだ」、と。
寅三郎:げっ、餓鬼か。面倒な敵が来たな。
亜弥:餓鬼? そんな地獄の化け物が本当にいるの? って思いながら調べを進めていきます。
軋羽:そうか、亜弥は妖異のことはなにも知らないものね。
亜弥:うん。餓鬼なんて読本や絵でしか見たことないから、半信半疑です。
GM:また、外部からの目撃情報が殆ど入っていないことから、残忍で粗暴な手口とは裏腹に、被害者の行動経路を把握した上で襲ったのではないかと思われる。
軋羽:計画的犯行かあ。逃亡した経路も不明?
GM:めぼしい目撃情報はありません。地の底に消えたか、あるいは逃走経路が確保されていたと考えられるね。
亜弥:事件の詳細を聞いて、手が震え出します。「なに、この事件……? こんな殺し方、人にできるの……?」

 背筋を冷たいものが流れ落ちる。
 強盗殺人、餓鬼、そしてそれに関わっているかもしれないという兄……。
 それは亜弥の知らないことばかりで、まるで底の見えぬ暗海に足を踏み入れてしまったかのような恐怖であった。


軋羽:では、震える亜弥の肩にそっと手を置きましょう。「まあ、事件に首を突っ込んじまったからには、知らないままって訳にもいかないわね」
亜弥:じゃあ、顔を上げて。「知らない……?」
軋羽:(髪を掻きながら)「隠されてはいるんだけどね、この世には妖異っていう化け物が巣食っているのさ」亜弥に信頼してもらうためにも、妖異の存在について、ひととおり話してしまいましょう。

 妖異――人の心の闇に潜む恐ろしい存在。
 怒り、絶望、快楽、あらゆる欲へと忍び込むそれは、人を悪鬼羅刹へと変貌させるという。


亜弥:「妖異……。(小さく震えながら)兄ちゃんも、それになっちゃったっていうの?」
軋羽:「鳥居様を襲っていた弥八は確かに妖異だった。でもあんたが兄貴の性根がまっすぐだったって言うんなら、それを歪めちまった黒幕がいるのかもしれないね」
亜弥:「鳥居のほかにも、仇がいるかもしれないの……?」ぎゅっ、と着物の裾を握り締めます。
軋羽:「それもきちんと調べないといけないねえ」と言って、あたいは達成値13を狙おう。(ダイスを振って)う、出目4……。
耀蔵:振りなおしてみる?
軋羽:いや、MPもったいないんで財産ポイント使っちゃいましょう。4点使って達成値13です。
GM:了解です。じゃあ裏路地から渡世人の男がやってきて、金子と引き換えに情報をくれる。「姉さんも随分物騒な件に関わってやすねぇ」
軋羽:「まあ、仕事ってやつさ」
GM:被害者の共通点を洗い出していくにつれ、彼らが死ぬことで得をする人物が絞られてくる。江戸の勘定奉行、後籐田兵右衛門(ごとうだへいえもん)だ。
軋羽:勘定奉行!?
耀蔵:随分と大物が浮かび上がってきたな。
GM:殺された者たちは、反後藤田派の幕閣や、後藤田への賄賂や癒着を拒んだものばかり。邪魔者がいなくなった彼は、急激に勢力を伸ばしつつある。ここで、“勘定奉行 後籐田兵右衛門について”という情報項目が新たに発生します。
亜弥:ちなみに、勘定奉行ってどんな職業なんですか?
寅三郎:勘定奉行とは、現在で言うところの財務大臣だね。ちなみに町奉行よりもえらい。
亜弥:ほえ〜〜、雲の上の人だ。その人が兄ちゃんを妖異にしたのかな?
寅三郎:そこはまだわからんな。ひとまず俺も亜弥たちに合流しよう。「俺たちだけで勘定奉行の内定にいくわけにもいくまい。鳥居様に報告いたそう」
軋羽:「随分と話がでかくなってきたね。亜弥、行くよ」
亜弥:「は、はいっ!」
GM:では、三人が屋敷へと戻っていったところでシーンエンドいたしましょう。



■ミドル06 餓鬼襲来  ――――シーンプレイヤー:亜弥

 連続強盗殺人事件の捜査線上に浮かび上がったのは、勘定奉行、後籐田兵右衛門。
 この男が兄と関わりがあるのだろうか。
 疑問を胸に抱きながら、亜弥は軋羽や寅三郎と共に、再び秋葉原の屋敷へと向かった。


GM:シーンプレイヤーは亜弥。三人が鳥居様の元へ報告に戻ったシーンにしましょう。全員登場だよー。
一同:はーい!
耀蔵:わしは、書斎で仕事をしながら勘定奉行について報告を受けよう。「証拠はどれほど出ている?」
寅三郎:「状況証拠のみです。物的証拠はありません。立件するにはあまりにも証拠が足りなさ過ぎますな。これ以上調べることもできますが、藪蛇になる可能性もございますので、ひとまずご報告に上がった次第です」
軋羽:「勘定奉行にあたいたちの存在が知られても困りますしね」
耀蔵:「勘定奉行……ろくなものではないな」
寅三郎:ちなみに、勘定奉行は寺社奉行と並んで、時代劇で殺される二大奉行だそうですよ。
亜弥:あはははは(笑)。
寅三郎:また、一番殺されるのは越後屋です(一同爆笑)。
軋羽:「やっぱり金の匂いがぷんぷんするところには、汚いものが集まるものですねえ」
耀蔵:「汚いものだけならいいがな。当人は清流のつもりで、その実は毒薬であることもある」と言って、後籐田を調べるとしよう。

・勘定奉行 後籐田兵右衛門について

耀蔵:では勘定奉行の情報を理知で――む、出目3。《名将の指揮》(※04)を使用して判定成功だ。
GM:後籐田兵右衛門、数年前に勘定奉行職についた、五十代前半のでっぷりと肥え太った男。酒と女と金と地位に執心する愚物であり、評判はすこぶる悪い(一同笑)。
亜弥:い、いかにもすぎる……(笑)。
GM:萎縮政策を行っている水野忠邦や鳥居とは非常に関係が悪い。以前から賄賂や買収、闇売買との繋がりなど、黒い噂がたびたび漏れ聞こえていた。最近彼の屋敷には、夜間に複数の黒い影が出入りし、庭に化け物の姿を見たという目撃情報もある。
軋羽:すごい、怪しいところしかない(笑)。
亜弥:全力で、ボスです!って言ってますよね(笑)。
寅三郎:これはまた、疑いようもないですなあ。
亜弥:兄ちゃんと繋がってそうな情報はなにか入ってないの?
GM:今のところはまったくないね。
亜弥:うー、そっか(しょぼん)。
軋羽:よしよしと亜弥の頭を撫でて、「兄貴との繋がりは、もうちょっと調べてみようね」
耀蔵:告発するにも証拠がいる。いや、それ以前に妖異と繋がっているとあらば、手段はひとつか。「……軋羽よ」
軋羽:「なんでございますか?」
耀蔵:「人の欲、というものをどう思う」
軋羽:「人の欲というものは底の知れぬものでございます。己がそれを飲み込んでいると思いきや、実際には飲み込まれて、逃れられずに溺れるようなものでございます」
耀蔵:「その通りだ。市井の者に一度贅沢を覚えさせれば、すぐに民衆はそれに満足できなくなる。その先を、もっと先をと思い詰め、際限はどこにあると思う?」
軋羽:「際限は無いのでしょう。それ故に欲、でございますので」
亜弥:「うぅーーーーっ……」だからって皆に厳しいことしてもいいってわけじゃない! って思うんだけど言えなくて、鳥居を睨み付けてます。
耀蔵:「この勘定奉行は、富に対し欲を抱いているようだ」と言って、立ち上がる。
寅三郎:「出ますか」 
GM:では、そこで全員【知覚】で判定をお願いします。目標値は14。
軋羽:知覚判定!? 目標値が結構高いね。
亜弥:(ダイスを握り締めて)な、なんだろう?
一同:(ダイスを振って)――――失敗!
軋羽:知覚が一番高いのは寅三郎ね。では寅に《天を砕く者》(※05)で振り直しを。「寅三郎、なにか感じたかい?」
寅三郎:(ダイスを振り直して)「…………なんにも」(一同爆笑)
軋羽:あーん!(笑)
亜弥:残念(笑)。
寅三郎:ここぞというところで役に立たないダイスのバカらしさよ。
耀蔵:わしの達成値12が最大値か。全員失敗だ。

 庭先で生じた数かな物音は、風の音に紛れて消えていく。
 ス……、と襖が開いた。戸の横で紫が指をつく。


GM:「みなさま、夕餉の支度が整いました。いかがなさいましょう?」
亜弥:じゃあ、怒りとか苛立ちとかでぐるぐるになってたんだけど、おなかはぐーって鳴ります(一同笑)。
軋羽:「あたいたちが支度してる間に、腹ごしらえでもしておくかい?」(笑)
耀蔵:(視線だけ向けて)「……紫」
GM:「かしこまりました」と紫が言いかけた刹那、部屋が揺れ、轟音が響く!
一同:おおおおおっ!?

 縁側に面した障子が、柱がはじけとんだ。
 十数名に上る男たちが、罵声を上げながら室内へとなだれ込む。
 男たちの衣裳は道を行く町人と変わらぬものであったが、濁った目と立ち上る瘴気が、彼らが人でないことを示していた。



亜弥:なっ、ななななななにっ!?
GM:男たちは口々に罵声を上げる。「鳥居はどこでえぇっ!」「ぐへへへへっ、逃げンじゃねえぜえぇぇ!?」「金だ、金エェェーッ!」
軋羽:「強盗事件の手の者だね。今度はご丁寧に屋敷まで押しかけてきたって訳かい!」
寅三郎:男たちを横目で見つつ、「まあこれはぞろぞろと、仰山出ましたな」
耀蔵:「困ったものだ。屋敷の修繕費もばかにならんというのに」
亜弥:なっ、なんでみんな平気な顔してるのーっ!?
GM:そんなわけでミドル戦闘だ。【知覚】判定に失敗したので、君たちは“不意打ち”をされた状態で開始いたします。
耀蔵:不意打ち!?
軋羽:(ルールブックを参照して)不意打ちの効果は……最初のラウンドが行動済みになる!? うわああっ!
亜弥:1ラウンドの間、攻撃受けっぱなしになるってこと!?
寅三郎:くそ、警戒しとけばよかった。新撰組だったらもう不意打ち受けた時点で切腹だよ。
GM:ふっふっふーん♪ ボコ殴りタイムのはじまりだ! (卓上に駒を並べながら)まず、PCたちと紫が1エンゲージ(※06)
軋羽:うわー紫さんいるのか、やべー!
寅三郎:げげ、守りながら戦わんといかんか。
GM:で、5メートル離れたところに、羅刹と思わしき男たちが計4グループです。
耀蔵:「石蕗、紫を」
寅三郎:「は。お任せください」
亜弥:「なっ、なにこの人たち……、壁、破って……!?」
軋羽:「亜弥、あんたも下がるんだ。あたいの後ろを離れるんじゃないよ!」
亜弥:「で、でも……っ!」わーん、箒とか持ってくればよかった! 何かないかときょろきょろ見回します。 
GM:では、壁際に護身用の薙刀が飾られている。
亜弥:咄嗟にそれを走って取って構える!
軋羽:「亜弥ッ!?」
亜弥:はじめて持つ薙刀の重みに震えながら。「だ、大丈夫、です……!」
耀蔵:(ぼそりと)「さて、これで亜弥が使い物になるか否かわかるな……」
軋羽:怖い! この人、目の前の敵すら見ていねえ(笑)。
亜弥:うわあああああ! ちくしょう、この蝮いいぃぃッ!(鳥居に向かって振りかぶる)
寅三郎:やめろ、今は敵と戦え!(笑)
耀蔵:(意に介さず)そうだGM、わし防具で《鎖帷子》(※07)を装備しているんだが、屋敷に居たので今は脱いでいてもいいか?
GM:ほいほい、いいですよー。では、戦闘開始だ!


■第一ラウンド


GM:では第一ラウンド。不意打ちの効果により、このラウンドはPCたちは全員行動済み。加えてリアクションの達成値に-3の修正です。
一同:ぐわーーーっ!
GM:陣形を整える君たちの前で、男たちが「やったらあァァ!」「てめェら皆殺しだあァァ!」と喚きながら、みるみるうちに餓鬼の姿へと変貌していく。
亜弥:びくっっ!「えっ、餓っ、餓鬼!?」
耀蔵:黙って亜弥の様子を観察します。……逃げ出しはしない、か。ならば良かろう。
GM:まずはセットアップ(※08)。特技を使用する人はいる?
亜弥:あたしはないです。
寅三郎:全員ないな。
GM:餓鬼たちもとくになし。ではイニシアチブプロセス(※09)だ。一番行動値の早い軋羽からカモン。
軋羽:不意打ちを受けていても、タイミングがイニシアチブやオートアクション(※10)の特技は使えます?
GM:行動済みだと使えない、と書いてない限りは大丈夫ですよん。
軋羽:なら、あたいは《天狗変》(※11)を使用。背中から黒い羽がバサバサッと生えていく。「ずいぶんとしけた連中だね。なめんじゃないよ!」
亜弥:「〜〜〜〜〜〜っ!?」軋羽さんまで妖怪になったあああ!(一同爆笑)
寅三郎:亜弥は天狗見るのも初めてか(笑)。
軋羽:驚かせて悪いわね。羽を広げて威嚇して、回避値+2。行動値+4!
GM:軋羽の変貌に餓鬼たちもどよめくが、怒涛の4連荘攻撃だ! マイナーアクション(※12)でPCたちのエンゲージへ移動。メジャーアクション(※13)で攻撃だ。1D6で対象を選ぼうかな。まず餓鬼Aの行動は――(ダイスを振って)亜弥!
亜弥:ふんにゃあ!
GM:命中値は13。避けてみい!
亜弥:リアクションに−3食らってるから、出目10以上……(ダイスを振って)無理だあぁ(涙)。
GM:では、〈殴〉16点!
亜弥:防御修正を4点引くから、12点食らって、残りHPは14だ。
GM:獣のように尖った爪が、亜弥を引き裂く。まともに食らったら真っ二つだ。
亜弥:「きゃあ……っ!」思わず薙刀でガードするんだけど、痛い痛いっ!
GM:次は餓鬼B、鳥居に対して……うわっ、ファンブル(※14)で攻撃失敗(涙)。
耀蔵:じゃあ餓鬼の爪に刀を突き立てて、こういうふうに――(肉を抉る仕草)。
GM:ぎゃああああっ! 餓鬼が絶叫を上げてのた打ち回る。
軋羽:敵のファンブルなのに、なぜ勝ち演出を(一同笑)。
亜弥:しかもえぐい! 兄ちゃんが斬られた時の姿を思い出して、全身が震えます。
GM:餓鬼Cは鳥居の傍らに居る紫を狙う。「女、女アァアア……!」と叫びながら達成値14で攻撃、紫は回避失敗だ!
亜弥:紫さんーっ!
耀蔵:「――石蕗」
寅三郎:「はっ」《援護防御》(※15)で紫殿をかばい、ダメージを引き受けよう。
GM:「てめえ、邪魔をするなあァァァッ!」ダメージは先ほどと同じだ、〈殴〉16点!
寅三郎:12点通った。まあ、まだいける。
軋羽:「寅三郎、大丈夫かい?」
寅三郎:(無言で頷く)
軋羽:寡黙だ。いいなぁ、寅三郎(ほわん)。
GM:餓鬼Dは軋羽に攻撃。むー、ちょっと出目が悪い。12だ。
軋羽:あたいは2以上でかわせるよ。(ダイスを振って)――うん、成功!
GM:2以上!? 不意打ちの効果の-3は計算してる?
軋羽:-3しても、回避は10なんですよ。
GM:マジで!?
亜弥:て、天狗すごい!
軋羽:「盗人猛々しいとはこのことだね!」と鼻で笑いながら攻撃をかわします。風を起こして吹き飛ばしちゃおうかね。
GM:ギャッと短い悲鳴を上げて餓鬼が吹き飛ぶ。「こっ、この化け物めえぇっ!」
軋羽:「化け物に化け物って言われるなんざ心外だよ!」
耀蔵:……ん? この餓鬼たちは人間的な自己認識をしているのか?
GM:そのようだね。で、餓鬼は全員行動終了だ。PCたちは行動済みなので、クリンナッププロセス(※16)だ。
耀蔵:ではここで、《玄武の癒し》(※17)
GM:う、回復特技があるのか。
耀蔵:ダイス目は……よし、12が出たので全員24点回復。
一同:おおおっ!
寅三郎:ダメージが全回復した(笑)。
亜弥:むしろオーバーして鼻血が出ちゃう(笑)。
GM:こ、このラウンドの攻撃が全部無駄に……(愕然)。
耀蔵:では亜弥に、「ひるむでない。そんな引け腰で仇を討てるのか」
亜弥:(キッとにらんで)「う、うるさいっ!」



■第二ラウンド


GM:では、第二ラウンド。ここからはPCも普通に行動可能です。セットアップ。
一同:特になし。
GM:はーい、こっちもなし。ではイニシアティブだ!
耀蔵:ここからが本番だ。「……殲滅せよ」
寅三郎軋羽:「承知!」
軋羽:まずはあたいからだね。「鼬ども、出番だよ!」と言って舞い上がると、いつの間にか空中に控えていた鎌鼬と共に、奴らに襲い掛かります。
亜弥:わああっ、かっこいい!
軋羽:マイナーアクションで《地を薙ぐ者》(※18)、メジャーアクションで《頼むぜ相棒》(※19)。達成値は17。範囲選択なので餓鬼を全て巻き込む!
GM:2D6で6以上が出れば回避か。まずは餓鬼A……あ、7が出た!
耀蔵:それには《出端挫き》(※20)。餓鬼の足首をゾクッと刀で刺して、達成値を-2だ。
亜弥:なんで演出がいちいち攻撃的なんですか(笑)。
寅三郎:あんた玄武だろうが!(一同笑)
GM:「ヒギャアアアァァァッ!」ううっ、達成値が下がって命中だ。……他の3体も回避失敗(涙)。
耀蔵:よし。
GM:(悩みながら)うーん、2体をかばおうかな、一撃死はしないと思うんだけど……。うん、たぶんギリいける! 4体ともダメージ来い!
軋羽:(ダイスを振って)よし、ダメージダイスが全部3以上だ。全部で37点!
寅三郎:まだだ、そこに《挟み撃ち》(※21)で追撃。7点追加!
GM:〈斬〉ダメージなので6点軽減しても36点………痛い痛い痛い痛いっ!

 暴風が渦巻いた。襖や障子が木の葉のように舞い、畳がめくれ上がる。
 三匹の鎌鼬と黒羽根に導かれた暴風が餓鬼たちを薙ぎ払う。
 風の合間に銀閃がきらめき、寅三郎の刀が惑う彼らを貫いた。
 室内に数多の金音が響き渡る。


亜弥:金音……!?
GM:餓鬼の傷口からは血しぶきの代わりに、次々と小判や金銀の細工物があふれ出し、柱や壁に当たって鈍い音を立てている。
軋羽:「!? これは……!」
耀蔵:(無言で目を細める)
寅三郎:「こいつら、やはりただの餓鬼じゃあないですな」
GM:次は亜弥の行動順だ。どうする?
亜弥:う、ううっ……。勢いで薙刀を持っちゃったけど、沢山の餓鬼とか、目の前の激しい戦いに、怖くて動けなくなっちゃう……。

 十数体の餓鬼を目の前に、亜弥は震えていた。
 手にした薙刀がひどく重い。
 人ならざる存在とはじめて対峙した少女は、その恐怖を全身で感じていた。


亜弥:(独り言のように)「兄ちゃん、助けて兄ちゃん……。怖い、怖いよう……」
軋羽:「亜弥! こいつらの口を割れば、兄貴のことも何かわかるかもしれないよ。根性入れな!」
亜弥:「兄ちゃん、の……!」じゃあ、それを聞いてハッとします。今度は餓鬼をキッと睨み付けて、手にした薙刀を握り締めて。《剛落撃》(※22)で餓鬼Aに攻撃!
耀蔵:「甘い。もう一歩、踏み込め」と言って《軍神の気》(※23)。亜弥の攻撃を範囲選択に変更だ。
亜弥:「あんたなんかに、言われなくても!」って言うんだけど、ついその指示通りに動いてしまう。餓鬼の群れを勢いのまま振り払うように、命中は18!
GM:うっ、回避はクリティカル(※24)のみか。……全員命中だ。餓鬼AがBを、CがDを庇う。
亜弥:じゃあ《嵐の心》(※25)も使って〈斬〉19点!
GM:6点引いて13点か。かばったから倍で……(計算中)。
軋羽:死んだ? 死んだ? ねえねぇ、どうなの?
亜弥:(一緒になって)死んだ? 死んだ?(笑)
GM:う、うるさいっ! うう、亜弥の薙刀の一振りによって、餓鬼の半数が薙ぎ倒されていく……。
軋羽:思わず口笛を吹いて、「すごい、餓鬼がまるで藁束だね」
耀蔵:「ふむ……」
亜弥:軋羽さんたちがダメージを与えていてくれたおかげですけどね(笑)。
GM:一気に半数の仲間を失った餓鬼たちは、恐怖に押されるかのように色めき立つ。行動値10で餓鬼の手番だ!
耀蔵:待て、わしもさっき鎖帷子をはずしたので、行動値10になっている。先に動くぞ。
GM:なん、だと………!?
耀蔵:ということで、《緊急指令》(※26)を軋羽へ。(薄い笑みを浮かべ)「軋羽の攻撃には、無力であろう?」
GM:ひいいいいっ!

 鳥居の指示で再び軋羽の暴風が餓鬼たちを襲う。
 瞬く間に、餓鬼は残り一体に追い込まれた。
 錯乱状態に陥った餓鬼は鳥居を攻撃するも、その牙はむなしく空を切る。


GM:うわーん、回避された(涙)。くそ、次は寅三郎だ。来るなら来い!
寅三郎:(考えながら)そうだなあ、俺は行動を放棄してもいいか?
亜弥:行動を放棄?
寅三郎:秘剣の発動条件が揃わんかぎり、俺のダメージはへぼいのよ。それなら次のラウンドで、行動値の早い軋羽か亜弥に確実に仕留めてもらいたい。
軋羽:一理あるね。でもあたいももうMPが2点しか残ってないから、亜弥に頼んでもいいかい?
亜弥:ひいいいい!
GM:おお、寅がとどめを譲るのってちょっと意外だ。斬るのが好きなのかと思ってた(笑)。
寅三郎:別に誰でも彼でも斬りたい訳じゃないぞ(笑)。あと新撰組の戦いって、基本的に集団戦法でメッタ斬りだからさ。それほどとどめにはこだわらん。
GM:なるほどね。では、第三ラウンド行きましょうか。



■第三ラウンド


GM:セットアップは全員なしだね。イニシアティブ、最初は軋羽の行動だ。
軋羽:あたいは待機。亜弥、頼んだよ!
亜弥:はい! 心臓ばくばくのまま、目の前の餓鬼を見つめます。

 これが、妖異というものなのだろうか。
 書物の中でしか見たことのない化け物が、今、目の前に立ち塞がっていた。
 心臓が早鐘を打つ。でも、あの餓鬼の先に兄の手がかりがあるかもしれない。
 その一心が、少女の身体を動かした。



亜弥:汗まみれの手でしっかりと薙刀を握り閉めて、餓鬼に言います。「お願い……兄ちゃんのこと、教えて」
GM:「兄ちゃんン!? 訳解んねえこと言ってんじゃねえェェ! こっ、これ以上こっちに来るとぶっ殺すぞ!」餓鬼は薙刀に怯えながらじりじりと後ずさる。
亜弥:「教えてって、いってるの!!」《剛落撃》で、命中は17!
GM:ぎゃあああーっ! ダメージどうぞ!
亜弥:――――〈斬〉22点!

 薙刀が一閃。
 その一撃は舞い飛ぶ障子を、軋羽の暴風を、餓鬼を容易く切り裂いた。


GM:HP残り13だったので、軽減しても持たない! 亜弥の薙刀が、最後の餓鬼を討ち取った!
一同:わーい!
亜弥:(はあはあと息をしながら)「やっ、た……?」

 ざん。力の限り振り切った薙刀が畳に突き刺さる。
 亜弥は荒い息をつきながら、目の前に倒れ伏した餓鬼を見た。
 室内に響く金音の雨が、どこか遠くで聞こえる。心臓の音だけが、頭の中を埋め尽くす。
 ――――兄の真実を知るために、初めて妖異を斬った、瞬間だった。


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「赤墨の予兆」第三幕へ続く