文・絵:すがのたすく




プリプレイ

GM:さて、本日は南町黒衣録、最終話です。いよいよ収録もラストですが、皆様よろしくお願いいたします!
一同:よろしくおねがいしまーす!
亜弥:うあ〜、ついに最終話だ〜。
寅三郎:はじまってみればあっという間だったな。
軋羽:キャンペーンの最終話って、楽しみであると同時に終わるのがもったいないような、複雑な感慨に襲われるね。
GM:私もこれが最後なの寂しいなあ。あわよくばあと何話か追加したいくらいだ(笑)。
亜弥:追加しようよ〜(笑)。
GM:おお、ネタならたっぷりあるよ!
寅三郎:いや待て、すがのさんを下手に乗せるとホントにやりかねん(笑)。
軋羽:まあ、少し後ろ髪を引かれるくらいが、きっとちょうどいいんだよ(笑)。
耀蔵:これもキャンペーンの醍醐味だな。何度でもやりたいものだ。
亜弥:ですね。思い残すことがないように、最後までやりきりたい!
GM:うんうん、じゃあプリプレイもシナリオも、ぎっちりやっていきまっしょい。今回予告、行くよ!



■今回予告

 天高く舞い上がった印怒羅から、絶え間なく雷の矢が放たれる。
 噴き上がる爆煙、猛る炎。大江戸は今まさに、最後の日の様相を呈していた。
 全ての糸を引くは老中、大久保古河守利真。 
 ついに知る兄の真相。そこに遺された願いのため、少女は満天の空を舞い、英傑たちは邪神の雷を絶ちて妖異の陰謀を撃ち砕く!

 天下繚乱RPG 南町黒衣録 最終話 『満天の此先』
                百花繚乱綾錦―――いざ、開幕!




一同:おお〜!(ぱちぱちぱち)
亜弥:すっごく最終決戦っぽい!
寅三郎:出た! 大江戸最後の日!(一同笑)
GM:天下繚乱のシナリオタイトルではお馴染みだもんね。いよいよクライマックスですし、ここはいっちょ最後の日を到来させていただこうと思います。
亜弥:でも最後になんて、そんなことさせないもんね!(ふんがー)
耀蔵:しかし、問題はこの騒動をどうやって揉み消すかだな……。
軋羽:も、揉み消しは難しいでしょう(笑)。
耀蔵:だが、あれを放っておくと、わしが望んでいるよりもさらに蘭学弾圧が加速してしまう危険性がある。
亜弥:うー、それは嫌だなあ。
寅三郎:まあ、とにもかくにも、まずはこの惨状を止めてからですな。
GM:では、ハンドアウトだ。せっかく最後だし、今回は成長報告の後に全員一緒にPC間コネクションを取りましょうか。最初はPC@の、亜弥。
亜弥:はいっ!


■亜弥ハンドアウト

 コネクション:弥八 関係:遺志
 宿星:兄の遺志を知る PC間コネクション:鳥居耀蔵

 君の兄、弥八は、高野長英(注1)と共に印怒羅を作り上げた蘭学者だった。
 兄は高野の考えに疑問を呈し、袂を分かった末に殺されたという。
 兄はいったい何を考えながら、あの兵器の図面を引いたのだろう。
 高野が口にしていた“亜弥と同じ名の蘭学者”。その人物ならば、兄の成そうとしていたことを知っているはずだ。
 君は炎満ちる江戸へと駆け出した。兄の遺志を知り、空に浮かぶ印怒羅を止めるために。



亜弥:兄ちゃんの遺志を知る、かあ……。
寅三郎:そうだよなー。兄貴が兵器の設計図を書いたってんだから、高野から離反したにせよ、何らかの思惑があったはずだ。
亜弥:うーん、でもやっぱり、兄ちゃんは兵器なんて作らない、って思いたい……。
耀蔵:真実は確かめねばならん。“同じ名の蘭学者”とやらがその鍵を握っていよう。
GM:ですね。前回のクライマックスで高野が亜弥にチラッと漏らしたその蘭学者を探す、というハンドアウトになります。
寅三郎:あー、そういや言ってた言ってた。ここにきて新キャラが来るか。
GM:では成長報告をお願いします。
亜弥:あ! その前にいいですか?(手を上げる)
GM:ん?
亜弥:えっと……その“同じ名の蘭学者”のことで、気になる人を見つけたんです。
軋羽:気になる人?
亜弥:レベルアップをするときにいろんなサプリメント見てたら、快刀乱麻のパーソナリティーに工藤綾(くどうあや)(注2)って人がいて。もしかして、この人のことじゃないかな……って。
軋羽:ほうほうほう!
耀蔵:(快刀乱麻をめくりながら)……ふむ、確かに同じ名で、蘭学者の少女だな。
GM:おー、すごいすごい! や、情報判定で出る予定だったんだけど、そこまで気づいたんなら先に割っておくよ。高野が言っていた蘭学者は、工藤綾のことで間違いないです。
亜弥:わーい、やっぱり!
軋羽:へええ、本当に同じ名前の蘭学者がいるなんてねえ。亜弥はそれを知ってて名前をつけたんじゃないのかい?
亜弥:ううん、ほんとに偶然。見つけたときはびっくりしちゃった(笑)。
GM:じゃあさ、亜弥は高野の言葉を聞いた時に、「もしかして工藤綾って人のことかも」って思い至ったってことでどうかしら。
亜弥:うんうん、きっと兄ちゃんから「お前と同じ名前のえらい蘭学者がいるんだよ」って話を聞いたことがあったんだ♪
耀蔵:亜弥、よくやった。
寅三郎:お手柄だな。情報収集が一回分浮いたぞ(笑)。
亜弥:えへへ(笑)。じゃあ成長報告いきます!

成長報告:亜弥

GM:今回は3レベル分上昇できるはずだけど、どんな成長になった?
亜弥:青龍(注3)が6レベル、蘭学者が3レベル、江戸っ子(注4)は3レベルになりました。あと、使用経験点が30点余ったので【幸運】を1あげました。
寅三郎:能力値を上げたのか。渋いな。
亜弥:これで戦闘値もちょっと増えたので、【抗魔値】と【回避値】が上がるの。
軋羽:攻撃を避けやすくなったのはいいねえ。
亜弥:うん、最後まで生きて帰りたいから。で、青龍から《武神の作法》(注5)と《暴風の化身》(注6)を取ってます。これでダメージがあがるのと、《兵器の天才》(注7)を取っているので攻撃するときにクリティカル値が−1になります。
GM:おー、攻撃特化だなあ。他にもクリティカル低下特技取ってたよね。今、クリティカルいくつで攻撃できるの?
亜弥:えーと、全部乗せると−4されるから8かな。
軋羽:すげー!
耀蔵:積極的にクリティカルを狙っていきたいところだ。
亜弥:うん、最後までがんばります!


■鳥居耀蔵ハンドアウト

 コネクション:大久保古河守利真 関係:仇敵
 宿星:江戸を守る PC間コネクション:石蕗寅三郎

 空に浮かんだ凶月によって、江戸は大混乱に陥っていた。
 奉行所が、大橋が、江戸城が、上空から放たれる雷の矢に射抜かれ燃えてゆく。
 一刻も早く印怒羅を止め、そして全ての糸を引いている大久保古河守利真を倒さねばならぬ。
 その鍵となる少女・亜弥と、精鋭なる黒衣衆と共に、君は炎猛る町へ歩きだした。



成長報告:鳥居耀蔵

耀蔵:うむ、鳥居甲斐守耀蔵である。成長は玄武(注8)、十手持ち(注9)、幻術使い(注10)の三つをばらして成長させました。
GM:これで、玄武6に幻術使い3、十手持ち2、天下人(注11)1か。
耀蔵:玄武からは《軍神の盾・弐式》(注12)を取得して《軍神の盾》(注13)のダメージ軽減能力を上げ、十手持ちの《仕切り直し》(注14)を取りました。これでダイスの振り直し特技は四つ目だ。
亜弥:四つ!(ぱちぱちぱち)
軋羽:素晴らしいです鳥居様。
GM:そんなに振り直してどこに行きたいの(笑)。
耀蔵:チャンスは多ければ多いほどよい。とはいえ、敵に使えるのは3回までだし、全部1ラウンドに1回しか使えんのだがな。
GM:知ったことか! 贅沢いうな!(笑)
寅三郎:まあ、これで亜弥のクリティカル狙いも万全ですな。
耀蔵:最後に幻術使いからは《時読みの鏡》(注15)という、GMに3回まで質問ができる特技を取得しています。
GM:おお! 何? 何を質問したいの? 鳥居様への愛だったらいくらでも答えるよ!(一同笑)
亜弥:あっははは(笑)。
軋羽:それは別に特技を使わなくても出てくるんじゃないかい?
GM:あっ、うん、そうね(笑)。
寅三郎:最終回までそんなんかよ(笑)。
耀蔵:ともあれ成長は以上だ。よろしくお願いします。
GM:はーい。ではPCB、石蕗寅三郎のハンドアウトだ。
寅三郎:おう。


■石蕗寅三郎ハンドアウト

 コネクション:阿良々木新造(注16) 関係:懐旧
 宿星:阿良々木を討つ PC間コネクション:軋羽

 上空から雷光が降り注ぐ。眼前の町は炎と轟音に包まれていた。
 それは君が幕末に見た、刀の及ばぬ脅威によって変容する歴史の風景。
 維新志士・阿良々木新造は何を考え、大久保古河守に加担しているのだろうか。
 君は主君である鳥居の指揮の下、黒幕の大久保古河守、そして阿良々木を討つために動き出した。



成長報告:石蕗寅三郎

寅三郎:俺は白虎(注17)が3レベル増えました。これで白虎9、秘剣使い(注18)2、新撰組(注19)1です。で、まずはバッドステータスを無効にする《白虎剛体》(注20)を取った。
GM:…………えっ!? バ、バッドステータス無効?
寅三郎:ああ、重圧、邪毒、マヒ、狼狽が効かなくなる。
軋羽:すばらしい。バッステが大好きなすがのさん対策もばっちりだね。
寅三郎:これまでそっち系の敵が出なかったからな。そろそろ来るはずだ。
GM:やめろよおぉぉ、そういう先読みはよおぉ! (ダンッと机を叩いて)やらしい!すっごいやらしい!!
亜弥:あ、GMが狼狽してる(笑)。
耀蔵:気をつけろ、今回はバッステキャラが来るぞ(笑)。
GM:うぅ、イ、イヤ、ダイジョウブ……。で、他の特技は何を取った?
寅三郎:長期戦に備えて《白虎の波動》(注21)と《鋼の心》(注22)を取った。これで防御修正がさらに上がって、〈斬〉〈刺〉〈殴〉だと20点ぐらい止まる。
耀蔵:【HP】を考えると、軽減系の特技を組み合わせれば、100ダメージほどまでは食らっても倒れんな。
寅三郎:〈神〉属性は素通しなんで完璧とはいかんが、まあ、意味はあるだろう。
軋羽:攻撃が効かないなんて、もう秘剣を発動させるのすら大変だねえ。
寅三郎:いや、自分の腹づもりでいうと、“本気になった”んですよ。これは負けていい戦いじゃないんで。
亜弥:どういうことですか?
寅三郎:これまでの戦いって俺の中では負けてもよかったんですよ。俺が生きようが死のうが大局にはさして影響はないし、自分の中にも死地に赴きたいっていう考えがあったんで。で、それがいくらなんでも、今、俺が死んでも印怒羅がなんとかなるかというと、ならんだろう。江戸も滅亡する。だから本気を出す気になったということです。
軋羽:あたいとしては、死にたがりの寅三郎が変わりつつあるのがすごく嬉しいよ。
GM:ではラストはPCC、軋羽のハンドアウトだ。


■軋羽ハンドアウト

 コネクション:大久保古河守利真 関係:仇敵
 宿星:大久保を討つ PC間コネクション:亜弥

 君は、大久保古河守利真から離反した黒衣衆だ。
 印怒羅は天へと飛び立ち、目の前には炎に包まれた江戸の町が広がっている。
 君の離反によって、人質となっている駿河の里には大久保の兵が差し向けられたことだろう。
 しかし、里の保護を約束した鳥居を信じ、君はかつての主君を討つために江戸の空へと飛び立った。



亜弥:おー、「君は大久保の配下だ」から「離反した」に変わってる!
GM:前回の件を踏まえまして、子供たちのことを心に留めつつも戦いに赴く、というハンドアウトです。
寅三郎:かつての主君を討つ展開は燃えるなあ。
軋羽:里は鳥居様が庇護の約束をしてくださったからね。これでおもいっきり大久保をぶちのめせるよ!
耀蔵:確か里を守るためには、大久保殿を倒すまで《一件落着》(注23)を使い続けねばならんという話だったな。
GM:はい、そのとおりです。なので、シナリオの開始時には《一件落着》は使用済みとして扱ってくださいな。
耀蔵:承知した。なに、他の事は《一件落着》が切れようとも、やりようは色々とあろう。
軋羽:ありがとうございます。今度こそ妙(注24)も大久保もぶっ倒して、大切なものを守り抜いてみせるさ。

成長報告:軋羽

軋羽:(神妙な顔で)さて……ついに最終回なのですが、ここで大変悲しいお知らせがございます。
亜弥:え?
寅三郎:いきなりどうした?
軋羽:あたいのメイン攻撃は《頼むぜ相棒》(注25)じゃないですか。そしてつい先日、新しいエラッタ(注26)が出たじゃないですか。
耀蔵:うむ。
軋羽:エラッタをチェックしていたらですね……《頼むぜ相棒》のMP消費が増えた上に、1ラウンドに1回しか使えなくなっちゃったんですよおォォォ!!
GM:あれれれ。まあ、誤植じゃしょうがないよ。
軋羽:なので今回から、鳥居様から《緊急指令》(注27)をもらって1ラウンドに2回攻撃っていう戦法ができなくなっちゃったんだよ。ウーウー、ギリギリギリッ!(悔しげに歯噛み)
亜弥:きっと相棒の鎌鼬たちも、連戦で疲れちゃってるんだ(笑)。
軋羽:なので代わりに今回は、とにかくダメージを上げる特技を中心に取りました。クラスは白浪(注28)を一本伸ばしだよ。
耀蔵:手番が減る代わりに一撃を重くする算段か。
軋羽:そういうことです。そして戦闘値の成長によって【行動値】もさらに上がりまして、《天狗変》(注29)をすると32に!
亜弥:32! すごーい、みんなの倍もある!
軋羽:敵に先手は譲りたくないからね、率先してコンボを叩き込むよ。《盗品・弐式》(注30)で《風姿華傳》(注31)を取ったので、クリティカル値もマイナスさ。
亜弥:あれ、それって白浪の特技?
寅三郎:ああ、《盗品・弐式》ってのは、他のクラスの特技を取れる特技なんだよ。
軋羽:今回は遊芸者(注32)の特技から盗ってきたよ。攻撃がクリティカルになればダメージも上がるからね。
GM:みんな最終決戦に向けて、自分の得意分野を伸ばす成長になったね。じゃあ最後に、PC間コネクションを取っていきましょうか。



■PC間コネクション

GM:まずは亜弥から鳥居にどうぞ。
亜弥:ん〜、もう鳥居様を仇としては見てないし、こういう気持ちってなんて言えばいいんだろうなあ……(感情表を見ながら)あ。[師事]に一番近い気がする。
寅三郎:おお、いいな。
亜弥:小娘だったあたしにいろんな物の見方を教えてくれた、全部に同感はできないけど尊敬できる人だって思うの。だから、関係は[師事]。
軋羽:確か初対面では[憎悪]じゃなかったかい。えらく変わったねえ。
亜弥:うん。えらく変わっちゃった(笑)。
GM:いいねいいね、次に鳥居からは寅三郎にだ。
耀蔵:寅三郎には今回も[有為]だ。
寅三郎:俺らの関係は変わらんですね。
耀蔵:うむ。こやつはわしの役に立つし、わしはこやつの期待に応えよう。
寅三郎:俺は軋羽に……そうだな、[仲間]ですね。
軋羽:寅三郎から仲間……!? 寅三郎から仲間だって!(嬉しそう)
寅三郎:おう。もう間者だなんだと疑う理由もないしな。
軋羽:そうだねえ……。いや、今まで三話かけてきてわかったよ。正直、あたいはあんまり間者には向いてなかった。
寅三郎:一話の時から向いてなかったよ!!(一同爆笑)
亜弥:軋羽さんはねー、いい人すぎるもんねー。
耀蔵:里に子どもを残してきたなどという時点で既にな(笑)。
GM:でも、おかげで妙といい対比になってすごく嬉しいです(笑)。
軋羽:あたいから亜弥へのコネクションは……最初は[同情]で取ってたんだけど、今は自分の[家族]のように思ってるよ。
亜弥:わーい、軋羽お姉ちゃーん♪
軋羽:ああもー、かわいいかわいいええ子やなぁ。(妖艶な笑みになって)……ふふっ、可愛い子(一同爆笑)。
寅三郎:なんなんだよ(笑)。
軋羽:いえいえ大丈夫、家族です家族。仲間仲間。寅三郎も鳥居様もみんな家族なのさ。
亜弥:みんなの関係がなんだかアットホームになったね。ほっこり(笑)。
軋羽:このまま誰ひとり欠けることなくエンディングまで行こうじゃないか。
亜弥:うんっ!
GM:では、南町黒衣録最終話、セッションを開始いたしましょう!
一同:はーい!








オープニングフェイズ


■オープニング01 謀略の影  ――――マスターシーン

GM:最初はマスターシーンだ。前回のエンディングからの引き続きとなります。

 薄雲を穿ち、空高く上昇した超究極摩訶最強蘭学兵器・印怒羅。
 今や丸い銀板と化したそれは江戸城上空で静止すると、次々と江戸各所へ雷の矢を放つ。
 奉行所が、大橋が、八百八町が炎に包まれていく。


軋羽:ドーンドーン! ドオオオオンッ!(爆発音)
亜弥:(ぷるぷるしながら)うっ……く、この印怒羅のフルネームを見るたびにプスプス笑ってしまう……(笑)。
寅三郎:根深いなあ(笑)。
亜弥:(涙目で)馬鹿っっ、長兄ちゃんの馬鹿ーーーっ!
耀蔵:全く、こんなに燃やして再建にいくらかかると思っておるのだ。また材木の値上がりを抑えねばならん……。
寅三郎:いや、鳥居様。その前に目の前のアレをなんとかせんと。

 江戸城、二の丸。
 その薄闇の奥から、燃え上がる江戸の町を見つめる妖異の影があった。
 ひとりは老中、大久保古河守利真。ひとりは維新志士、阿良々木新造。背後には赤墨紋様を刻まれた裃姿の武士たちが整然と控えている。
 その中から、壮年の武士が腰をくねらせ歩み出ると、大久保古河守へ擦り寄った。
「ねぇェエ、我が殿様。これで殿様の願いは叶うのでございましょう?」


耀蔵:くくっ(笑)。
軋羽:た、妙か! なんつービジュアルに(笑)。
亜弥:あっはは、あははははっ!(机につっぷして爆笑中)
寅三郎:もっと見目のいい奴を憑代にすりゃあいいだろ!
GM:違う、これもちゃんと伏線なんだよ!
耀蔵:どんな伏線だ(笑)。

「わっちぁ失敗続きでしたけど、今度こそ殿様のお役に立てましたでしょうか」
「……ああ、もちろんだとも」
 大久保古河守は眉間に一瞬、不快の影を寄せながらも答える。
 壮年の憑代は弛んだ頬に陶然と笑みを浮かべた。
「あハァあ、ね、ね、あの軋羽とかいう年増よりもですよねェ?」


GM:「そうともそうとも。すべてはそなたの働きあってこそよ」大久保古河守は……まぁ、妙なんだよ。その、妙の頭を撫でて……。
寅三郎:自分で演出しながらダメージを受けるな(笑)。

「しかし、未だ鳥居甲斐守は健在。あの狡猾な蝮の首を絞めぬかぎり、わしの治世に憂いは消えぬ。このまま市井の民を赤墨で操り、彼奴を始末するのだ」
 大久保古河守は妖異に染まった眼で妙を見、もう一度、赤墨で汚れた憑代の月代を撫でる。
「天の月に手が届く者など誰もおらぬ。妙、そなたは印怒羅の中から存分に力をふるうがよい」
「あヒァぁ……仰せのままに、我が愛しの殿様。全ての妖異を統べる、御方よ」
 大久保古河守は不快げに手についた鬢付油を拭うと、背後で影のように控える阿良々木へ振り返った。
「鳥居が蘭学兵団と高野を破るは予想外であったが、印度羅が空に浮かんだ今、あとの始末は容易きこと。阿良々木新造、そなたの望む未来、この大久保古河守が築きあげてみせようぞ」


軋羽:……ん? ちょっと待ちなよ、阿良々木がその蘭学兵団をぶっ倒した張本人じゃないか。
耀蔵:この様子を見るに、大久保殿はそれを知らぬのか。
GM:そうだね。大久保は君たちが自力で高野の一味を破ったと認識しているようだ。
軋羽:じゃあ、高野の部下を掃討したのは阿良々木の一存だったんだ。あいつ、いったい何を考えてるのさ?
寅三郎:…………。

「……ありがたき、幸せ」
 阿良々木は虚ろな目で答え、無駄のない所作で頭を垂れる。
 炎と轟く雷鳴を背に、大久保古河守の大笑が響き渡った。




■オープニング02 手繰り寄せる糸  ――――シーンプレイヤー:亜弥

 はるか頭上に浮かんだ銀円からは、雷光が放たれ続けていた。
 半壊した研究所の外では爆音と炎の猛る音が絶え間なく響いている。
 高野長英は自らを核に、印怒羅を起動させてしまったのだ。
 それはいまや江戸城上空に居を構え、江戸中を混乱の渦に陥れていた。


GM:では、全員登場でオープニングだ。シーンプレイヤーは亜弥。大名屋敷に偽装していた研究所は半壊、その中に君たちは立っている。
軋羽:あいよ、登場! 前回のエンディングからの続きだね。
亜弥:兄ちゃんたちが作った兵器がみんなを傷つけていく……。「こんなの……、こんなの絶対に駄目!」
寅三郎:「まずいことになりましたな。どうします、鳥居様」
耀蔵:「止めねばなるまい。なんとしてもな」まずは指揮系統を確保し、避難指示を出す。人命を優先し、次に財産の損失を防がねばならん。財源が失われると税が上がり、江戸の商業収入に大打撃を与える危険性もある――――。
軋羽:相変わらず先々の見通しっぷりがすごい(笑)。
寅三郎:「…………」じゃあその様子を見ながら、俺はふと、鳥居様が焦っていることに気づくんだ。
亜弥:おおー。
寅三郎:今、この鳥居耀蔵という男でも対処しきれん災いが到来している。これはもう、死地だなんだのとほざいている時じゃあない……。
GM:ではそこで、君たち全員【知覚】で判定をお願いします。目標値は13だ。
軋羽:知覚判定だって?
寅三郎:なんだなんだ? ……む、俺は失敗だ。
耀蔵:わしもダメだ。成功に必要な値を考えると振りなおしは微妙だな。誰かひとりでも気づけんか?
亜弥:あたしは《舶来知識》(注33)を使って出目が6以上なら……(ダイスを振って)やった、出た! 18で成功!
軋羽:あたいもダイス目が8なんで、13でぴったり成功だよ。

 呆然と上空の印怒羅を見上げていた亜弥は、ふいにその気配に気づいた。
 静かに軋羽の袖を引き、一点を注視する。
 半壊した研究所の外殻――――大名屋敷の梁の上から、全身を黒装束に包んだ影が、一同をじっと見つめていた。


亜弥軋羽:にっ、ニンジャーッ!!?
GM:その只ならぬ熟練の動き、おそらくは柳生大目付の柳生忍者だ。殺気はまったく感じられず、ただ君たちの動向を観察し続けているようだ。
軋羽:「なんてこった。これは……」呟いて、亜弥の方を見ます。
亜弥:(こくりと頷いてから)「鳥居様、なにかがいます」
耀蔵:「……柳生殿の手の者か」
寅三郎:「どうします、斬りますか?」
耀蔵:「いや」と、踵を返して。「あれは目付の職務でわしらを監視しているのであろう。此度の事態がどのように引き起こされたか、その責が誰にあるのかを見極めるつもりなのだ」
GM:おお、すごいな。正にそのとおりです。
軋羽:そうか、紫様の件ではだいぶ鳥居様は疑われていたしねえ。
亜弥:見極めるって……。じゃあ、顔を上げると影に向かって叫ぶ。

「あたしたちがこの状況をなんとかする。あたしたちは胸を張って、江戸を脅かしている妖異と戦ってみせる!」

亜弥:「後ろめたいことなんて何もないもの。きっちりと見極めて、誰に責があるのか決めてもらおうじゃない!」
GM:その言葉に返答はなく、次の瞬間、影は音もなくその場から掻き消える。
軋羽:「すごいな亜弥。そこまで言えるようになったのか」
亜弥:「今は、柳生様のとこの人は敵ではないと思うから……」
GM:その時、上空からキュイイイイイイン! と、甲高い機械音が響きはじめる。
寅三郎:うっ……。
軋羽:いやぁな予感がするねえ。
GM:見上げると、君たちへと向けられたレンズの先の光球が、急速に収束していく。
一同:ぎゃああああーっ!
耀蔵:「退避せよ!」
寅三郎:「は!」
軋羽:「亜弥、ここから出るよ!」亜弥を担いでバサリと飛び立ちましょう。

 亜弥たちが研究所から転がり出ると同時に、雷光が降り注ぎ、新たな火柱を噴き上げた。




ミドルフェイズ


■ミドル01 混迷の街中で  ――――シーンプレイヤー:鳥居耀蔵

 研究所跡から離脱した鳥居は、黒衣衆を率いて江戸市中へと歩を進めた。
 降り注ぐ雷光に人々は逃げ惑い、事態は混迷を極めている。
 天高く上昇した印怒羅にたどり着く術を得られねば、江戸が灰燼に帰すことは明白であった。


GM:では、ミドルフェイズだ。シーンプレイヤーは鳥居で全員登場。
耀蔵:一刻も早く事態を収めねばならん、急ごう。
亜弥:あたしは長兄ちゃんが言ってた、工藤綾って人のことをみんなに伝えなきゃ。
GM:うすうす。ただしその前に、江戸市中に出てきた君たちへと、再び印度羅の矢が降り注ぐ!
軋羽:ええーっ!?
GM:ここで、今回のミドルフェイズにおけるギミックを説明しましょう。君たちが江戸市中に居る間、毎シーンの開始時に印度羅から攻撃が飛んできます。君たちはそれを避けながら動かなくてはなりません。
寅三郎:ああ、なるほど。核になってる高野が「ギギギ……トリイ、コロス……!」チュイィーン! って撃ってくるのか。
亜弥:長兄ちゃん……(笑)。
軋羽:すっかり壊れかけの殺人プログラムみたいになってしまって(笑)。
GM:印怒羅の【知覚】と君たちの【反射】での対決判定となります。印怒羅が能動側ね。印怒羅の【知覚】は最初1ですが、毎シーン2ずつ上がっていく。そして、判定に失敗したPCは10D6+30点の雷ダメージを受けます。
軋羽:10D6+30!? そ、それは死ぬ……!
寅三郎:庇うことはできる?
GM:うん、できる。達成値の上げ下げや振りなおし、カバーやダメージ軽減など、タイミングさえ合えば特技や奥義は通常通り使用可能です。
亜弥:鳥居様が振りなおしを沢山持っててくれてよかった〜。
耀蔵:とはいえど、あまり悠長に構えてもいられんな。
GM:というわけで、まずはこのシーンの判定だ。君たちに印怒羅の一撃が放たれる!(ダイスを振って)……お、達成値は9だ。出目がよかった。
耀蔵:目はあるが、念のため達成値を下げておくか。《出端挫き》(注34)で−2だ。
寅三郎:これで達成値が7か。俺は5スタートなので余裕だな。……うむ、大丈夫だ。
亜弥軋羽:(ダイスを振って)避けたー!
耀蔵:わしもファンブルしなければ問題は……(ダイスを振って)う、うむ、同値で回避だ。出目が3だった。
寅三郎:あっぶねえ!
亜弥:《出端挫き》してなかったら当たってたよ(笑)。
軋羽:あからさまに鳥居様が狙われてるねえ(笑)。
GM:鳥居のいるすぐ脇の路地が、雷の矢に貫かれ炎上をはじめる。
耀蔵:「高野長英、この執念を他に向けておればよかったものを……」

 雷撃にまぎれ、あちこちで赤墨が立ち上った。
 それは次々と逃げ惑う町人を襲い、赤墨に巻かれた者は羅刹となって新たな犠牲者を増やしはじめていた。
 炎に包まれた町の各所から、人々の叫びと爆発音が響いている。


軋羽:「妙だ! あいつ町の人たちにまでなんてことを!」
耀蔵:「大久保殿は今宵、全ての決着をつけるおつもりか……」
寅三郎:「あの女も印怒羅も空の上だ。たどり着く方法をひねりださにゃあなりませんな」
軋羽:あたいは飛んでいけるけど、ひとりだと勝ち目はなさそうだしねえ。
亜弥:「あっ……あの、鳥居様!」
耀蔵:「どうした」
亜弥:「あたし、工藤綾さんて人に会いに行きたいんです」
耀蔵:「工藤? その者に何かあるのか?」
亜弥:「兄ちゃんは計画を進めるのが嫌でその人の元に行ったんだって、そう長兄ちゃんが言ってたんです。だから、その工藤綾って人のところに、もしかしたら兄ちゃんが何かを残してるかもしれないって思うんです」
耀蔵:「ふむ」
軋羽:「だけど、何かがあるって決まった訳でもないんだろう? 下手に動くと雷に狙い撃ちされちまうよ」
亜弥:「う、うん……。でも、兄ちゃんならただ逃げてただけじゃないだろうって……」
耀蔵:「そうか。ならばすぐに向かえ」
亜弥:「え……? い、いいんですか?」あっさりいいよって言われたからぽかんとしちゃう。
耀蔵:「現在考えうる対抗手段はどれも決定打に欠ける。それを超える策が存在する可能性があるならば、迷う必要はあるまい」GM、工藤綾の居住地は調べられるか?
GM:おうよ、【社会】で8以上です。
耀蔵:(ダイスを振って)……うむ、成功だ。

 工藤綾。鳥居はその名に心当たりがあった。
 老中・田沼意次のブレーンである工藤平助の娘であり、非常に高い蘭学の才を有す少女である。
 奉行の明晰な頭脳は瞬く間に、工藤家の屋敷が築地日本橋にあることに思い至った。


寅三郎:日本橋か。ここは青山だからそんなに離れてはいないな。
耀蔵:「田沼殿の手の者か……。とはいえ、背に腹は変えられぬ。亜弥、至急軋羽と共に日本橋へと赴け」
亜弥:「はいっ! ……鳥居様は一緒に来ないんですか?」
耀蔵:「あれは蘭学者だ。わしが行っても事態は悪化こそすれ好転はせんであろう。それに、わしには町奉行の職務がある。早急に避難指示を出し、各所に連絡して共同戦線を張らねばならぬ」
軋羽:「ですが、わざわざご自分の身を敵にさらすのは危険でございます。高野のやつは鳥居様を狙い撃ちにしてきましょう」
耀蔵:「ここに落ちる回数が増えれば、他に落ちる回数が減る。あやつの出方はわかっておるゆえ、対処もできよう」
寅三郎:「案ずるな、軋羽。鳥居様の御身は俺が守る」
軋羽:「寅三郎、だが……!」
寅三郎:「俺とて、今自分が何をやらねばらならんかわからんほど腑抜けではない。こちらは任せろ。おまえはその、工藤とかいう蘭学者の所に亜弥を連れて行くんだ」
GM:ふいに、そこに声が投げかけられる。「……ずいぶんと、その男に忠心しているのだな、黄泉返し」

 いつ現われたか、道の先に阿良々木新造がゆらりと立っていた。
 周囲に濃厚な妖気を発しながら、彼は数体の赤墨の妖異を従えている。


亜弥:阿良々木新造!
寅三郎:「なんだと……?」
GM:阿良々木は静かに歩を詰めながら語る。「貴公も……この先に起きる歴史を知らぬわけではあるまい。……鳥居卿は、じきに失脚する」
軋羽:「あぁ? 失脚だって!? 妙なことを言ってあたいたちを惑わせようとしても無駄だよ!」
GM:「拙者は黄泉返しと同じ時代に生き、そこに至る歴史の成り立ちを目の当たりにしてきた。……老中水野忠邦によって、時が明治に至る数十年の後まで遥か四国の片隅に幽閉される。それが、その男の末路よ」
亜弥:「そんな……!」
耀蔵:(無言で眉根を寄せる)「…………」
GM:「……黄泉返しよ。何故再び、敗する主君に仕える?」
寅三郎:「ふん、馬鹿も休み休み言え」と鼻を鳴らして、印怒羅に目をやる。「俺たちの知っている歴史に、あんな馬鹿馬鹿しいものが江戸を焼いたなどという事実はない。したがって、この先鳥居様がどうなるかなど、もはや誰にもわからんということだ」
GM:「そうか……」阿良々木は微かに首を傾げ、虚ろな目を彷徨わせる。「いや……そうだな。確かに、そうだ。今宵、この地から……新たな歴史は造られる。(呟くように)俺が……俺が築き上げる歴史、か……」
亜弥:「そんなこと、させるわけないんだから!」

 その声に、阿良々木は亜弥の顔を見た。
 少女の真っ直ぐな面を見つめ返す阿良々木の、その虚ろにわずかな灯。


GM:阿良々木はスッ……と歩を引く。「……大久保様はこの機に乗じ、老中たちを討つおつもりだ。いや……将軍様とてどうなるかわからぬ」
軋羽:「それが大久保の真意だったのかい」
GM:「大久保様は、妖異が統べる新たな治世を敷くおつもりだ。徳川の転覆を望まぬのなら、急ぐがよい。……できるものならな」阿良々木は踵を返し、代わりに周囲にいた赤墨の羅刹たちが、君たちを取り囲む。
寅三郎:ち。面倒な。
軋羽:「待ちな、阿良々木! なんでそんなことをあたいらに教えてくれるのさ」
GM:それには阿良々木は答えずに、代わりに問う。「黄泉返し。……貴公はまた、拙者の前に立ちはだかるか?」
寅三郎:「またも何もなかろう。俺は人斬りだ。人斬りの前に立って斬られるのが嫌なら、そもそも刀をぶら下げて出てくるな」
GM:阿良々木は一歩下がり、薄い笑みを浮かべる。「……ならば、この程度で朽ちてくれるなよ」

 呟きと共に、阿良々木の姿が掻き消える。
 残された羅刹たちは赤墨に巻かれながら、じりじりと一同に這い寄ってきた。


耀蔵:では、阿良々木の消えた方角を眺めながら。「……知っているか軋羽よ。自然界では各々が好き勝手に生きている。妖異もあまり変わらん」
軋羽:「大久保の手の者たちも、個々人の思惑で動いているというわけですか?」
耀蔵:「それがいかなるものかは、確かめねばならんがな」と、羅刹たちを振り返る。
軋羽:せせせ戦闘ですか?
GM:うむ!(ポーンを並べはじめる)
寅三郎:「まあ、斬って先に進むしかないですな」
軋羽:羽を広げて臨戦態勢を取りながら、さっきの阿良々木と寅三郎の会話を思い返します。「……寅三郎。あたいはあんたを単なる人殺しとは思っちゃいないよ」
寅三郎:それには苦笑をして答えない。
GM:では、戦闘だ! 敵は赤墨に巻かれて羅刹化した町人が8体。
軋羽:げーっ、多っ!
亜弥:この人たちは、倒したら妖異から解放されたりするんですか?
GM:紫の時とは違い、妙が同時に操っている人数が江戸全域に渡るため、個体数が多い代わりに赤墨の侵蝕度が低いようだ。今ならまだ倒せば救えるだろう。
亜弥:よかった〜。
GM:彼らは苦悶の呻きを上げながら、君たちに襲いかかってくる。「うあぁ……殺してくれえぇ……、楽にしてくれぇ……!」
軋羽:「自意識を残したまま操るなんて、あいつら本物の外道だよ!」
耀蔵:「よいか、殺すな」
亜弥:「言われなくても! 助けます、ひとり残らず!」

 暴風が、剣気が、白刃が、蘭撃が駆けた。
 時折放たれる印度羅の矢をかいくぐりながらも、英傑たちが羅刹を打ち倒すのに、そう長い時間はかからなかった。


GM:(最後のポーンを倒しながら)く、これで戦闘終了です……。あっという間だったなあ。
軋羽:地面に降り立つと、羅刹だった者たちの息があることを確認しておくよ。
亜弥:倒れた人を通りの隅にずるずると引っ張っていきます。「鳥居様、全員避難させました!」
耀蔵:「うむ」さて……【MP】が極めて減ってるのは?
寅三郎:俺、結構やばいです。だいぶ庇ったからなあ。
軋羽:あたいも残り10を切ってるので、回復をお願いできますか。
耀蔵:ではそれぞれに《叡智の啓発》(注35)を使用し、回復をしておこう。
亜弥:わーい!

 付近の妖気が蹴散らされ、赤墨が人々からシュルシュルとほどけて消えていく。
 しかし、今だ各所では新たな赤墨が立ちのぼり、苦悶の咆哮は一向に途絶える気配を見せなかった。


寅三郎:これは妙の本体を倒さんときりがないな。
耀蔵:「亜弥、軋羽。工藤綾の元へ向かえ。一刻も早く、印怒羅とやらに行く方法を見出すのだ」
亜弥:「はいっ!」
軋羽:「亜弥、来な」と言いながら歩き出しましょう。
寅三郎:じゃあ、その背に一言言おう。「軋羽」
軋羽:「ん?」
寅三郎:「亜弥を任せた。……お前が頼りだ」
軋羽:一瞬立ち止まって、ひどくびっくりした表情を浮かべます。そして、不敵に笑い返しましょう。「……それはこっちの台詞だよ。鳥居様をよろしく頼む」
寅三郎:それには答えないで、背中を向けて歩き出そう。
亜弥:「絶対に手がかりを見つけてきます。おふたりも、お気をつけて」と言って、軋羽さんと一緒に駈け出していきます。
GM:亜弥と軋羽は工藤綾の屋敷へ、鳥居と寅三郎は江戸市中での指揮の為に二手に分かれた……というところでシーンを切りましょう。



■ミドル02 忠誠の証  ――――シーンプレイヤー:軋羽

 工藤綾の屋敷へと向かう途中、軋羽は道を外れた。
 事が一刻を争うことは解っていた。しかし、どうしても手に入れておきたいものがあったのだ。


GM:工藤綾の屋敷へ向かうふたりのシーンだ。まず、印怒羅からの雷撃が、町を駆ける君たちふたりを襲う。
亜弥:来い、長兄ちゃん! ヒュヒュッって避けてやる!
GM:印度羅の【知覚】が2上昇するので、3+2D6か(ダイスを振って)……お、出目が高い。達成値は14だ!
軋羽:(ダイスを振って)ひー、あたいはギリッギリで成功だ。亜弥はどうだい?
亜弥:14だと10以上出さなきゃかあ。
寅三郎:きついな。生き延びてくれー。
軋羽:じゃあ、亜弥に《親分肌》(注36)を使用するよ。これで判定に+2だ。
亜弥:ありがとうございます。ん〜〜っ、せいっ!(ダイスを振る)
寅三郎:お。
亜弥:わっ!
耀蔵:クリティカルか……!
軋羽:今日の亜弥はすごいな。「あんたには雷の岐路が読めるのかい?」
亜弥:たぶん、長兄ちゃんの思考がなんとなくわかるんだ(笑)。「んー、長兄ちゃんにはいっぱい遊んでもらったりしたからかも」
GM:着弾すると派手になりそうな場所に、長兄ちゃんはよく撃ち込んだりするね。
亜弥:そうそう(笑)。「あ! あっちには近づいちゃダメ!」って誘導しながら走っていきます。 
軋羽:工藤綾の屋敷へ行く前に、ひとつやりたいことがあるんだ。「亜弥、少し寄りたい場所があるんだ」
亜弥:「え?」

 軋羽が向かったのは自身の長屋であった。
 土足で畳の上へ上がりこむと、軋羽は薄暗い室内を漁りはじめる。


亜弥:「軋羽さん、忘れ物ですか?」
軋羽:ばら撒かれていた半紙をどけて畳を裏返すと、そこには今まで大久保から報酬として与えられていた金品が溜めてあるんだ。で、《盗賊働き》(注37)を使用。これで7点の財産ポイントが手に入る。
亜弥:「すごい……。これ、全部軋羽さんのなの?」
軋羽:「大久保のもとで働いていたときにもらったものさ。こいつを全部あいつに叩っ返してやりたくてね」
亜弥:「長兄ちゃんもその名前を言ってたけど、大久保って人はどういう人なの?」
軋羽:「あいつは幕府のお偉いご老中様さ」と、懐に金品をしまっていく。「妙に阿良々木に……高野もだね、あいつらを率いている今回の事態の黒幕だ。あたいたちは、あいつにずいぶんと踊らされていたってわけさ」
亜弥:「じゃあ、兄ちゃんを本当に殺したのは、そいつなんだ……」
軋羽:「そうさね。まぁ、あたいもその片棒を担いでいたわけだが……」と言って、亜弥に振り向く。「だから、あんたはあたいに恨み言を言う権利があるんだよ」
亜弥:「今も軋羽さんは大久保の手下なの? それとも鳥居様に仕えているの?」
軋羽:それは、文机の上から硯を取って、丁寧に埃を拭いましょう。「……もちろん、鳥居様に決まってるじゃないか」
亜弥:「それなら、あたしが恨み言を言う理由なんてないよ」って笑う。「確かに軋羽さんは大久保様に仕えてた。それに……石蕗さんの言ったとおり、兄ちゃんを斬ったのが鳥居様だってことも変わらない」

「……でも、大事なのはどんな心の末にそれが起きたかだもの。この事態を止めるために今、何をしているのかっていうのが、多分一番大切なことだと思うから」

軋羽:「亜弥……」ううっ、じゃあ亜弥の肩をバシバシはたきながらですね。
亜弥:むぎゃっ!?(笑)
軋羽:「あたいも変わったと思ってたけど、あんたの方がよっぽど変わったよ」
亜弥:(頬が赤くなって)「そ、それは、軋羽さんたちにたくさん教えてもらったからだもの。それに、ただ殴って終わりなだけじゃ――」って印怒羅を見上げて、「それでいいんだって思ったら、長兄ちゃんと同じになっちゃう」
軋羽:「そうだね。この馬鹿げた事態のケリを、さっさとつけてしまおうじゃないか」

 そう微笑みながら、軋羽は亜弥の頬についた泥を拭った。
 部屋いっぱいに散乱した半紙が目に入った。手の中にずっしりと硯の重みを感じた。少女の瞳は真っ直ぐだった。
 状況は今だ劣勢の一途であった。
 しかし、この地で得た温かさがすべての悲観を消し去るのを、軋羽は確かに感じていた。




■ミドル03 兄の遺したもの  ――――シーンプレイヤー:亜弥

 築地・日本橋。そこに赴くと、工藤綾の屋敷はすぐに見当がついた。
 印怒羅の矢から逃げ惑う人々が、雪崩のようにひとつの屋敷へと避難している。
 屋敷へ駆ける亜弥たちに向かって、再び印度羅の一撃が放たれた。


GM:引き続きになりますが、シーンプレイヤーは亜弥で軋羽も自動登場だ。ふたりが日本橋にたどり着くと、ひとつの屋敷に町人たちが避難する様が目に飛び込んでくる。
亜弥:「あのお屋敷かな?」
軋羽:「行こう!」
GM:君たちも屋敷へかけていくが、そこに印怒羅だ!
亜弥軋羽:ぎゃーっ!
GM:印怒羅は【知覚】5スタートだ。達成値は……う、10か。
亜弥:やった、低い!
GM:そして、屋敷の障子が開け放たれると、幾体ものからくり人を従えた、みつあみの少女が現われる。「来ましたわね!」叫ぶと同時にパラボラアンテナのような形状の蘭学銃を、迫り来る雷の矢へダーン! と撃ち放つ!
一同:えええええーっ!?
軋羽:かっ……かっこええええ!「なんだいありゃあ! 亜弥、あれもからくりなのかい!?」
亜弥:「た、たぶん……。見たことないけど……」
耀蔵:レーザー避雷針か。
寅三郎:2013年現在開発中の(笑)。
GM:迎撃を受けた雷はバチバチと拡散し、その光を弱めていく。……ということで、工藤綾の屋敷に到着したボーナスで君たちの達成値に+2だ。
亜弥:わ、やったね! (ダイスを振って)……うん、成功!
軋羽:あたいも余裕で避けたよ。
GM:「危ないところでしたわね」蘭学銃を持った少女が君たちへ振り向く。「あなたがたも、早く中へ!」
軋羽:じゃあ、避難する人々にもみくちゃにされながら中に入っていきましょう。

 屋敷の中は避難した町民たちでごった返していた。
 人の波に揉まれながら、ふたりは屋敷の主の姿を探す。


亜弥:中に導いてくれた女の人に声をかけます。「すみません、工藤綾さんって方、いらっしゃいませんか?」
GM:「私になにか用ですの?」彼女は忙しそうに振り返り、そして君のエレキテル薙刀に気づく。
亜弥:「あ、あなたが工藤綾さん!」




GM:「あなた……どちらの手の者ですの?」綾は厳しい眼差しで君を見る。雷を撃ち込んでいる奴らの仲間ではないかと警戒しているようだ。
軋羽:あ、そうか。高野一派も蘭学者だものねえ。「亜弥。この際、身分を隠す必要はなにもないさ」
亜弥:「あたしは……亜弥といいます」兄ちゃんの形見の蘭書をバッと差し出します。「蘭学者の弥八の、妹です」
GM:彼女はおどろいた顔になって息を呑む。「まさか……あなたご自身が来てくださるとは思いませんでしたわ」
亜弥:え……?
GM:「ひとまず、こちらへ」と言いかけて、綾は軋羽に目をやる。「あなたは?」
亜弥:「あたしの大切な仲間です。どうか一緒に」
軋羽:気恥ずかしいので頬をぽりぽりとかきましょう。

 奥座敷に通されたふたりの前に、屋敷の令嬢であり天才蘭学者、工藤綾はぴちりと正座をして向き直った。

GM:「お待ちしておりました、亜弥さん」
亜弥:「あたしのことを知ってるんですか?」
GM:「あなたのお兄さまから、いろいろとお話を伺っておりましたから」と、微笑む。「同じ名前の、蘭学を学ぶ方なんて嬉しいわ」
亜弥:うん、あたしも。ほんとに偶然だったけど(笑)。
GM:綾は君の脇に置かれたエレキテル薙刀を見る。「傘張りをしているとしか聞いていなかったのですけど、亜弥さんは戦っておられますの?」
亜弥:「……はい。あの空に浮かぶ印怒羅を止めるために」
軋羽:「なりはちみっちゃいが一流の英傑ですよ、この子は」
GM:「そう……。いろいろ、あったのですね」
軋羽:亜弥は見よう見まねでここまで来たんだから本当にすごいと思うよ(笑)。
亜弥:えへへ、きっと紫さんと軋羽さんの薙刀指導がよかったんだよ(笑)。
GM:「あなたのお兄さまから、もしも印度羅が起動してしまった時にと、良き英傑の方々へお渡しするものを預かっております」綾はひとつ息をつくと立ち上がる。「そして亜弥さん、あなたへの文も」
亜弥:え、えっ!?「あ、あたしへの手紙ですか!?」
GM:「本当は、この危難に立ち向かう英傑の方を探して託すつもりだったのですけれど。まさかそれが、あなたご自身だったとは思いませんでしたわ」と、書棚の奥から一通の文を取り出すと亜弥へと差し出す。
亜弥:兄ちゃんからの……! そ、その文をすぐに開きます!
GM:『亜弥へ』そこには懐かしい兄の墨字が綴られている。
亜弥:兄ちゃん……!

『亜弥へ

 この文を読んでいるということは、兄ちゃんはもう、この世にはいないのでしょう。
 兄ちゃんはおまえに秘密にしていたことがありました。
 高野さんとこっそり、空飛ぶ月を作っていることです。

 兄ちゃんは江戸のみんなを月に乗せ、空を、地平を見せたかったのです』

亜弥:地平、って……?
軋羽:あぁ……。

 『人が外の世界を見ようとすることはとても難しい。
 見たことがないものをあると思えるようになるのは、容易にできることではありません。
 でも、鳥のように空から遥かな大地をその目で眺めることができたのならば、世界はもっと素晴らしい無限の可能性をはらんでいるのだと、そう、みんなに感じてもらえると思うのです。
 蘭学は人々に新しい可能性と希望を運ぶ学問なのだと、わかってもらえると思うのです。

 だから、兄ちゃんはそんな未来が見たくて、月を作りはじめました。
 でも、高野さんは昔の恨みを募らせて、少しおかしくなってしまっています。
 月が雷の矢を放てるようにして、恐ろしげな名前をつけ、英傑を――――』


亜弥:(泣き笑いで)うう……ゴメン、兄ちゃんがあのネーミングに関わってないと知って若干ホッとしている(一同爆笑)。
GM:あんた、そこホントこだわるな!(笑)
寅三郎:泣くか笑うかどっちかにしろよ(笑)。

『――――英傑を生け贄として動く、恐ろしい兵器にしようとしています。
 高野さんならばそれが成せるでしょう。しかし、それは決して蘭学が進んではならない道なのです。

 だから、兄ちゃんはそれを止めようと思います』


GM:――――文は、そこで終わっている。
亜弥:(涙目で)「兄、ちゃ……ッ!」ギュッ、って手紙を抱きしめます。ううっ……。
軋羽:亜弥の頭を静かに撫でてやりましょう。「やっぱりあんたの兄貴は、兵器なんざ作っちゃいなかったのさ。……素敵な兄貴じゃあないか」
GM:「あなたのお兄さまは、あの空の月を、人々が遠くの地平を見ることができる目として作ったのです」
寅三郎:……まあ、なんでそのチョイスがUFOかは聞かんでおこう(一同爆笑)。
耀蔵:そこは蘭学だからな、しかたがない(笑)。
軋羽:蘭学って、いったいなんなんですか(笑)。
GM:綾は障子越しに空を睨む。「あのような愚物、私は認めません。あれは蘭学の英知の卵などではありません。恨みをただ闇雲にぶつけるだけの兵器です。蘭学者として恥ずべきものですわ」
亜弥:涙を拭って頷きます。「あたしもそう思います。兄ちゃんが本当に見せたかったものと全然違う。あれは空にあっちゃいけないものだと思います」
GM:綾は少しだけ君を案ずるような顔になる。「亜弥さん。私はお兄さまから印怒羅を止めるための鍵と、そこに辿り着く術を預かっています。でも、きっとお兄さまはあなたの御身がなによりも大切なはず」 
亜弥:「お気持ちはありがとうございます。でも、あれはあたしが止めなくちゃいけないことだと思うから」
GM:「それは、お兄さまの仇討ちですか?」
亜弥:「ううん、仇討ちじゃありません。黒衣衆の一員としてとか、南町の一員としてってことでもない。……たぶん、英傑としてでもない」

「あたしは、兄ちゃんが蘭学が間違った方に行くのを止めたいと思っていた、その遺志を継ぎたい」
 少女の凛とした声が座敷に響いた。
「兄ちゃんの妹として……ううん、弥八の遺志を継ぐひとりの蘭学者として、あれを止めに行くんです」


一同:おおおおおっ!
軋羽:「……最初にウチに来た時は、この子はずいぶんと荒んだ目をしていてね。殿様を手にかけると息巻いていたんだ。でも、今のこの子を突き動かしているのは、純粋な信念そのものなのさ」
亜弥:「それは、あたしと軋羽さんだけじゃないです。南町奉行の鳥居様もそう」
GM:その瞬間、綾がものすごい顔で硬直する。「鳥居、ですって!?」
軋羽:「あんたがよく知っている、蝮と呼ばれるあの人だよ」
GM:「あっ、あなた、あの毒蝮のもとにおりますの?」
軋羽:ひどい言われようだ(笑)。
亜弥:「う、うん。確かに蝮だし、この野郎! って思うときもあるんだけど……」って、懐から鳥居様にもらった羽ペンを取り出します。「あの人は決して闇雲に力を振るっているわけじゃない。あたしが蘭書を持って勉強していても、間違ったほうに行かないならいいよって言ってくれたんだよ」
GM:「あの蝮野郎が、まさか、そんな……。あなた、騙されているのではありませんの?」
耀蔵:はっはっは(笑)。
軋羽:鳥居様、信頼値0ですな!
寅三郎:まあ、蘭学者連中から見れば仇敵だからなあ。
亜弥:(笑って)「うん……そうかも。もしかすると、あたしもうまいように飼われてるだけかも知れない。でも、それでも鳥居様は、この事態を収めるのに絶対に必要な人なんだ」
軋羽:「あの人は町中で印怒羅の攻撃に身をさらしながら、民衆を救うために駆けずり回っている。うちの鳥居様があんたらにしたことを忘れろなんて言わないさ。しかし、今、この町を守ろうとしているその姿をあんたは笑うのかい? そうならあたいはあんたをただじゃおかない」
GM:その言葉には言い返せず、綾は唇を噛み締めながら憎らしげに軋羽を睨む。しばらくしてからため息をついて、「……そうですわね。高野殿のように憎しみに心を奪われて盲目になってはいけませんわね。……でも、私はあいつ、大ッッッ嫌いですのよ」(一同笑)

「お話、あいわかりましたわ」
 再び姿勢を正すと、まっすぐに綾は亜弥を見た。
「あなたのお心が蘭学者であり、英傑であり、そして弥八の妹御として真っ直ぐであるのならば……これを預けましょう」


GM:そう言って、綾は部屋の奥の襖を開け放つ。その奥の間に、巨大な回転翼がついたからくりが一台。
亜弥:回転翼って……ヘ、ヘリコプター!?
寅三郎:おお!
GM:データ的には、『太閤幻想』収録のからくり飛行機です。そして、傍らに大きな鍵がひとつ置かれている。古風な下駄箱の鍵を複雑にしたような形状だ。
耀蔵:木製のカードキーのようなものか。
GM:そうそう。一見すると木の札なんだけど、隙間に赤いチカチカしたものが光っている。
亜弥:「綾さん、これって……!」鍵を手に取ります。
GM:「それは印怒羅の自壊鍵です。兵器化し行く印怒羅を危惧して、あなたのお兄さまが秘密裏に回路を作られたのですわ」
軋羽:じゃあ、この鍵を使えばあの兵器を止められるってことか。
寅三郎:要は自爆スイッチだな。いいねいいね(笑)。
耀蔵:活路が見えたな。
GM:「鍵を核に挿し込むことによって、印怒羅は分解、再使用不可能なまでに破壊されるでしょう。ただし……」と、綾の声に影がまじる。「核が起動している今、自壊回路が作動するかは、核と鍵を差し込む側、より大きな力を持つ者の影響に左右されます」
軋羽:どういうことだい? 
GM:データ的な処理を説明しよう。印怒羅の核に自壊鍵を用いたときに、現在印怒羅の核となっている高野長英との対決判定が発生します。対決は蘭学者の奥義《驚天動地》の撃ち合いとなり、よりダメージ値の高かったほうが勝利することとなります。
耀蔵:蘭学エネルギーの押し合いということか。
軋羽:「でも、これって失敗したら亜弥の身にも危険が及ぶんじゃ……」
亜弥:(ぐっと拳をにぎって)「大丈夫、やってみせる。印怒羅も、長兄ちゃんにも負けないって決めたから」
寅三郎:亜弥はマジでたくましくなったなあ……。
GM:「あなたがたの存在は敵にとって大きな脅威。執拗に雷の矢が迫るでしょう。足しになるかわかりませんけど、持っていくといいですわ」と、綾が薬湯をふたつ、牛黄丹をふたつ差し出す。
軋羽:おお、ありがたいねえ。
亜弥:「ありがとうございます、綾さん」
GM:「付近の者たちの避難は我が屋敷でも総力を挙げて行いますわ。……といっても限度はありますけど」綾は深々と頭を下げる。「亜弥さん、軋羽さん。どうかあの兵器を……止めてくださいませ」
亜弥:「はい、必ず」鍵と兄ちゃんの手紙を大事にしまって、からくり飛行機に乗り込みます。
GM:パラバラパラ……と回転翼が回りはじめ、鈍い音を立てて瓦造りの屋根が左右に開いていく。
耀蔵:おおお(笑)。
寅三郎:からくり蘭学者の屋敷すげーな!
亜弥:「行こう、軋羽さん!」
軋羽:「ああ!」

 ふわり、と機体が地を離れた。
 亜弥の乗ったからくり飛行機と軋羽が、雷光の乱舞する江戸の空に飛び立つ。
 決戦の時は、目前へと迫っていた。







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南町黒衣録 最終話「満天の此先」終幕 2013年5月上旬更新予定