時は戦国、乱世の時代。
 人々は互いに争い、誰もが天下を狙って牙を研いでいる。キミはそんな時代に生まれ落ち、幻術の技を身につけた。キミは知っている。この世界に価値あるものなどなにひとつないことを。すべては夢だ。黄金は朽ち、大名は滅び、人は死んでいく。夢幻のようなものなのだ。
 だからこそ、キミは自分が最高の幻でいたいと思っている。歴史に記されない忍びだからこそ、最上の価値を持っていたいと願っている。プロフェッショナルであることこそ、キミの望みなのだ。
 そして英傑としての宿命を知った時、キミはこう考えた。もしかしたらその先に、夢でも幻でもない何かがあるのかもしれない、と。



 幻術使いとは、講談や芝居で主に語られる、神秘の力に満ちた忍者たちの呼称である。彼らの存在は、時にそうした虚構の中だけのものとされることもあるが、それこそが幻術使いの虚と実を操る力の証明でもある。
 幻術使いはその名の通り、幻を用いて他者を惑わす忍びの者たちだ。その技は遠くインドやペルシャから伝えられたものとされ、実際にそれらの地域出身の幻術使いも少なくない。
 彼らの幻は、単なる錯覚や思い込み、意識に投影されたイメージを利用した幻覚が主ではあるが、より達人の域に達した幻術使いの力は、その域には留まらない。
 幻術使いは単なる武器に「お前は生きている」と幻を見せてかりそめの生を与えたり、時間を幻覚に捉えてその流れを操ることさえできる。
 そもそもインドの哲学では、この世界はそれそのものが幻であり、真の世界を覆い隠す影であると考えられている。
 ゆえに幻を操る幻術使いは、仮初めであるこの世界の様相をも支配し、操作することが叶うのだ。