文・絵:すがのたすく



プリプレイ

 第一話の収録から二週間後、再び5人は都内の貸し会議室へと集まっていた。
 南町黒衣録、第二話の収録である。


GM:それでは、第二話もよろしくお願いいたします!
一同:よろしくお願いしまーす!(ぱちぱちぱち)
亜弥:もー、前回の収録からずっと今日が待ち遠しくて(笑)。
GM:楽しんでいただけてなによりです(笑)。
亜弥:(拳を握り締めて)だって、軋羽さんはかっこよくて優しいからもっと甘えたいし、石蕗さんは渋かっこいいから萌えまくりたいし、鳥居様には言い負かされてギリギリギリって唇かみ締めて自分の非力に打ちひしがれたい!(一同爆笑)
軋羽:勝ちたいわけじゃないんかい(笑)。
寅三郎:俺もいろいろと楽しみだ。前回の経験点で2レベル伸びたからな。けっこう戦闘で融通がきくようになった。
GM:ありがとう、私も気合入れてシナリオ作ってきたよ。では、さっそく今回予告だ!


■今回予告

 勘定奉行の討伐から一月。
 その夜、南町奉行所は壊滅した。
 妖異の策謀は、血に沈み、闇に潜み、密やかに糸を繰っては、南町奉行を追い詰めていく。
 愛に歪み果てた女の狂笑に導かれ、闇夜に再び赤墨が舞い飛ぶ。

 天下繚乱RPG 南町黒衣録「赤墨乱舞」
                百花繚乱綾錦―――いざ、開幕!


一同:南町奉行所壊滅っ!?
GM:うむ、バーンと壊滅する。せっかくだから派手にいこうと思って!
耀蔵:しょっぱなから大きな爆弾を落としてきたな。
亜弥:ひいい、やっと南町の生活に慣れてきたとこだと思ったのに(泣)。……あれ、でも、壊滅ってことは……。
軋羽:(渋い声で)そう……、死屍の折り重なる奉行所の中。そこには、血まみれで倒れている!
寅三郎:俺たちの姿が!
亜弥:いやあああぁー!(一同爆笑)
GM:倒れないよ! 君たちは事件を解決してよ!(笑)
耀蔵:(真面目な顔で)うーん……、材木問屋に材木の値段を吊り上げないよう指導しなくてはいかんな。
軋羽:なぜいきなり材木問屋の話ですか(笑)。
耀蔵:いや、南町奉行所が壊滅するなら、家屋再建のために費用が絶対に必要になるだろう。
寅三郎:そんなことまで今から考えなくていいから(笑)。
軋羽:妖異のこととか、紫様の心配とかしてください(笑)。
亜弥:愛に歪み果てた女って……え、紫さんのことじゃない、よね?(不安げ)
軋羽:うーん、鳥居様絡みの話のようだし、どうなんだろうね……。
寅三郎:GMのことじゃね?(一同爆笑)
GM:ちがーーーーう!(笑)
軋羽:あっはっはっは(笑)。
GM:じ、じゃあまずはPC1、亜弥のハンドアウトだ。

■亜弥ハンドアウト

 コネクション:紫 関係:恩義
 宿星:下手人の妖異を討つ PCコネクション:鳥居耀蔵
 
 君は、兄の仇を討つために黒衣衆で戦う少女だ。
 用人長屋の一角に部屋を宛てがわれた君は、奉行所の雑務や紫の手伝い、黒衣衆として妖異の事件に赴く日々を送っている。
 兄が本当に妖異であったのか、鳥居の言葉が真実であるのか、それを知らねばならない。
 南町に来てから一月が経った夜、君は奉行所から漂う妖異の気配を感じとった。
 そこに広がっていたのは一面の赤。血の海に沈み倒れ付す既知の面々。
 君は、南町壊滅の現場に遭遇した。


寅三郎:げ、壊滅現場に遭遇か。今回も亜弥はホットスタートだな。
亜弥:うう、コネクションが紫さんだけど、紫さんもやられちゃったりしてたらいやだなあ……。
軋羽:ハンドアウトにある用人長屋ってなんですか?
GM:奉行所の敷地内には、奉行所で働く人たちが住む長屋が併設されているんですよ。それを用人長屋といいます。
軋羽:寮みたいなものですかね。
寅三郎:そそそ。前回も説明したけど、奉行の役宅も同じ敷地内にある。
亜弥:ひとりで長屋暮らしかあ。ううっ、ぽつーん。どっちの壁に寄って寝ていいかわかんない(笑)。
GM:さみしいなあ(笑)。
軋羽:気を落とすんじゃないよ。あたいもときどき文字を習いに行くから(笑)。
亜弥:うん、ありがとうございます。今回こそ、兄ちゃんの真実を知るためにがんばります!


■鳥居耀蔵ハンドアウト

 コネクション:紫 関係:家族
 宿星:江戸を守る PCコネクション:石蕗寅三郎

 君は南町奉行鳥居耀蔵その人だ。
 勘定奉行の討伐後、君は町奉行と勘定奉行を兼任する多忙な日々を送っている。
 側室の紫も奉行所の役宅へと赴き、陰日向に君の補佐を行っている。
 いささか具合の優れない彼女の顔が、少し気にかかった。


亜弥:鳥居様が勘定奉行に!
GM:後藤田兵右衛門の討伐後、その後任を鳥居が引き継いだという形になります。
耀蔵:うむ。まあ、いろいろ……やったのだろう。
軋羽:意味深な(笑)。
耀蔵:妖異の力を振るっていた後藤田だ、妖異の存在を知っている者でなければ、引継ぎと後始末が厄介であろう。そういうことだ。
寅三郎:ちなみに史実でも鳥居耀蔵は、両奉行を兼任をしていた時期がある。普通はまずやらない、まじですごい。
耀蔵:風呂の中に硯や筆を置いていたという記録が残っているので、風呂場でも仕事をしていたのではないかと。
亜弥:ひゃーっ!
軋羽:それくらい時間が無かったってことでしょうね。それはさておき、秋葉原の邸宅が留守になるのなら、あたいも間者し放題♪
亜弥:あれ、でも鳥居様が勘定奉行になっちゃうと、他の卓で勘定奉行のPCがやりにくくなったりしないかな……?
GM:前回も言ったけど、各卓で遊ぶ際にリプレイで出た設定を必ずしも反映させる必要はないんだよ。自分たちが遊びやすい設定をチョイスすればいい。
寅三郎:まあ、そもそも勘定奉行職ってのはひとりではなく合計4人いるものなんで、もしそこら辺が気になる場合は、他の3人になれば大丈夫でしょう。
GM:鳥居の側室PCを作りたいときも同じだね。そう、鳥居様って側室ひとりじゃないの……。
亜弥:しょんぼりしない(笑)。
GM:だって子供が17人もいたんだよおおおお! 多いよ!!
耀蔵:子をたくさん成して家を継がせるのは当主の役目だ(笑)。
寅三郎:まぁ史実に全て忠実でなければいけない訳ではないんで、やりたければ他に側室はいないとか、真・側室とかいう設定を作ればいい(一同笑)。
亜弥:真・側室ってなんだろう(笑)。
耀蔵:しかし、ハンドアウトでは紫も多忙で限界か。少し休ませてやらんとな……。


■石蕗寅三郎ハンドアウト

 コネクション:花井虎一(注1) 関係:忠誠
 宿星:軋羽の正体を知る
 
 君は南町奉行鳥居耀蔵の腹心である黒衣衆だ。
 その日君は、黒衣衆総指令、花井虎一から密命を受けた。
 新入りの黒衣衆、軋羽の身元に不審な点があるため、彼女の裏を調べて欲しいのだという。
 君と共に勘定奉行を討った彼女は、まごう事なき英傑だ。しかし……。
 君は、彼女の正体を探るべく行動を開始した。


亜弥:わっ、軋羽さんが疑われはじめた。
軋羽:寅三郎に探られちまうのか、いや〜、参ったなあ〜(嬉しそう)。
寅三郎:まあ、前から怪しいとは思っていたんだ。お互い攻撃系のキャラだし、血を見る展開にもなるかもしれんな(笑)。
GM:怖いなあ(笑)。コネクションの花井虎一は、公式パーソナリティーの黒衣衆総司令です。黒衣衆の一番えらいひとだ。
亜弥:あれ、本庄(注2)さんも指揮官じゃなかったっけ?
寅三郎:黒衣衆には江戸天狗と天狗じゃない人員がいて、本庄は江戸天狗衆の方のトップ。花井はそれらすべてをひっくるめた黒衣衆を纏める指揮官なんで、本庄よりも上役だ。
亜弥:なるほどなるほどー。
寅三郎:ちなみに花井も蘭学者だよ。まあ、亜弥と話が合うかはわからんが(笑)。
耀蔵:蛮社の獄で尚歯会の高野長英たちを裏切って、わしについた男だからな。亜弥の兄から見れば敵にも等しいだろう。
亜弥:う、うーん、複雑だなあ……。もし会ったら、文句のひとつも言っちゃうかも(笑)。

■軋羽ハンドアウト

 コネクション:本所の涼太郎 関係:幼子
 宿星:赤墨の妖異を追う PCコネクション:亜弥

 君は老中、大久保古河守利真の配下であり、南町奉行のもとに潜入している間者だ。
 間者の任を果たしながら、君は黒衣衆として妖異討伐の日々を送っている。
 表の顔である岡っ引きとしての仕事を続けるうち、君はひとりの少年と知り合った。
 江戸の少年自警団、“八百八町遊撃隊”の一員である、本所の涼太郎。
 江戸の町を縦横無尽に駆ける少年の姿は、駿河に残してきた子供たちの姿を思い起こさせる。
 勘定奉行討伐から一月も経った頃だった。彼の口から、“赤い帯”という聞き捨てならぬ言葉を聞いたのは。


亜弥:わっ、八百八町遊撃隊来たー!(ぱちぱち)
軋羽:ああ、噂に聞く“ベイカー街遊撃隊”の江戸バーションだね。
亜弥:あたし、『大江戸妖怪絵巻』(注3)の正太君(注4)が好きなので、ライフパスのコネにもしてるんですよ。遊撃隊の子かあ、嬉しいな!
GM:うむ、なので、軋羽と亜弥両方と仲良くなれるかなって思って出してみた(笑)。涼太郎が住んでるところも、前に亜弥が居た本所だよ。
耀蔵:本所に住んでいるから本所の涼太郎か。
亜弥:じゃあ、兄ちゃんと暮らしていたころに仲がよかったことにしよう。正太の弟分とかかなぁ……(ほんわか)。
軋羽:あたいは今だ謎に包まれている亜弥の兄貴の件を調査しているうちに知り合ったことにしよう。うぅっ、涼太郎、なんで死んじまったんだい……(一同笑)。
寅三郎:速攻で殺すな(笑)。
軋羽:「涼太郎の仇ーーッ! これもっ、これもっ、これもこれもッ涼太郎の分だあァァッ!」(一同爆笑)
GM:だから死んでないから! ほら、成長報告行くよ!(笑)


■成長報告

成長報告:亜弥

GM:では亜弥から成長報告をお願いします。1話の時から一月が経っているので、その間にどんなことしていたかも教えてくれると嬉しいな。
亜弥:はーい! 一月の間は、兄ちゃんの墓をお参りをしたり、黒衣衆として何度か妖異と戦ったり、奉行所の雑務とか紫さんの手伝いしたりしていました。毎日、誰よりも早く起きて掃除してたり、水汲んだり。
耀蔵:一度はぶっ倒れて、そこまでやらないほうがいいぞと人から言われたり(笑)。
軋羽:本当に鳥居様に負けたくないんだね。
亜弥:負けたくない!
GM:相変わらず根性が座ってるなあ(笑)。データは何を伸ばしたの?
亜弥:キャラクターレベルが7になって、青龍(注5)と江戸っ子(注6)を1レベルずつ伸ばしてます。
寅三郎:お、蘭学者(注7)以外を伸ばしたのか。
亜弥:奉行所では蘭学に触れる機会があまりないかなって思って。そのぶん軋羽さんや石蕗さんと訓練したり、妖異との実戦の中で戦いの仕方を覚えた感じです。
GM:おー、設定にうまくかみあってていいね。特技はどんなのを取った?
亜弥:江戸っ子の特技は《てやんでえ!》(注8)。1セッション3回まで振りなおしができるようになりました。
軋羽:へえ、1ラウンド1回タイプ以外の振りなおし特技もあるんだ。
亜弥:はい、使えるのは自分に対してだけだけど、1ラウンドに2回以上使えるのは便利だなって。あと、青龍4レベルの《眩惑の巧み》(注9)を取得したので、オートアクションでクリティカル値が下げられます。
寅三郎:(亜弥のキャラシートを見て)うお、これで攻撃のクリティカル値が9か。
耀蔵:振りなおしを駆使すれば、ほぼクリティカルで命中するな。
亜弥:兄ちゃんの仇を討つためには全力で行くよっ!(ビシッと指を差して)鳥居様め、見てろ!
耀蔵:データ的には既に瞬殺されてしまう(笑)。
寅三郎:そこは俺らがカバーリングでなんとかしますよ(笑)。
亜弥:うー、石蕗さんたちを傷つけたいわけじゃないの!(じたばた)
GM:可愛いなーもー(笑)。PC間コネクションとの関係も決めておくれ。亜弥は鳥居にだね。
亜弥:えっと、鳥居様は「兄ちゃんは妖異になったから斬った」って言っているけど、それが本当かわからなくて、でも勘定奉行と戦った時の鳥居はとても正しい人で、兄ちゃんを斬った鳥居は憎くてたまらないんだけど、でも妖異という存在がいるのも事実だし……ってぐるぐるしてる。
軋羽:鳥居様の言っていることはわかるけれど、だからといって無条件にそれに従うわけではない?
亜弥:うん、そんな感じです。言ってる事は正しいんだろうけど、やっぱりやり方は気に入らないし、うーん、やっぱり今回も[憎悪]で。
寅三郎:まあ、そうなるよな。目の前で兄を斬り殺したところを見てるしなぁ。
亜弥:鳥居の言っていることが全部本当かなんてわかんない。だから、妖異と戦っていく中で手がかりを見つけて、本当のことを知ろうと思ってます。
軋羽:自分の目で見極める、ってことか。
亜弥:そういうことです。今回も、よろしくお願いします!


成長報告:鳥居耀蔵

耀蔵:わしは玄武(注10)を2レベル上げ、《緊急指令・弐式》(注11)と《軍神の盾》(注12)を取得。次のレベルアップでダメージ軽減を強化するやつまでいけたらという見通しです。
GM:これで玄武5、十手持ち(注13)1、天下人(注14)1か。支援方面に特化した感じですね。
亜弥:前回、敵の太ももにザックリザックリ刺しまくってたけど(笑)。
耀蔵:まあ、あれは演出なので(笑)。
軋羽:武道の観点からすると、抜き手で相手の目を潰したり、腕をはたいたり足を踏み潰したりして妨害するのは普通だし、演出としてはかっこいいと思いますよ(笑)。
耀蔵:あとは余った経験点を使用してガマの油(注15)と、若水(注16)ふたつと、馬(注17)を買いました。
亜弥・GM:馬?
寅三郎:ヴィークル(搭乗)装備ですね。町奉行が馬に乗って推参ってのはかっこいいな。
耀蔵:史実では弓剣槍馬が得意なので、本当は弓を買っておきたかったのだが、腕力の関係でまともに扱えないことがわかってな……(一同笑)。
寅三郎:また体力が足りないんかい(笑)。
耀蔵:能力値を上げるのは大変なのだ(笑)。ちなみに槍もダメだったんで、体力に関係なく使える馬をせめて取っておこうと思ってな。
亜弥:鳥居さーん! レベルアップしたら弓も引けるといいね……(笑)。
軋羽:ほ、ほら、実は弓を手にすると、すごすぎるから握らないんですよ、きっと!
亜弥:(鳥居耀蔵になって)「今はまだ、この弓を使う時ではない……!」(一同笑)
GM:まぁ、そんな鳥居様がいつか見られる日が来ることを信じて(笑)。
亜弥:いつか(笑)。
耀蔵:来るかなあ(笑)。PC間コネクションの石蕗には、前回と同じく[有為]だ。


成長報告:石蕗寅三郎

寅三郎:俺は白虎(注18)と秘剣使い(注19)が1レベルずつ伸びました。白虎からは《防御支援》(注20)、秘剣使いでは《今の技は秘剣にあらず》(注21)というのを取りました。
亜弥:なんだか面白い名前の特技(笑)。
GM:秘剣使いの特技名は、口上みたいな名前がたくさんあってかっちょいいよね。
寅三郎:この特技の効果は、相手にダメージ与えたときに狼狽も追加するというものです。これで秘剣以外の攻撃を撃った時にも、相手をまともに削りやすくなるはずだ。
耀蔵:ネックは命中値の低さだけか。
寅三郎:八幡様のお守り(注22)も買ったんで神頼みと出目頼りだ。振りなおしの総数も増えたことだし、なんとかなると信じたい(笑)。
軋羽:コネクションは? “黄泉返しの寅”からあたいへの関係は何なんだい?(ヒョコヒョコ)
亜弥:軋羽さんの動きが怪しい(笑)。
寅三郎:軋羽に対してのコネクションは[疑念]にしました。ここ一月の間は任務を共にしつつ、やけに手だれな軋羽に疑惑の目を募らせている。気になる女だ。


成長報告:軋羽

GM:ラストは軋羽の成長報告だ。
軋羽:はい。まず朱雀(注23)を1レベル伸ばして、《破滅の禍言:放心》(注24)を取りました。あたいは一番早く動けるので、範囲の敵に放心を与えて、クリンナップまでピヨらせればいいなと。
寅三郎:おお、それはだいぶ助かる!
GM:行動値の早さを生かした特技の取り方はいいのう、強力だ。
軋羽:あと、間者生活を介して人との付き合いが増えたことから、渡世人(注25)のレベルを2にして《親分肌》(注26)を取りました。
寅三郎:岡っ引きをしつつ賭場の連中から袖の下をもらったりとか。
軋羽:そうそう、この立場を生かして渡世人としてのネットワークも広げてるのさ。レベルアップによって各種戦闘値も上昇して、現在の行動基本値は22。《天狗変》(注27)を使うと27まで上がります。
耀蔵:早いな、わしの行動値の倍以上あるぞ(笑)。
亜弥:もう誰も追いつけない(笑)。
GM:今回は全員、ダメージをがっつり上げるよりは、調整をメインに据えた感じか。
軋羽:前回は寅三郎の通常攻撃があまり当たらなかったということもありましたので、その弱点をサポートできるかなと思いまして。
寅三郎:すまん、恩にきる。
軋羽:亜弥へのコネクションは、[幼子]で取っています。やっぱり、ひとりぼっちで頑張ってる亜弥は、放っておけないよ。
亜弥:軋羽さんが優しくしてくれるから頑張れてるってとこも大きいです。軋羽さん大好きー(ほんわか)。
軋羽:ここ一ヶ月は岡っ引きや黒衣衆の仕事をこなしつつ、亜弥の長屋に手習いに通っているよ。
寅三郎:そういや、前回のエンディングで読み書きを教えてもらう約束をしていたんだったか。
軋羽:書き写しは何とかできるんだけど、自分で書くのはやっぱり苦手でね。亜弥に教えてもらって、里の子供たちに返事を出すのが目標なんだ。一ヶ月の間に、なんとか文を人並みにしたためられるようになったかな、というところかね。
耀蔵:なるほどな……。(考えながら)実はわしも読み書きのことで軋羽にやりたいロールがあるんだが、あとでどこかでシーンを作れないだろうか。
GM:うすうす、そうだなあ……(シナリオを確認しながら)オープニングに入れるのはちょっと難しそうだから、ミドルフェイズに入ってからでもいいかしら?
耀蔵:うむ、それでかまわん。
軋羽:なんだろう、ちょっとドキドキするね(笑)。
GM:では、成長報告も終わったことだし、シナリオに入りましょうか。
亜弥:はーい。いよいよ奉行所大壊滅!
軋羽:そこには、血まみれで倒れている!
寅三郎:俺たちの姿が!!(一同爆笑)
GM:だから勝手に死なないでぇぇぇっ!(笑)








オープニングフェイズ


■オープニング01 激務の狭間で  ――――シーンプレイヤー:鳥居耀蔵

 勘定奉行、後籐田兵右衛門の死からしばらくの後。
 鳥居甲斐守耀蔵は、穴の開いた勘定奉行勝手方の後任を命じられた。
 後藤田の後始末も兼ねた勘定奉行の職務、月番であった町奉行職との兼任は多忙を極め、紫をはじめとした家人を奉行所内の役宅へと呼び寄せた鳥居は、寝る間も惜しんで職務に励み続けていた。


GM:では、最初のオープニングは鳥居耀蔵のシーン。
耀蔵:うむ、登場しよう。町奉行職をこなしつつ、勘定奉行の仕事や江戸城へ赴き、闇の仕置人に指令を出す傍らで、黒衣衆を率いて妖異の事件へと対処する日々を送っている。
亜弥:多忙だー(笑)。
GM:まさに寝る暇もないという感じなのね。紫も役宅まで来て泊り込んで、君の手伝いをしています。
耀蔵:そうだな、紫には内々のことはすべて任せておく。わしは書斎で、昨日暗殺に来た連中の拷問はどれくらい進んでいるか、という報告を読んでいます。
寅三郎:ちなみに拷問などは、奉行所内の土蔵で行われます。
耀蔵:音が漏れるといけないからな。
亜弥:ひい〜、生臭いよ〜(笑)。
GM:夕刻の役宅。君のいる書斎に紫が、勘定奉行の職務へ向かう支度を持ってやってくる。
耀蔵:なるほど。では、勘定奉行職に赴く準備をしよう。裃に着替えると思うので、紫に手伝ってもらいながら――――。
GM:(ガタッと立ち上がって)手伝っていいの!? 
軋羽:GMが喜んでどうするんですか(笑)。
GM:こっ、ここここれは私がヤバイ! どうしようどうしよう(あわあわ)。
寅三郎:いいから手伝えよ(笑)。
GM:ゴメン、ほんとゴメン! でっ、でも、そんなこと言ったら着替え手伝っちゃうだろおぉぉっ!!?(一同爆笑)
亜弥:GMがじゃないよ、紫さんにやらせてあげて!
GM:紫さんちょっとおい、そこ邪魔ですーっ!!
耀蔵:(ドン引き顔で)あ、あの、いちおう言っておくが、今でいうところの浴衣以上は脱がんからな……?
GM:(拳を握り締めて)全然いいですよ、むしろそれがいいですよ! 大丈夫大丈夫、大事なところはGMから見えないようにして着替えを済ませるから!
一同:いいからシーンを進めろやぁぁっ!!!(笑)

「近頃、亜弥さんは軋羽さんに文字を教えているようですよ」
 静かに布擦れの音が響く。慣れた手つきで紫が袴下帯を締めていく。
 奉行所の方角から響く同心たちの声を、縁側に吊るされた風鈴の音が涼やかに散らす。
 肩衣を整えながら報告を進める紫の顔は、一月前よりも青白い。


GM:「……忙しい日々が、続いておりますね」
耀蔵:「これからも続く」言葉少なに答え、紫に目線だけをやる。「……これからも続くのだから、体を厭え」
GM:その言葉に静かな笑みを向ける紫。それほど暑くない日にも関わらず、額には玉のような脂汗を浮かべている。例えるなら、寝不足を極めているような感じだ。
耀蔵:「まだ、慣れぬか?」
GM:「申し訳ございません。回復に努めます故、殿様もどうかお体のご自愛を」
耀蔵:「わしのことはいい」
GM:(悶えてテーブルの足を蹴る)
寅三郎:蹴るなよ(笑)。
耀蔵:では、紫の手を取って脈を取ろう。
GM:紫の脈は弱々しい。少し不整脈のようだ。
耀蔵:(眉根を寄せて)「……今晩の差配だけ終わったら休め」
GM:紫は困ったように君の顔を見つめる。「しかし……」
耀蔵:「紫よ。これから先、そなたにはやってもらわねばならぬことがたくさんある。今ここで倒れられても困るのだ。わしのことを思うのであれば、まず我が身を厭え」
GM:では、着付けの最後に印籠を帯に止めて。「……かしこまりました」
耀蔵:納得していない雰囲気だな。「よいか、今年わしは葬式を出している余裕はない。お登与のようにはなるな」
寅三郎:お登与って鳥居の正室だったっけ?
耀蔵:そう。史実では数年前に亡くなっている。
GM:「殿様……。わたくしも、葬式を出したくなどございません」
耀蔵:「わしは大丈夫だ。そなたたちがおる」
GM:ふあ……ぁあ……あ……!(ぷるぷる)
軋羽:あっ、紫様の皮が剥がれて中からGMの姿が!
亜弥:だめーっ、紫さん戻ってきてー!(笑)
GM:は、はい! じゃあ、紫はクラっと――――(一同爆笑)。
耀蔵:紫もかい!(笑)
GM:違う! 血の気が失せてフラフラッてなる演出がしたかったの!
亜弥:タイミングがよくなかったね(笑)。
耀蔵:そ、そうだな(笑)。じゃあ崩折れそうになる紫を抱きとめて――――。
GM:ふブッ…………!(テーブルにつっぷす)
軋羽:GMが死んだ(笑)。
耀蔵:わしはどうすればいいんだよ(笑)。
GM:え、えっとね、なんて言うんだろう……あのね、愛してるんだよ(笑)。
耀蔵:う、うむ。
GM:それで、申し訳ありませんありがとうございます的なことが言いたいんだよ(笑)。
軋羽:ああ、とうとうロールすらできなくなって……(ほろり)。
GM:(ぷるぷるしながら)そ、側室って……結婚って、いいね……!
寅三郎:知るか!(笑)
耀蔵:とりあえず家人を呼んで、床を敷いて紫を休ませるよう命じよう。「……体を厭え」
GM:「かたじけのうございます」と、紫は弱々しげな微笑みを作って深々と頭を下げると去っていく。
亜弥:紫さん、具合大丈夫かな、心配だな……。
耀蔵:本庄に薬を調合させんとな……と呟き、わしは勘定奉行職へと向かおう。
GM:では、君に【宿星:江戸を守る】をお渡ししてシーンを切りましょう。……ごちそうさまでした。
耀蔵:さいですか(笑)。
寅三郎:いや、ひどかった、なんのシーンだかわからんかった(笑)。
亜弥:えっと、紫さんの具合が悪そうってことでいいんだよね?
GM:う、うん、なんかその、ごめん……。南町リプレイ、やってよかった……(恍惚)。
軋羽:あっはっはっはっは(笑)。



■オープニング02 本所の涼太郎  ――――シーンプレイヤー:軋羽

 表では南町の岡っ引き、裏では黒衣衆、そして大久保古河守の命を受けた間者として、三重の草鞋を履いた軋羽は、主にも負けぬ多忙な日々を送っていた。しかし、それは忙しくも思いのほか色鮮やかな幾日。
 任の合間に亜弥に習う文字は、軋羽の心に暖かな喜びを満たしていた。


GM:お次は軋羽のオープニングにいたしましょう。
軋羽:お、あたいのシーンですかい。最近は亜弥のところへ文字を習うのが密かな楽しみなんだ。
GM:うむ、じゃあ今日も君が亜弥の用人長屋へ文を習いにいくと、亜弥の長屋は空だった。
亜弥:具合が悪い紫さんのお手伝いとかに行ってるんだー。
軋羽:「あれ、留守か。こいつは参ったな」
GM:そんな君の背後から、「軋羽姉ちゃん!」と声がかかる。
軋羽:ん?
GM:立ち並ぶ長屋の影にこそっ、と潜んで手を振る、年のころは十ほどの少年が。君が最近調査を進めるうちに知り合った、本所の涼太郎だ。
軋羽:「あれ、どうしたんだい涼太郎。ここは奉行所だよ?」
GM:「八百八町遊撃隊に入れないとこなんかねーさ! 軋羽姉ちゃんがこっちに入ってくの見えたからさ。亜弥はいるのかい?」
軋羽:「いいや、残念ながら亜弥は留守のようさ。せっかく土産に風鈴を持ってきたのにな……」と言いながら、風鈴を戸口に吊るしておきます。「まあ、こうしておけばあたいが来たことがわかるだろう」
亜弥:わあ、素敵!
GM:「風鈴かぁ。そういうのってそんなにいいもんなのかよ?」
軋羽:「そりゃあ、男しかいない殺風景なところだ。女の子ひとりで何の音色もないのは寂しいからね」
GM:「そっかぁ。じゃあおらも次に来るときに、軋羽姉ちゃんに風鈴持ってきてやんよ!」と、涼太郎は胸を張る。
亜弥:あ、君ちょっと軋羽さんに惚れてるだろ(笑)。
GM:うるせー! かっこいい憧れのお姉さんなんだよ言わせんな(笑)。
軋羽:「そうかいそうかい。そりゃあ嬉しいね」と言いつつ、腰を落として涼太郎と同じ目線で少しにらみましょう。「だけど、勝手に忍び込んできちゃ駄目じゃあないか。ここは仮にもあんた、天下の南町奉行所だ。捕まったら最後、土蔵の中で恐ろしい折檻をされちまうよ?」
GM:「み、南町の連中なんか怖くねえや! そうだ、そんなことより軋羽姉ちゃんたちに伝えなきゃいけないことがあったんだよ!」
軋羽:「ん? どんな事だい?」
GM:「一月前に亜弥の兄ちゃんが大変なことになっただろ、あの夜、おらの仲間が“赤帯の女”を見たんだ」
軋羽:「赤帯の女? なにか怪談みたいな話だね」
GM:「少し前からおらたちの間ではやってる噂でさ。赤い帯を身体に纏わせて、ニタニタ笑う気持ちの悪い女だよ」
軋羽:「赤い帯……?」

 軋羽は眉間に皴を寄せた。
 脳裏に、鳥居を襲った下手人が操っていた赤墨が浮かぶ。


亜弥:兄ちゃんのと同じ妖異だ!
軋羽:涼太郎の肩をつかんで揺さぶるよ。「その話、なんでいままで黙ってたんだい! あんたたちだけが知ってる話かい?」
GM:「火盗改ならともかく、極悪非道の南町にしゃべる道理なんかねえじゃねえか! 女の正体はおらたち八百八町遊撃隊で解決するんだ!」
寅三郎:うーん、これは鳥居様の悪評が祟ったな。
GM:「それに、亜弥の兄ちゃんが鳥居に斬られた件と、怪談の女が関係あるなんて思ってなかったんだよ……」涼太郎は緊迫した顔で君の腕を掴む。「でも違うんだ、そうじゃなかったんだ。その気持ち悪い女をつい昨晩、奉行所の近くで見かけたんだよ!」
亜弥:ええっ!?
軋羽:「なんだって、それは本当かい?」
GM:涼太郎は神妙な顔でうなずく。「おらの仲間が見た話だから間違いない。それって、二回も亜弥に近い場所に出たってことだろ? だから、知らせなきゃいけねえって思ったんだ」
軋羽:なるほどねえ。「教えてくれてありがとよ。……だけど、いいかい? その件はあたいが調べるよ。もし、もう一度その女を見ても、絶対に近づいちゃいけないよ」
GM:「えっ、なんでだよ?」
軋羽:うーん、おそらく妖異だよなあ……。「そうだね…、そいつは悪人だからさ」
GM:「悪人なんか怖くねぇさ! 妖怪だろうが悪霊だろうがおらたちが尻尾捕まえてやるよ!」
軋羽:「そういうことじゃない。あんたの命が危なくなるかもしれない、そういう話なんだ」
GM:涼太郎はぶーたれた顔になる。「でも……亜弥や軋羽姉ちゃんが危なくなるんなら、おらたちが倒してやったっていいじゃん。おらたちだって戦えるんだぜ、八百八町遊撃隊だって強いんだぜ……」
軋羽:「涼太郎、あんたは本当に正義感の強い、いい男だねぇ。でもね、もしもの事があったら亜弥やあたいが悲しむことになるんだよ。だからあんたは絶対にそういうことをしちゃあいけない」
GM:「うっ……。そういうの、ズリい……」
軋羽:ニシシと笑って、「あんたももう少し大きくなれば、あたいの気持ちがわかるはずさ」
GM:じゃあ納得いかないような膨れっ面をしながら。「……わかった。これは、おらと軋羽姉ちゃんだけの約束だからな?」
軋羽:「ああ、ちゃんとあたいが亜弥を守ってやるさ」と指きりをしましょう。
GM:「亜弥を危ない目に合わせたら承知しねぇぞ!」
軋羽:「さ、奉行所の連中に見つかったら絞められるよ。あとはあたいに任せて帰んな」と、奉行所の敷地から送り出しましょう。
GM:「約束だからな、指きりだからな! ふたりの秘密は絶対だかんなー!」と、涼太郎は走り去っていく。
亜弥:ふたりだけの秘密、かあ。
寅三郎:じゃあ俺たちにも報告しない?
軋羽:いや、赤墨の妖異の重要な情報だ。鳥居様には報告しないといけない。涼太郎の後姿を見送りながら呟きます。「……ごめんな。また嘘をひとつ、ついてしまいそうだなぁ」
GM:おお、いいなあ。では、軋羽に【宿星:赤墨の妖異を追う】を差し上げてシーンエンドにいたしましょう。



■オープニング03 軋羽の疑惑  ――――シーンプレイヤー:石蕗寅三郎

 その日、寅三郎は浅草山谷の料亭へと呼び出しを受けた。
 不意の席を設けたのは、黒衣衆総司令、花井虎一。
 仕切られた間の中には、虎一と寅三郎、黒衣衆の虎がただ二匹。
 若き総司令は、寅三郎にひとつの密命を下した。


GM:では寅三郎のシーンに参りましょう。君は黒衣衆総司令、花井虎一の呼び出しを受け、浅草の料亭へと赴いた。
寅三郎:料亭は密談の定番だな(笑)。あ、登場するよ。
亜弥:なんだか石蕗さんに料亭って、あまり似合わなさそうなイメージ(笑)。
寅三郎:いやいや、新撰組といえば料亭ですよ。近藤局長や芹沢鴨が、なにかあるたび料亭に行っては女をあげて遊んでましたんで(笑)。
耀蔵:そうだな(笑)。
GM:花井はひとり、君を迎え入れる。「石蕗君、急な呼び出しですまないね」
寅三郎:「いえ。それが仕事でございますんで」
GM:「まあ、飲みたまえ」と杯を差す。
寅三郎:「は……いただきます」

 静かな室内に上質な酒の香りが漂う。
 花井は端正な面立ちに憂慮を浮かべ、自らも一口だけ酒を食んでから、石蕗に視線を向けた。


GM:「君をわざわざ呼び出したのは、他でもない。君のもとで動いている軋羽という黒衣衆。……彼女をどう見る?」
寅三郎:「ま……十中が八九、間者ですな」
軋羽:あっはっは(笑)。
GM:「君の目にも、そう映るか」
寅三郎:「どうにも、腕がたちすぎます」
GM:「私は黒衣衆の総司令ではあるが、天狗衆の事情には疎い」さっきも言ったけど、天狗を纏めているのは本庄なので。「だが、軋羽が魔縁だという密告が来てね」
軋羽:(満面の笑みで)ちいっ!
亜弥:なんでそんなに嬉しそうなんですか(笑)。
寅三郎:「魔縁、ねぇ……。あやつらも物の怪や神の眷属でありながら、我々と同じように下らんことに気をもむ奴らですな」
GM:「書類上は駿河天狗であるとの届けはされていたが、どのようにして黒衣衆へ入隊したか、経緯が不明瞭だ」花井は杯をコトリ、と置く。「石蕗君、君に、軋羽の身辺を洗ってもらいたい」
亜弥:おおー、来た!
GM:「彼女の入隊に関して大きな問題が起きていないことを考えると、この件を容易に、本庄君たちに明かすわけにもいかない。内通者がいる可能性が極めて高い」まあ、よりによって本庄君ということだけはないだろうが、と苦笑する。
亜弥:そうね、本庄さんは鳥居様に秘密とか作らなそうだもんね(笑)。
寅三郎:なるほど、花井様は天狗を完全に掌握してるわけじゃないんで、自分では動けない。とはいえ、鳥居様に話を持っていくには話が早すぎる、といったところか。「委細承知。承ってございます」
GM:「君は本当に頼りになる」
寅三郎:ではなにか言おうとして、いや、とあらためる。この男は善人だが、善人であるがゆえに恐らくわからんことがある。京の都なら真っ先に死んでいる類だ。
軋羽:おおぉ。
寅三郎:――――だが、いい。この実直さは嫌いではない。
GM:花井は口の端だけで笑みをつくり、膳を差す。「せっかく来たのだから、食べたまえ」
寅三郎:(口を押さえながら)「いえ……、せっかくですが失礼します」
GM:「ん?」

 花井が怪訝な顔を向けたが、こぼれ出る笑みを抑えることができなかった。
「いや、……私は軋羽が食えるのなら、このような馳走などは、ね……ックク、障りなのですよ」
 軋羽が臭いのは確かであった。だが、それが鳥居に仇成すものであるかはあらためる必要がある。
 どう転がるかはわからない。そうでないのなら、それはそれでいい。
 しかし、心の奥底に、あの女が敵であればいい、斬り結びたい、殺し合いたいのだと、淀んだ歓喜が渦巻いていた。


寅三郎:「……ックク、あれが食えるのなら…………いや、失礼。人斬りのことです」
亜弥:ふあああぁぁぁ……!(ぷるぷると悶える)
軋羽:(小声で)ありがとうございます……ッ!
GM:君を見つめる花井も、「この男は使えるが、相容れないな」という表情をしている。
耀蔵:なにを言おうが、太平の時代の人間と、幕末の人間だからな。
GM:「……そうか。では頼んだよ」
寅三郎:「ええ、任せてください」と、立ち上がって座敷を出て行こう。
GM:では、寅三郎に【宿星:軋羽の正体を探る】を差し上げてシーンを切りましょう。
軋羽:おおおお、黄泉返しの寅、かっこいい……!



■オープニング04 宵闇の惨劇  ――――シーンプレイヤー:亜弥

 亜弥が奉行所に来て一月が経った。
 兄が妖異であったのか、なぜ鳥居に斬られなければならなかったのか、それを見極めるため、黒衣衆として任務に赴く日々。
 しかし手がかりすらつかめぬまま、時間は無情に過ぎていく。
 そしてそれは、壮絶な鮮血と共に、少女のもとへと現われた。


GM:オープニングのラストは、亜弥のシーンでございます。夕刻。その日も君は、薙刀の稽古を終えて奉行所の同心長屋へと帰ってきた。
亜弥:はーい、登場します! 最近紫さんの具合がよくないので、軋羽さんに稽古をつけてもらった帰りに、亀戸の方にちょっと遠回りして葛餅を買って帰ってきたいです。
寅三郎:お、葛餅か。いいね。
軋羽:亀戸で葛餅が売ってるんだ。
亜弥:さっき、休憩時間にスマホでばっちり調べました! この頃には亀戸でもう創業してるって!
耀蔵:葛餅は消化にも良い。紫も喜ぶであろう。
亜弥:紫さんにはよくしてもらっているから心配なの。具合が悪くても、つるんとしたものなら食べやすいだろうと思うから。
GM:亜弥は優しいなあ(笑)。しかし、君が奉行所に近づいていくと、ふと違和感に気づく。

 常ならば、奉行所には同心や御用聞きが足しげく出入りし、人の気に溢れていた。月番であるのならば、なおさらだ。
 しかし、向かう先の奉行所は、妙に静まりかえっていた。
 一月の間、幾度も妖異の事件と相対してきたその身に、覚えのある泥のような気配が圧し掛かる。


亜弥:「この気配、妖異……!?」タタタッて奉行所に走っていきます。
GM:奉行所の正門は閉じられており、内側には血の跡がビシャビシャッと広がっている。そして、数人の同心が胴を斬り裂かれて事切れている。
亜弥:「ひ……っ!?」
寅三郎:こいつぁやばいぞ。
耀蔵:「亜弥ちゃん今日も元気だね」と、いつも声をかけてくれた同心の岡村の変わり果てた姿とか。
GM:そうそう、「菓子が余ったので持ってきたんだ。食べるかい?」と言ってくれた村上とか。
亜弥:「岡村さん、村上さんーっ!」
軋羽:無言で握り飯を持たせてくれた古池のオッサンとか。
耀蔵:夜中にがんばっていると「せいが出るね」ってお茶淹れてくれた使用人の佐藤さんとか。
亜弥:ああっ、葛餅おいしいよって教えてくれた牧村さんまで!
寅三郎:さりげなく被害者を増やすな(笑)。
亜弥:ううっ、みんないい人たちだったのに……。倒れている人たちの首に手を当ててみるけど……。
GM:ベチャッ――――。
亜弥:「〜〜〜〜ッッッ!!」ひどい、ひどいよ! こんなこと、なんで、誰が……。
GM:奉行所の玄関の中へと血の跡は続いている。内部から強烈な血の匂い。灯りひとつない屋敷の中は、しんと静まり返っている。
亜弥:まだ生きてる人がいるかもしれないし、葛餅は袂に入れて、用心深く薙刀を構えて、こそっと中を覗いてみます。
GM:おびただしい躯と血しぶきが続く廊下。そしてその奥のどこからか、ねばつくような女の笑い声が聞こえてくる。
寅三郎:下手人か!?
軋羽:あたいが涼太郎から聞いた、赤い帯の女かもしれない。
亜弥:じゃあ女の人の声がするほうに、足音を立てないように気をつけながら、そろりそろりと近づいていきます。

 ピシャリ、ピシャリ。
 足元で血溜まりがかすかな音を立てる。
 一歩進むたび、生暖かい血が少女の足に絡みつく。
 血と瘴気で息の詰まるような廊下を、亜弥は声を殺して進んでいった。
 「うァひひひィ……うァははははアァ……ァ」
 奥からは怖気立つような女の声。
 辺りには幾人もの見知った顔が、無残な躯となって落ちている。


亜弥:ううっ、兄ちゃんの死んだ姿を思い出しちゃう……兄ちゃん……。
GM:廊下の先には同心当番所。その戸がちらりと開いている。戸の先は真っ赤に染まっていて、女の声はそこから聞こえているようだ。
亜弥:「兄ちゃん……!」もう一回、辺りで死んでいる同心のみんなを見て、薙刀をぎゅっとにぎりしめます。こんなひどい事をした妖異は絶対に許せない。扉をガラッて開ける!

 室内は一面の血の海であった。
 数多の躯がぶつ切りとなって、壁に鮮血を塗りたくりながら床に散らばっていた。
 その中央、白い長襦袢を斑に赤く染めた女が、ねばつく笑いを上げながら立ちずさんでいる。
 死人のように青白い肌、じっとりと血に染まった濡羽色の黒髪。
 その面は、亜弥のよく知る顔。
 ――――鳥居耀蔵が側室、紫であった。


一同:えええええっ!?
耀蔵:なんと…………。
亜弥:「ゆか、り……さん…………?」すぐ攻撃できるように構えてたんだけど、目が離せず呆然としてしまいます。えっ、え……!?
軋羽:すると、亜弥の袂から紫様にあげようと思って買ってきた葛餅が血だまりに落ちて、派手な音が立っちゃうのですよ。
GM:その音にぴたり、と笑い声が止まる。ギ、ギ、ギ、ギ、ギ……と、ゆっくりと紫が亜弥の方へ振り返る。
寅三郎:うおぉ、SAN値が下がる(笑)。
亜弥:うああああ、どっ、どうしよう! ゆ、紫さんだって思ってなかったからパニくっちゃう。「あっ、あの、えっと、葛餅買ってきて、その、紫さんにって……」
GM:紫は血に塗れた葛餅をちらと見やってから、いつもと変わらぬ微笑を浮かべる。「……あら、亜弥さん」
亜弥:ううっ、震える手で薙刀を握り直します。でもぶるぶるしちゃう。「なにがあったんですか。み、みんな、血まみれで、どうして、まさか紫さんがこんな……!?」
GM:「どうしてって……それはもう、殿様の御為ですもの」嬉しそうに紫が微笑む。
亜弥:「鳥居様の!? え、でも、なんで奉行所の人たちを……!」
GM:その時、奉行所の入り口の方から幾人かの叫び声がする。「うわあぁぁっ、なんだこの血は!」
寅三郎:お、他のやつらが駆けつけたか?
GM:うむ、外回りの者たちが帰ってきたのだろう。「賊か、賊が入ったのか!?」
軋羽:(同心になって)「ひいいっ、し、死んでる……! だっ、誰か! 誰か生きてる奴はいないか!?」
GM:彼らは同心当番所の戸口で薙刀を構えている亜弥を見つけて、「あ、亜弥! まさかてめぇが!」
亜弥:ちっ……違います、あたしはなんにもしてません!――――って、そんなどころじゃなくて、紫さんは!?
GM:君が再び紫へと振り向いた時には、既にその姿は消えている。
寅三郎:逃げられたか。
耀蔵:う〜ん。
GM:同心たちは倒れている者の息を確かめたり、中には惨状を見て嘔吐している者もいる。「亜弥、どういうことだ! ま、まさかてめぇがやったんじゃねぇだろうな!」
亜弥:「ちっ、違います、あたしが稽古から帰って来たらこんなことになってて……!」
軋羽:紫様のことはまだ言わないのかい?
亜弥:うう…っ、うん……。弁明をしながら、さっきの紫さんの笑い声が頭の中をぐるぐるしてる。紫さん、なんで……。
GM:では、亜弥に【宿星:下手人の妖異を討つ】を差し上げてシーンを切りましょう。

 崩れた葛餅が血溜まりの中、灯された蝋燭に照らされて鈍い光を放つ。
 その夜、南町奉行所は血の海に沈んだ。




ミドルフェイズ


■ミドル01 江戸城詰問  ――――シーンプレイヤー:鳥居耀蔵

 評定所で職務に励む鳥居のもとに報を届けたのは、江戸城からの使者であった。
 先刻、南町奉行所で起きた与力、同心殺し。その数実に七十八名。
 その詰問に、鳥居は老中たちの居並ぶ江戸城へと向かった。


GM:ではミドルフェイズだ。最初は鳥居のシーン。君のもとに老中からの使者が訪れ、君は江戸城に向かうこととなった。
耀蔵:む、奉行所からの報が届く前に呼ばれるのか。早いな。なにがあったのか、わしは報告を受けているのか?
GM:概要は向かう途中に入ってくる。南町奉行所内に何者かが侵入し、南町の与力、岡っ引きなど総勢七十八名が死亡。
亜弥・軋羽:七十八名!?
耀蔵:今回は多いな……。
GM:で、今回鳥居が呼び出されているのは、ちょっと厄介な問題がからんでいて。殺害された者の中には、老中贔屓の者が複数いたのです。
寅三郎:あー、なるほどなあ。そりゃやっかいだ。
軋羽:ん? どういうことだい?
GM:町奉行っていうのは、その時々で任命された人物が役職につくのね。でも、奉行所に勤める与力とか同心の多くは世襲制で、代々勤めてる旗本とかで構成されてるの。なので、彼らはお家的に各々老中とも繋がりがある人もいるんだけど、それが奉行が贔屓にされている老中と一緒とは限らない。
亜弥:あ、そういえば鵜殿(注28)さんも、田沼意次(注29)と繋がりがあるって書いてあった!
寅三郎:そうそう。で、今回の場合、田沼様なり大久保様なり、そういう老中が贔屓にしていた連中がやられてしまったんで、その責任がどこへ向かうのかがさらにもつれそう、という事なんだろう。

 江戸城。
 畳敷きの間に居並ぶは、そうそうたる面々であった。
 老中筆頭、水野忠邦(注30)。大目付、柳生宗矩(注31)。田沼意次、大久保古河守利真をはじめ、名だたる老中たちが居並んでいる。


寅三郎:おお、そうそうたる面々だ。
軋羽:大久保様も居る! こりゃあ、鳥居様との対決が見れるかな?
亜弥:ひー、こんなとこに来たら何もしゃべれなくなっちゃいそう……(笑)。
GM:老中たちの視線が一斉に君を向く。「随分と、遅いご到着ですな」
耀蔵:「必要な報告を受けておりました」
GM:田沼がパチン、と扇子を閉じる。「事態、甲斐守殿は如何様に認識しておりますかい?」
亜弥:田沼さん、こんな時でも軽い(笑)。
耀蔵:「ただ今調査中にございます」
GM:大久保古河守が、半眼で君を見る。「此度の件、稀に見る不祥事でありますぞ。治安を挺すべき町奉行所にみすみす賊の進入を許したばかりか、七十八名にも上ろうという死者。……甲斐守殿、この責任をいかがなさるか」
耀蔵:「戦時であれば、いつものことでございます」
GM:くっ!
亜弥:つ、強い……(笑)。
耀蔵:「それよりも、我が奉行所にはここにいるお歴々肝入りの者が多数おりました。現在の報告では、全員が全員、刀を抜いて応戦したわけではないということが判明しております」
GM:詳細が不明ってだけじゃん!
軋羽:でも、いちおう嘘はついてない(笑)。
GM:ズルい!(笑)
耀蔵:「――すなわち、ここにいるお歴々がご贔屓になさっていた者の中には、士分として任を全うせずに亡くなった者がおる、とそういうことになります」
GM:「随分とご結論が早いようですな。憶測だけで死者の名誉を傷つけるような言をなさるのは、慎まれたほうがよいのではないかね?」
耀蔵:「名誉を傷つけられたことになるのはこれからになりまする」(背を正し)「無論、誰がどのように戦い、どのように果てたかはこのわたくしめも報告を受けておりませぬ。しかし混乱した状況にございます。そして、急行を命じられた以上、まだ充分報告を受けていないのも当然至極尤も、でございます。そこも考えていただきたいのですが、如何に?」
GM:「ぐっ、ぬ……」
寅三郎:大久保がんばれ、超がんばれ(笑)。
亜弥・軋羽:あはは(笑)。
GM:「ぬ……、死者に矛先を向けて責を逃れんとするのはいかがなものですかな!」もとはといえば、賊の侵入を許した南町奉行所がいけないんじゃないかー!(笑)
耀蔵:うむ、その通りだ(キッパリ)。
GM:他の老中たちも口々に糾弾をはじめる。「勘定奉行との兼任で目端が利かなくなっているようですな」「やはり、慢心が失態を呼ぶということに他なるまい」「そもそも、奉行の兼任などというものに、どだい無理がある。無駄に権勢を偏らせるのはいかがなものか」
耀蔵:「では、勘定奉行の職を召し上げ、他の者に任されればよろしい」
GM:ぐぬぬぬぬ……!(ぷるぷる)
亜弥:鳥居様、無双すぎます(笑)。
寅三郎:しかし、どいつもこいつも鳥居様に責を取らせたがっているな。
軋羽:元々、敵も多いしね。
寅三郎:他の老中からしてみれば水野や鳥居が失脚しても悪いようにはならないからなぁ。
GM:老中たちは口々に鳥居の糾弾をはじめる。そこで、それまで黙っていた柳生宗矩が――。
寅三郎:やべえ、柳生が来た!(嬉しそう)
耀蔵:いた! そういえばいたな柳生宗矩!
GM:うむ、なにせ大目付だからね(笑)。「各々方、甲斐守の言うことも尤も。奴儕(やつばら)も武士ならば、自らの手で責をとりましょう」
寅三郎:すまん、ちょっと柳生をやっていいか。言いたいことがある(笑)。
GM:おう、どぞどぞ(笑)。
寅三郎:(柳生宗矩になって)「よろしくない、というのであれば、今からでも柳生三千騎、上様のもとに馳せ参じ、江戸の市中を守ることとなりますが、異論はござらんが?」というと、「柳生だけはカンベンしてくれ」という空気が室内に漂う(一同笑)。
軋羽:(老中になって)「わ、我々はなにもそこまで……」(笑)。
GM:「なあ……」(笑)。
亜弥:(こそっと)柳生さんは鳥居様の味方なの?
耀蔵:いや、彼は大目付だから、わしに罪を擦り付けてうやむやにするよりも、事態を正確に見極めるべきだ、という方針なのであろう。「……しからば、皆様方にお知恵を拝借したく」

「厳重な武家屋敷が並ぶ奉行所の位置において、七十八人もの武士を殺傷せしめる。このような者が、どのような手練、そしてそのような手段であるか。皆様方はどのようにお考えか」
 老中たちの視線が交錯する。
 贔屓の者が殺され怒りに震えている者、正体の解らぬ下手人に震える者。これを機に政敵を追い落とそうとする者。
 様々な思惑が乱れる中、再び大久保古河守が口を開いた。


GM:「てだれの複数の人員、はたまた忍者か……」大久保が君を見据える。「……さもなくば、鬼、とでも言うつもりですかな?」
耀蔵:「手前にはまだ調査不足にございますゆえ、推察は成り立ちません。ですので、お歴々のお知恵を拝借いたしたく」
寅三郎:あ、その問題をうやむやにする方法を、柳生的に考え付いた。
軋羽:柳生的に(笑)。
寅三郎:(柳生宗矩になって)「最近、コロリが大変流行している」
亜弥:コロリ!?
耀蔵:「やはり……左様な思惟にございますか」
寅三郎:「うむ、コロリならば、致し方あるまい」(一同爆笑)
GM:コロリで刀傷はできねーよ!(笑)
亜弥:(こそっと)なんでコロリなの?
軋羽:時代劇にそういうネタがあるんだよ(笑)。
寅三郎:(無視して)「南町の井戸にだけ、コロリが流行することもある」
GM:や、やばい、このままだと柳生にシーンを乗っ取られる(笑)。水野忠邦が場を閉めよう。「各々方の言い分尤も。鳥居甲斐守殿には早急に、事態の解明と下手人の捕縛を。それとは別に大目付から柳生監査方を集め、派遣するものとする。その上で、責任が何処にあるものかを見極めればよかろう。各々方、よろしいな?」
耀蔵:「この鳥居甲斐守、前歴は目付にて。その目付にふさわしい職務を果たしたく思います」
GM:では君が江戸城から下城したところでシーンエンドにいたしましょう。

※    ※     ※

寅三郎:やばい、ついに柳生が出てきてしまった(笑)。
GM:あー、あぶなかった、危うく柳生にシーンを乗っ取られるかと思った(笑)。
耀蔵:そういや、通常ステージのリプレイで柳生が登場するのははじめてだったか。
寅三郎:大目付なんで、江戸城内の話でないとなかなか出せなくてな。いやー、ついにきたかー(嬉しそう)。
亜弥:そんなに柳生さんが好きなんですか(笑)。
軋羽:時代劇といえば柳生ですよ! 柳生にはじまり柳生に終わる、これはやばいことになりますぜ!(一同笑)
GM:いやまて、今回は柳生がメインのシナリオじゃないからね!?(笑)



■ミドル02 紫の不審  ――――シーンプレイヤー:亜弥

 奉行所には血と臓物の生臭い風が漂っていた。
 先ほどの静けさが嘘のように、駆けつけた者たちで奉行所内は騒々しい。
 亜弥は寅三郎や軋羽と共に、奉行所の一室に身を移していた。
 血にまみれた手足は拭ったものの、頭の中には気味の悪い笑いと、紫の姿がこびりついている。


GM:次のシーンは亜弥がシーンプレイヤー。鳥居が江戸城で詰問を受けている一方その頃。事態が明らかになった奉行所では、混乱が続いています。
亜弥:うう、あたしはどうなってるんだろう?
GM:とはいえ、いくらなんでも亜弥がやれるわけもないだろう、と思っている人が大半だね。とりあえずここで待っていなさい、と、奉行所内の一室に待機をしていると思いねえ。
亜弥:さすがに薙刀は取り上げられちゃってると思うので、正座したまんま、ぎゅっ、って着物の裾を掴んで震えをこらえてます。「紫さん、なんで、なんで…………」
寅三郎:じゃあ登場しよう。登場判定は成功。血まみれの奉行所に入ってきて、「こいつは酷いな」
軋羽:あたいも駆けつけるよ。「無事だったかい、亜弥!」
亜弥:(顔を上げて)「あ……、軋羽さん、石蕗さん……。あの、あたし……」
寅三郎:「安心しろ、亜弥。俺はお前だとは思っておらん」
軋羽:「あたりまえのことを言うんじゃないよ。亜弥が、この子がこんな凶行をするわけがないじゃないか!」
寅三郎:「まあな。だが、この状況では、とりあえずの下手人を立てようという馬鹿も現れかねん」
軋羽:「……奉行所の連中の間では、そこまでこの子は信用がないのかい?」と少しブスっとした表情になるよ。
寅三郎:「そうではない。人間は我が身可愛さの為には何でも売るということさ。ただ、それだけだ」
亜弥:「軋羽さん、あの……」
軋羽:亜弥の頭を抱きしめよう。「怖かっただろ、もう、あたいたちが来たから安心しな」
亜弥:うう……っ、涙、出ちゃいそう……。「あの、みんな、倒れてたんです……。山岡さんも、佐藤さんも、名前、まだ知らないけどよく挨拶してた人たちも。葛餅教えてくれたのに……美味しいよって……」
軋羽:(抱きしめたままで)「ああ……みんないい奴らだったね」
亜弥:「妖異、倒すのは、できるようになってきたつもりだったんです。でも……っ、知ってる人があんな……なっちゃうのは嫌……。みんな、兄ちゃんみたいに……っ!」やっぱりぼろぼろと泣いてしまいます。
軋羽:「…………」抱きしめたまま、亜弥の頭を撫でていましょう。
GM:じゃあそうしてると廊下のほうから足音がする。
寅三郎:お?
GM:「ご無事でしょうか?」戸が開く。……紫だ。
軋羽:(小声で)アー、来たーっ!
亜弥:えっ、え……!?
GM:「亜弥さんが大変な目にあったと聞きまして」と、亜弥の着替えを持って部屋へと入ってくる。
亜弥:堂々と来るなんて思ってなかった! 紫さんを見たまま固まっちゃう。
寅三郎:「紫様、お怪我は?」
GM:「わたくしは休ませていただいておりました。役宅の者はみな、無事でございます。……まさかこのようなことになっているなんて」と言いつつ廊下に広がる血を見て、一瞬クラっとしたりする。
寅三郎:「あまり、ご覧にならんほうがよろしいかと存じます」
亜弥:「あの……、紫、さん……」
GM:亜弥に振り向くと、にこり、と笑みを作って、「お着替えを持ってまいりましたので、どうぞ」と近づいてくる。
亜弥:あ、後ずさっちゃう!
軋羽:「亜弥、どうしたんだい?」
亜弥:びくっ! じゃあ、軋羽さんの言葉でハッとなって、着物を受け取ります。
GM:紫は微笑みを浮かべたまま、君の顔を見つめている。「どうぞ」
亜弥:ううう、ずっとこっちを見てる?
GM:じーーーーーーーーーっ、と見てる。いつもよりも一層青白い顔でガン見してる。「亜弥さん、ご無事で何よりです」
亜弥:「ありが、とう、ござい、ます……」
GM:「亜弥さん、どうかお気をしっかりお持ちくださいませ。なにかございますれば、わたくしもお手伝いをさせていただきます」じーーーーーーーーーーー。
亜弥:「あ、はい……」いやだああ、今すぐ逃げ出したい!
軋羽:いつもよりやりとりが余所余所しいね。
寅三郎:何かあったかな? くらいには考えておこう。
軋羽:「亜弥、あんたも今辛いだろうから、紫様のお側で休んでいなよ。同心たちにはうまく言っておくからさ」
亜弥:「え……っ、それは……!」
GM:(微笑みながら)「亜弥さん、一緒にいらっしゃいますか?」
亜弥:「い……っ、嫌! いえ、いいです、あたしは大丈夫です!」
軋羽:「でも、あんた顔色が真っ青だよ?」
亜弥:ひいい、軋羽さんのいじわる〜(笑)。「大丈夫です、あたしも黒衣衆だもの。それに、鳥居様が働いてるのに休んでたくなんかないの!」
GM:「そういうことでしたら、仕方がありませぬ。……この事件、おそらく只人の仕業ではないでしょう。ならば、それを追うのがあなたがた黒衣衆のお役目。家はわたくしにお任せくださいませ」
軋羽:うーん、寅三郎の方を、「どうしよう」という感じで見ます。
寅三郎:「紫様が仰るのであれば、我々が強いて言うこともあるまい」
GM:「亜弥さん、具合が悪くなったらいつでもお待ちしておりますね」にこり、と亜弥に視線を向けたまま、紫は去っていく。
亜弥:うあああ、お願い、軋羽さんも石蕗さんも気づいてー! やっぱり紫さんおかしいよ!

「では、わたくしはこれにて」
 いつもの微笑みを向ける紫。その目はじぃ、と亜弥を見据えたまま。
 それは亜弥から一瞬たりともはなれぬまま、戸が閉じる最後の瞬間まで覗き続けていた。




■ミドル03 深まる謎  ――――シーンプレイヤー:鳥居耀蔵

 鳥居が奉行所に戻ったのは、既に日付も変わろうかという頃であった。
 現場は江戸城で漏れ聞いた状況よりもはるかに混乱しており、今だ正確な被害者の数もわからぬまま。
 それは明らかに、何者かの手によって情報が幕閣へと流されていたことを示していた。


耀蔵:そろそろ全員で集まっておきたいところだな。
GM:じゃあ、鳥居がシーンプレイヤーで、全員集合のシーンにしましょうか。場所は奉行所か役宅かな。
一同:はーい!
耀蔵:人の出入りが多くなっている奉行所で話をするのは微妙なので、役宅へ指揮系統を移す、と通達しておこう。とりあえず畳屋と始末屋を呼べ、という話もして。
軋羽:相変わらず、目端の利く対処だ(笑)。
耀蔵:大量の血は土蔵に溜めておけ。
亜弥:え、なんで血を?
耀蔵:腐らせていずれ刀に塗る毒に使う。
亜弥:ひいいい〜!
寅三郎:ちなみに火盗改版だと、『鬼平犯科帳』長谷川平蔵の必殺、肥溜めに突っ込んだ日本刀というのもある。
軋羽:ぎあああああ(笑)。
亜弥:どっちもいやだー(笑)。
GM:では、鳥居が役宅へ向かっていると、鵜殿がやってきて一連の報告をしていく。
軋羽:(鵜殿になって)「一大事なのでございますよ〜」
亜弥:あ、鵜殿さんは生きてたんだ、よかった(笑)。
耀蔵:ふむ。「城内である程度の話は聞いている。細かい検分はどうだ? 下手人と思わしき者はおるか?」
GM:「い、いえ、それはまだでございます。ただ、外回りの者が駆けつけた時に、亜弥さんが現場におられたと! ああ、恐ろしいその姿! 血のついた! 薙刀を持って!!」(一同笑)
亜弥:血はついてなーい!(笑)
耀蔵:「ほう、亜弥がやったのか」
GM:「い、いえ、ですがまさかあのような可愛らしいコに、そのようなことが出来るとも思えませんワ」
耀蔵:「ふむ……、七十八人をひとりでできるとしたら拾い物だったな」
一同:おいいいいっ!(笑)
GM:鵜殿も「何言ってんのかしらコイツ」って顔になる(笑)。
耀蔵:「ともあれ、まずは真偽だ。無事な者を下手人の捜索に当てよ。周囲の家を周って犯行のあった時間に物音が聞こえなかったか聞いて来い」
GM:「かしこまりました。全力を挙げて当たりますワ」
耀蔵:「この人数を少数でやれたとも思えぬ。どのような経路で人員を送り込めたか。まだ足跡も残っているはずだ。探れ。他にもやってもらわねばならぬことが――――」
GM:動きが早い!「ち、ちょっと待ってください。今回のシナリオではわたくしモブなので、あんまり動いた末に死ぬようなことになったら困ります。公式リプレイでわたくしが死んでは困りますでしょう!」
寅三郎:いいんじゃない別に。
GM:ゲームデザイナーがいいんじゃないとか言うなー!(笑)
耀蔵:「鵜殿、表の捜査はお前に全権を任せる。七十八人殺しの責、その腕で解決してみせよ。力を尽くせ」
GM:鵜殿は勘弁してください、という顔になるんだけど、君に口答えできるわけもないので、「かしこまりました。全力を持ってあたらせていただきますワ」と言うと、言って逃げるように去っていく。
軋羽:(鵜殿になって)「チキショーですワ〜!」(笑)
耀蔵:……とはいえ、十中八九は妖異の仕業であろう。とりあえず鵜殿に奉行所周りの処理を任せて、本格的に動かすは黒衣衆だ……と考えながら役宅へ向かおう。

 紫の出迎えを受け役宅へと戻ると、鳥居は迷うことなく書斎へと足を向けた。
 書斎は黒衣衆の密談場だ。襖を開けると、石蕗、本庄、軋羽、そして、亜弥。
 すでに四人の黒衣衆が揃っていた。


寅三郎:じゃあ俺たちも登場するか。
軋羽:登場!
GM:本庄も同様に部屋に座している。
亜弥:あたしも登場します。紫さんのこと、なんとかして言わなきゃ。
耀蔵:「表でなにが起こったのかは聞いた。最初に発見したのは娘……亜弥だな?」
亜弥:こくっ、って頷く。「夕刻まで、軋羽さんと訓練をしてて、帰ってきたときに奉行所から妖異の気配を感じて……表に周ってみると、あの惨状でした」
耀蔵:「悲鳴や物音は?」
亜弥:えっと、そういう音はなかった、かな?「あたしが帰ったときには、しんと静まり返ってました」
耀蔵:「奉行所の周囲の様子はどうだったか?」
亜弥:「妖異のような気は漂ってたけど、他におかしいことは何も……。あたしの注意不足かもしれないけど……」
耀蔵:「いや、七十八人死んでおる。それで周りの者がそなたにも気づけぬほどざわめいておらぬなど、普通はありえぬことだ。……思ったよりも面倒だな」
寅三郎:「何らかの妖術の類。と考えたほうがよいですかね」
耀蔵:「それもあるが……わしは別役で仕事をしている最中に、江戸城に呼び出された。今回の件、わしに情報が回ってくる前に幕閣に知れておったわ。七十八人という死者の数までな」
寅三郎:「妙ですな」
軋羽:「実はそのことと関係があるかは定かでないのですが。先日、あたいの知り合いの少年から、奉行所の近くで身体に赤い帯をまとわりつかせた、気味の悪い笑い方をする女を見かけたとの話を聞きまして」
亜弥:気持ちの悪い笑い……、さっきの紫さんを思い出してびくっ、てします。
軋羽:「赤い帯と聞きまして、弥八の時の現象と酷似していると思い、気になっておりました」
亜弥:「えっ、兄ちゃんの!?」あたしは赤墨のことを聞くの、初めてだ!
耀蔵:「あの赤墨、あれはあの妖異単体が操っていたものではない、ということか」
寅三郎:「同じような技を持っている者が他にいるか、あるいは赤墨が本体か、ですか」
亜弥:「ま、待って! 兄ちゃんと同じ妖異ってどういうことですか!?」

 こびりついていた紫の狂笑が一瞬、途絶えた。
 心臓がばくばくと早鐘を打つ。
 それは、初めて耳にした兄の手がかり。


亜弥:「赤墨の妖異。それが、兄ちゃんを妖異にしたの……?」
寅三郎:「お前の兄がそいつに妖異にされたのか、単に同じようなやつが何体も居るのか、調べてみんことにはなんとも言えんな」
耀蔵:「いずれにせよ、本来であれば影にて済まさねばならぬ事件であるが、既に白日の下に晒されてしまった。おそらく明日には江戸市中にも知られることになるだろう。誰ぞがそうすることだろうからな」
GM:「幕僚のひとりやふたりなら俺か石蕗が消せば済みましょうが、市井の噂になると打ち消すのがやっかいですな」本庄が渋い顔になる。
耀蔵:「そうだ。いずれにせよ、短時間で七十八人……石蕗。何人ならば、出来ると思う?」
寅三郎:「そうですな。腕の立つ剣客が二十人いたとしても至難の業でしょうな」
耀蔵:「本庄、何者なら用意できると思う」
GM:「気づかれずに人員を送り込むは至難の業。この娘の証言が真であらば、やはり妖異の所業。それも大分に強力な固体で、計画的な犯行と見ます」
耀蔵:「そうだな。でなくば、忍者か……」
寅三郎:「柳生か……」(一同笑)
GM:あんたら柳生好きだな!(笑)
耀蔵:「妖異か柳生か、鬼か蛇か。いずれにせよ、それを差し向けた者がおるはずだ。調べねばならんな」と立ち上がって――――。
亜弥:「ま、待って!」
耀蔵:「何だ?」
亜弥:「…………っ、あの……」
軋羽:「どうしたんだい、亜弥? なにか思い出したのかい?」
亜弥:「妖異を、見たんです。奉行所に入ったときに……」
GM:それは、本庄が憤怒の顔になる。「なんだと!?亜弥、てめえなぜそれを早く言わねぇんだ!」
耀蔵:それを制して、「やはり妖異か」
亜弥:「はい、妖異、だと思います。女の……妖異でした。他の同心の人たちが入ってきた隙に消えちゃいました」
軋羽:「やっぱり……きっと、涼太郎が見た女だね」
寅三郎:「そいつが下手人か。その女の顔立ちを見なんだのか」
亜弥:うっ……。「それ、は……」
軋羽:「寅三郎、亜弥は疲れてるんだ。先ほどの口ぶりからして人相までは覚えてないように思えたけど……で、実際どうなんだい?」(一同爆笑)
亜弥:〜〜〜〜ッ!
耀蔵:亜弥を助けるんじゃないのか(笑)
GM:流れるような追い込みっぷり(笑)。
軋羽:いや、ここで話を促すのもアリかとおもってね。あっはっはっ(笑)。
亜弥:ごっ、ごめんなさい、言わなきゃって思ってるんだけど……。
GM:もし言わなくても、シナリオ的には大丈夫だよ。亜弥が好きにするといい。
耀蔵:「見たのか?」
亜弥:う、うーん……(悩みはじめる)。

 目の当たりにしたのに、信じられなかった。見間違いだと思いたかった。
 あの怖気立つ笑いも、心の底にまで絡みつくような視線も、南町に来てから優しく迎え入れた紫の姿とどうしても結びつかなかった。
 それを話すことは、目の前の南町奉行や軋羽たちの信じる紫への裏切りに思えて咎めていた。
 しかし、初めて聞いた兄への手がかり。もしそれが紫と関わりのあるものであるのなら。それが、兄にたどり着く道なのならば。
 コクリと唾を飲み込んで、亜弥はかすれた声を搾り出した。


亜弥:「…………紫さんに、似ていました」
軋羽:おお、言った!「なんだって!?」
亜弥:「もしかしたら見間違いかもしれないし、紫さんの姿に化けているだけかもしれないし。もしそうだったら、紫さんを貶めてしまうことだから、あまり言いたくなかったんです」って言って、鳥居様の顔を不安げに見ます。
耀蔵:表情を変えぬまま、亜弥を問いただそう。「体に赤い墨のようなものが巻きついていたか」
亜弥:それは……どうだったかな。わかりますか、GM?
GM:じゃあ【知覚】で判定してみようか。目標値は13で。
寅三郎:お、それは助かる。
軋羽:「よーく思い出してごらん? あんただったらできるはずだ」と言って《親分肌》を使います。判定に+2だよ。
亜弥:軋羽さんありがとう。じゃあ《舶来知識》(注32)も使います。これでさらに+2されるから、出目5以上が出れば……(ダイスを振って)成功!
軋羽:お、やったね。
GM:紫の長襦袢から覗く腕や足には、螺旋状の赤い帯が蠢いていたような気がする。
耀蔵:「ふむ……、軋羽の言った赤墨の女の線が濃くなったな」
軋羽:あたいは紫様が妖異かもってなるとあせっちまう。「でも、紫様ご本人であるとは限らないんじゃないかい? 亜弥が言った通り、化けているとか、取り憑いているとかさ!」
寅三郎:「取り憑いている、か。ありそうな線ではあるな」
耀蔵:「紫がわしを殺すなら、もっと簡単にやれる。何か仕込まれている可能性の方が高いだろう」
寅三郎:そうですな、さっきの着替えの時にでもぶっ刺せばすむ。
耀蔵:「わしを社会的に抹殺する必要がある、というのであれば話は別だがな」
軋羽:「ひとまず、紫様を監視いたしますか」
耀蔵:(眉根を寄せて)「監視ではないな、保護であろう」
軋羽:「――申し訳ございません」
亜弥:ちょっとほっとします。紫さんご自身は疑われてなくて、ちゃんと保護する対象になってるんだって。
寅三郎:俺は、ちらっと軋羽を伺おう。軋羽の正体がわからん以上、赤墨と繋がってる可能性もある。
軋羽:あたいも亜弥と一緒にホッとしてるよ。魔縁のあたいにとっては、江戸天狗の契約となって嫁いでいる紫様はあこがれの存在なんだ。だから、紫様がそういう扱いをしてもらえるのは正直嬉しい。
寅三郎:「ふむ……。まあ、まずはいろいろあたってみます。さすがにこの件、まともではない」と言って、刀を手に立ち上がろう。「……ま、下手人が誰であろうと、本質的にはこれは俺の領分です」
軋羽:あたいも大久保への報告もしておきたいし、立たせてもらおう。「あたいは周囲の聞き込みをやって参ります。先の証言をくれた少年のことも少し気がかりですので」
耀蔵:「その子供は保護しておけ。目撃者となれば消されるやもしれん」
亜弥:「あたしも行きます!」
耀蔵:「そうするがよい、そなたの兄の手がかりとなるやもしれぬ」
亜弥:「それだけじゃない! 兄ちゃんのこともだけど、紫さんになにか害があるだなんて許せないです。……鳥居様だって、そうじゃないの?」
耀蔵:(眉根を寄せて)「…………。……ゆけ。力を尽くすがよい」
亜弥:〜〜〜〜っ!

 カッ、と頭が燃え立つのを感じた。
 「いっ! てき! ます!」
 目の前の男を殴る代わりに、声の限りに叫ぶと、亜弥は書斎から駆け出した。




■ミドル04 七十八人殺しの怪  ――――シーンプレイヤー:石蕗寅三郎

 昇る陽がうっすらと町を染める中、寅三郎は血臭漂う奉行所へと足を向けた。
 軋羽を探る前に、まずは目の前の殺しの下手人だ。
 奉行所では鵜殿の指揮の下、夜を徹して検分が行われていた。


GM:では、情報収集シーンにまいりましょう。情報収集はひとりにつき1シーン1判定まで。シーンプレイヤーは最初に部屋を出た寅三郎にしようか。
寅三郎:うっす、登場しよう。
耀蔵:そうだ、本庄に命じて紫の周囲に腕の立つものを護衛として着けておく。何か異変があればすぐ伝わるようにしたいが、かまわんか。
GM:ほいほい、了解しました。情報項目については、以下の4つです。

【情報項目】 能力値:理知・知覚
・南町七十八人殺しについて 目標値:10
・下手人について  目標値:12
・赤墨について  目標値:13
・軋羽について  目標値:9

軋羽:げーっ、あたいの情報項目が!
GM:うむ、寅三郎が軋羽の正体を調べる任を追ってるからね(笑)。
亜弥:PCの名前が情報項目になってるの、はじめて見た……(笑)。
寅三郎:軋羽はまあ、調べなきゃならん。しかし、先ほど様子を伺った限りでは、軋羽は速攻何かをやらかしそうな気配はなかったんで、まずは殺しの方から当たってみるか。
亜弥:項目にはないけど、紫さんや涼太郎も気になるなあ。どうすれば会えますか?
GM:涼太郎は情報収集を進めてる中で登場させようかと思ってます。もし希望があれば、べっこに会いにいくシーンも作れるよ。紫については個別の項目はなし。もし何かを知りたければ、直接会いに行ってね。
軋羽:なるほどね。じゃあまずは情報収集をしつつかな。
亜弥:あ! 涼太郎のとこにはあたしも行きたいです。会って兄ちゃんのこととかしゃべりたい。
耀蔵:ふたりで組んで調査をするといいだろう。そっちは軋羽たちに任せよう。

・南町七十八人殺しについて
寅三郎:じゃあ俺が七十八人殺しを調べに行ってきますよ。(ダイスを振って)……出目が1足りないんで財産ポイントを1点。これで達成。
軋羽:よっし、出だし順調だね。
寅三郎:菓子を手に、奉行所で指揮をしているであろう鵜殿へ挨拶に行こう。
亜弥:菓子折り!? けっこう社交的なんですね(笑)。
寅三郎:俺は延々と近藤局長に媚を売って生きてきたからな。こういうのは慣れてる(笑)。「お疲れ様です、鵜殿さん」
GM:「あらァ、石蕗さん。まったく今度の事件には参るわねェ!」
寅三郎:「ええ、ご心中お察し悼みいり申す。もしよろしければ件の報告書のほうを、私の方から鳥居様に家人としてお届けいたしますが」
GM:鵜殿はパッと顔を明るくして、「あ〜ら助かるわァ! いえ、そのね、ちょっとご報告に伺う隙もなくて困ってたのよォ♪」
寅三郎:「ええ、よくわかります」
耀蔵:わしに会いたくないのか(笑)。
GM:では、鵜殿が報告書を君に渡す。――昨日の被害者は南町の同心、与力、御用聞きなど、その場にいた者が手当たり次第皆殺しになったようだ。遺骸の多くが刀のようなもので切り裂かれていたのですが、奇妙なことに、刀傷の一部は仲間内で斬り合っていた痕跡があります。また、中には体にうすい帯のようなアザがでて、泡を吹いて死亡している者もいる。
軋羽:斬り合った!?
亜弥:誰かに操られた……とか?
寅三郎:内部の人間を操って同士討ちさせたか。たったひとりで七十八人はできるわけがないと思っていたが、これで謎が解けた。
耀蔵:それに帯のようなアザということは、亜弥の見たとおり、赤墨の妖異に間違いがなさそうだな。
寅三郎:なるほどな……。少し探りも入れておくか。「ところで鵜殿さん。この件が幕閣の上層部に知られるのがえらく早かったようですな」
GM:「上層部? あら嫌だ、そんなに早かったの?」
寅三郎:「ここだけの話ですが、鳥居様が事件直後に江戸城に呼び出された時には、まだ現場が知らん情報までが漏れていたらしいという噂です」
GM:「それは確かに妙ねェ。でも、亜弥ちゃんが現場を見つけてから芋づる式に騒ぎが広がっていったから、まァ、そういうのって時間差の問題じゃないかしら?」あんまりそういう面倒な事には関わりたくないわァ、という顔で鵜殿は答える。
寅三郎:特に何かを隠している風でもないか。なるほど、こいつではないな――――と内心で思う。「いや、ありがとうございました。これからも何かありましたら申し付けいただけましたら幸いです」
GM:「報告書の件、助かるワ。石蕗さんもお気をつけてね。あァ忙しい忙しい……!」と鵜殿は指揮へと戻っていきます。
寅三郎:うーん、操作系か。ザ・めんどくせぇ。まじめんどくせえ敵だぞ……。
軋羽:でも、これで紫様が単に操られているだけの公算が高くなったね。
亜弥:兄ちゃんも悪い心があったんじゃなくて、操られてただけだったのかも!
耀蔵:さて、わしは何を調べるかな。
GM:そうだ、プリプレイの時にやりたいって言っていた軋羽とのシーン、そろそろどうです?
耀蔵:ああ、では先にそのシーンをやっていいか。軋羽にも出てもらいたい。
軋羽:了解しました。……なんだろう、怖いねえ(笑)。



■ミドル05 一対の硯  ――――シーンプレイヤー:鳥居耀蔵

 石蕗に本庄、次々と仲間が捜査に向かう中、軋羽は亜弥の支度が終わるのを待つこととなった。
 傍らの壁に目を向けると、天井に届くほど高く作られた書棚の中に、びっしりと書物が収まっている。
 それを眺める軋羽に、文机に向かう鳥居がふいに声をかけた。


GM:では、鳥居がシーンプレイヤーで軋羽も登場だ。場所はどうする?
耀蔵:うむ、登場だ。場所は先の相談を行っていた役宅だ。
軋羽:わかりました。とはいえいったん調べものをしに出かけますと言った手前、どうしましょうか。
亜弥:あ、じゃあ、あたしさっき薙刀を取り上げられてたんで、それを取ってくるまで書斎で待っているってのはどうでしょう?
軋羽:ああ、そりゃあいい! じゃああたいは書斎で、ぼんやりと書棚を眺めていましょう。
GM:壁際には学術書が所狭しとつみかさなっている。心なしか、一月前よりも知った漢字が増えているような気がする。
軋羽:それは嬉しくなってしまうなあ。まだ全然読めない漢字の方が多いけど、いつかは読めるようになるのかな。
耀蔵:わしは部下たちの報告を待つ構えで、文机の書類を書いている。「軋羽よ、娘……亜弥はどうだ」
軋羽:じゃあ書物に気を取られてたので、はっ、と慌てて振り向きます。「え、ああ……、あの子はやはりなかなか筋がありますよ。このまま行くとあたいなんざ、すぐに追い越されちまうかもしれませんね」
耀蔵:「そなたも随分と腕が立つと、石蕗から報告を受けておる。……時にそなた、幼い弟妹がいるのか?」
軋羽:この人はなにを探ろうとしているんだろう、と内心冷や汗をかきながら、「そのことが、なにか……任務に関係があるのでしょうか?」
耀蔵:「おおいに関係がある。幼い娘や少年の扱いが得意であれば、あの娘の事は任せることができよう。今回のようにな」
軋羽:鋭いなあ……。下手に嘘と付くとぼろが出そうなので、ある程度真実を話します。「駿河の国に、あたいの弟や妹がいるんです」
耀蔵:「帰っているのか?」
軋羽:「ええ、毎年帰っておりますよ」
耀蔵:「嘘だな」
軋羽:うっ……。
耀蔵:「わしはそのように簡単に、江戸から女を出せるようにしていないぞ」
軋羽:「……やっぱりあなた様にはやっぱり嘘がつけないですね」と、ボリボリと頭を掻いて。「あたいは出稼ぎみたいなもんです。それで、稼いだ金子を送ってやってます」
耀蔵:「便りは送っているか?」
軋羽:「いいや、あたいは字を書くのが苦手でして。……でも、最近は亜弥から文字を教わってるんです。最初は暇つぶしのつもりだったんですが、だんだん楽しくなってきちまいましてね」
耀蔵:「……そうか」
軋羽:「やっとね、仮名はだいたい書けるようになりましてね。漢字も前よりだいぶ読めるようになったんです。月が変わる前には文を送ってやりたいなあ、なんて思ってるんですよ」

 奇妙な心地だった。
 あの蝮奉行、鳥居耀蔵に手習いの話をするなどと、一月前の自身が聞けば、鼻で笑い飛ばしただろう。
 しかし、それは妙に嬉しくて、不思議と言葉が止まらなかった。


軋羽:(照れくさそうに頬を掻きながら)「あたいが手紙なんざ送ったら、子供たちはびっくりするんじゃないかって……はは、あたいからだって信じてもらえますかねえ」
耀蔵:では、それを聞きながら立ち上がり、無防備に背中をさらして、後ろの方にある文箱へと向かうと、硯と筆の入った箱を取り出す。
軋羽:「……鳥居様?」
耀蔵:「昔使っていたものだ。気にいるものがあれば使うがいい」
軋羽:それには目を見張ります。「これを、あたいに!?」
亜弥:(手を合わせて)わあ!
軋羽:じ、じゃあ、その中から小さな硯と筆を手に取りましょう。……どうしよう、硯を手にしたまま震えちまう。

 軋羽の半生には、淀んだ金が渦巻いていた。
 魔縁として、裏街道を歩んだ罪人として、真っ当な生を許されなかった自身に、信じられる価値は金子であった。
 白波の技を求められ、金子を盗み、また裏家業の対価として金を得る。
 今、軋羽を縛っている大久保古河守とて例外ではない。
 その自分に、この男は文字を綴る道具をくれた。
 それは、魂を震わせる衝撃だった。


亜弥:はじめて人として接してもらった、ような?
軋羽:そう、自分の硯をもらって、手紙を書けるようになったというのがとてつもなく嬉しくて、それをすごく借りに感じてしまう。なんだか泣けてきちゃうね……。
耀蔵:「どうした?」
軋羽:少し弱ったような、照れくさいような表情を浮かべます。「……ありがとうございます。こんなものをもらうのは、正直初めてです」
耀蔵:その言葉には、ちょっと複雑そうな顔になる。「そうでないように、せねばならんのだがな」
軋羽:「鳥居様……?」
耀蔵:「いや、よい」とだけ言って、文机へと戻っていく。
亜弥:じゃあそこで薙刀を持って戻ってきます。「すみません、遅くなりました軋羽さん!」
耀蔵:「まずは赤墨の妖異の正体を割り出すのだ。ゆけ」
軋羽:「はっ!」

 硯と筆を大切に手拭いに包み、深々と頭を下げてから、軋羽は亜弥と共に街へと駆け出した。



■ミドル06 赤墨操りの女  ――――シーンプレイヤー:軋羽

 日は瞬く間に中天を過ぎた。江戸市中を駆け回りながら、一同は情報を探し続けていた。
 その胸に、様々な思惑を抱えながら。


GM:では、次は軋羽がシーンプレイヤーで、情報収集に戻りましょうか。
軋羽:あいよっ! 亜弥も一緒だね。
亜弥:はーい、登場!
寅三郎:俺も出ておこう。残っている情報項目は、“軋羽について”と“赤墨について”、“下手人について”か。
軋羽:じゃあ、あたいは“軋羽について”にするよ(一同笑)。
寅三郎:お前が調べてどうするんだ。いいよ、俺がやるからちょっとそれ寄越せ(笑)。
軋羽:いやだ、あたいんだよ! ね、先に開けちまえば、情報をもみ消したりできますよね?(笑)
GM:軋羽はその情報を得られるけど、それはそれとして寅三郎も同じ情報を調べられるよ(笑)。
軋羽:ちぇー……(寅三郎に渡す仕草)。
寅三郎:じゃあ、俺が軋羽についてを開けよう(笑)。斬るべきか斬らざるべきか、俺はあの女の正体を知らねばならん。

・軋羽について
寅三郎:(ダイスを振って)よっし、いけた。達成値20だ。
軋羽:あーん!
亜弥:ついに軋羽さんの秘密が白日の下に(笑)。
GM:軋羽は近頃、黒衣衆に組み込まれた天狗です。入隊の書面には駿河天狗と書かれており、魔縁ではあるが身元確かなものと記されている。しかし本来、魔縁の者が黒衣衆に入ること自体が異例である。
寅三郎:ま、そうだろうな。魔縁は天狗の間では忌むべき者とされているからなあ。
耀蔵:そもそも黒衣衆に江戸天狗が編成されているのは、江戸天狗がわしと契約を結んでいるからであって、駿河天狗には本来関係のない事柄のはずだ。
GM:そうなのよ。で、軋羽入隊の処理を書きつけた黒衣衆の天狗は、その少し後に殉職しています。
寅三郎:殉職、ねえ……。口封じも済んでいるのか、面倒くさいな。
亜弥:軋羽さんがやった……って訳じゃないですよね?
軋羽:やってないやってない、あたいだって初めて知ったよ!
鳥居:軋羽のあずかり知らぬところで、だいぶん物事が進んでいるようだな。
GM:死亡した黒衣衆が愚痴として同僚に漏らした情報によると、軋羽は紫直々の推挙によって、入隊に至ったそうです。
亜弥・軋羽:紫さんが!?
GM:うむ。紫は江戸天狗と鳥居家の契約として嫁いだ天狗だ。普段彼女が表に出てこないだけで、その発言力は強い。
耀蔵:ああ、なるほどな。盲点であった。
寅三郎:紫様直々の保証があれば、本庄殿もとやかくは言えないか。うーん、そういうことなら、まず報告せねばならんのは、花井殿ではなく鳥居様にだな。
軋羽:紫様が……。あたいの知らないとこで、何が起きてるんだい……。
亜弥:軋羽さん、しっかり。
寅三郎:これは、軋羽も担がれている可能性が高いな。しかし、確かめてみんことにはなんともいえんか……。

※    ※     ※

軋羽:とはいえ、裏でなにが起きてたかなんて知らないあたいは、いただいた硯と筆を長屋に置いてから捜査に行こう。
亜弥:「軋羽さん、その包みはどうしたんですか?」
軋羽:「ああ、亜弥に読み書きを教わっていることを知った鳥居様が、硯と筆を下さったのさ」
亜弥:「え、鳥居様が!?」そんなこと、あいつがするんだ……って、すっごく意外な気持ちになります。
軋羽:「今度からはあたいも、自分の硯を持ってあんたの所に行けるよ」と、嬉しくて何度も包みを撫でてしまう。
亜弥:(左右に揺れながら)あーん、軋羽さんが可愛いよう(笑)。きっと、今までひとつの硯で一緒に書いてたりしたんだ。一本の筆を交代で使ったり!
GM:そんなあんたらが可愛いわ! ちょっとふたり纏めてうちにおいで!(はあはあ)
寅三郎:そろそろ本題に戻れよ(笑)。
軋羽:しまった、硯が嬉しくてつい(笑)。「……それよりも亜弥、早く赤墨の妖異を調べよう。先の寅三郎の話じゃあ、紫様に取り憑いてるかもしれないってことじゃないか」
亜弥:「うん、紫さんを救う方法を探さないと!」で、ぐっと拳を握り締める。「絶対に、その妖異を捕まえなきゃ。……きっとそいつが、兄ちゃんのことも知ってる」

・赤墨について
軋羽:とはいえ情報収集は亜弥の方が上手だ。《親分肌》を使うんで任せたよ(笑)。
亜弥:《舶来知識》も使って+4。また5以上が出れば……(ダイスを振って)えと、18!
GM:おお、達成値高いなあー。では、君たちが歩いていると「亜弥ーっ、軋羽姉ちゃーん!」と、火の見櫓の上から声がするよ。
亜弥:「あっ、涼太郎!」いつのまにそんなところに上がってたの(笑)。
GM:「見張りだよ、いつ、あの女が現れるかわかんねえかんな!」
軋羽:「こら、言ったじゃないか。あの女のことには関わるなって」
GM:「お、おらは別に関わってないよ? 約束だかんな、ただ見張りをしてるだけさ」と言いながらふたりのもとへ下りてくる。「亜弥も元気そうじゃんか! いきなり長屋から居なくなっちまったから心配してたんだぜ」
亜弥:「ごめんね、その、いろんなことがあったの。でも、軋羽さんたちに教えてもらいながら、元気にやってるから大丈夫だよ!」あーもう、懐かしい顔に会えて嬉しいなあ! もう、昔の知り合いには会えないとばっかり思ってたの。
GM:「ま、懐かしい話は後回しだ。姉ちゃんたち、赤い帯の女のこと探してんだろ? あれから、うちの奴らでちょこっと調べてみたことがあるんだ」

「以前、赤い墨を使うよからん女がいたって話だよ」
 涼太郎は口に手を当てると、周囲に目をくばりながら声を潜める。
「……妙(たえ)って名前の、外法の陰陽師だとか」


亜弥:陰陽師!?
軋羽:また厄介そうな代物だね。
GM:「でも何年か前に小伝馬町の牢屋敷に送られたってさ」……というわけで、“妙について”という項目がポップアップします。目標値は15。
亜弥:わ、新情報項目だ。
軋羽:一緒に登場しといてよかったね、ここで一気に調べちまおう。

・妙について
軋羽:「妙、か。その名前はどこかで聞いたことがあるねぇ」そういう情報に詳しい渡世人仲間に話を聞く事にしよう。《渡世の作法》を使用。達成値に+2されるから、これで実質7スタートだ。
亜弥:ダイス目が8以上……がんばって、軋羽さん!
軋羽:(ダイスを振って)……えーと出目が6なので、財産ポイントを2点使用。これで15です。
GM:く、一発で出たか。じゃあ、路地裏でドブネズミのヤスって男が情報を渡してくれる。「ああ、妙ねェ。青臭いがなかなかいい女でしたぜ?」
亜弥:うっ、あ、あやしい……(笑)。
GM:「もちろん姉さんもいい女でいらっしゃいやすがね、あ、そちらのお嬢ちゃんも可愛らしいですぜ、グエッヘッヘッヘェ」
亜弥:う、ううっ、こういう人、下手すると妖異よりも苦手……。軋羽さんの着物をぎゅって握ります。
軋羽:(冷たい声で)「ヤス、この子に手を出したら……あんた殺すよ?」
GM:「いやいや滅相もございません。あっしは軋羽姉さんのお役に立ちたい一心でさァ。妙ですか。奴のことは……もうちょっとのところで思い出せそうでさァ」と言いながら財産ポイントを請求したと言う演出にしよう。
軋羽:「おらよ、これで頭が冴えたかい!」(投げつける仕草)
GM:「妙、あれは恐ろしい女でしてね、外法の陰陽術――どうも血墨を用いて人形繰りのように人を操っちまうらしいんでさァ」
軋羽:人形繰り?

 妙は、人形繰りの術を用いる外法の陰陽師であるという。
 血から産み出した赤墨を用いて取り憑くと、その者の行動を意のままに操作する。
 赤墨に取り付かれた人間は本人も気付かぬまま操られてしまうという。


亜弥:やっぱり、紫さんも兄ちゃんも、妙って人に操られてたんだ!
GM:「まァ、待ちなすって、お嬢ちゃん。この話にはさらに恐ろしい続きがあるんですよ」
亜弥:「恐ろ、しい……?」

 人形繰りの技には真骨頂があり、ただ人の手足や言動を操るほかに、人ならざる強大な力を振るうことまでできるのだと男は言う。
 しかし、その為には、憑代が屍でなければならぬ。
 屍を憑代に、肉体に残った魂を食らいながら動かすことで、強大な力を振るうことができるのだと。
 「にわかには信じられないことでがしょう?」
 曇っていくふたりの顔にも気づかずに、男は荒唐無稽とばかりに鼻を鳴らした。


耀蔵:強大な力……妖異の力か。
亜弥:え、ちょ、ちょっと待って、じゃあ紫さんは……!?
軋羽:ヤスの胸倉を掴んで揺さぶるよ。「その憑代になった人が助かる方法ってあったのかい? そういう事例があったか、あんたは聞いてないかい?」
GM:「さ、さァ、殺される前ならまだしも、屍になったやつを生き返らせる方法なんかあるんですかい? そんな方法があるんなら、この世は死者で溢れてまさァ」
亜弥:そんな……。じゃあ、紫さんはもう、死んでる……? ぺたん、と座り込んでしまう。
GM:「まあでも、そういうこったから安心すればいいですぜ」
軋羽:「何が安心だって言うんだい!」
GM:「妙は先日、小伝馬の牢屋敷で火災があった際に死んだってェ話ですぜ。いくら屍を操る女でも、自身を操ることはできねえでしょう」
寅三郎:ん、死んだ?
軋羽:眉間にしわを寄せてきつく目をつぶった後に、ヤスに追加の金子を渡します。「コレでその話は忘れな。あんたの命に関わることになるよ。」
GM:「へへ、軋羽姉さん、今後ともよろしゅう。お嬢ちゃんも覚えておいてね、このドブネズミを」と去っていく。
亜弥:(呆然としたままで)「うん…………」
寅三郎:大丈夫か、亜弥。
軋羽:「……いやーなことを、知っちまったねえ」
GM:涼太郎は後ろで話を聞きながら、「い、いったいなにが起きてんだ? なんだよ……ってことは、亜弥の兄ちゃんもそれで殺されたっていうのかよ……」
寅三郎:ええええ、聞いてたのかこいつ!
軋羽:しまった、そういえばシーンそのままだった。無用心だったな。
亜弥:「涼太郎……」じわっ……。
GM:「泣くんじゃねえよ! そんな顔、兄ちゃんが見たら泣くぞ!」
亜弥:びくっ!
GM:「軋羽姉ちゃんもシケた面してんじゃねえ!任せろ、おらたちは江戸の自警団だ。妙ってやつが幽霊だろうがなんだろうが、おらたちがとっ捕まえてきてやらあ!」と叫ぶと、涼太郎は駆け出していこうとする。
軋羽:「ま、待ちな!」ちょっと待って、手を引っぱるよ!






軋羽:「言っただろ、この件にはあんたは関わるんじゃない。その女は、七十八人殺しの下手人だ。あんたたちのかなう相手じゃないんだよ!」
GM:「かなわないならなんだってんだ!」涼太郎はバッと手を振り払う。「姉ちゃんたちを悲しませてるやつなんだろ? 他にも悲しむ奴が出るかもしんねえんだろ!? そんな事なんざおらがさせねえ、やってやんよ!」
耀蔵:ほう、なかなか根性が座っているではないか。
亜弥:涼太郎、かっこいいけど、めっちゃかっこいいけど、でもだめー!
GM:「約束破って悪りいな、気をつけて探すからよ!」と言って涼太郎は走り去っていく。
軋羽:「お待ち!」
GM:「軋羽姉ちゃん見てろよー、この事件が終わったら亜弥にも負けない風鈴買ってやるかんなーっ!」
亜弥:やあああっ、やめて! そういう死亡フラグやめてー!(笑)
軋羽:「ちくしょう……! 役宅に戻るよ。厄介ごとが起きる前に、一刻も早く鳥居様に報告しないと」
亜弥:「涼太郎はまだ子供なんです、無茶をしてほしくなんかない。早くあたしたちの手で妙をみつけないと」って立ち上がります。
軋羽:あんただって、そう涼太郎と年もかわらないんだけどね……。「亜弥、あんたも無茶だけはするんじゃないよ?」
亜弥:それは約束できないって思いつつ。あたしも涼太郎のこと言えないな。「……やるしかないもの。もし、兄ちゃんもその女に操られてたんだとしたら、あたしも許せない」
GM:では、シーンエンドといたしましょう。



■ミドル07 冷たい腕  ――――シーンプレイヤー:鳥居耀蔵

 部下の報告を待つ間も、鳥居は雑務の書類をこなし続けていた。
 本庄からの報告を受けた鳥居は、はたり、と手を止めると側室の下へ向かいに立ち上がった。


GM:次は役宅でみなの報告を待つ、鳥居のシーンにしましょうか。
耀蔵:そうだな、わしは最後の情報を開けてから、紫の元へ向かうとするか。
亜弥:うう、鳥居様はまだ、紫さんが死んでるって知らないんだよね? 行っても大丈夫ですか……?
耀蔵:紫の元にやった護衛からの報告は今だないが、様子は見に行かねばならん。“下手人について”の目標値はいくつだったか。
GM:目標値は12だね。
耀蔵:(ダイスを振って)財産点を2点使って成功だ。本庄とその配下を用い、屋敷周辺の目撃情報を徹底的に洗い出そう。
GM:了解です。……昨夜の事件の前後、奉行所の庭を歩く紫が目撃されている。その顔色は死人のように青白く、手足に赤い布のようなものを巻きつけていたという。
耀蔵:赤墨か……。ちなみに役宅にいた家人は、殺戮事件についてどう認識している?
GM:事件が起きたのはそう遅い時間帯というわけでもないので、役宅にも人の出入りはあったはず。しかし、全く目撃情報はない。
耀蔵:精神操作系だなこれは。人払い系の能力を持っているわ。
寅三郎:《妖異結界》(注33)だな。英傑しか入ってこれん結界を作るエネミー特技だ。
GM:不審な人影ではあるけれど、いうなれば自宅の庭を家人が歩いてるということに過ぎなく、しかも側室の紫であるために、今まで連絡として入ってきていなかったようです。
耀蔵:なるほどな、洗い直したかいはあったか。報告を受け、「……そうか」とだけ言って、紫の部屋へと向かうとしよう。あれがどのような状態であるか、確かめねばならん。

 紫は役宅の奥の間に布団を敷いていた。
 護衛の者によれば、なんらおかしな様子もなく、家事をこなした後は、床についているという。
 戸は締め切られ、障子ごしの縁側からは風鈴のなる音が響いていた。


耀蔵:「入るぞ」と、紫の部屋の戸を開ける。
GM:戸を開けると、布団の上に座して、礼をしている紫の姿が。
耀蔵:「起きなくてよい」
GM:「しかし皆が動き回っている中、わたくしだけが寝ているわけには参りませぬ」
耀蔵:「皆のものが動き回っている間に、休んでいる者が必要なのだ」
GM:彼女の顔の色は一層白くなっている。まるで死人のように、生気のない顔色だ。
亜弥:ああぁ……。
耀蔵:「調子は良くないようだな」
GM:「申し訳ありません。下手人の方は……事態は収まりましょうか」
耀蔵:「まだ見つかってはおらん。そなたはあまり気にすることではない」と言って、紫の脈を取ろうとする。
GM:それは、紫は一瞬手を引っ込める。「……不調を移してしまってはいけません」
耀蔵:「構わん」と、有無を言わせずに腕を掴もう。
GM:紫の腕は氷のように冷たい。彼女は君の手を振り払おうとする。「ご迷惑をおかけしてはいけませんから」
耀蔵:「ならば脈を取らせよ」
GM:「……」
耀蔵:「紫」
GM:観念したように紫は腕を出す。その腕に脈はない。
軋羽:やっぱり死んでるのか……。
耀蔵:「口をあけよ。舌を出せ」
GM:(舌を出す)
耀蔵:喉は? 息を出させて、息の温度と湿度と、喉が震えてるかどうかを見る。目はどうだ。
GM:瞳孔が開いている。君が確かめる、そのすべてが、紫の身体が既に生きていないことを示している。
耀蔵:なるほどな……。「いつからだ?」
GM:「はて、なんの話でしょうか?」
耀蔵:「……すまんな、紫。もっと看てやればよかった」
GM:「殿様もお忙しゅうございます。わたくしのことはよろしいですから」と、紫は微笑みを作る。「どうぞ、職務にお戻りくださいませ」
耀蔵:「いや、これを聞いておかねばならん。……そなたは、何者だ?」

 紫の顔が微笑みを浮かべたまま止まる。
 室内に満ちる沈黙がしばし。障子越しに、風鈴の音。
 「うヒァ……あひははははぁ……ァ」
 次の瞬間、紫の整った唇から、おぞましい笑みが漏れ出した。


亜弥:うわあああ……!
耀蔵:「やはり、妖異か」
GM:「妙、と申しますぇ」
耀蔵:「そなたは、どうしたい。わしが食いたいか?」
GM:「いえぇ、食うなどとは、とてもとても」
耀蔵:「わしはいろいろと疎いでな。口に出して言ってもらわねばわからぬことがたくさんある」
GM:「随分と謙虚でございますねぇ」紫……いや、妙は、紫の整った顔立ちのままで笑う。「……あなた様に、そこへ居られては困るお方がおるのでございます」
耀蔵:「わからんことを言うな。こことはどこだ。江戸か? 勘定奉行か? 現世か? それとも黒衣衆の頭目か? この国を守ろうとする鬼の場所か?」
GM:「そのすべてから、降りていただきたく」
耀蔵:「そのために紫を人質とするか」
GM:「人質などとは」
耀蔵:「戯言はよせ」と、笑みを浮かべよう。
GM:「戯言などではございませぬ。天下の毒蝮、甲斐守様とあろうお方を、人質ごときで止められるとは、はなから思っておりませぬゆえ」瞳孔の開いた目が君を見据える。「ただ、この女はとても都合が良かったのでございます」
耀蔵:「そうか」小さなため息だけつく。「それにしても随分と、静かに寝ておったものだな」
GM:「まだ、気は熟しておりませぬ」妙はにやにやと笑う。「ご安心くださいませ、しばらくはここで、おとなしゅう寝ておりますゆえ」
耀蔵:「そうか。ならば、そなたに二、三聞きたい事がある」
GM:「なんでございましょう」
耀蔵:「日光に当たって腐るようなことはないのか」
GM:「ですから、日が昇る頃合にはこのような部屋におるようにしております」
耀蔵:「なるほどな。氷室を用意させたほうがよいか?」
GM:君の真意を探るように紫の目が細まる。「……わたくしを捕らえようとしても、無駄でございますよ」
耀蔵:それにはかまわず枕元に置いた薬を目で差し、「それは不要か」
GM:「ちいとも役にはたちませんねぇ」
耀蔵:「食事は?」
GM:それにはにた……ァと意味ありげに笑う。「今、いただいております」
耀蔵:「あい分かった。では、ゆるりと休め」と立ち上がり、部屋を後にしよう。

「甲斐守様も、どうかご自愛を」
 紫の躯は微笑むと、鳥居が襖を閉めるまで布団に座して深々と礼をした。
 来た時と変わらぬ様子で、鳥居は執務室へと戻る。
 その足取りに、面差しに、一片の揺らぎは見られない。
 縁側から聞こえる風鈴の音だけが、心なしか遠く響いた。



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南町黒衣録 第二話「赤墨乱舞」第二幕へ続く